熱望

------------------------------------------------

ZENG (zeng x rufuse)

 

 

 

夜の闇が、綺麗だった。

暗い部屋の窓から月明かりがほんわりと差し込み、それが顔のある側面だけをはっきりと照らし出している。

私の眼から見える、その月に照らされた顔は、とても白く寂しげだった。

明かり一つ点けない部屋の中、貴方の華奢な身体を抱きすくめる。あまりに心もとなくて、ともすれば崩れ落ちてしまいそうな貴方を、私の腕の力でしっかりと押さえる。

いっそ、この腕の力で貴方を壊してしまいたい。他の何事かが貴方を崩してしまう、その前に。

そう思ってより一層加える力に、貴方はそっと目を閉じる。

いつも気丈な姿しか見せないその裏に隠し持っているものを、私は知っている。

それを知っているのが私だけで、これからもそうであれば良いと思う。

いや、そうでなければならない。

私だけが貴方を守ることができる。

私だけが貴方を満たすことができる。

そうでないならば、このまま貴方を抱き殺してしまう方が何倍も良い。

私だけが貴方に全てを捧げられるのだから。

「夢を見るんだ」

「どんな夢を?」

「……お前が、死ぬ夢」

「私は死んだりしません」

だってそうでしょう。貴方をおいて、誰が死ねるというのです。

私の他に、誰が貴方を守れるというのです。誰が満たせるというのです。

もし。

もしも、この身体を抱きしめる腕が、私以外の場所にもあるというのなら―――。

貴方を抱く腕がどこかにもあるというなら、その腕を折り砕いてしまいましょう。

貴方に甘い声を出して近付く者がいるなら、その咽喉を締め上げてあげましょう。

貴方を奪い去ろうとする者がいるなら、撃ち殺してあげましょう。

この暗い闇の中には私と貴方しかいない。

たった二人だけ。それだけで良い。それ以外は望まない。

例えそれがとても贅沢な望みだとしても、それ以外の全てを代償に貴方を選びましょう。

貴方を選び、貴方を守り、貴方の為に生きて貴方の為に朽ち果てる。

それで良い。

貴方が望むなら、私はどこまでも堕ちていける。その先が例え暗闇でも。

「怖いんだ。いつまでこうしていられるのか…」

「大丈夫ですよ。私は貴方を悲しませたりしない」

「絶対に?」

「絶対に」

貴方を泣かせるようなものは、私が葬ってあげましょう。

人間でも、物でも、それが神羅ならばそれさえも。

この腕の中で蹲る貴方が、いつまでも安らぎを得られるように。

それが私の望みだから。

貴方がこの腕の中にいればそれで良いのです。他の誰でもなく、この私の腕の中に貴方がいて、そして貴方が安らぎを得られるならば、それで良いのです。

二人だけで良い、他には誰も何もいらない。

 

―――だから。

 

私を選びなさい。

他の誰でもなく何でもなく、煩わしいことなど全て捨てて、貴方は私だけを見ていなさい。

そして、私の胸で眠ってしまいなさい。

全て、全て……忘れて。

 

 

そうでないのならば、このまま貴方を抱き殺してしまおう。

 

 

貴方だけの私が、私だけの貴方を。

 

 

[ back ]