暇つぶしのデート
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 暇つぶしのデート。
 デート?…そんな言葉さえ馬鹿馬鹿しい。
 ともかく俺にとってはどうでも良い女とのどうでも良い時間。
そんな退屈な時間の中で俺は、有もしない色気をぶり巻いて、どうにか自分を売り込もうとしてる浅はかな女を見てる。
「ねえ、ザックス。この前ね、この人に告られちゃってえ…」
「ふうん。どんなヤツ?」
 丁寧に写真まで持ってきてるらしい女は、わざわざそれを俺の前に差し出したりした。というよりも最初から俺に見せようとしていたのがバレバレだ。
 写真の中にいる男は、何だかヒョロヒョロした訳のわかんねえヤローで、俺はハッキリ言って、コイツから告白されて自慢しているこの女の方がバカじゃないのかって気がした。
「どーお?」
 女がそう聞いてくるから俺は逆に質問してやる。
「どうってどういう意味だよ?この男が良い男がブサイクかって事が聞きたいのかよ?」
「えー…私、この人に告られたんだよ?何か思わないの?」
「別に?」
 何を思えっていうんだ。
 嫉妬でもしろって?…馬鹿馬鹿しい。
 そいつが良いならさっさとそいつの所に行けば良いじゃないかよ。さっさと行っちまえ。
 俺がそう思ってるのに女はまだしぶとくこんな事を言い出す。だから俺は本当にブチ切れた。あんまりにも浅はかなその言葉に。
「酷ーい!この人は、私のこと一番好きって言ってくれたのにザックスは違うの?」
 ――――――――――バカにも程がある。
「私はザックスが好きなのに」
 ――――――――――へえ、初耳。で、それは何番目に?
 
 俺は目前にあったコップを、思い切りその女の顔面にぶちまけた。
 
 
 
 好きだ好きだと簡単に口にする奴がいる。
 だけど、それを鵜呑みにすると痛い目に合う。
 好きだ好きだと簡単に口にする奴は、大体どこにいっても同じで、好きだ好きだの連発。結局"一番"好きなのは誰なんだよ?
 人に簡単に好きだというくせに、本当はもっともっと好きな奴がいるんだろうが。
 二番目?
 三番目?
 四番目?
 五番目?
 好きのバロメーターでいつでも何でも図ってやがる。自分が好きだといえばコッチが良い気分にでもなると思っているんだろうがそれは違う。簡単に好きだと連発して、簡単に人を傷つけられるようなそんな人間に、計られたくなんかない。
 大体にしてそういう奴は狡猾だ。
 だから俺は、狡猾を捻じ曲げてやろうと思う。
 どうせ、傷ついたこの心の痛みよりは随分と軽いだろう?
 そう、何をしたって。
 
 
 
