MORE SWEET

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「よっす!ケーキ買ってきたぞ、ケーキ!」

「はあ、ケーキぃ?」

素っ頓狂な声を出したクラウドに、ザックスはナハハ、と笑った。何が何だか分からないふうに首を傾げるクラウドに、ザックスは、

「だってお前、誕生日だろ?」

と当然のように言う。

そこまで言われてクラウドはやっと今日が自分の誕生日だったことを思い出した。

そういえばザックスとそんな話をしたかもしれない。でもまさかザックスが覚えているなんて思ってもみなかった。何せその話をしたのは随分と前で、ここ最近の会話ではなかったのだから。

「な、入っても良いか?」

「え〜、靴脱いでよ?」

「へいへい」

そう適当に返事をしながらザックスは窓枠をひょい、と飛び越えた。

実はザックスは度々こんなふうに窓越しにクラウドの部屋を訪ねていた。丁度窓側が外を向いているので、本当に都合が良い。ちょっとした伝言もできるし、窓を開ければすぐに…まあ、いろいろできる訳である。

トン、と部屋に上がりこんだザックスに、クラウドは「あーッ!!」と叫ぶ。

「靴脱げって言っただろっ!」

「分かった分かったって。今脱ぎますって」

そんな調子で靴を脱ぎ始めるザックスの隣に几帳面に正座なんかをして、クラウドはその様子を眺めている。その間にしっかりと靴を脱いだザックスは、脱いだ靴をちゃんと揃えて隅の方に置いた。

そんなザックスの隣には小さな白い箱がちょこんと置いてあって、それは確かにケーキのようである。それをチラリと見ながら、本当に買ってきてくれたのか、とクラウドは内心ちょっと嬉しくなった。

そういう何気ない優しさは、ザックスならではだと思う。

そんな細かいことにはこだわりそうも無いというのに、何気に結構気遣ってくれたりする。

「良く覚えてたね」

そんなふうにクラウドが言うと、ザックスは「当たり前だろ」と得意げな顔になった。

「俺はそういう事はちゃんと覚えてるの!」

「って、それどっかの女の子のも入ってんでしょ?」

怪しげな目つきでそう言うクラウドに、そりゃ勿論、などとこれまた得意げに言ってからザックスは、はっ、とした。

気付いた時にはクラウドが嫌ぁな視線を投げかけていた。

「ふう〜ん、へ〜え、そうなんだあ…ふう〜ん……」

「ば、ばっか!んなワケねえよ!俺はお前の誕生日だからだなあ、こうやって…」

「女の子との約束をキャンセルしてきた、と…」

「そうなんだよ…これまたうるさくて困って……って、違っ!!」

「も〜良いよ!ザックスなんて知らないっ!」

「あう〜っ、クラウドぉ〜っ!!」

ふい、と顔を背けるクラウドに、ザックスは泣く泣く手を合わせた。もうこれもお決まりパターンなのは言うまでも無い。こんなことはしょっちゅうで、その度にクラウドはモヤモヤしたものだけれど、何せ相手は女の子である。

女の子相手にオトコの自分がヤキモチなんてやいてどーする!、とそう思うけれど、そう思ってしまうものは思ってしまうんだから仕方無い。

でも実際にザックスが女の子と遊んだりするのは、大体本当に友達としてだということをクラウドは分かっていた。だからザックスはこれといって、そういう女の子と特別な関係にはなったりしない。本当にサッパリしている。

