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で、その二人きりの密室はイッツ・パラダイスであった。 これでダブルベットだったら文句無いのになあ、などと既に文句を言いながらもクラウドはワクワクを隠せずにヴィンセントに抱きついた次第である。 「やったな!ヴィンセント!」 まさか二人きりの部屋なんて、夢にも思わなかった。おまつさえ、あんなことやこんなことまで許してくれるとわ。(※誰も言ってない) クラウドはこの素敵な部屋割りにすっかり上機嫌で、すっかり他の事を考えていなかった。だからヴィンセントがこう指摘した時、とっても驚いたのは言うまでもない。 「これはティファの作戦だろう?どこかで見ているとも限らないのではなかったか?」 「はっ」 ――――――そういえば。 しかしそうとなると、折角の二人きりの部屋もちっとも楽しくない。それどころかHすら出来ないではないか。そんなの言語道断だ!とヤル気満々のクラウドは思う。 「…待てよ。さすがに盗撮は出来ないよな」 クラウドは思考を巡らせた後、部屋を360度グルリと見回した。 そう…どこかに盗撮用グッズがあったり、こっそり覗けるスポットが無いかどうかをチェックする為、である。 ベットの下、タンスの後ろ、カーテンの裏、それどころか床の割れ目までチェックした。ベットの下からネズミ用トラップが発見された時には、別の意味で「おい!」とツッこんだが、まあソレを仕掛けたのはティファではないだろう。ネズミ取りに引っかかるようなクラウドではない。 という訳で、まずは隈なくチェックをしたクラウドだったが、クラウドチェック的には、ソコには問題無かった。 しかし頭を掠めるあのティファの言葉はやはり気にかかるところである。 “一晩、頭突き合わせて和解してよね” 「体を突き合わせて、だったらなあ…」 「―――クラウド。冗談を言っている場合では」 「あっ、ごめん。つい本音が」 そんな軽い会話の間だって、油断も隙もありゃしない。一体どこでどうやって見て聞いているか分からないのだ。しかしその手立ての推測すらできないとなれば、コレは最早お手上げだった。 しかし――――――じゃあ、みすみすこのチャンスを見逃せと…? …そんなの問屋が卸さないってな具合である。 だから。 「――――――よし、決めた」 何を思ったかクラウドはそう声を上げた。何がどう“決めた”のかさっぱりちんぷんかんぷんだったヴィンセントは、ハテナマークを浮かべながら「何がだ?」と当然のように問いかける。 すると、大胆にもクラウドはこんな事を言い出したのだった。いや、っていうかコレは最早大胆とかそういう問題ではない。無茶である。茶は無い。 「俺は無理!我慢できない!だからヤろう、ヴィンセント!!」 「はあっ!?」 何だ一体!!?? 焦ったヴィンセントは、その素敵な決意に行きついた経緯について説明しろとクラウドに言った。そりゃ当然である。 いきなり、ヤろう、と言われて「はい」とはいかない。 「ヴィンセント、俺は悟ったんだ。いや、今正に悟りの境地だよ」 そりゃ素晴らしいことだ。 「で、だ。俺、思ったんだよ。今まで俺達はついつい仲悪そうな態度を見せてきたけど、それは実際には嘘なワケだろ?」 「あ、ああ…まあな」 「ってコトは!もうこの際素直になるんだよ!実は俺達すっごく仲良かったんだ、って!」 それは素直じゃなくて開き直りの間違いじゃないのか?というヴィンセントのツッコミは、悟りの境地にいるクラウドには届かない。 「それどころか実は抱き合っちゃうような仲なんだ、って!」 人、それをカミングアウトと申す。 「そうすりゃティファ達だって、な〜んだ、そうだったんだ、って笑ってくれるよ!な!?」 その笑いは引きつり笑いに違いない。 「人間素直が一番だ…」 うっとりしてそう呟くクラウドに、ヴィンセントは此処との中でそっとツッこんだ。 お前それは単にヤりたいからだろう、と…。 しかしとにかく遠い悟りの境地に行ってしまったクラウドは、最早苦悩の現世には戻ってきそうも無かった。っていうか聞く耳持たん、という具合である。 此処でいくらヴィンセントが冷静に正しい意見を述べようともうそれは向こう側のクラウドには届かないらしい。 それが証拠に―――――…。 「…おい、クラウド。何してる…」 「え?ヴィンセントの服、脱がしてる」 脱がしにかかっていた…。 「…全く」 仕方無い、という言葉で片付けられようハズもないのに、それこそ仕方なくそれを受け入れたヴィンセントは、チラ、とドアに目を遣りながらもクラウドの服に手を伸ばした。 もう何日不振りなんだか良く分からないが、とにかく相当久し振りである。 仲間の手前どうしてもできなかったから仕方無い。それでも仲間が、二人の表面上の仲の悪さに注目し始める前は欺くのも簡単だったからコッソリ抱き合ったりしていた。 その時以来だから――――――クラウドにとっては涙がちょちょ切れるほど久々である。 「なあ…久々って、何か興奮しない?」 笑ってそう言うクラウドにひきかえ、ヴィンセントの方は冷静である。何せ現世に生きているヴィンセントとしては、ドアの向こうや壁の向こうが気になって仕方無いのだ。 例えばこの事実が知れてしまった場合、打撃は絶対に受けることになるだろう。クラウドを初めて抱いた時からそういう可能性は常にあって、ヴィンセントはそれを常に考慮に入れていた。 そこで同性同士でどうのこうのと罵られることは、実の所それほど問題ではない。少なくともヴィンセントはそれを知られても大丈夫だ、という自信があった。