「っあ!や、やだ…ザックスっ」
 叫ぶ声が俺の耳に届いてた。
 だけど俺はそれを聞かぬ振りして手荒い動作で事を進める。
 完全防音、こういう所は少ない。だけど俺は数少ないそこを探し出して、こいつを此処に連れ出しては、大人とは言えないその体を犯してた。
 夜で暗い中の出来事だから、誰も此処には来やしない。誰も助けてなんてくれない。どんなに嫌だと言ったって俺は止めるつもりなんか無いし、許すつもりもない。
 せいぜい届かない声を張り上げれば良い。
「ひ…どい!どうしてこんな事するんだよ!」
 俺の眼の前で必死に俺の手を防ごうとしている――――クラウド。
 クラウドの表情はいかにも怒った調子だったが、そんなものは俺には関係なかった。
「酷い、って?何が?大したこと無いだろ、こんなこと?」
「大したことないって…そんなわけ無いだろ…っ!」
「何で?もう飽きるほどセフィロスの奴とヤってんだろ?どうって事ないじゃん」
「ザックス…!!」
 俺は別段これといって笑いもせず、だからっていって怒りもせず、とにかく何でもない表情でクラウドの服を剥ぎ取った。
 その後は至極簡単、感じるトコをとことん攻めればそれだけで良い。どうせクラウドの奴は感じ始めれば大した抵抗なんかできなくなるんだから。
 だから俺は手っ取り早くスピーディなセックスを始めた。といってもクラウドにとってはお望みじゃないセックスだからこれは世間で言うトコの強姦ってやつと一緒かもしれないけど。
「ザッ…!…あ、…っう、ん」
 一気に攻め始めた俺の手に、クラウドは呆気なく落ちた。抗議の言葉もどこへやら、語尾は喘ぎ声一色。俺にとってこういうのは正に絶景って具合だ。
 何故か?
 答えは一つ、コイツは俺のモンじゃないから。
 さっきからクラウドが抵抗してたのは何もセックス云々って問題じゃない。まあそれが全く無いとは良い切れないけど、問題なのはそれ自体じゃなくて「俺とヤってる」ってことなわけだ。
 クラウドは、セフィロスのモンだから、だから俺は手を出しちゃいけない。
 そう、そんなことは分かりきってる。分かりきってるし、本当なら俺だって他人のモンなんかに手なんか出さない。そういうのはルール違反だってことくらい知ってるし、そこまで飢えてる気もない。
 つまり俺にとっちゃクラウドを犯す行為だって、別に俺の性欲がどうのっていう理由からのものじゃないわけだ。じゃあどういう理由かといえば、それもやっぱり一つだろうと思う。俺がこうしてクラウドを犯すことは確かにルール違反だし正当な方法じゃない。けどどうだ。コイツだって、充分勝手なコトしてるんだ。
 俺はクラウドの、そういう勝手なトコにムカついてる。
 理由はそれだけだ。
 ただ、ムカツクから。
「どうした、さっきまでの勢いは?」
 慣らしもしないのに簡単に指を受け入れるクラウドのアソコは大したモンだった。さすがの俺も感心しちまうほどに、どうやらあの英雄はこのクラウドを存分に食ってるらしい。 まあどうやってヤってんだか俺は知らないし知りたいとも思わないけど、此処まで開きき ってるとなると相当ヤられてるってコトくらいは分かる。
 大体クラウドはまだ大人じゃない。ガキも同然だ。
 その体が此処まで慣れてるなんて相当ヤバイし、ちょっと触っただけで抵抗からすぐさま喘ぎに転換されちまう辺りももう既に習慣なんだろうと思う。
 でも、そういうトコもムカツクんだよ。
 腹立つんだよ。
 ガキのクセして開ききっちまうほど掘られて、それでも純粋そうに「好きだから構わない」なんて言うコイツがムカツク。
 セフィロスにだったらどんなことされても良いって?
 …バカじゃねえのか。
 でももっと許せないのは、コイツがあの女と同じように軽はずみな「好きのバロメーター」を持って人を計ってるトコだ。
 セフィロスが「好き」、コイツはそう言う。そりゃ分かる、此処までヤられるほどだ、そりゃ好きなんだろうさ。でも疑問なのは、コイツは俺に対しても同じ言葉を吐いてきた事実があるってトコだ。
 ザックスが「好き」、クラウドは散々俺にそう言った。
 セフィロスが好き、ザックスが好き―――――じゃあその差異は?
 一番?
 二番?
 三番?
 四番?
 それともドン尻の五番?――――――――埒があかない。
 セフィロスが好きだといってセフィロスの奴とヤる。
 だったら、ザックスが好き、って言った代償はそれとおんなじだって構わないだろうさ。要するに「好き」なら同じ「セックス」をしたって構わないはずだろう。それをコイツは「酷い」なんて形容をする。だから俺はますますムカツクんだよ。
「ザッ…ク、あ…あ、ああっ!」
 セフィロスの奴にすっかり慣らされたソコに、無理矢理俺のを突っ込む。そっからどれほどピストン運動したって大してコイツの苦労は変わらない。だってそれほどに慣れてるんだ、当然だろう。
 何度も摩擦したソコからそれなりに気色悪い気持ちよさを得て、俺は何度かイきそうになったりした。でも俺は、絶対にイきたくなんかなかった。だからただひたすら自分をセーブして、クラウドだけがイクように腰を振る。
 時間の問題だ、こんなの。
「あ、あっああ…!!」
 セックスを始めてから僅か20分ほどで、俺の視界にはぐったりしたクラウドが見えた。
 
 
 
