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Don't kill my mind ---------------------------------------
子供の頃の夢は何か、と聞かれたら、恐らくはソルジャーと答えるだろう。 それだけ、子供の夢は純粋で、正直だった…。
「折角会社に来てもらったのに、遊べないようだ。悪いね、ルーファウス」 本日の予定は確か遊園地。何時もは忙しくて時間のない父――プレジデントが、ぽっかりと休みが取れそうだ、とルーファウスを呼び寄せたのに、その休みは直前でおじゃんになってしまった。 喜び勇んでミッドガルまで来たものの、急に予定が変更されるのは良くあることだ。 「大丈夫」 聞き分けの良い子供を演じるのは、不得意ではない。現に父親はルーファウスの良い子演技に長い間だまされて、まさか息子の性格が、実は悪魔のごとき悪いなんて、思いもしないだろう。 「でも折角来たから、会社の見学をしてっても良い?」 ニッコリと笑顔で尋ねると、プレジデントは頷いた。 「ああ。だが、タークス本部と、ソルジャー部署にはいくんじゃないぞ」 「うん判った」 当然、行かないわけがない。 父はまだ知らないことだが、ルーファウスが神羅ビルに寄った時は、必ずタークスやソルジャーの皆に会って行くからだ。 各部署で、既に馴染みとなっているなど、予想もしないことだろう。 将来の夢はソルジャー。でなければ、タークスのように格好良いスーツを来て、ソルジャー候補をスカウトしまくるのだ。 エレベーターを、役員用のカードキーで動かし、防火扉にカムフラージュされたソルジャー部署に入る。 中は殆ど訓練所のようになっている。 「やぁ、坊ちゃんじゃないですか?」 何時もソルジャー部署を案内してくれるソルジャーが、気軽に声をかけてくる。 「あ、こんにちわ」 良い子ちゃん笑顔を浮かべると、関心したようにそのソルジャーは笑う。 「その年で大人みたいな人付き合いを覚えると、後で人生損した気分になりますぜ?」 柄の悪い彼は、つい先日ソルジャー1stになったばかりなのだそうだ。 「損した気分にはならないと思うけど…。ね、ソルジャー1STになった気分はどう?」 「そりゃ、嬉しいですよ。俺ぁ、その為にソルジャーになりたかったんだから」 「でも、1STは殆ど戦争に出ていくよね?」 「ま、そうでうね。だが、それで手柄を立てられれば、俺の評価が上がろうってもんです」 「そうかもね…」 こんな処は、ルーファウスには複雑だ。 「でも、もし死んじゃったら、二度と大切な人にも会えないよ?」 「それでも、この会社には俺の戦った記録が残るわけです。それであいつが俺を覚えていてくれたら…」 ルーファウスは馴染みの男を見上げ、溜息を吐いた。 こういう時、自分はソルジャーには向いていないと思う。 戦うのが怖いわけではない。死ぬのが怖いわけでもない。それで誰かの生活が豊かになったり、誰かが幸せになるなら、躊躇いなく戦いに赴くつもりだ。 けど…実際には誰かが死ねば、残された誰かは絶対に不幸になる。それを思うと…残された人が泣くことを考えると、安易に戦いに赴くことが良いことだと、そうは言えない。 「戦いに行く時は、絶対に気をつけてね」 ルーファウスの言葉に、ソルジャーは苦笑する。 「坊ちゃんに心配をかけないよう、気をつけますよ」 「そうして」 男が死んで、それを己が知れば、絶対にルーファウスは泣くことになるだろう。 判り切っている。 「それよりさ、あの子、誰?」 ルーファウスは指さし、男がその指の向く方を見る。 「ああ、あのガキですかい?」 「うん。ソルジャーになるのには、ちょっと小さすぎるんじゃない?」 「そうですがね、あのガキは、適性検査でトップ値を叩き出した怪物ですぜ」 「怪物?」 「ええ。ソルジャー部署の、宝条博士からの預かり者です。試しにソルジャー試験を受けさせてみたら、トップ合格で一月で1STですよ」 「立つ瀬、ない?」 男はルーファウスを見て、苦笑する。 「坊ちゃんは小さいのに、難しい言葉を知ってなさるんですね」 「でも実際、あの年齢で仕事に出るのは不可能でしょう?」 就労基準法に引っかかるはずだ。 「そうですね。ソルジャーや下級兵士でも、やっぱり戦闘出動最低年齢で、十五は超えてないとね…」 「それでソルジャー…?」 「不思議ですか?」 「うん…まぁ…」 戦えないなら、ソルジャーとしての意味はない。ソルジャー部署は6階級に分かれ、実際にソルジャーの名が与えられるのは、3RDからだ。その3RDでも、最低年齢は十五以上と決まっている。 