ランチタイム

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「よっ!クラウド!」

午前の訓練を終えてホッと一息ついているクラウドに、そう声をかけてきたのはザックスだった。

「あ、ザックス。これからお昼?」

「まあな」

これは最近、恒例になりつつある会話の一つ。

最近のザックスは、この時間になると良くクラウドの前に現れる。

その大方の理由は昼食で、わざわざクラウドの予定に合わせては、こうして誘ってきていたのだ。

ソルジャークラスの人間は任務などの関係で、タイムスケジュールがまちまちだと聞いていたクラウドとしては、時間きっちりに現れるザックスがどうも不思議で仕方なかった。だが、未だにその理由は聞いた事が無い。

聞いたとしてもザックスの事だから適当にかわすんだろう、と、その程度しか思わなかったからかもしれない。

とにかく、それは日常の出来事になりつつあった。

「今日の日替わりランチ、何だったかな?」

もう既に食に頭がいっているザックスは、まだ着替えをしているクラウドの隣でそんな事を呟く。

「ええと…確か“スタミナ定食”じゃなかった?」

「え!スタミナ!?」

何故かザックスの顔が強張る。

「ど、どうしたの?」

あまりの様子にクラウドが驚きながらそう聞くと、ザックスは恐ろしい剣幕でクラウドの腕を掴んだ。

そして、慎重に言う。

「…良いか、クラウド。食堂まで……ダッシュだ!!」

「ええっ!?」

まだタオルなんかを首に巻きつけていたクラウドは、そう叫ぶも空しく、ザックスの腕に引っ張られていくのであった。

 

 

 

その日の神羅の食堂は、正に戦場だった。

神羅社員(兵士含む)の人気ナンバー1の日替わり“スタミナ定食”―――。

その威力はエリクサーをも凌ぐと専らの噂だった。…あくまで噂である。

とにもかくにも食堂は安い上に、美味な事で有名だった。

これは一説によると、幹部からの熱い要望で腕の良いシェフが雇われたかららしいが、一社員にとってみれば、そんな事は知った事では無かった。

美味ければ(ついでに安ければ)何でも良い!―――その一言に尽きる。

そんな訳で、スタミナ定食の日は、正に戦場だったのだ。

「うわ…」

人でごった返していた食堂を目にして、クラウドは嫌気が差した。

高給取りではないクラウドにとっては、食堂の隣でこじんまり販売されているパンでも良かったのだが、隣のザックスの目の輝きようを見ているとそうも言えなくなってしまう。

「うお〜燃えるぜ!」

そんな訳の分からない事を言いながら食券を購入したザックスは、その戦場の中に嬉々として消えていく。

クラウドはその後姿に慌てて、

「あっちの席で待ってるから!」

と声をかけた。

その声にちょっとだけ振り返って笑ったのが、肯定の合図である。

取り合えず人ごみを避けて、クラウドは静かな席へと移動する事にした。

…小さな溜息を吐きながら。

 

その間、食堂の受け渡し口では大変な騒動が起こっていた。

「スタミナ終了だよっ!」

これが事の発端である。

「何ィィィィ〜!!!?」

「そんな酷い!今日はこれだけを楽しみにしてたのに!!」

「っていうか、他のじゃ金足りね〜!!」

「もう駄目だ…きっとモンスターに殺されるぜ…スタミナ不足で…」

「嘘だ!幹部用にちゃっかり取ってあるんじゃないか!?」

「俺たちに寄こせ〜!!」

 

―――大変に馬鹿な事態であるのは容易に分かって頂けるだろう。

 

そう、スタミナ定食は見事、大盛況のうちに予定量を終了したのである。

しかしそれはそれで文句が多い。

実は毎回こういう自体が起こるので、食堂の人間も困り果てていた。

何故こうもスタミナ定食ばかりが騒がれるのかは分からなかったが、とにかくこうなるのは必至だった。

しかしこの日、食堂で働く人間も裏技を持ってきていたのだ。

日替わりが終わった後の、第二の日替わりとでも言おうか。

そう、それは―――。

 

「スタミナを食えなかった皆さんに朗報!次回のスタミナが予約できるという素敵なシステム付の食事を用意しております!」

 

その声は食堂中に響き渡った。

悔しさに涙していた者は顔を上げた。

見事スタミナをゲットした者も顔を上げた。

実はゲットできなかったザックスも顔を上げた。

クラウドはゲッソリした。

 

「何だ、その素敵なシステムは!」

 

誰もが知りたかった。

ザックスも勿論知りたかった。

クラウドは言わないでくれと祈った。

 

「発表します!」

どうして食堂で発表なんかがあるのかと疑問ではあったが、とにかくそれは発表された。

丁寧に垂れ幕状態になった布に、お世辞にも綺麗とは言えない字でデカデカと書かれている、それは。

 

“スタミナと同じ値段で食える!わんこそば50杯まで!!by神羅カンパニー社員食堂”

 

誰もが息を呑んだ。

わんこそば―――それは、限界への兆戦。

しかしどうだ。50杯限定である。

とはいえ、50杯も食べれば午後の仕事に差支えが出るだろうと思われるほど腹が一杯になる事うけあいだ。

その内容に“スタミナ定食とはスタミナ具合があまりにも違くないか!?”という突っ込みは誰もしなかった。というよりできなかった。

何故かといえば、その字の下に小さく書かれた文字を見逃さなかったからだ。

 

100杯食べたら、次回のスタミナ予約OK!今がチャンス!”

 

その文字に、スタミナ狙いだった者はゴクリと唾を飲み込んだ。

これをパスすれば、次回のスタミナは楽々ゲットできる――!

そう思ったが最後、そんな挑戦をせずとも次回スタミナ定食を食べれる可能性がある事などすっかりと頭から消えてしまう。

突如として“わんこそば”の注文が増えた食堂は、またしても戦場と化した。

しかし食堂の人間も用意周到だった。

スタミナが終わる前から、そば麺が大量に茹でられていたのはいうまでも無い。

そして、挑戦は色んな席で始まった。

 

 

 

 

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