一番ドロドロしてるといえば、実はクラウド自身だったかもしれない。

「ほら、機嫌直せって!」

そう言って肩に手を乗せてくるザックスに、クラウドはぶすっとしたままの顔で振り返る。

「じゃ、約束!」

「約束?」

きょとんとするザックスに、クラウドはズイッと寄って、こう言う。

「“好きなのはクラウド君だけです”、はい、復唱っ!」

「“好きなのはクラウド君だけです”…」

「よろしいっ!」

「…っていうか…」

ぽかんと口を開けたままだったザックスは、ふとガッツリとクラウドに抱きついて、ぎゅう、とその体を抱きしめた。

「お前って本っ当、可愛いなあ」

「ばっ…!可愛いとか言うなよっ!」

真っ赤になってそう抗議するクラウドだったけれど、威圧感なんて微塵も無い。それも当然である。

とにかくそんなクラウドがザックスは可愛くて仕方なかった。オトコなのは十分分かってることだし、そこら辺を履き違えてるわけでは勿論、無い。

ただ、こういうちょっとしたリアクションだとかが妙にツボにはまる。だから、ザックスはたまに意地悪でわざとヤキモチをやかせてみたりしていた。これぞ密かなる楽しみ…。

取り合えずクラウドの体から手を離すと、ザックスはパチンと手を叩いた。

折角買ってきたケーキがあるのだから、やっぱりそれを食べるべきだろう。

「クラウド、お前、何のケーキが良い?」

「ってか、何があんの?」

白い箱を開けてその中を覗き込むと、ザックスは「ええと…」などと言いながらケーキの名前を言い連ねた。

「まずー、イチゴショートだろ。それから、ベイクドチーズケーキ。で、モンブラン。あとはレモンケーキとクラシックチョコケーキとレアチーズ…」

「ちょっと待ったあっ!!」

いきなり待ったをかけたクラウドに、何だよ、とザックスは不思議そうな顔をする。隣では焦った顔のクラウドがいた。

「ザックス…一体、何個ケーキ買ってきたの?」

恐る恐るそう聞くと、あっさりと返事が返ってきた。

「八個」

「八個ぉぉ〜ッ!!?」

それ多すぎない!?、とすかさず突っ込みを入れるクラウドに、相手はそうかな、などと首を傾げる。それにしても小さな箱にそんなにケーキが入っているとはとても思えなかった。しかしその理由は、ザックスの口からするっと説明される。

それを説明するザックスはやっぱり得意げだった。

「甘いな、クラウド。これはな、ここらじゃちょっと有名なケーキ屋で買ったのよ。有閑マダムご用達の店だぜ?で、ケーキはちびっこいんだよ。だから、八個。OK?」

「いや、OK…って…」

確かに箱の中を覗いてみると、そこには上品そうな可愛いケーキがちまちまと並んでいた。いかにも高級そうである。そんなに高級そうなケーキなんか買ってこなくて良いのに、と思ったけれど、それはザックスの好意だったから何も言えない。

とにかく、分かったよ、と納得などをしてみせて、さっきの続きが再開された。勿論ケーキ選びである。

「で、何が良いのよ、お前?」

「ええと…」

ザックスの隣で白いケーキの箱を覗き込んで、クラウドは、う〜ん、と唸る。どれもそれぞれ美味しそうだし、どれも嫌いじゃない。

取り合えずは無難なところで、と、クラウドはショートケーキを選んだ。

「じゃ、俺ショートケーキ」

「えっ!」

その瞬間にザックスの顔が固まった。

クラウドは焦って、

「え、え、俺、別のでも良いよっ?」

と言ってみたけれど、ザックスは哀愁を漂わせながら、ふっと笑った。

「いや、良いんだ、クラウド…。だって今日はお前の誕生日じゃないか…なあ?」

「う、うん…まあ」

何だか妙にザックスがシブく見えるのは気のせいだろうか。

とにかくザックスはさも切なげな手つきでそのショートケーキを箱から取り出すと、クラウドにちょこんと手渡した。

それは本当に手乗りサイズである。可愛いけれど、可愛いにも程がある。食べた気になるんだろうかとクラウドは首を傾げた。ここら辺の有閑マダムってお上品なんだなあ、などとどうでもいい事に思わず感心してしまう。

