Can’t Stop !

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俺は本当にその日、憂鬱だった。

何故ってそりゃ、変な現場を目撃したからに決まってる。

っつーか大体それを見て憂鬱になってる俺って一体!?って感じだが、それはもう大体察しがついてる。何でこんなことになったのかはわからないけど、とにかく俺の心が驀進しちまったもんはしようがないだろうと思う。

本当に憂鬱だ。

というかイライラっていった方が正しいかもしれない。

因みに俺はどっちにいらついてるんだろう?

セフィロスか?それともクラウドの方なのか?

とにかくどっちでも良いけど、俺はイライラと憂鬱で胃が痛くなった。

ああ、誰か胃薬持ってこいよな、全く…。

 

 

 

俺が発見してしまった現場は、正に“そういう現場”だった。

こともあろうに俺がクラウドの為に新作菓子なんかを買ってウキウキしてた時だったからそれはもうバットタイミングだったろう。

たまたま通りかかった廊下から、中庭状態のその場所で俺は“それ”を見てしまった。家政婦は見たばりだぜ。本当に勘弁してくれって状態のまま、俺が突っ立ったまま動けなくなったのは言うまでもない。

その現場は、セフィロスとクラウドの……その、密会シーンだった。

おいおいおい、何だよそれは。俺はとにかく唖然とした。そんな所でとかそういう問題じゃなく、何でそうなるんだ、って部分がだ。

そりゃ俺は知ってた。クラウドがセフィロスに憧れて神羅に入ったって事も知ってたし、今でもそれが変わらないって事も知ってる。けど、じゃあ俺って何なんだって話になる。

俺はいわゆる架け橋みたいなものなのか?

セフィロスっていう憧れの存在の近くまで歩く為の橋なのか?

それは俺もその気持ちは分かる。大体俺もセフィロスに憧れてた部分は少なからずあるわけだし、やっぱりあの人は凄い。確かに強い。

だけど納得いくかよ。

クラウドと友達になったのだって俺だし、セフィロスだって訓練生なんてどうのこうのなんて言ってたんだ。なのに、ちょっと目を離せばいつのまにか仲良しって寸法か。

何だよ、それは。

気に食わないったらない。

とにかく俺はイライラした、憂鬱だった。両方大切な人間だったし、どっちも失いたくない。だけど、二人が密会なんかする関係ってのは許せない。それは違うだろうって思う。

だから俺はクラウドのところなんかには行かずに、その日は泣く泣く独りで新作菓子を食った。ひたすら食った。

けど不思議だ。クラウドとバカ話なんかしながら食うのとはワケが違う。

なんだかんだ言って、クラウドは……。

…まあ、良い。そんな事を考えるのも癪だから。

 

 

 

翌日、俺がまだ気分悪くしている時、全く不幸なことにクラウドと廊下ですれ違った。俺の姿を発見したクラウドは急に顔を明るくなんかさせて小走りで駆け寄ってくる。そういうのは良くあったけど、今はそれが何だか妙に許せない気がした。

まるで“俺に近付く=セフィロスに近付く”、みたいな感じがする。

そんな事、俺が手助けなんかするもんか。

「ザックス!お早う!」

相変わらずにっこりと笑ってクラウドはそう言ってくる。俺は取り合えず挨拶を返しておいたが、その笑顔が何だか恨めしかった。

そりゃ憧れのセフィロス様と仲良くなれた事が嬉しくて見せる笑顔なのか、ってズバリ聞いてみたくなったけど、俺はその衝動を何とか抑える。

クラウドはぱたぱたと俺に引っ付いて歩いてきて、何だかモジモジとしていた。

「あんだよ、クラウド?」

ふっと立ち止ってそう聞くと、クラウドはやけに慌てたような顔つきになる。何だか何かを隠してるような顔だ。

「あの、あのさっ、ザックス!今日って暇かな。あの、ちょっとで良いんだけど…」

一生懸命なクラウドの物言いに俺はそれでも冷たい目で返す。とてもじゃないけど今の俺にはいつもみたいな余裕なんてこれっぽちもない。多分クラウドは驚いたろう。

何せいままでの俺ときたら、クラウドにはとにかく甘かったから。

「悪ぃな。今日は忙しいんだ。俺、これでも一応ソルジャーなもんで」

ちょっと嫌味なんかこめてそう言うと、クラウドは途端に表情を暗くさせた。

「そっ、か…。分かった…」

「っていうか聞くけどさ、何か用事なのか?」

一応そう聞いてみると、クラウドはまた焦ったような顔つきになって、本当にこれでもかってくらいに一生懸命にこう言った。

「あの、俺ザックスに話したいことがあるんだっ。ザックスには言っておかなきゃ、ってそう思うことが…っ」

「ふうん?」

反対に俺の表情はめちゃくちゃ悪くなった。その言っておきたいことって一体なんだ?

それはもしかしてセフィロスとそんな関係になりました、ってそういう報告って事か?

