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Honey Style : Sunday ----------------------------------------------------------------
朝。 チュンチュン…。 すずめの鳴き声に目を覚まし、気付くとそこは真っ白なベットの上で、ああ昨日はとうとう一つになったんだ、と隣の愛しき人を見つめる。 ―――――――――と、いうような。 そんな生易しい事態は勿論無かったわけで。そもそもすずめなど鳴きもせず、真っ白なベットではあったが、隣には人っ子一人いなかった。しかも生乾き状態のままでベットに入ったせいで、髪なんかはハッキリいってボンバーしていた。 鏡を見るなり一言。 「うわ…最悪」 いつもなら不眠症よろしく朝はすくっと起きるルーファウスだったが、さすがにこの日はすっきり睡眠を取った。というか数日前に泥酔した日なんかもこんな具合じゃなかっただろうかと思うが。 とにかく四方八方に飛び跳ねている髪を元に戻そうとブラシを入れてみる。しかし、事もあろうに髪は、びよん、といって元に戻っていくではないか。…最悪である。 「ああ〜もう!」 そんなふうにルーファウスがイライラしだしたとき、ふと遠くで声がした。どうやらツォンの声らしい。それが聞こえてやっと、そういえばツォンは何をしているんだ、という事を思い、ルーファウスは寝室を後にしたのであった。 それは、気だるい日曜のこと。
キッチン(注:いつも使われていない)にはツォンの姿があった。見るとそこに朝食などが用意されており、どうやらツォンは朝から一つ家事などをこなしていたらしいことが分かる。 おはよう、と恒例の挨拶をした後、ルーファウスは並べられた食事に首を傾げた。 「お前、家事できるんだな」 「ええ、まあ少しは」 「っていうか、ツォン。お前、何してるんだ」 「え?」 問題は食事ではない。その食事の前ですっかり新聞を広げ、朝のコーヒーなんかを飲んでいるツォンの方である。 昨夜は勿論、事が済んだ後にハート柄を着こんだはずの二人であったが、それをまだ着ているルーファウスに対してツォンは何故かネクタイなんかをキュッと締めていた。というかその前に、そのくつろぎ様は何だ、と突っ込みたかったがそれは敢えて言わないでおく。 「何でそう堅苦しい格好をしているんだ」 取り合えずそれを突っ込んでみると、ツォンは「ええと」などと言葉を濁した。それから、試しにこんなことをルーファウスに聞いてみる。 「ルーファウス様。今日はその、どうやってお過ごしになる予定です?」 「今日?そうだな…まずはお前の20000ギルを使って…」 「…昨日より10000ギルほど増えてる気がするんですけど」 「当然だろ」 「何故!?」 「だってお前、昨日どれだけ俺に“です”“ます”使ったと思ってるんだ」 「うっ…」 話は何故か大幅に逸れていた。そんな訳で軌道修正。 「ま、まあ…それはともかく。…お出かけになるんですよね?」 「ああ。…ん?もしかして、だからその格好なのか?」 「そうです」 「ふーん…」 ルーファウスはツォンの格好をまじまじ見つめると、品定めするかのように上から下までを辿った。それから、こう一言だけ告げる。 「いつもと一緒じゃつまらない」 ツォンの心臓には久々に五寸釘が刺さった。 しかしその意見は尤もで、いつもと同じ系統のスーツにいつもと同じ髪型では確かに通勤するのとあまり代わりが無い。が、ツォンとしてはルーファウスと一緒にいる以上、この格好でないとどうにも落ち着かないというのが本心であった。 …といって、それを説明してもルーファウスは絶対に「駄目」だとか「嫌だ」だとか言うのであろう、かなり目に浮かぶ状況である。 そしてそんなツォンの思考は大当たりした。 「それ、却下」 「うっ!」 そんなわけで、副社長直々に着替え命令が出された次第である。仕方なくツォンはそれに従って隣の我が家(仮)に帰って着替えなどをし、その間ルーファウスはツォンの手製の朝食をほくほくと頂いていた。 そんなこんなで約30分。 