 強姦と同じ行為をした俺に、クラウドは当然近づかなくなった。
 あれから一週間、クラウドとは口をきいてない。勿論、あの軽薄な女とも口なんか利いてない。それはそれで俺の気持ちを安定させたけど、俺のムカツいた気持ちは未だ抑えきれてなかった。それが現実だった。
 それなりに怒りの開放をしたつもりだったし、それは多分あの女とかクラウドとかにそれなりのダメージを与えたんだって思う。でも、結局だからって怒りが消えるわけじゃない。だって俺がアイツラに「好き」って言われた事実は消せないことだ。まあ、今じゃ同じ言葉なんか吐けないだろうけど。
 そういう怒りの滞在は、俺の神経を常に逆撫でし続けてた。
 気持ちは安定したように見えても、心のどこかで未だにそういう怒りが滞在してて、それがピリピリ表面に出てきてるわけだ。そのせいか、今まで気軽に話しかけてきてた奴も今じゃ俺を避けて通ってる。そういう現実ってのは、ちょっとだけ俺の心臓をささくれ立たせた。
 そういう期間は結構続いた。
 一週間、二週間、三週間……その間の俺はただ仕事をこなし続けるだけの人形みたいな気分だった。どこか釈然としない怒りを持ちながら、かといってそれを発散する場所もなくて、ただただ目の前に差し出されたモンを処理してくだけ。至って簡単な生活だったけど、完璧に平穏無事じゃない分、表面上そうやって何もないふうに過ごして行くのは何だか嫌な感じがしてた。
 その間も任務では遂行ランクだとかいう評価がつけられて、俺はその度に「お前がいてくれて良かった」と上司連中に言われたモンだ。でも、俺が受けた評価と同じものを、他のソルジャーだって当然受けてた。きっとあの上司連中は他の奴らにも同じことを言ったんだろう、お前がいてくれて良かった、ってな。そう思うと、此処にも同じような汚さが溢れているような気がして、俺はますます嫌な気分になってった。結局「誰がいれば良い」んだか分かったもんじゃない。本当は、そん中の誰か一人くらい居なくても構わないクセに。
 そういう数週間が過ぎ、丁度一ヶ月が経った頃。
 その時期になって、俺の元にはとうとう変化が現れた。
 この釈然としない怒りの滞在を救ってくれる…そんな存在だったら良かったかもしれないけど、残念なことにそれは違う。俺の元にやってきた変化っていうのはそれよりも更に悪い、怒りの増幅ってヤツだった。その時の俺には、それは増幅以外の何者でもなかったんだ。
 いつも通り任務をこなして、「お前が居てくれてよかった」っていう決まり文句を聞いて、そっから家に帰ろうとしてた時。
 長々した神羅の廊下を歩いてた俺に、その影は近づいてきた。
 影はどっかで見たことのある形をしてて、だけど俺はすぐにその影の正体には気づけなかったモンだ。きっとそれは、俺にとってはタブーな影だったし、忘れた方が良い影だったからなんだろう。だけどその影は、そんな俺に怒りの増幅をさせるみたいにそろそろと近づいてきた。
 ―――――――それは、クラウドだった。
「ザックス」
 そう声をかけられて振り返った時、俺はその姿を見て、最後には眉をしかめた。そんなふうにした俺に怯んだのか、クラウドはどこかぎこちない表情をしてる。だけど勿論俺は、 その表情にフォローなんか入れやしなかった。
 だって当然だろう、俺は今でも許せないんだから。
 「好き」っていうバロメーターで人を計ってきたコイツが。
「…何だよ、何か用か?」
 笑いもせずにそう言うと、クラウドは萎縮した表情をして「あの…」などと切り出した。俺はそれを聞いて思わず噴出しそうになったもんだ。だってクラウドが俺に向かって「あの」だなんて考えられるか?いや、今までなら絶対に考えられなかった。
 コイツは俺に散々言ってきたんだ、ザックスが好き、ってな。
 それが今はどうだ。この差は?
「あの…少し、時間くれないかな?」
「時間?」
 一体何の為に?
 もしかしてまたあのセックスをする為に?
 意地悪くそんなふうに思った俺に、クラウドは全く別の言葉を言ってきた。そりゃ正当な、俺には考えられなかったような言葉を。
「話…話がしたいんだ。少しだけで良いんだ。…駄目、かな?」
「…へえ、話ね」
 俺はクラウドを見ながら、少しだけ考えた。
 クラウドが、俺に散々にされたクラウドが、一体何の話をするっていうんだろうか。まさか、あの強姦まがいのセックスに今更批判するわけでもないだろう。かといってセックスの催促ってわけでも当然ない。
 平生から蓄積してた怒りのせいで、そういうクラウドの進言すら、俺には何だか腹立たしく感じられた。この期に及んで何を言うのか、それが分からないイライラ感。別に怖いってワケじゃない。そういうわけじゃないけど、怒りが募る。
 だからなのか、俺はいかにもって感じに皮肉な笑いを見せて、クラウドにこう言った。
「今度は何だ?手のひら返したみたいに"ザックスの事は嫌いです"とでも言いたいのかよ?」
 俺はそれを言いながら、クラウドがどんな表情を見せるのかを楽しみにしてた。
 怒るか?
 悲しむか?
 それとも、相変わらず萎縮するか?
 俺はそんなふうにクラウドの事を予想付けていたけど、数秒後にクラウドの表情に表れたのはそれのどれとも違う、俺を愕然とさせるものだった。
 クラウドのヤツは、口をギュッと結んで、ただ俺を見てた。
 その表情はさっきまでの萎縮したようなのとも違うし、それよりどっか強さを含んだような、そんな表情だったんだ。つまりそれは、俺が楽しみにしてたのとは全く正反対の――――意思のある表情だった。
「……」
「……」
 暫くの無言。
 その中で、俺はただじっとクラウドを見つめてた。
 俺には良く分からない。
 何でそんな表情をするのか、出来るのか。俺が怒りを含ませて言った言葉にも怯まないし、かといってそんな俺を責めてるってわけでもない。それはただ、何ていうか…ビクともしない大木みたいな、そんな字の固まった強さの表情だった。
「―――――分かった」
 数分後、結局俺はそう返してた。
 そのクラウドの強い表情に俺はある意味愕然として、ある意味怒りを増幅させて、ある意味ではつまらなさを感じてた。でも多分、その中でも一番強かったのは愕然だろう。
「ありがとう」
 クラウドは、表情を変えずにただそう言った。
 まっすぐに俺を見ながら。
 