「ソルジャー部署の事務処理は、確かにソルジャー候補生達がやるものですし、そういう意味ではソルジャーの仕事は戦うことですが…。実は、もっと凄い仕事もあるんですよ?」 「もっと凄い仕事?」 ルーファウスの目が輝く。 「ええ。もっと凄い仕事です」 その仕事の内容を、ルーファウスはワクワクしながら待つ。 だが、仕事内容が男から語られることはなかった。 「秘密任務なんですよ。すいません」 頭をぼりぼり掻く男は、本当に済まなそうにルーファウスに謝る。 「秘密なら、仕方ないよね?」 「聞き分けが良くて助かりましたよ」 「その変わり、あの子と戦ってみてよ」 「はぁ?」 「あの子の実力、見てみたい」 ルーファウスは甘えるように男に頼んだ。 最初は渋っていた男も、ルーファウスに頼まれるのを断わり続けることは難しい。何しろ社長の息子だし、自分も可愛がっている子供なのだ。 「…言っときますが、俺よりあのガキの方が遥かに強いんですよ?」 「え、ホント?」 「危険になる前に、下さいよ。俺ぁまだ生きていたいんですから」 男はちょっと不安そうにルーファウスに言うと、件のガキを誘いに行った。 ソルジャー同士の戦いということで、ソルジャー部署詰め所でなく、隣室ロッカーから続くバトルリングへ向う。 道すがら、ルーファウスは子供に尋ねた。 「名前は?」 明るい笑顔のルーファウスに、無表情で答えた子供。名は…。 「セフィロス」 「へぇ。どこから来たの?」 「知らない」 「故郷だよ?」 セフィロスは何も見ていないような眼でルーファウスを見ると、小さな声で、 「研究所」 と答えた。 ルーファウスの中では、研究所=宝条研究室、ということになる。というのも、幼い頃に一度だけ迷い込んだことのある宝条研究室で、ルーファウスは見てはいけないものを見たから。 宝条研究室には、人間のホルマリン詰があった。といっても、まだ子供であったルーファウスがホルマリン詰なんて分かるはずもない。生きていない人間が、ぼんやりとどこも見ていずに、有り得ない場所で浮いている。 奇妙な光景に、吐きそうになったルーファウスだった。 それを思い出し、呟く。 「気持ち悪いね」 セフィロスは微かに眉をひそめた。
バトルリングに入り、馴染みのソルジャーがガードを着けるのに反して、セフィロスは何も着けなかった。 「じゃ、ルーファウス様が止めるまでの勝負な」 男は言って、始めの合図をルーファウスにさせる。 戦いの始まりだ。合図と同時に動いたのは、男が先だった。セフィロスは、悠然と切りかかってくる男を見ている。 「行くぞ、セフィロス」 男の剣は、長剣だった。東の方の国から、世界に一つしかないという触れ込みで流れてきた骨董品の内の一つ。 「良い剣だな…」 セフィロスが言った。 「構えねぇと、この剣のリーチが、お前の剣技に勝っちまうぜ?」 男は己の背よりも長い剣を、横に一閃する。 セフィロスはその攻撃を紙一重の差で避け、反対に男の剣を叩き落とした。 「その剣、俺にくれ」 「俺が死んだらな。形見にくれてやるよ」 男は剣を逆手に握り替え、下から切り上げる 「じゃ、形見でもらおう」 セフィロスは男の攻撃を避けるようにジャンプする。 空中で追いついた男の剣を、空中で避ける。 「なに? そんなの、不可能だろ?」 驚いた男は、勢いで上がり続ける剣を、横に払う。 セフィロスはその隙をつき、がら空きになった男の脇を狙い、一撃を繰り出した。 遠慮のない一撃だった。 「本気で…切るか?」 男は一瞬バランスを崩し、床に膝をついてルーファウスを見た。 ストップの合図はルーファウスにのみ権利がある。そう男が決めた。 だが、頼みのルーファウスは男の脇から吹き出す血に驚き、硬直している。 「坊ちゃん!」 叫びながら、男は何とかセフィロスの次の攻撃を避ける。 だが、怪我をしたままで、セフィロスの攻撃を避け続けるのは難しい。 とうとう男は、リングの角に追い詰められた。 「本気か、セフィロス」 苦々しい男の顔が、セフィロスの頬を歪ませる。 「形見なら、くれるんだよな?」 唇の端だけを押し上げて、セフィロスは剣を振り上げた。 男は観念したように目を閉じた。 ルーファウスは、余りの光景に声も上げられなかった。 自分が願ったことによって、馴染みの男が…初めて会社で対等にルーファウスの会話の相手となってくれた相手が、目の前で殺されようとしている。 「駄目!」 やっと、やっと声が出た。 ルーファウスの叫びと、セフィロスが剣を振り下ろしたのは、殆ど同時だった。 大声に意識を逸らされたのか、セフィロスの剣は軌道を反れ、男の腕を切り落とした。
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