NEAR

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「はい、土産」

「え、お土産?」

ミッションのあったその日、帰ってきたザックスはそう言ってクラウドに一つの箱を渡した。

手に取ったクラウドの方はいささか不思議そうな顔をする。

何故って普通のミッションに土産なんて聞いた事もないし、勿論期待なんかした事もない。それでもザックスはたまにミッション帰りに何かを買ってきてくれる事があったから、まあ頷けないこともない。

それにしたっていつもは何だか奇妙なお菓子だったり奇怪な玩具だったりしたから、その日ザックスが土産だといってくれた箱は、いつもと違って何だか不思議な気分だった。

箱は木製でやけにしっかりしている。

一体今度は何だろう、クラウドは首を傾げる。

「開けてみろよ」

そう言うザックスの顔は楽しそうで、クラウドは、うん、と言いながらその箱を開けた。箱の中には、また箱のようなものが入っていて、今度は蓋の部分が硝子になっている。そこからはゼンマイのようなものが見えていて、それを見てクラウドはやっとそれが何だかが分かった。

「オルゴール?」

そう言いながらネジを回してみる。クルリクルリと何回転かさせた後にそこから手を離すと、可愛らしい音楽が流れてきた。

転がるような音の、可愛くて、どこか寂しい感じもある音楽。

曲は知らないものだったけれど、それはとても雰囲気のある音楽だった。

「ありがとう」

顔を上げたクラウドは、ザックスに向かってにっこり笑ってそう言う。目の前のザックスは少し笑って、ああ、と言った。

 

 

 

何でいきなりオルゴールをくれたのか、クラウドには良く分からなかった。それでもつい部屋に戻ると、そのネジを回してそれを聞いてしまう。

最早それは癖になっていた。

神羅ではこれといった面白い事がある訳ではなかったし、それは勿論、ザックスやその他の友達と一緒にいる時は楽しかったけれど、それ以外の何か心が軽くなれる瞬間というのは無かった。

だからか、それを聞くと、何となく自然と心が軽くなる気がした。

きっと神羅には、オルゴールだとかは似合わなくて、そのギャップがそうさせるんだろうと思う。

何度も何度もネジを回して、何度も何度も繰り返し聞く。

それを聴いている内に、何度か眠りについてしまうこともあった。

そういう日は必ず夢を見て、その中でザックスが笑っていた。

 

 

 

「なあ、オルゴール聴いてる?」

貰って何日か経って、ザックスはふとそんな事をクラウドに聞いた。ザックスの口調は何とも無いふうだったが、顔は何だか気になって仕方無いといったふうである。

クラウドは別にそれを気にするでもなく、

「聞いてるよ」

と答える。

仲の良いザックスとはいえ、男から貰った、しかもオルゴールを、毎日飽きるくらい聞いてるなんて何となく恥ずかしくて言えなかった。

けれど、その一言だけの答えでザックスは満足したように笑っている。

その笑顔を見て、何となくクラウドは夢に出てくるザックスを思い返していた。何でいつもザックスが夢に出てくるのか、クラウドには分からない。けれどそれはきっと、ザックスがオルゴールをくれたからなんだろうな、と思う。

「あの曲は、何て曲なの?」

もう今では空で歌えるくらい覚えてしまったその曲について、クラウドは何も知らなかった。歌詞も無いから意味も分からない。

ザックスは一瞬、焦ったような顔をした。それから少しして、

「えっと…俺も、良く分からないんだよなっ」

と笑って言う。

「何だ、ザックスも知らないの?」

「そーなんだよ。ごめんな」

「ううん、別に良いんだ」

クラウドはちょっと残念だなと思いながらも、その曲を思い返す。毎日聞くあの曲には、一体どんな意味があるんだろう。どんな意味を込めて、その曲は流れるんだろう。

そう思いながらもクラウドはザックスに向かって小さく言った。

「…でも俺、あの曲、好きだな」

その言葉にザックスは、そっか、と少し満足した顔をしていた。

 

 

 

 

 

あれは、もうずっと昔の事だったな―――――――……

 

 

 

 

 

その日の夕食時、何故か夢の話題になった。

夢は何で訳が分からないんだろうという話になって、過去に見た夢の話などを皆でわいわいする。その中には甘い夢もあったし、怖い夢もあったし、不可思議な夢もあった。

本当に支離滅裂で、次々と変わっていくシーンは、映画みたいだなと誰かは言った。夢には意味なんか無いらしい、と誰かは言う。

その中で、ティファは違う事を言った。

「でもでも、意味があるって話もあるじゃない?」

少し身を乗り出してそんなふうに言う。

「またまたあ、これだから女ってえのは夢見がちでいけねえや」

チャチャを入れるバレットに、ティファはムッとして、うるさいなあ、などと言った。

その話を静かに聞いていたクラウドは、ティフィが言うようにもし夢に意味があるのなら、それはそれで良いな、などと思う。とはいっても口に出したらまた、何を言われるか分かったもんじゃないので、それは敢えて言葉にはしなかった。

「例えば白蛇が出てきたら縁起が良いとか、ちゃんとそう言うのがあるんだってば!他のもいっぱいあるの」

ティファはそんなふうに言う。

なるほどそう言われると意味があるのかとも思う。

その中で、クラウドはふと思った。

オルゴールには、どんな意味があるんだろう?

それは実は、クラウドが見続けてきた夢だった。ずっと夢にオルゴールが出てくる。それはきっと昔の事を思い出しているだけなんだろうと思っていたけれど、それ以外に意味があるならそれは一体何だろうか。

過去、神羅時代に、親友ザックスに貰ったオルゴール。それはとても綺麗で、転がるような音で、可愛く、どこか寂しげな音で鳴り続けた。その頃は毎日のようにそれを聞いて過ごしていたものだ。今でもその音楽は覚えている。けれどそのオルゴールはもう今、どこにあるかすらも分からないし、捨てられている可能性も高い。

ミッション帰りにザックスが買ってきてくれたオルゴール。

何だかんだ言ってそれは、クラウドの宝物だった。

質素な部屋しか与えられない神羅の中で、それだけが妙に意味のあるもののような気がしていた。

それでも今はもう、聞けはしないけれど。

「オルゴール…」

ふとクラウドは呟いた。

何となく、聞いてみようと思ったのだ。

「オルゴールって、どういう意味があんのかな?」

そう言ったクラウドに、ティファは人差し指を口に当てながら悩む顔をした。

「えっと…何だったかな。でも意味は確かあったよ」

それでも思い出せないらしく、暫く悩む顔を続ける。クラウドはそんなティファに、良いんだ別に、と返しながら、残る食事をした。

「ごめん、思い出したら教えるね!」

「ああ」

そう答えながらもクラウドは、やはり意味なんかないのかもしれないと思う。自分が意味を欲しがっているだけなのかもしれない。

それは、あの曲の意味を知りたがったように。

 

 

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