Feel Easy

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ザックスとクラウドが親しくなっていくのは、傍目にも不思議なことだった。

そもそも一般兵とソルジャークラス1stが普通に一緒にいることなど、まずない。権力の渦巻く神羅のこと、その風潮はその中にも蔓延していた。だから大概のソルジャーというのは、自分がその昔一般兵だったにも関わらずソルジャー昇格すると共に彼らを見下すのが普通だった。

勿論、我関せずといった態度の人間も多い。

が、ザックスのように自ら仲良くなる人間はまず無いといってよかった。

「お前、ちゃんと希望出した?」

相変わらず気付くと近くにいるザックスは、その日も昼食の時間になってクラウドの元にやってきた。

がっつりとしたメニューを目前にしながら、ザックスは保護者かのようにそんなことを言う。

「出したよ。一応…その、ソルジャーで」

クラウドが神羅に入ってまだそんなに経っていない頃、一般兵に対しての希望調査が行われていた。

一般兵として神羅に入社したその後は、そのまま一般兵として警護の仕事につくか、治安維持部門特殊部隊であるソルジャーになるか、の2通りの選択ができる。これはすぐに調査が行われ、ソルジャー希望ならば、それなりの審査をパスし、更に訓練内容が強化されるシステムになっていた。

とはいえ、もちろんソルジャー試験というものがあって、それに合格しなければいけない。合格しなければ、いつまでたっても一般兵のままで、しかも更にソルジャー用のプログラムを受け続けなくてはならないので、一番辛い立場といえた。

勿論ソルジャーになってもそれぞれ昇格試験を受け、それをパスしなければならない。そうしなければザックスと同じ1stには到底届かないわけである。

「よし、ソルジャーな!期待してるぜ」

「でも1stなんて…大変だろうなあ…」

はあ、とクラウドは溜息をつきながら、パンをかじる。

一方ザックスの方はカレー+サラダを頬張ってモグモグしていた。

「そりゃ俺だって苦労したぜ」

「え〜…そうは見えない…」

ボソリと呟くクラウドに、ザックスはハハハと笑う。

事実、ザックスはトントン拍子でソルジャーの位置を手に入れた。さすがに1st昇格の時は苦労したが、他の人間から見ればその努力は小さくて済んでおり、やはりザックスはその素質があるとしか言い様が無かったのである。

そうした事実をクラウドが知る由は無かったが、何となくそんな気がしていた。

この人はデキルんだろうなあ、という…。

「ねえ、ザックスはどうしてソルジャーになりたいと思ったの?」

クラウドはそれがとても不思議だった。ザックスの性格ならばどこへでも適応できそうなのに。

その言葉にザックスは苦笑いを見せた。

「…何でそういう事聞くんだよ、お前は」

「え、ヤバかった…?」

聞いてはいけないことだったのかと思い、クラウドは焦ってしまう。だが、それはもっと別の意味合いを持っていた。

はあ、と溜息をつきながら、ザックスは後悔するようにこう言う。

「セフィロスがな、英雄だったんだよな…」

「え。じゃあザックスも、セフィロスに憧れてたわけ?」

「いや、憧れてたっていうか…何ていうか…」

スプーンをパタンと置くと、ザックスは思い出に耽るように宙を仰いだ。

 

 

 

ザックスがセフィロスの存在を知ったとき、もう既に戦争中だった。そんな中で、神羅の緊急の兵士募集に飛びついたザックスは、しっかり審査をパスし、戦争要員として派遣される手筈になっていたのだ。

だが、前線への命を受けたと同時に戦争は終結を迎えてしまった。神羅の審査では、しっかりとソルジャー試験を合格、更にクラス1st昇格した後だったというのに。

戦争の始まりのときから、神羅のセフィロスという人物は良くメディアに取り上げられていた。まだ英雄という代名詞すらなかったその頃でさえ、セフィロスの力は絶大だったといえる。セフィロスがいるのだから大丈夫だという意識がミッドガルに芽生え、それはしっかり報道され一般意識までになっていた。

