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噂の人 ------------------------------------------
ティファとユフィの間では最近、少々下世話ネタが流行っていた。 「ヴィンセントはどうなのよ?」 「え〜、微妙」 そんな会話の中に、ふと通りすがったのはクラウドだった。 もう夜も更けようかという頃、女の井戸端会議に口を出す。 「まだ起きてたのか。何の話してんだ?」 ティファは隠すように、ふふ、と嫌らしい笑いを浮かべている。その隣でユフィが、クラウドの体を上から下まで舐めるように見回した。 男として身の危険を感じたクラウドである。 「な、何だよ」 思わず身じろぐと、ユフィはニヤニヤ笑いながら言った。 「クラウド、初体験いつぅ〜?」 「はあ?」 何だそりゃ、と思いながら素っ頓狂な声を出す。 「それ、私も興味あるな」 やや落ち着き目ではあるが、ティファもそんなことを言い出した。 全く女の会話だな、と思いながらクラウドはボソッと呟く。 「…15」 その答えにエッ、と二人は驚きの声を上げた。 「意外に早い!奥手だと思ったのに!」 「やだも〜!全然、予想外れた〜!」 「おいおいおい!!」 一体お前ら何の話してたんだよ、とクラウドは瞬時に突っ込んだ。すると二人は目を合わせながら「ね〜」などと笑いあっている。 ついつい口を滑らせてしまったクラウドは、やっぱり言わなきゃ良かったな、などと後悔した。 しかし言ってしまったもんは仕方ない。 「そういやさっき、ヴィンセントがどうとか…言ってなかったか?」 「ああ、それね」 思い出したように、ティファはそう言い、 「ヴィンセントはそういうの興味なさそうかなあと思って。ほら、何かプラトニックラヴ!…って感じじゃない?」 と続けた。 「そう見えるか?」 「見えるよ〜」 興奮気味にそう言うユフィに、クラウドは「う〜ん」と唸った。 ヴィンセントのことを考えながら、クラウドは思わずこんな事を口にする。 「…でも結構、ウマいと思うけどなあ…」 「え?」 「は?」 クラウドの意外な言葉に、二人はきょとんとしている。 はっ、として前言撤回しようとしたが、もう既に遅かった。 質問の嵐、である。 「ちょっと〜!どうしてクラウドがそんな事言える訳〜!」 「ナニナニナニ、ちょっと!気になるっ!教えなさいっ!」 「おわっ、ちょっ…!」 急激にわんやわんやと騒がれて、クラウドは慌てて二人を嗜める。 あんなふうに言って手前、どうフォローするべきかクラウドは困ってしまった。 どうにも分が悪い。 しかし目前の二人は…。 「うッ」 興味津々といった顔でじっとコチラを見ている。此処で話を付けずに逃げようものなら、勝手にリミットが溜まって、冗談じゃなくクリティカルで殺されそうだった。 ふう、と一息付いて、クラウドは腹を据えた。 実際、ヴィンセントとそんな関係にあるからこそ分かる事だったが、まさかそれは言えない。 あくまで作り話で済ませなくてはならない。 そう思って、クラウドはいかにも極秘情報とでも言うように二人にヒソヒソと話し出した。 「実は…」
翌日、ヴィンセントは女性陣の異様な視線に囲まれていた。 どうにも気味が悪い。こっちを見てニヤリと笑うティファとユフィ。 「何なんだ、一体…」 何が何だか分からないといった調子でそう呟くヴィンセントは、ふとクラウドの方を見た。 その視線に気付き、クラウドは明らかにぎこちない笑いを浮かべる。 「…お前、また何か言った?」 「ははは…」 空しい笑いだけがヴィンセントに返る。 一体何なんだ、そう思っているとティファがムフフ、と笑いながらヴィンセントの傍にやってきた。 そして肘でツンツン、と突付くと、 「聞いたわよ。やるわね、ヴィンセント」 と意味深に言って、去って行った。 「“やるわね”…?何の話だ?」 困惑し、ヴィンセントは首を傾げた。 その後ろで吹き出しているクラウドに気付き、ヴィンセントはくるりとそちらを振り返る。 「何を言ったんだ、今度は?」 珍しく笑ってそう言うヴィンセントの顔が、めちゃくちゃに怖かったのは言うまでもない。
「しょ…商売って…お前、それは」 「わ〜だから、ごめんって!」 平謝りするクラウドに、ヴィンセントは呆れた、というふうに溜息を吐いた。 夜、宿屋の一室である。 この話をゆっくり聞こうという趣旨で、その日は二人だけが同じ部屋に入った。 クラウドの説明は、一時凌ぎに言った言葉に過ぎなかったが、それはちょっと問題だったようだ。 「だって“ウマい”とか言った手前、そういうのじゃないとさ」 「だからってな、何で私が過去に体で商売しないといけないんだ。しかもお前、売れっ子って…」 考えて、嫌気が差す。 「そうそう。で、タークス前って事になってるから。かなり昔って事になるよな、“初めて”が」 「お前は〜ッ!」 ごめんごめん、と笑いながら謝るクラウドに、ヴィンセントはどさりと乗りかかった。 さらり、と流れる髪がクラウドの頬に落ちる。 「―――怒ってるか?」 少し真面目にそう聞くクラウドを見下ろしながら、ヴィンセントは「ああ」といつもの表情のまま言った。 「少し痛い目に合わせてやらないとな」 そう言葉を続けるヴィンセントに、クラウドは、 「“ウマく”、な」 と口の端を上げた。
ヴィンセントの嘘っぱちな過去は、ティファとユフィには完全に信じ込まれていて、それはどうにも落ち着かないものだった。 が、その事件によって、ヴィンセントは少し疑問をなった事があった。 それは。 ――――ウマい…のだろうか…、本当に? 「うーむ…」
男として、ちょっとした「気になる点」でもあった。
END
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