噂のネタ

------------------------------------------

 

 

最近ユフィとティファの間では、純愛ネタが流行っている。

どうやら下世話ネタに飽きて、今度は純愛ネタに走ったらしい。

二人はコソコソと何かを囁き合っては「ね〜」などと頷きあっている。女の世界は実にワンダーランドである。

そこに不運にも通りかかったクラウドは、いつかの失態を思い出して素通りを決め込もうと思ったものだが、どういうわけかこんな時に限ってティファがクラウドに話しかけてきた。不運も不運、ふーん、ってなもんである。洒落ではない、実にシャレにならない事態だ。

「ねえ、クラウド。私たちが死んだら、一生悲しんでくれる?」

「は?」

何だイキナリ。

そう思ってクラウドが目を丸くすると、隣のユフィがよよと泣き崩れ…る真似をしながらこんな事を言い出す。

「不治の病で余命一ヶ月なんだよ!?そんな私たちを悲しまないなんて…いくら何でも無いでしょ!?」

「ふ、不治の病って…」

そんな話はとんと聞いたことがない。

というかまず、そんな状態なら此処にはいないだろうと突っ込みたい。

しかしそこまで考えて、クラウドははっとあることを思い出した。

そう…そういえばいつだったか、二人は仲良く映画なぞを見ていたのだ。それは純愛も純愛で、確か女性が不治の病という設定だったはずだ。

なるほど、どうやら二人はその影響を受けているらしい。

そう思ったクラウドは、少し考える振りをした後、サクッとこう言ってのけた。

「死んだらレイズかけるし、異常になったら万能薬を飲ませてやるよ」

…それは実に尤もな意見だった――――――が。

「ひっどーい!!何ソレ!?愛が足りないんじゃないの、クラウド!最っ低!!」

「本当よ、クラウド!そんな物で直せるとでも思ってるの!?酷すぎる…!」

こんな男最低だとか何とか言われたクラウドは、その後二人からポーションやら毒消しなどをポンポンと投げられ、減ってもいないHPを強制的に回復させられたりした。

…何だか虚しい。

「な、何だよ…普通の答えじゃないかよ」

取り敢えず攻撃から逃れる為に早々とその場を去ったクラウドは、そんなふうに文句を言いながらも宿の部屋の中へと戻っていった。

どうも二人の会話にはついていけない。やはり女性の思考というのは難しいものなのだろうか。どうやらあの場合は、二人の期待する答え以外は口にしてはいけなかったらしい。

全く――――――…

「…女の子って分からないよな」

クラウドは、はあと溜息をついた。

 

 

 