誰しもがセフィロスに期待をしていたのだ。

だが、ザックスは違った。

そのセフィロスに――――――対抗するような気持ちがあったのかもしれない。

憧れが少しもないといえば、それは嘘になる。だが、それ以上に、負けたくないと思っていた。

それは勿論、勝手な意識だったけれど。

 

 

 

そこまでを細々と話した後、ザックスは重い溜息を吐く。

まさかこんなふうになるなんて…。

「それが今じゃあツッコミ入れるくらい親しくなっちゃってさ。どうなってんだかな」

それでも共同作業となればセフィロスにザックスというのが普通になりつつあったのは、周囲から見ればすごい話である。

「セフィロスと仲良いんだね」

クラウドは少し複雑な心境になった。セフィロスは未だ憧れの人だったし、ザックスはザックスで大切な人になりつつある。

その二人は仲が良くて、そして遠い存在に思えた。

「何だ、妬いてるのか?」

ザックスはそんなふうに言って笑う。

「ち、違うよ!」

「どっちに妬いてんのか知りたいけどな」

「だっ、だから違うよ!」

クラウドは思わずパンの中身のクリームが飛び出すかと思ったが、何とか無事だったらしい。

―――――と、思ったが。

何故だかザックスの方が咳き込みだした。

「大丈夫、ザックス!?」

焦るクラウドの前で「悪い悪い」などと言いながらザックスは視線を彷徨わせた。

それは――――――――クラウドをすりぬけて、その向こうへ向かっている。

「?」

ふっと後ろを振り返ったクラウドは、本当に驚いて思わずパンを落としてしまった。

「あ…」

そこには、黒いコートの男が…立っていた。

長く綺麗な銀髪に、端正な顔立ち。そして、そこか冷たい表情。

「よ、英雄」

躊躇いもせずにそう声をかけたザックスは、何事も無かったようにカレーに手を戻し始める。

だがクラウドはそういうワケにはいかず、まるで時間が止まってしまったかのようだった。

そんなクラウドには目もくれず、セフィロスは怒ったふうに口を開く。

「おい、ザックス。今日は昼前から任務に入ると言ってあっただろう?しかも俺との共同だぞ」

「そうだったか?」

意に介さないふうにそう言ってのけるザックスに、セフィロスは溜息を漏らす。

「あのな…。―――――もう良い。今日は俺一人で行く」

「あ、ちょっと待てよ!もうすぐ終わるし」

全然焦るふうでもなくそう言うザックスに、仕方無さそうに一言残し、セフィロスは去ろうとした。

その時、ふとクラウドと目が合った。

その視線は冷たくて想像した通りであったが、クラウドをどこか落胆させる。

「――――では、待ってるぞ」

振り切るようにそう言ったセフィロスは、そのまま去っていった。

あれが英雄、セフィロス。

クラウドの中では微妙な感覚が渦巻く。

憧れていた人を初めて目の当たりにした感覚。暫くはそれに縛られていたが、やがてザックスの声で我に返った。

「どうした?」

「あ――――うん、ごめん」

何が「ごめん」なのか良く分からなかったが、そう返してみる。

「何だ、憧れの人に会って、ビックリ?」

ザックスは、はは、と笑ってそう言う。

「そんなんじゃないよっ」

もー、などと言ってクラウドは膨れたが、目前のザックスの笑顔を見ていたら何だかホッとしてしまった。

そんなクラウドにザックスは一言。

「妬いた?」

クラウドは落ちたままだったパンを拾い上げながら、ぶっと吹き出した。

「う、うるさいなあ!」

「え〜、どっちに?」

にまっと笑うザックスの言葉にクラウドはぶすっとしてこう答えたのだった。

「さあねっ」

 

 

 

END

 

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