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医務室に運ばれた俺は、そのぬくぬくベットの中でふう、と息をついた。 当然診察なんか受けたわけだけど、医者はさも当然といわんばかりの顔で、ちょっとずり下がった眼鏡なんか持ち上げながら、きっぱりこう言いやがった。 「ストレス性胃炎です」 すとれす…嗚呼、俺というオトコは実はこんなにもピュアな心の持ち主だったわけだ。 ちょっとした悲恋にこんなに心……基、胃を痛めて……。 そんなおセンチな俺を見ながら、クラウドはやっぱり心配した風な顔をむける。そんな時、心じゃなくて胃を痛めてる俺は、そんなクラウドが妙に可愛く見えてしまったりした。 おい、ザックス。 あれほど止めろと…。 胃が痛い理由を良く考えてみろよ! そう思ったけど、クラウドはほぼ犯罪的なあどけない顔で俺を覗き込んでくる。おかしい、さっき俺はピュアだと思ったばかりなのに、今度は今度で何だか犯罪者的な気分になってくる。 だってそうだろう? 心は正直者なんだから、嘘は付けない。 ……ハッキリ言って、好きなもんは好きだ。 でもそんなことを微塵も知らないだろうクラウドは、「あのさ」なんてこんな時だっていうのにシリアスモードバシバシな顔で何か言おうとする。 俄か俺は宅配ピザの兄ちゃんを思い出す。 昼に家に独りきりの人妻のところにピザなんか運んでおいて、良いじゃないですか奥さん、いや駄目よ駄目、そんな体は正直なもんですよ、とか何とか言って結局はドロドロ昼ドラに発展するアレだ。どこがどうこの状況に似てるかといえば、はっきり言って何も似てないけど、人妻ってところがポイントだ。 人様のものに手出しはいけないぜ。 だけどそんなもん、この際どうでも良くないか、というのが宅配ピザの兄ちゃんの言い分である。分かる、分かるぜ俺は!その気持ち! だか、どうだ。宅配ピザ屋はそこでココゾとばかりに襲い掛かるけど、俺は今そんな状況じゃない。襲われるならまだしも…って、そりゃ勘弁だけどな。 「ねえ、ザックス…俺、さ」 何だかクラウドは神妙な顔つきをしてる。 おいおいおい、勘弁してくれ。まさかこんな時にセフィロスとの関係を告白するつもりか? 俺はお前が好きなんだぞ! 俺は胃が痛いんだ! そう心の中で叫ぶも空しく、クラウドは何か決心したらしく、顔をふっと上げた。 どうやらとうとう口にするらしい。 嗚呼、お前の口から聞きたくなかったぜ、クラウド…。 誰か俺の背後に木枯らし効果をつけてくれ…。 「ではっっ、失礼しまっすっっっ!!!!」 そう言ってクラウドはふと目を瞑った。 と。 「ぎゃあああああっっ!!!何すんだ、クラウドおおっ!!!」 何と! クラウドはこともあろうに、俺の大切なザックスJr、をむんず、と容赦なく握りこんだ。 おいおいおいおいおいおいおいおいいいいいっっ!!! しかもその加減ったらない。痛いだろうが、おい! 「あああっ、ご、ご、ごめんなさいいっ!!」 俺の叫びに慌てて手を離したクラウドは、どうして良いか分からずにオロオロしだした。俺はジンジンと痛む股間に泣きながらもクラウドを見た。 一体何だ、何が起こったんだ。 っつーかどういう了見でそんなことしてきたんだ!? 「く、クラウド…お前〜っ」 「ご、ごめんなさいっ!だだだってセフィロスが…」 「あんだと!?セフィロス!?」 さすがの俺も堪忍袋の尾が切れた。プチッ、てな具合だ。 セフィロスが何だ! だってもあさってもねえ!しあさってだってゴメンだ! 俺は強引にクラウドをベットの中に引きずり込むと、体勢逆転してクラウドの上に乗っかった。もう宅配ピザ屋ザックスを止めれる奴は誰もいない。 ああ、もうどうにでもなれ! 昼ドラでも何でも良い! 好きなもんは好きだ。例え胃が痛かろうが股間が痛かろうが知った事か! 俺は強引そのものでクラウドの手を押さえつけると、そのA級犯罪並少年顔の中にある唇に自分の唇を押し付けた。 「んっ…っ!」 クラウドが眉なんか寄せて苦しそうにする。 嗚呼、もしかしてコレって強姦? そのまま舌で唇を割ってその中に侵入すると、クラウドの舌をがんじがらめにする。とにかく息もつかさぬ神業だった。自分でもビックリだ。 今まで溜まってた気持ちを全部ぶちまけるようにクラウドの唇を求める。 そんな俺をクラウドが薄目を開けて見てきた。それは別に責めるような目つきとかじゃなくて、何だか奇妙だ。 