クラウドも多分その点に於いては同じであろう。 しかし問題はヴィンセントではなく、クラウドの方にあるのだ。 このパーティのリーダーたるクラウドは常に皆を引率せねばならない立場で、そういう立場であるクラウドがこの状況でこういう事をしていた、という方が余程波紋を呼ぶことになるだろう。 ティファ達が二人の仲を気にするのだって元を正せば団結というものが損なわれるのを恐れているからに過ぎない。だからそういう点から言って、こういった行為が容易にバレるのはやはり問題なのである。信頼と団結の意味に於いて。 ―――――――果たして分かっているのか、クラウドは? そう思うが、目前のクラウドはどう考えてもそんなものなど考えちゃいない。 正に開き直…素直なのである。 まあテコでも折れない奴なのだから仕方あるまい、そう諦めてヴィンセントがクラウドをベットに押し倒したのは10分ほど過ぎた後のことだった。 10分の間にすっかり衣類は消え去っている。 いつもヴィンセントの髪をたくし上げている赤い巻き布さえ剥いだ後だったから、正に身一つ、という状態だった。 薄い毛布をヒラリ、とかけて、その中で二人は抱きしめあう。あんまり久々だったから重ねた肌が妙にあっかたく感じられた。 「何かさ、俺の顔見ると興奮しない?」」 「は?」 また突拍子も無いことを言ってくるクラウドに、ヴィンセントは首を傾げた。クラウドは相当うかれているらしく、コロコロと笑いながら、俺はするんだけど、などと言った。 「ヴィンセントはホラ、何か綺麗だから。見てると興奮するんだよなあ」 「…誉めてるのか?」 「うん。誉めてる誉めてる」 「じゃあ礼を言っておこう」 ワケが分からないまま礼などを述べるヴィンセントに、クラウドは大満足だった。 単純…いやいや、これぞ愛ある証拠である。 「ヴィン…」 そっと絡みつけた腕でヴィンセントの首をがっちりと掴んだクラウドは、うっとりモードでヴィンセントに口付けた。 まあ此処まで来てしまったからには――――――という気持ちもあり、ヴィンセントはそれを受け入れる。 「んっ…」 暫し舌を絡ませてお互いを貪りあう。 まあそこまでは良いとして、そうしている間にもヴィンセントの体には異変が起こり、それがヴィンセントに溜息をつかせた。 異変というのは他でもなく…下半身のアレ、である。これがもし自然に勃ったというのなら別に良いのだが、こともあろうにクラウドの手に握られて強制的に勃たされたとなってはヴィンセントも溜息をつかざるをえない。 「…急かすな」 一言そう言ったヴィンセントにクラウドは、 「だって。早くしたい」 そう、実に素直に述べた。 「いや、それは分かっている。分かっているがお前、もう少し順序をだな…」 そう説教を始めそうなヴィンセントの口を、クラウドはキスをもって制御する。だからヴィンセントはその先を言えなくなってしまったものである。…侮りがたし、確信犯。 そうして又、キスが続く。その間クラウドはヴィンセントを興奮させるべく愛撫を続行していたので、ヴィンセントも同じくその動作をすることにした。 そんなこんなで数分―――――――。 すっかりうっとり顔がヤバくなっていたクラウドは、身をよじり、体でもってヴィンセントに要求し始めた。 そこからヴィンセントなりの順序でもって、行為が始まる。 首筋にキス、胸の突起にキス、と愛撫を繰り返す。こういう感覚は本当に久々で、クラウドではないけれどヴィンセントもやはり嬉しかった。嗚呼、忍ぶ愛。これはたまのセックスすら神聖化する素敵な忍耐。 「あ〜…ヴィン…良すぎ…っ」 「そうか?」 そりゃ久々だからだろう、と尤もなことを思ったヴィセントだが、このままいくとちょっぴり優越感を得られそうなので敢えてそれは口にせず。 「あー…やば…なんか気持ち良過ぎて、俺…」 「ん?」 「どーにかなりそうな…」 いつだってどうにかなっちゃってるだろう、とはツッこまない。 「これはヴィン…最早、悟りだよ…」 また悟りの境地かい。 「ヴィンももうかなり…感じてるでしょ?」 そりゃさっきから弄られてるからな、とは言えず。まあ、などと返してみる。 クラウドの悟りの境地にまたもや便乗できなかったヴィンセントは、やっぱりまだ背後が気になっていた。何って、ドアが、である。 実際周囲の壁も侮れないのだが、この部屋に繋がる部分としてやはりドアというのは気になるわけである。 クラウドは相変わらず悟りの境地にいて、もう無理、とか、ヤバイ、とか何とか、まだまだ頑張れそうな顔をしているくせにやたらと唸っていた。が、クラウドがそうして安心して(?)悟りの境地に行けること自体が最早怪しいのである。 ――――――おかしい… 監視しているのではないのか? まさか盗聴器は無いだろうか? いや、それとも糸電話かもしれない。 どこかの壁の向こうに紙コップがペタッと張り付いているのでは―――――…? そう思うとヴィンセントは、いまいち完全にノリ切れなかった。 嗚呼、折角久々のランデブーだというのに、これいかに。しかして油断は禁物、壁に耳にあり、障子に紙コップあり、である。 「あ〜ヴィン…もう良いだろ…前置きはこの辺でさ…」 「あ。…そうだな…」 少しばかり最中であることを忘れていたヴィンセントはクラウドの言葉で我に返る。そして、散々クラウドに弄られていた下半身を、とうとう要求された通りに埋めてみようか、と腰を少しばかり浮かせた。 ――――――が。
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