その翌日のこと、相変わらず純愛ネタで盛り上がっている二人を他所に、クラウドとヴィンセントは一つ所で話し合っていた。

どうやら二人の純愛トークにはヴィンセントも気づいていて、それを不思議に思っているらしい。

「最近あの二人の間では専ら純愛が語られているようだな」

「ああ、そうなんだよ」

そう言われてクラウドは、昨日のことを思い出してため息などをつく。

「女の子って本当に分からなくってさ、俺、昨日散々言われたんだぜ」

「散々?一体どんなことを?」

首を傾げてそう言ってくるヴィンセントに、クラウドは事の次第を説明した。これこれこういう内容のことを問われ、こう答えたらこう言われたんだ、というように。

それを聞いて納得したヴィンセントは、なるほどな、などと呟く。

「女性は難しいものだな」

「だろう!?」

興奮気味でそう言ったクラウドは、まったく映画の影響を受けすぎてるんだ、などと言ってもう一度溜息を吐いたものだが、そうした後にはっとある事を思いついた。

ユフィとティファが純愛ネタを飛ばすようになったキッカケである映画―――――そういえば設定は不治の病だったはずである。

不治の病といえば悲劇の代表みたいなものだ。

そこに恋愛が入るとなればそれは最高の悲恋であって、最高の恋愛である。

「…あのさ、ヴィンセント」

クラウドはチラとヴィンセントを見遣ると、小さくそう切り出した。

それに反応して視線を合わせたヴィンセントは、何ともなしに「何だ」などと問う。

…そして。

「あのさ…もし、もし仮にだぜ。俺が不治の病とかだったら…ヴィンセント、どうする?」

「―――――――なに?」

シーン…

その場は暫し静まった。

がしかし、それはすぐにクラウドの声によって遮られる。しかもそのクラウドの声といったら少々熱っぽかった。

「なに、じゃなくてさ。俺がもし不治の病だったらどうするか、ってことだよ。俺は不治の病で余命一ヶ月なんだぜ?そうしたらヴィンセント、勿論一生涯悲しんでくれるだろ?」

「ってお前…それは映画か何かの見すぎだろう」

冷静なヴィンセントは実に正しいことをそう述べたが、クラウドときたらその答えにブンブンと首を横に振ると、

「違うよ!もしも、って言ったろ!」

などと興奮して全く聞く耳持たずである。

それは唐突なことだったから、当然ヴィンセントは呆気に取られてしまった。先程までは確かユフィとティファの話をしていたというのに、今度は一転自分のことを話し始める。別にそれはそれで良いのだが、話題が話題である。それではあの二人の純愛ネタとそうそう変わりが無い。

「ヴィンセント。勿論悲しんでくれるよな!?なあ!」

「あ、ああ…まあ」

あまりのクラウドの形相と気迫に負けたヴィンセントは、取り敢えずのところそう頷いた。

がしかし、その後についつい言ってしまった一言が悪かった。…そう、悪かったのだ。

「だが、レイズや万能薬で何とかできなくもないだろう」

「……」

―――――――――それは、言ってはならぬ一言だった。

そう…期待する答え以外はシャットアウトである場合、これはいかにもマズイ答えだったのである。

クラウドはみるみるうちに顔を怒らせていくと、最後にはダンと立ち上がってこう叫んだ。勿論ヴィンセントに向かって、高らかと。

「ああ、そうかよ!ほんっとヴィンセントって最低!!」

…その言葉に、ヴィンセントがぽかんとした事は言うまでもない。

 

 

 

またその翌日のこと、相変わらずユフィとティファは純愛ネタで盛り上がっていた。

しかし昨日までと違うことが一つあり、それは仲間が一人増えたという所である。

その仲間とは――――――男・クラウドだった…。

「永遠の愛を誓い合う二人…でもそこに大きな障害が…!でもでも二人はそれでも手に手をとって困難を乗り越えていくのよ!ああ、もうこれぞ純愛よね〜!」

「そうそう!それが分からない男なんて最低最悪!」

「だよな!俺もそう思う!恋人のピンチに呑気なこと言ってるような男はダメだよな!」

熱弁を振るうクラウドに、ティファが感動したように涙を潤ませる。それはまるでどこかの女優並の早さで、いかに純愛が素晴らしいものかを物語るようだった。…多分。

「クラウド…最高!そう、そうなのよ!どんな些細なことであろうと愛する人の身に何かあったら地の果てまで心配するのが筋ってもんよね!」

「ああ、そうだ!そうとも!!」

三人は暫し白熱しその場を騒がせたものだが、そんな本人たちは何時の間にか話がそれていることに気づいてはいない。不治の病のことなどすっかりどこかへ行っているらしく、その内「こんな男はダメ」だとかそんな話になっていく。それにまでクラウドが熱弁を振るっていたのは、果たして良い事なのか悲しむべきことなのか…ちょっと謎である。

男が男の好みを語ってどうする!?

―――――そんな疑問を持たないユフィとティファも、なかなかのツワモノであった。

 

そんな三人を遠くから見詰めていたヴィンセントは、はあ、と溜息を吐きながらもぽつりと呟いたものである。

「…クラウドは分からないな」

女心と秋の空、その言葉にクラウドの名前も刻み込んで欲しいと思ったのは言うまもでない。

 

 

 

END

 

back