二人で顔を合わせたときには、すっかりいつもと違う様子になっていたのは言うまでも無い。実はこの二人が私服で一緒に出かけるのは、初めての話だった。 そんな訳だから、お互いちょっぴりビックリしたりする。 「る、ルーファウス様…そ、その格好で外に出られるんですかっ」 思わずそんな声を出したツォンに、ルーファウスは「ああ」と答える。 「何か変かな?」 「いや…」 何だか良く分からないまま出かけた二人だったが、ツォンとしてはルーファウスが気になって仕方なかった。別に格好は普通である。普通だけども、いつもと違うことは確かであって、その“いつも”というのは何気にピシッと決めている格好だったりするわけで。 イコール―――――――…。 「あの。絶対に私から離れないで下さいよ」 「?…ああ、分かった」 その日のルーファウスは髪も下ろしたまんま、副社長の顔も一切ナッシング……つまり威厳とかいうものが全くなかった。…というか、いつも無い気がしないでもないが。 要は、何だかドキッとしてしまったツォンがいたりした。 あんまりに可愛らしい外見でさらわれなければ良いが……そんな事を100%のろけ付きでつい考えたが、はっきりいって誰もそんなことはしない。というか断るだろう、きっと。 一方ツォンもいつもと違って髪を下ろしたままだったので、何だかルーファウスは変な気分だった。
やってきたのは、何故かデパート。 ちょっと高級志向だが、ルーファウスからすれば普通の部類に入るくらいのデパートである。 「どこに行くんですか」と聞いたのに対しルーファウスが「デパート」と答えたときは、思わず車を運転していたツォンも呆気に取られてウィンカーを出し忘れたものである。そんな訳で後続車からプップーなどと鳴らされて、つい逆煽りなどをしつつ……というのはどうでも良いとして、とにかくデパートに来た理由がツォンには良く分からなかった。 という事で、先を行くルーファウスについていく。 そしてやっと立ち止まったかと思えば、そこには……。 「これが欲しいな」 「え……」 ルーファウスがそう言って指をさしたものは、何でもない普通のものだった。 「ア…ルバムですか」 普通のものとはいえ、この一週間の話があっただけに何となくドキリとする物体である。ツォンの持っていたアルバムは、本当にオプションでついてきたような薄いものだったが、ルーファウスが欲しいというそれもさして厚くはないアルバムだった。 ただ、思い出を残す大切なものという意味もあってか、装丁だけはしっかりしている。 因みに収納枚数は大体100枚程度。便利でお得なフィルム式! 「これが良いんですか……って。ああっ!」 ふとそのアルバムを手にして、それをひっくり返してみたツォンは、驚きのあまり声を上げた。 ――――――――500ギル…!!!!! 「や、安い…」 はて、こんなお値段で売っていて良いものなのだろうか。 いや、それよりもまず500ギルで良いのか、という話だ。何せ罰金(※ルーファウス定義の名称による)は20000ギルらしいのだから、20000−500=19500……よって、かなりの金額が残ってしまうわけで、それはどうなんだ、という事になる。 「良いんですか、これで?」 「うん」 「しかし…」 「良いから、それ!」 「はあ、分かりました」 とにかくルーファウスがそう言うので、ツォンはレジまで向かった。しかし日曜日のレジというのはどうも混んでいる。そんな訳で少し待つはめになってしまう。 その間、ツォンは考え込んでいた。残る19500ギルはともかくとして、アルバムを選んだその理由が気になる。昨日は昨日ですっきり話も終わったけれど、やはりまだ気になっているのかもしれないと思うと、何だか胸が痛むような気もする。…気のせいかもしれないが。 そんな事を考えているうちにツォンの番になり、支払いなどを済ませる。 何でもないアルバムとはいえ、欲しいものが手に入ったのだから少しは喜んでくれるのだろうと、ルーファウスの元まで返ると…。 「…ルーファウス様?」 何と、そこにルーファウスの姿は無かった。
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