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「どうだ、これ!」 「おおおおおおーっ!!!」 ルーファウスの指にキラリと光るリング。 それを自慢する持ち主と、それに驚きの声を上げる観衆。 割とシンプルなデザインの銀のリングには、何やら文字が刻まれているが、さすがにそれをルーファウスは見せなかった。 ただ、それはルーファウスご自慢のリング。 何故ってそれは…。 「ツォンめ…なかなかやるな」 そうつまり、ツォンからの贈り物だったから。 その場にいた観衆、セフィロスとレノは、ツォンとルーファウスがリングなんぞを付けあう仲であることをあらかじめ知ってはいたが、何しろ二人の場合は関係が関係であるからして、少し心配などをしていた。どちらかというとツォンの方に、である。 しかしこのルーファウス副社長はといえば、何故だか些細な事実一つでこうして自慢…いや報告などをしてくるわけで、心配といってもツォンの気苦労の方に心配という具合である。 しかし今回のこのリングに関しては、セフィロスもレノも大いに感心していた。 もし―――――天地がひっくり返っても無いだろうが、もしも自分がルーファウスと付き合いでもしていたら、絶対にこんなことはできんだろう…これは二人の統一見解。 特に高価なものなんていったら、それこそ贈れない。何しろ相手は副社長で、贈る自分のほうが気後れしてしまいそうである。セフィロスとしてはそれ以外にも、そんなものは自分から贈るべきではないだとかいう屁理屈も込みだったが、とにかくそれは驚きの行動だった。 ルーファウスは、大層それにご満悦である。 「こういうのを愛の証というんだな〜」 その横で目を点にさせる二人。 「愛の…証…??」 今度ツォンに会ったら、そのリングがいかほどしたのか絶対に聞こうと心に誓う二人がいる…。その値段が愛の値段に違いない、そう深く納得しつつ。 「悪いが私達はラブラブなのだ」 そう断言するルーファウスに、セフィロスが一言。 「お前がそういう言葉を使うな、気色悪い」 両腕をすりすりしながらそう言うセフィロスの横では、レノが笑いをかみ殺していた。確かにこれは滅多なことでは想像できないシーンである。 「お前達も、私達を見習うんだな」 そうして、いかにも自慢げに言って去っていくルーファウスを見ながら、セフィロスとレノは同時に首を傾げた。 仕事中わざわざ呼び出されて何かと思えば……それだけ? ――――――二人は同時に頭を抱えたのだった。
そんな具合でルーファウスは大層ツォンにお熱だったので、こうしてその熱愛ぶりを良く自慢していた。それはそれで非常に結構なことだったが、しかしツォンにとってはあまり嬉しくない事実である。 ツォンがこっそりと、周囲には見せられないような言動をとろうと、それはいつの間にか周囲に筒抜けになっているのだから、確かにこれは堪ったものではない。翌朝になってレノと顔を合わせた瞬間に、昨日の夜は云々かんぬん……とかいう話になる。 ――――――何故知っている!? …とツォンが心の中でムンクの叫びになっている間にも、ルーファウスの口からは色んな所に情報発信されているのだった。 そんな訳で、ツォンは少し滅入っていた。 いつもは少しクールめで真面目…そんなツォンが、ルーファウスの前だからこそ見せる表情も、はっきりいってバレバレというこの状況。何度かルーファウスには注意していたが、それは一向にやむ気配がない。というか、悪化しているような気さえする。そういう行動はきっと喜ぶべきことなのだろうが、自分の知らぬところで進行しているというのは、どうにも気になる部分である。 そんな具合だったので、リングを贈ったその翌日もツォンは覚悟を決めていた。 どうせ朝になったらレノに何かしら言われるのだろう。一番考えられるのは、そのリングはいくらだ、だとかそういう質問である。 そしてそのツォンの予感は的中した。 「ツォンさ〜ん」 呑気なその声を背中に浴びた瞬間、ツォンの頭はフル回転していた。さてここからが勝負!…リングの値段だけは言うまい。 「ツォンさん、リング贈ったんだ?」 隣のデスクにぽんと座ったレノがそう言うのに、ツォンは敢えて驚きもせずにこう答える。 「ああ」 「で?…ぶっちゃけ…給料三ヶ月分??」 「……」 ―――――――それを言ったらこの男、ルーファウスの給料の何ヶ月分なのか、計算が入りそうな気がする。 「それは秘密だ」 「え〜何で?ツォンさんの事だから真面目に三ヶ月分だろ?」 「だから!何で三ヶ月じゃなきゃいかんのだ!?」 少々ぶちきれ気味でツォンがそう言うと、レノはさっくり、いとも簡単にこう納得をしたのだった。 「なんだ〜じゃあアレだな、っと。五ヶ月分!さすがツォンさん」 「……」 ――――その「五」の字はどこから出てきたんだ、どこから! …と声にだして言ってやりたかったが、それを言うと今度は「じゃあ六ヶ月」だとか何とか言いそうな勢いだったので止めておく。何せ口は災いの元である。 そんな訳で否定をやめたツォンによってそのリングのお値段はツォンの給料三か月分とあいなった次第…それが何ギルくらいなのかは敢えて伏せておく。 この会話はあくまでもツォンとレノの間だけで行われたことだったが、ツォンが昼休みに外に出たときにはもう、セフィロスの耳にまで届いていた。 出社してまだそんなに経っていないというのに疲れてきたツォンに追い討ちをかけるべく、セフィロスもその話題を振ったのは言うまでもないことである。 ついついいつもと違うルートで昼食をとりにいくと、何故か本社まで来ていたセフィロスにばったり会い、そこでまたしても繰り返しの会話が始まる。 それはこんな具合だった。 「ツォン…お前、給料十ヶ月分のリングを贈ったらしいじゃないか。たまげたぞ」 ――――たまげたのはツォンの方である。 いつの間に十ヶ月まで話が進んだのかさっぱり分からない。 「何を言ってるんだ。私はそんな…」 「いやあ、お前にはある意味感動したぞ。まあ俺には真似できないがな。しかしお前それで良くやっていけるな。大体ルーファウスの方が余程金があるじゃないか」 「いや、だから…」 「金持ちの上に金食い虫とはルーファウスにも感心するがな。ああ、でもアレか。お前の給料、裏で細工されてるかもしれないしな…ふ、さすがは神羅だな。と言うことは、出かける時も支払いはお前か。相当苦労してるな、ツォン。しかしそれが愛というものらしいじゃないか。愛は痛いというが、懐も痛いもんなんだな。参った参った」 参ったのはコッチだ、と言いたいが…言えない。何故ってセフィロスはそれを言う隙さえなく話しているのだから。だからツォンが逐一否定したい部分があってもそうはできず、結局セフィロスは自分の言ったことを事実として考えてしまうわけで、ということはつまり話は違う方向に進むというわけで……結果。 チャリーン…… ふと、ツォンの手の平に三百ギルが落とされる。 何だ?と首を傾げるツォンにセフィロスは一言。 「今日は俺のおごりだ、それでメシでも食うんだな」 ――――――何度も言うようだが、それは三百ギルである。 ……おやつ代の間違いじゃないのか!? 「……どうも」 背中にふきすさぶ風を受けながら、ツォンはがっくり肩を落としてそう言った。 しかし残念ながらそれは、やはりおやつ代にしかならなかったが。
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