「じゃ、いただきます」

そう言ってケーキを口に運ぼうとするクラウドを、ザックスはじっと見つめていた。それに気付いたクラウドは、口に入れる寸前でそれをストップする。

そしてもう一度確認の為に聞いてみた。

「…あの…ザックス。俺、他のでも良いんだよ?本当に」

「ふっ…バカだな、クラウド。誕生日の主役はお前だぜ?お前が選ぶものに俺様が拒否なんかできるわけないだろ…?」

「…っていうか、どう見ても目が切な気なんですけど…」

何の何のと言うザックスを疑わしげな目つきで見ながら、クラウドはあーん、と口にそのケーキを放り込もうとする。しかしその瞬間になると、ザックスはやっぱり口をぽかんと開けていた。

そんな訳でそれが気になってどうしても今一歩ならぬ、今一口が踏み出せないクラウドだった。

仕方なくそのケーキをザックスに渡すと、

「食べなよ」

と言う。

別にクラウドは本当に何でも良かったのだ。単に適当に言ったのがショートケーキなだけであって、特別思い入れがあるわけでも何でもない。

しかしそうやって切り返すとやはりザックスは強情だった。また誕生日だからとか何とか言い出して遠慮の姿勢を見せる。とはいってももう何だかショートケーキは食べてはいけない気になっていたから、クラウドは別のを選ぶよ、とサックリ言った。

「え、でもお前…」

「良いって!ザックス、食べなよ」

そう言って笑うクラウドの邪気は無い。それを見てホロリとしたザックスは、本当に小さいそのショートケーキを見つめて、何を思ったかクラウドにこう言った。

「クラウド、ちょっと口開けろ」

「はあ?」

「良いから」

「?」

何だか分からないままに口を開けてみると、ザックスは即座にその口の中にショートケーキを突っ込んだ。

「#$%&*〜!!!」

解読不明な宇宙語を発するクラウドに、ザックスはにんまり笑ってから顔を近づける。それから半分口の外に出ているケーキをパクリ、と自分の口に放り込んだ。

「ん〜美味いっ」

そう言って口をもごもごさせるザックスを見ながら、クラウドも口の中のケーキを消化させようともごもごする。そうしながら抗議するべくザックスを睨む。

「あのねえ!ザック…」

しかし抗議も途中のその時に、今度はしっかりとザックスの唇で口が塞がれた。

え、という顔をしながらも咄嗟に体を捉えられてクラウドは背後に倒れ込んだ。

ドサリ、と体が床にくっ付く。

「んっ、んんっ…!」

まだ甘い口の中は、ケーキとザックスの舌が混ざり合ってぐちゃぐちゃの状態だった。

とにかく甘い。

その中でクラウドの舌を巧みに絡め取るザックスに、クラウドは抵抗など全くしなかった。甘さがいっぱいで、それでもキスしているなんて何だか不思議な感じがする。何となく手をザックスの背中に回すと、ギュッとその服を握ってみた。

自分の上にいるザックスの重みなんかを感じながら、今日はもしかしてこのまま……なんて良からぬことまで考えてしまったり…。

いけないいけない!、そう思ってクラウドはブンブン、と頭を振る。

と、その瞬間に反動で唇は離れた。

「あ」

しまった、と思ってクラウドはザックスを見てみたけれど、別に怒ってるわけでも何でもないようだ。もしかしたら雰囲気を壊してしまったかな、と一瞬心配だったけど、そうでもないらしい。

ザックスはにんまりと笑いながら、

「ごちそーさん」

とクラウドに言った。

「な、何が…っ」

それはキスのことだったけれど、クラウドはどっちかというと自分の更なるイケナイ妄想の方にカアッと顔を赤らめた。

その変化にザックスは、「お」という顔をする。

「クラウドぉ〜、今、変なこと考えてたろ」

「なっ!何言ってんだよ!そんな事あるわけないだろっ」

「またまたぁ!や〜らしいっ」

「バカやろおっ!!!」

そんなふうに必死になるクラウドを見ながら、ザックスは大笑いしてしまった。

これだから止められない、と思う。

きっと俺も重症だなあと思うザックスであった。

 

 

END

 

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