Honey Style Tropical : Monday

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  夢にまで見た新婚旅…じゃなくて二人きりの旅行。
  そんなの絶対に無理だろうと思っていたのにそれが叶ったのは、ひとえにある女性のおかげだった。まあその女性の素性などこれっぽっちも知らないのだが、とにもかくにもあるひょんな出来事によりその素性も知らない女性のおかげで二人きりの旅行が叶うことになったわけである。
  因みに、ツォンとルーファウスの指に収まっている指輪の存在も、実はその女性のおかげだったりするのだが…まあそれは胃が痛くなるので闇に葬ることにしよう。
  ともかく、こうして二人は念願の旅行というものにありついたわけだが、そりゃあもう素晴らしく素敵な旅行になりそうな感じだった。
  まず、待ち合わせの時点からして素晴らしい。
  今回は仕事ではないのだから自家用ヘリも使わないし専属操縦士もいない。そりゃ当然である。
  がしかし、ツォン最愛の恋人はここぞとばかりにこう言ったものだ。
「そんな大勢の中にいたらイチャイチャできないだろ!絶対ヤダ!」
「…あの。お言葉ですが、ルーファウス様。そういう時にイチャイチャというのはいかがなものかと思―――」
「あ、もしもし?ヘリ出してくれ、ヘリ!今すぐ!」
「……」
  ―――――――――嗚呼、無情。
  というわけで、しょっぱなからしてルーファウスのペースにはめられてしまったツォンとしては、楽しみにしていた二人きりの旅行とはいえ何だか先が思いやられるのであった…。
 
 
 
 
  さて、ツォンとルーファウスが向かった先といえば、トロピカルな町で有名なコスタ・デル・ソルである。
  まあ何でこんないかにもっぽい所になったかといえば、それにもやはり理由がある。その理由はツォンの胃があんまりにも痛くなる内容なので出来れば伏字にしたいところなのだが、まあ簡潔にいえばそれがツアーだったからだ。
  "ペアで行く!コスタ・デル・ソルとゴールドソーサーの豪華一週間旅行"
  これぞ今回の旅行の正式名称(?)である。
  そんなわけで、本来ならツアーに参加する全員が足並みを揃えて行動しなくてはいけないのだが、何せ待ち合わせの時点で足並みがズレてしまったのだから仕方ない。
  こうなったら現地合流してひたすら謝るしかないということでツォンはひたすら謝ったものだが、隣のルーファウスがいかにも偉そうにしていたので効果はまるで0だった。
  とはいえ、どうやら添乗員は何も気にしていないようである。
  因みにその添乗員はジョニーという名前で、鼻が高くソバカスの目立つ胡散臭い奴だった。服は勿論アロハシャツである。
「OK、OK!ワタシ、ジョニ〜。ヨロシクネ〜」
「は、はあ…よろしくお願いします…」
「何だコイツ?すっごく胡散臭いな」
「ルーファウス様っ!」
「OH〜!ルーファウス、ギャグセンス最高ネ〜!AHAHA!」
  ―――――――ギャグじゃねええ!!!!
  そうツッコみたいのはやまやまかわかわだったが、あまりのハイテンションにツッコむ気力も失せた二人は、取り敢えずジョニーの指示に従うことにした。
  まずはコスタ・デル・ソルの名所を案内してくれるというので、もう散々見たから良いとか何とか我侭を言い出したルーファウスを宥めつつ名所観光をする。
  その間中、ルーファウスはぶつくさ文句を言っていた。
  見飽きたとかつまんないとか、それどころかこんなんじゃイチャイチャできないじゃないかとか、とにかく滅茶苦茶なことを言う。まあいつもの事だしと思いつついつもどおりツォンはそれを宥めていたが、本心としてはルーファウスと同じことを思わないでもなかった。
  ツォンも、仕事では何度もここに来ている。
  その上仕事といったらタークスの仕事なわけだから、1から10まで楽しい内容というわけではない。まあ嫌〜な思い出もそれなりにあるといったところだ。
  しかしそんな思い出がどうのこうのという事よりも気になったのは、ジョニーの案内の仕方である。
「ハ〜イ皆サン!ココガ有名ナコスタ・デル・ソルノ海岸デ〜ス」
  ふむふむ、確かに。
「実ハ、コノ海岸デ恋人ト一緒ニ指輪ヲ投ゲルト、一生幸セニナレルトイウ言イ伝エガアリマ〜ス」
「へえ、そうなのか!ツォン、後でやろうな」
「投げちゃうんですか!?それはちょっと…」
  勿体無くないですか?、とツォンが言おうとしたその時。
「実ハ自殺ノ名所デ〜ス!」
  ―――――――――幸せってもしや無理心中っ!!?
  こんなトロピカルな所に来て自殺の名所だと案内されても嬉しくも何ともありゃしない。っていうかむしろ悲しい。
  しかしジョニーのトンチンカンな案内は更に続いた。
「ハ〜イ皆サン、注目!ココハ超穴場ノ占イスポット!願イガ叶ウヨ〜」
「なに、願いが叶う占いスポット?良いな、後で何か願ってみよう」
「ルーファウス様ったら…」
  ロマンチストですね、ちょっぴり微笑ましくツォンがそう言おうとした、その時。
「呪イノ藁人形、今ナラ1個オマケシチャウヨ〜!」
  ―――――――――願いって呪いかい!!
  そりゃあ占いは占いでも悪い方の占いだろうが!と言いたい。というか呪いの藁人形が1個オマケでついてくるその理由が分からない。っていうか何のオマケだ、何の。
  更には。
「ココハ自然公園ネ!可愛イ動物ガイッパイイルヨ〜」
「へえ、自然公園なんてあるんだ。知らなかったな、ツォン」
「そうですね、初めて知りました」
  最近新設されたのでしょうね、とツォンが真面目に言おうとした、その時。
「獰猛デ空腹ナ虎ガ沢山放シ飼イサレテテ超最高〜!」
  ―――――――――っていうかソレ不自然公園だから!!!!
  もしかしてその自然公園の地面は死体の山で出来上がっているのじゃないかと冷や冷やしたものだが、あまり深く考えると胃酸が逆流しそうだったので敢えてそれは忘れてみた二人である。
  …とまあこんな具合に、ジョニーの案内は…というかジョニーの案内を理解するのは非常に困難を極めていた。まあそれにも増して理解不能なのは、ツォンとルーファウス以外のツアー客がその説明に対して「ほう」とか「ふむ」などと感心しているところである。
  一体あの説明のどこをどうすればそこまで感心できるのか論文にして発表してもらいたいところだが、そんなものを発表しても世界に貢献できないので辞めておく。
  とにもかくにもツォンとルーファウスにとってはちっともトロピカルではない名所観光はその後も延々と続き、夕方五時くらいになった頃にようやくそれは終わりを告げた。
  初日からどっぷり疲れたのは言うまでもない…。
  
  
  
  

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