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SECOND -----------------------------------------------
「ザックス、俺はザックスに憧れてたんだ」 俺の隣でそんな事を言うのは、クラウド。 「聞いてよ!俺ね、ソルジャー昇格したんだ!」 へえ、そうか。やったな! で、クラスは? 「…まだ下だけどさ」 ははは。まあ慌てなさんなって。 まだまだ時間はあるんだから、な。 それにしてもクラウド、背、伸びたんじゃないか? 「え、そうかな?」 そうだよ。あ、あれか! ホラ、俺がいつもいつも濃縮新鮮牛乳、飲ませてただろ。 やっぱきいたんだ〜アレ! 「え〜そうかな?俺、アレ飲んだら太ったよ…」 ばーか!男は体力よ、体力! ってか俺の場合は知力もあったりするけどな。 「でたでた、ザックスの自慢話。嫌な感じ〜」 ははは。 「――――でもさ」 ん? 「こんなふうにザックスと親しくなれて、俺、嬉しい」 おい、よせやい!そんな事、改まって言われると照れるだろ。 「良いじゃんか。だって本当の事だし…」 おいおい、何しんみりしてんだって! 「…ねえ、人のいない所に行こうよ」 は? 「もうっ!鈍いなあ!」 え、ちょっと!クラウド?
「此処なら安心だ。人がいないところならキスできるでしょ?」 ああ、そういう事か。お前、ナイス! 「ザックス、俺の事…」 バカだなあ、そんな今更言わせるなよ。 俺達はもう公認の仲だろ? 「そうだけどさ…」 何だよ、何か不安なのか?言ってみろよ。 「うん…。その、最近…」 うん? 「…告白されて」 はあっ!?誰に!! 「同じソルジャーの……に…」 何だよ、そいつ!許せねえなあ! 俺のクラウドに手エ出すなんざ、一発分からせてやらないと。 「でも俺はザックスが好きだよ。分かってくれるよね?」 当たり前だろ! まったく…おい、クラウド! そういうことがまたあったら、ちゃんと俺に言えよな。 「うん」 俺が何とかしてやるから。 「有難う。やっぱ頼もしいね、ザックス」 当然だっての。お前に関してはうるさいぞ。 「へへ…さすがは英雄だね」
―――英雄…?
ズドン
大きな音がして、さらには大きな衝撃がある。 「アイテテ…」 視界が変だ――そう思うのも当然だった。 そこはザックスの部屋で、そして床の上である。体に纏わり付いたままの毛布を掴むと、ザックスはそれを剥ぎ取る。 「…転落…はあ…」 どうやらベットから落ちたらしい。 まあたまにはこんな事もあるよな、などと良く分からない納得をしつつ、ザックスは上体を上げた。 頭がガンガンする。 その頭の中で、思考がうごめいた。 ―――何だったんだ、今の夢は? まず第一に思ったのがそれだった。 分かってるのは、クラウドが出てきた事。 クラウドとは普段から親しくしているので、彼が夢に登場する事は度々あったが、どうも今日の内容はちょっと違った。 ―――何だよ、公認の仲っつーのは…。 確か自分で言っていた台詞だ。しかもクラウドはそれに対して何の不思議も無いように…というか、正に言葉通りの関係だったのだろう。 どう考えても、おかしい。 おかしいというか、間違っている。 ザックスはそう思う。 「だってあいつはさ…」 呟きながら、夢と現実を比較してみる。 現実にクラウドはソルジャーなんかではなく、ザックスも英雄なんかではない。 大体、クラウドには現実で相手がいるのだ。 それはザックスも良く知っている、英雄セフィロス。 最初は驚いて疑いもしたけれど、どうもそれは本物らしい。それは良く分かっていて、最近では仲介役状態の自分がいる事も事実だった。 しかし、それには事情がある。 神羅に入ったばかりのクラウドとまず仲良くなったのはザックスだった。そして、セフィロスとクラウドを会わせたのもまたザックスだったのだ。 それが今ではこんな状況を生んでしまった訳だが、問題はそこではない。 問題は、ザックスにとってもまた、クラウドは大切な存在だという事だった。 その辺に、あの英雄は気付いているんだろうか? 最近、ザックスはそんな事を疑問に思う。 いつも三人で一緒に行動などをする時、やはりクラウドはセフィロスに付いていく。その後ろをザックスは歩く。 セフィロスは知らないだろう。 視線の先なんて、きっと。 「…馬鹿か、俺?」 はあ、と溜息が漏れた。 そんなふうに思って何の得があるんだろうか。 そもそも男同士というのがザックスには分からない。 そんなものは代用でしか無いだろう、と毒づきたくなる。とはいっても、2人を批難してる訳では、勿論ない。 だが、“セフィロスのもの”と化したクラウドに対して、こんな事を思う方がどうかしている。だって相手はセフィロスなのだ。 今のクラウドは、ザックスばかりを頼りにしていた頃とは大分違っていた。 そりゃそうだろう、とザックスは思う。 側には、あの英雄がついているのだ。 ザックスよりか数段、頼りになる存在に違いない。
―――セフィロスのような英雄になりたいと思ってた。
だが、それは未だ叶わない。機会も無いし、しかも現段階で英雄と謳われているセフィロスを凌ぐ事など、到底、不可能にも思う。
―――大切な存在は、守ってやりたいと思ってた。
その存在は、自分の前で違う存在を選んでいった。その“違う存在”にも、到底敵う筈がない。
起こしたはずの上体をまた床に倒すと、ザックスは呟く。 「いつも二番目、ねえ…」 どうせいつも一番にはなれない。 一番はいつも違う奴で、自分はいつも二番目だった。 欲しいものは全て手に入らない、それが現実かもしれない。
時々、思う。
あの戦争で、ソルジャークラス1stだったら…。 「…英雄になれたのか?」
もし自分が英雄だったら、そうしたら…。 「…俺を選んだか?」
もしそうだったら…クラウド、お前は俺の近くにいたのか―――?
昨夜の夢などはすっかりと仕舞い込んで、ザックスはいつもの調子でいた。 もうそろそろ、いつも通りの風景が見えるはずだ。 そう考えて一瞬、夢の情景が浮かんだ。 「ザックス!」 ふとかけられた声に、ザックスはその情景を急いでかき消した。 「お、クラウド!早いな!」 ニヒヒ、と笑ってそう言ってみる。 いつもの通り。 何も無かったように。 第三者の顔をして。 明るい、優しい、自分を作って。 「うん、そうなんだ。今日は……あ!」 ザックスの言葉への返答もそこそこに、クラウドは視界に入ったその人に、声を上げた。つられてザックスもその方向を見遣る。 「よ、英雄さん」 「ああ、ザックスか。珍しく早いな」 「失敬なっ!」 いつもの通り。 何も無かったように。 第三者の顔をして。 おどけた、面白い、自分を作って。 「ああ、そうだ。クラウド、少し話があるんだが…」 「うん!」 目前でやりとりされる全てが、ザックスの中に蓄積されていく。 いつもいつもいつも、それは変わらない。 「ザックス。じゃあ、また!」 「ああ、またな」 颯爽と去っていく英雄の姿と、嬉しそうに去っていくクラウドの姿。 名誉と、大切な存在。
――――どちらも、自分が手に入れられないものだった。
そうだ、そうやって去ってくんだ。
END
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2002/06/03 UP