レイズストーンの喜劇

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クラウド一行が北の大空洞を目指して旅していたある日のこと。

ちょっと小耳に挟んだある情報に惹かれたクラウドは旅の傍らある物体を探していた。

それは、レイズストーンだとかいうシロモノである。

これが何かと言うと、名前の通り、レイズの効果のある石だという。レイズというからには死人を生き返らせる効果があると言う事になるのだが、さすがにそれはとても珍しい石だから今迄誰も見たことが無いらしい。

見たこともないのに何で噂になるんだ、というツッコミはともかく、この幻想的で本当にあんのかどうかも妖しいレイズストーンをクラウドは密かにしめしめと狙っていたのであった。

勿論、コレには意味がある。

生き返らせたい人がいる。

それは、一緒に旅をしてきた例の少女であり、クラウドにとってはとても大切な人だった。

だからこそ、レイズストーンを手に入れたい…何としても。

 

そんなふうに思っていたクラウド、そのことを仲間には告げていなかった。

そんな事を言ったら、注意散漫だと罵られることはおろか、俺が私が、という輩がこぞってクラウドを蹴飛ばすこと請け合い…アリアリである。万が一奇跡的にクラウドがそれを手に入れたとしても、キラーンと目の光った仲間からリミット技で殺されることは確実―――――とてもじゃないが、言えない。少女を生き返られるどころか、自分がレイズを使いたくなるってなもんである。

であるからして、クラウドはとにかくひっそりとコトを進めていた。

そんな最中である。

チョコボファームで育て上げたチョコボを乗り回して愉快ツーカイに過ごしていたクラウドは、そのチョコボが突然バタバタと暴れだしたから、こりゃどうしたもんかと慌てて飛び降りた。慌てたもんだから派手に 腰を打った。…まあそれはどうでも良いが。

で。

どうやらチョコボは何か変なものでも食べたのか――――――口を半開きにしてバタバタしているではないか!

これはどうしたもんか?

「はあ…仕方無い」

クラウドは溜息を吐くと、意を決して両手でもってチョコボの口をガバッと開けた。

「クエ〜!!!」

「あ!バカ!噛むなって!…ったく。静かにしてろよ…」

クラウドは自分の手をチョコボの咽喉奥に突っ込んでみたが、いまいち暗くて咽喉の奥が見えない。もうこれは仕方無い―――――そう思ってクラウドは大胆不敵にもチョコボの口の中に頭を突っ込んだ。

「うわっ…」

ぬめ〜っとしている…かなり、ヤバイ。

…が、今更ひけない。

クラウドは気合を入れて手を奥の奥まで突っ込むと、やっぱり咽喉に引っかかっていた何物かをすっぽ〜んと引き抜いた。

その瞬間に、ちょっとばかり驚いたチョコボが口を閉じ、クラウドの頭をガブリとやってしまったのは仕方あるまい。血がぶしゅ、とちょっとばかり飛んだがそこはご愛嬌。…多分。まあ取りあえず命に別状は無かったので良しとしたい。

で。

取り出した物体といえば―――――――…。

「こ、これは…!!」

それは、光る宝石のようなものだった。色は青みがかっていて、少しくぐもっている。クラウドは慌てて虎の巻である解体真書を取り出してその物体が何なのかを調べてみたが、それはどこにも載っていなかった。

「一体何なんだろう…ただの石か??」

だけどソレにしては、ただならぬものを感じる…。

そう思って考え抜いた挙句、クラウドはある可能性に行きついた。

「も、もしやコレは―――――!!?」

まさか―――――レイズストーン…!?