 話をするのにどこが最適かどうか俺にはよく分からなかったけど、思いつく所なんて一つしかなかった。それは俺の部屋だ。まああんまりいい場所とはいえないかもしれないけど、自分の部屋ってのは自分の王国みたいなもんだ。自分のルールに則った場所の方がやりやすいのは確かな話だ。だから俺はそこを選ぶ。
 クラウドはソレに対して何も言わなかった。ただ黙って俺についてきて、俺の部屋に上がって、俺の言うままに床に腰を下ろす。今や俺の王国の中に囚われた囚人みたいな存在なのに、それでもクラウドはそれを怖がってなかったみたいだ。あの日みたいに俺が何をするかなんて分かったもんじゃないってのに。
「で?」
 俺が簡潔にそう聞くと、クラウドはやっと口を開く。
 そっから、とうとう肝心の話とやらをし始めた。
「…ザックス。俺、ずっと考えてたんだ」
 クラウドは少し陰りのある表情を見せて、ぽつぽつと話していく。床に体育座りみたいになっているクラウドの隣で、俺は至って普通に椅子に腰掛けてる。時間はもう午後の九時頃でカーテンの向こうに見える空は暗い。
「俺はザックスを怒らせるような事を何か言ったんだろうなって。そうじゃなきゃ、ザックスはあんな事しなかったんだろうなって…だから」
 そこで一旦言葉を区切ったクラウドは、暫く置いてから、だからまずは謝りたいんだ、と続けた。
 椅子に座りながら前傾姿勢を取ってた俺は、そのクラウドの言葉を聴いて思わずバランスを崩しそうになったモンだ。勿論、本当に崩れたりはしなかったけど、それでも心情的には椅子から転げ落ちそうな気持ちだった。
 そんな俺の事なんかお構いナシで、クラウドは更にアンバランスな言葉を続けてく。
「俺、やっぱり…その、ザックスが好きなんだ。だから、何とか前みたいに出来ないかなって事をずっと考えてた。だけど俺、ザックスが何で怒ってたのか分からないから…どうにもできなくて」
 
 
 
 
 

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