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結局、こじんまりと販売されているパンを二つばかり購入したクラウドは、それをかじりながらザックスを待っていた。 何となく嫌な予感がするな、そう思った矢先、ザックスがやっと姿を現す。 「あ、ザックス!遅かっ……」 “たね”、と続けようとしたが、そういう訳にもいかなかった。口が塞がらなくなってしまったからには、言えないのも当然である。 「おお、待たせたな!」 ふう、などと息を吐きながらやってきたザックスの手には、ちゃっかりとわんこそばセットが乗っていたのだ。 「え〜!ザックス、まさか食べる気!?」 だって50杯だよ、とクラウドはかなり焦った声を出す。午後の任務の予定など知らなかったが、それにしたって問題があるだろう。 「いや、俺はやる!」 「あ、いや…そこまで意気込まれても…」 「止めるな、クラウド!」 「あ、いやその〜」 止めたってどうせ聞かないんでしょ、と言ってやりたい衝動にかられつつも、クラウドはそれを飲み込むようにパンをかじる。 「100杯に挑戦だ!」 「ぶっ!」 思わずクラウドはかじっていたパンを吹き出した。 「のわっ!引っかかったじゃないかよ〜!」 「ご、ごめん、つい…」 そんなにスタミナ定食が大切なのか、一度聞いてみたかった。 しかし、それもさることながら、どうも挑戦する事自体に嬉々としているようにも思える。 ソルジャーの仕事をサボっておいて、こんな所では気合を入れているザックスが、クラウドにとっては不思議だった。 けれど、何だかやっぱり面白い人だなあと思う。 気合を入れて箸をパチンと割ったザックスに、クラウドは「お腹こわさないでね」とだけ言っておいた。 何せ、一つの椀に入っているソバの量は、普通の二倍だったのである。 侮りがたし、神羅カンパニー社員食堂―――そう思ったのはクラウドだけでは無かっただろう…きっと。
午後一時、悲劇はやってきた。 どうせ午後もサボリ予定だったので、任務が遂行できなかったなどという罪悪感は無かったが、後悔は山の如く、である。 結局こうなるのか、と思いながら傍にいたのはやはりクラウドだった。 あの後、短時間で目標の100杯をたいらげたザックスは、念願のスタミナ定食予約権をしっかりゲットしたものの、その瞬間に壊れてしまった。 驚いたクラウドが、もう動けそうもないザックスを心配しながらも考えた結果は勿論、まず休ませる事であった。 医務室がありはするが、そこに行って説明するのも何だかどうかとも思う。 スタミナ定食が食べたかったけど売り切れで納得がいかず、わんこそば100杯食べ切りで次回のスタミナ定食を予約できるという事で挑戦してみました、などという説明をしろという方が殺生である。 それでも、取り敢えずは胃薬だけ貰っておいたクラウドは、どうしようか悩んだ挙句に自室に連れて行った。 ソルジャーと訓練生などの一般兵は立ち入れる場所が違う部分があったので、そんな事をしていいものかどうか迷ったが、最早そうする他無かった。 「大丈夫?」 自分のベットにザックスを寝かせながら、クラウドは本当に心配になって何度もそう聞く。 「む…無理…」 「…だよね」 聞く方が間違ってるかな、とクラウドは力無く笑った。 その隣でザックスは「ゔ〜」だとか「うげ〜」だとか呻いている。 わんこそばは意外と強敵だったらしい。 しかし、ザックスと同じく100杯をたいらげた奴も勿論いた。 ガタイがやたら良いソルジャーだとか、痩せの大食い系の人間が、ちょこちょこと次回のスタミナをゲットしていたのをクラウドは実際目にしている。 平然とした顔をしていたその人達から比べると、ザックスはまだ普通の人なのかもしれない。 「でも良かったね。次のスタミナ定食はちゃんと食べれるよ」 慰めじゃ無かったが、取り敢えずそう言っておく。何せ目的はそれだったのだから。 「スタミナ…ああ、そうだ…次こそ…うぷっ」 「うわっ!ザックス、しっかり!」 蒼褪めたザックスに、クラウドは手を差し出す。 あまり物を考えたくない状態だったザックスは、その手を無意識にがっつりと掴んだ。 「悪いな、クラウド…」 「気にしないで良いよ」 何だか病床の母とその娘の構図みたいだ、そう思ってクラウドは不謹慎だとはいえ可笑しくなった。 「でも、もうやらない方が良いよ、ザックス」 「ちょい…後悔…」 「でしょ?でもザックス、またやりそう…」 そうしたらまた自分が介抱するんだろうなあとクラウドは思う。 「胃薬、飲みなよ」 「いや、ちょっと…」 「駄目!飲んで」 「いや〜…あんまり薬っつーのは…」 「飲みなさいっ!」 「…うー…」 どういう訳か立場が逆転していた。クラウドはザックスを思って言っていたつもりだったが、ザックスの方はその言葉に、へへ、と笑い出した。 何か変な事言ったかな、と思うクラウドに、ザックスがこう言う。 「何かお前って、世話女房みたい…」 「世…、って!」 思いがけない言葉についカアッと赤くなったクラウドは、それ以上言わずに拗ねたように睨み付けた。 「はは、面白い奴っ」 「…ザックスに言われたくないねっ」 全くもってその通りである。
結局、ザックスはクラウドの手を握ったまま眠りについてしまった。 クラウドはどうにも動けず、そのままでいるしかなくなってしまう。
ザックスの寝顔を見ながら、クラウドもやがて眠ってしまった。
END
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2002/06/03 UP