確かに証拠は何もない。何も無いけど、今まで誰も見た事が無いのだから、違うとも言えない。何の情報も無かったということは、チョコボファーム付近に落ちていても不思議は無い。…不審ではあるけれど。

という訳で、クラウドはそれを自分のポケットにねじ込む事にした。

「お前は何も見なかった、何も見なかった、何も見なかった…良いなっ!?」

「クエ…」

共犯のチョコボにも先手を打っておく。抜かりは無い。

もしこれが本当にレイズストーンだったら…あの少女を蘇らせることができる。

そう思うと、クラウドの心ははやるのだった。

 

 

 

さて、提ズストーン(かもしれない物体)を手に入れたは良いが、果たしてどのようにして使うのかということをクラウドは知らなかった。というか、ぶっちゃけ誰も知らない。いや、ぶっちゃけなくても誰も知らん。

という訳だから、宿屋に入って、一人ベットの上に座っていたクラウドは、しっかり部屋に鍵をかけて閉めると、その物体に対して一人芝居を延々と続けていた。

これがどんな具合かといえば。

「◎▲☆@×――――――」

…この世の言葉じゃない呪文(らしきもの)を唱えてみたり、

「ブツブツブツブツ……」

…心の中で念じてみたり、

「はあ―――――ッ!!」

…気合を入れてみたり、

「石よ石よ石さん。この世で一番……」

…何やら変な問いかけをしてみたり、

「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン…」

…番組違うから!とツッコミを入れたい言葉を呟いてみたり、

「はあ〜…コシコシ…キュキュッ」

…靴磨きで磨いてみたりした。

―――――――が、一向にその石は、無視を決め込んでいた。勿論、この世で一番綺麗なのはクラウド様ですとお世辞も言ってくれないし、ましてや変身などさせてくれやしない。…あまりに報われない。

何をやってもそんな具合だったもんだから、クラウドは、もしかしてやはりコレはレイズストーンなのでは…という気になってきたものである。そうれあれば何をやっても何も起こらないのも頷ける。何しろどうやって使うかも未知の物体なのだから、こんなことを試した自分がバカだったと思うだけで済むのだ。

「でもなあ…普通のものとも思えないし…」

クラウドは少しくぐもった青い石をまじまじと見詰める。一体コレは何なのか。普通の石に過ぎないのか。

まるで恋人同士、見詰め合ってるかのようになると、クラウドはそっとそのレイズストーンを手で撫でてみる。そうして暫くは撫でていたが、何と不思議なことに…なのか、はたまた単に撫でていて摩擦されたからなのか、そのレイズストーン(らしきもの)はほんわりと暖かくなってきた。

じりじりと暖かさを増していくレイズストーン(らしきもの)…それはやがて、とても熱くなり、クラウドに、

「あつっ…!」

と言わせるまでになった。その熱さはまるで100度を超えた湯のようである。しかもそうして熱さが上昇するにつれ、不思議なことに青みがかっていた石はほんわり赤く変色した。

「ど、どうなってるんだ!?」

そうして呟いたクラウドの前で、レイズストーンはピカーッと閃光を放つ。

「わっ!」

眩しい!――――――――そう目を瞑った、その瞬間…。

何か妙な気配がした。

何だ!?、と一瞬にして目を開く。

すると、驚いたことに、そこには人影があった。その人影はゆうにクラウドの背丈を越している。

つまりそれは――――――例の少女ではない。

…何だ、願いが叶ったんじゃないのか……

そうクラウドは早くも気落ちしたものである。それどころか気落ちついでに、もう良いやと、クラウドはそれを見て見ぬ振りをしてサクッと寝に入ろうとした。実に無責任である。

「おーいおいおい!ちょい待てって!」

突然現れた人影は慌ててそんなふうにクラウドを呼んだが、無責任クラウドはそれをサクッと無視した。だもんだから人影は、何ということかクラウドにエルボーを食らわせる。

「喰らえ、ていやっ!!」

「いてえっ!!!」

マトモに喰らい、アイタタとベットに倒れこむクラウドに、人影は勝ち誇ったような笑みを漏らす。フフフ、と。

全く誰だよ!?と自分で呼び出しておいて今更それを確認するように振り返ったクラウドは、その人影を見た瞬間に驚いて目を見開いた。

そう…そこには、あまりにも懐かしい顔があったからである。

「―――――ザ…ック??」

おお、何と何年振りにその姿を目にしたことだろうか。

かれこれ…まあとにかく鬼のように久し振りである。

人影は、その人であることを証明するかのように、すっと笑った。

「おう、久し振りじゃんか、クラウド」

あまりに懐かしい声音で、クラウドは思わず涙が出そうになった。実際涙が出て、ザックスが霞んで、全然別人のように見えた。

「あれ…何だ。やっぱり別人か」

「ちげーよ!本人だし!」

サクッとツッコミを入れたザックスは、そこらにあった適当な物体…シーツをガシッと掴むと、クラウドの涙をサクサク拭いた。…これで視界スッキリ。クリアビュー。

「ザックス…死んだんじゃなかったの?」

おかしいなあと首を傾げながらそう言うクラウドに、ザックスは仁王立ちになってこう答える。

「おう、死んださ」

…威張るトコロか?