俺はそう考えて、何も言わずにそのままクラウドに背を向けた。

そんなの、真っ平ご免に決まってんじゃねえかよ。

 

とにかくつまらない気分がやまない。そんな俺は今日はむしゃくしゃした気分を晴らす為に何か都合いい奴はいないかと携帯電話なんかを取り出した。

で、だ。そういう時に限ってそういう奴が電話なんかかけてきやがるわけだ。

俺は軽快な着メロで俺を呼ぶその電話のディスプレイを睨んでやった。

ディスプレイには、セフィロスの文字。はいはい、ってな感じだ。そりゃあ上司だけどさ、何か今はそんな気分じゃないんだよな。そう思って俺は携帯電話に頭を下げた。

「悪ぃな」

もち、電源OFF。さよなら、俺のヤキモチよ。

 

その夜俺は、今度は直にセフィロスに呼び出された。まあ確かにさぼりはさぼりだ。お小言だったとしても俺はそれをちゃんと聞かなきゃならない。それが部下ってもんだ。

会社組織ってのはホント、こんな時むちゃくちゃ嫌気がさす。

とにかく俺はセフィロスのところまで言って用件を聞いた。

俺はてっきりお小言だと踏んでたから、セフィロスの顔が別に普通どおりだったことにまず驚いた。何だよ、違うのか?

俺は何だか気が抜けた。

「で、何?」

俺は多分いつもよりか仏帳面をしてたに違いない。俺を見てるセフィロスが、特有の嫌〜な笑顔を見せる。…何だか妖しい。いや、いつものことだけどさ。

「お前、あの訓練生と今日…会わなかったか?」

「はあ?」

何だよ、そのネタか!

俺はぶっちゃけ気分が一層悪くなる。しかも目の前にいるのがセフィロスなせいか、また胃が痛くなった。アイタタ…だ、誰か胃薬…。

っつーか…傷心の俺に、渦中のアンタが言うのも酷いってなもんじゃないのか?

優しさをくれよ、優しさを!

そう思う俺に、セフィロスはこんなふうに言う。

「何だ、会わなかったのか。つまらんな。面白いものが見れると思ったのに…残念だ」

「…あんた、性格悪いって」

「性格?そんなもの、どうだって良い」

そう言ってまた嫌〜な笑いを浮かべる。何だよ、俺が傷つくのがそんなに面白いのかよ。どいつもこいつも…って約二名だけどな。

「おい、用件それだけなら俺、もう帰るぜ?」

俺はなるべくマトモな声でそう言ってやった。此処で声を荒げたら俺の負けだろう。

そんな俺にセフィロスは「ああ」と、もうでもでも良さそうな感じで答えてなんかくる。

…ちっ。

何だよ、いきなり出てきて奪って…っつーか、まあ仲良しさんなんかになっておいて、その態度かよ。そう思うけど、それでも強くは言えないのはきっとこの人が、あの英雄だからなんだろうな。全く、俺にも健気なトコが残ってるらしい。とはいっても俺の恨みが消えたわけじゃないし、やっぱイライラは募る。

ああ、誰か魔法マテリア持ってきてくれ。できればマスタークラス希望。

俺が部屋を出て行く瞬間に、セフィロスは

「ほどほどにな」

とワケの分からん言葉を吐いた。

おいおい、それはこっちの台詞だっつーのっ!いい加減にして欲しいのは俺の方だ。

だけど俺の心も、いい加減にしてほしかった…俺自身。

 

部屋の中でただただ俺は天井を見つめて考えた。

いつの間に俺ってこんなふうに思うようになったんだろう。

これは俺の心がアクセルふかしっぱなし状態だって事だ。

ブレーキなんてどこにあんだか俺には良く分からない。

つまり要約すっと、俺は…。

 

クラウドの事、好きなんだ……ろうなあ…。

 

相手は男だぜ?

しかもまだ子供だぜ?って俺もまだ大人ってわけじゃないけどさ。

しかも敵はセフィロスときてる。

…勝算、ゼロ。ナッシング。

やめとけって、ザックス。

どうせムリなんだからさ。あの人相手に、一体誰が勝てるってんだよ?

いやいやいや、でもちょっと待てよ。

もともと俺とクラウドが友達だったんだぞ?

だからそりゃ…って、だああああっっっ!!!

 

もう良い。

俺は寝る。

 

 

 

 

翌日、すっかり本格的な胃痛に悩まされた俺は、胃の辺りを押さえながら廊下を歩いていた。ああ、さすがに今日は医務室にお世話になろうかな。そんなふうに思う。

けどそんな時、やっぱり昨日と同じようにクラウドと出くわした。

全くタイミング悪すぎっ!

俺は昨日と同じクールさ加減でちょっとナーバスな俺を演出する予定だったが、どうもそんな場合じゃないらしい。何せ…胃、痛っ!

クラウドは「おはよう」と言った後に急激に不安そうな顔をしてきた。

「ザックス、お腹痛いの?」

何言ってんだ、クラウド!俺の抑えてる所が腹に見えるか?胃だ、胃!

俺はそう叫んでやりたかったけど、どうもそんな場合じゃなく、俺はよよよ…とその場に崩れ落ちた。

「え、ちょっと!ザックス!?」

余程慌てたのか、クラウドはそう叫んだ。それは廊下中に響き渡る。それはそれで良いとしても、その後にクラウドが今にも泣きそうな顔で、

「誰かあああ、助けて下さああいっ!!!」

と叫んでたのには俺もさすがにビックリした。…俺ってそんなに瀕死?

 

 

 

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