何だよ…そんな顔してっと、キスだけじゃすまさねえぞ…。 そう思ったのも束の間で、そろそろ解放してやろうという天使のような俺の心をよそに、クラウドは何故か俺の唇を離さなかった。それどころか離してやった手を俺の首にひゅるりと巻きつけて、自分の方に寄せたりする。 おい、これはまさか……宅配ピザそのもの!? とうとう人妻も本気になってしまうという、お約束展開なのか? しかし待て。その後には夫に知られて引き裂かれるという悲運が待ってるはずだ。この場合はセフィロスがそれで、俺達の間を引き裂くのは当然として、あの人の場合俺の体自体も引き裂くことうけあいだ。 嗚呼、誰か離脱マテリアをくれ……。 それでも俺は、求めてくるクラウドに真面目に返したりなんかしていた。そりゃ好きな奴がそうしてくれるなら俺は喜んで返すさ。100倍にして返してやるよ。 俺とクラウドはそんなこんなで結構な長い時間、キスをしていた。 俺はその間に色々考えてた。 元々どうしてこんなふうになったのか、とか、どうしてクラウドは、とか…そんな取り留めのない事だ。クラウド自身に聞けばそれはすぐにハッキリしただろうが、そうするにはこの唇を離さなきゃいけないわけで、何だかそれは勿体無い気がした。 だって、こいつはこの後はセフィロスの元に戻るんだろうからさ……。 でもさっきの行動は何だったんだ? セフィロスが、ってあの台詞は何だ? 良く考えると意味不明だよな。そう考えて俺は勿体無いながらもやっぱり一度唇を離してみた。 「クラウド…あのさ」 俺はちょっとモゾモゾとした調子でそう言い出す。けど、クラウドはそんな俺の事なんかお構いなしで、また強引に俺を引っ張った。 おい、人の話を聞けって。 だが、俺の動きは次の瞬間、止まった。 「ザックス……好き、です」 ――――え? 何? …今、何て言った? 「…も一度言ってくれるか?」 「だから…その。…好きです」 俺の耳はとうとうおかしくなっちまったのか? 胃の次は耳か? そんな混乱する俺を余所目に、クラウドは俺の胸に顔を埋めてくる。それがまた何ともいいじらしいというか…。 って、おい。どうなってるんだ。 だってクラウドはセフィロスとよろしくやってて、これは単に一時の気の迷いじゃなかったのか? 「俺、セフィロスに相談して…だから、さっきの…ごめんなさいっ!」 「なっ…!そ、相談っ!?」 そんな馬鹿な!そんなお約束展開なんて有りか!? じゃあ俺は勝手に勘違いして、勝手にやさぐれて、勝手に胃痛になっただけってのか? 俺は宅配ピザ屋じゃなくて、昼ドラでもなくて、夜のゴールデンタイム純情ラブストーリーだったって事かよ? 「何…だよ、それ…」 俺はその瞬間に一気に気が抜けた。というか魂が抜けた感じもする。だって今までの俺の悶々が全部、水の泡…ってか、勝手な思い込みだってんだぜ? 何だよ…じゃあ俺は…。 というか、クラウドは元々セフィロスとなんかできてなくて、それどころか俺のことを好きでいてくれたりなんかして、俺もクラウドの事好きで……ん、あれ? 俺達、両想い? 「クラウド。俺も…好きだった、ずっと」 そんな告白するような格好でもなかったけど、俺はズバリ気持ちを伝えた。クラウドはといえば、何だか泣きそうな、それでいて嬉しそうな顔をしていた。 俺達は無言で見詰め合う。 …やばいだろう、この状況…。 告白を終えて、両想いだって気付いて…で、今二人きりで、しかもベットの中。さらに俺はしっかりクラウドの上になんか乗っかってる。 非常に不味い。 「あの…ザックス、時間が…」 「え、あ…ああ」 そんな俺の下心を吹き飛ばすが如く、クラウドはそんな真面目なことを言った。そのおかげで何とか俺もイケナイ気持ちを切り捨てることができた。 ふう…セーフ。 ゆっくり起き上がったクラウドを、俺は強く抱きしめる。 もう戻れねえぞ、知らないからな。 そんな俺の心を読み取ったのか、クラウドは笑って、 「…良いよ」 と言った。
後日俺は思っていた。 そういえばセフィロスに相談したとかクラウドは言っていたが、相談して出された答えがアレか? っていうか…セフィロス!何教えてんだよ! 告白するにはどうしたら良いかっていう相談に、いきなり大切なJrを握れなんて誰が教えるんだ、普通!! 俺は誓ったのだった。 絶対セフィロスには近付かせねえ!!!
END
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