「で、何で此処にいるの?」

「は?何でってそりゃ、お前が俺を呼んでくれたからさ」

「え。俺が?」

―――――――呼んだ覚えはない…。

しかし、状況からするに、呼んだというのは例のレイズストーンのことであろうというのは確かである。

とするとアレは本物だったのか…。というか、本物でも本物でなくても、注文を間違えるとはどういった事なんだろう。何せクラウドは、例の少女を蘇らせたいと思ったわけで、ザックスを呼んだつもりは無いのだ。

――――――と思ったけれど、クラウドはそれは口に出さないことにした。

何故って折角出てきたのにそんな事を言ったらザックスは落ち込んでしまう。…っていうか、死人が落ち込むも何も無いかもしれないが。

しかし、クラウドもザックスと会えるなんて夢にも思っていなかったわけで、これはある意味嬉しいことだった。いや、注文内容は違っていたけれど、それを抜かせば…。

という訳で。

「いや〜ザックス!すっごい久々だな!俺、すっごい嬉しいよ!」

クラウドはあからさまに態度を変えた。…嘘臭い。

「あ、やっぱり!?俺も会いたかったわ!」

そのオカしさに気づかない旧知の友…さすが。

「ザックス!!!」

「クラウド!!!」

友は、お互い熱い再会の抱擁を果たした。

BGMは大爆音希望だったが、残念ながら隣室のバレットの大いびきしか聞こえない。

まあそこは妥協するとして、何しろ再会である。

例の彼女とは違う感動―――――それは、クラウドにとって、もっともっと懐かしい感覚を呼び起こさせた。

何しろこのザックス、神羅時代の友人なのだ。しかもクラウドは彼に大きな恩がある。

「いや〜俺さあ、マジ心配だったんだって。お前一人でちゃんと食えるかなあとか、お前一人で歩けるかなあとか…」

ベット脇、二人で隣り合って座ると、ザックスはそんなふうに語り始めた。そう言う間のザックスはしきりと「心配で心配で」を連発する。

クラウドはそんなザックスにやはり、じ〜ん、としてしまう――――――ああ…こんなに心配してくれていたなんて…・

「ザックス…」

「俺はさあ、お前のこと考えると成仏できんのよ。ってか出来てないのよ、今。ぶっちゃけ」

「―――――は?」

「いや、だから。俺、成仏できてないから此処に来たんだって」

「え…じゃあもしかして―――――――…」

――――――――ザ・霊……!?

クラウドは蒼褪めて、咄嗟に1メートルほど後ずさったが、ザックスが直ぐに1メートル擦り寄ってきたので観念して大人しくした。嗚呼、何という勇気だろうか。本来なら、此処でちびってもオカしくないといふのに。

しかしザックスは、霊なんだか復活した人間なんだか知らんがとにかく、なはは、と笑うとこんな事を言い出した。

「俺はな、実はお前にお願いがある」

「は?お願い?俺に?」

「そうそう」

――――――――普通、コッチがお願いする方なんじゃないか!?…そう思いつつもクラウドは、で、何?などと聞いてみる。

「ズバリ――――俺も連れていけ」

「―――――――はい…???」

一体、どこに?

黄泉の国にか?…そりゃ無理だ。

「ばっか。パーティに入れろってコトさ、パーティにさ」

「えええ!?無理だよ、そんなっ」

クラウドはさも当然そうにそう言うザックスに向かってそう叫ぶと、ムリムリムリ、と手を顔の前でパタパタ横に振った。

だって考えてもみろ…パーティの中に死人??

レイズで蘇るタイプの死人でもないし、教会に行ってチャララ〜と蘇らせてくれる世界でもない。無論、死人にアレイズをかけたって、死人は死人である。

 

 

 

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