お菓子な騒動

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ほんのり懐かしい菓子屋。

それが近所に出来たのはもう一ヶ月ほど前のことだったろうか。

近所じゃその菓子屋、結構の人気であるが、しかしクラウド達は未だそこには行ったことがなかった。

中々その機会というのは無く……そして一ヶ月。

とうとう二人はその菓子屋に行くことになった。

と言っても近所なんだからそこまでの距離といったら大した事がなくて、ものの五分ほどで着いてしまう。そんな近くの割に今迄一度も行ったことが無いという方が不思議だったのかもしれないが、もののついでと言う事で二人は、夕飯の買い物の帰りにとうとうそこに寄ることになった。

 

 

 

カラン…

菓子屋のクセに妙に洒落た作りをしてたソコは、ガラスショーウィンドウに歴代菓子をディスプレイするという妙ちくりんなトコロだった。

ドアはどっかの喫茶店並である。

風流にもカランとかいって音を立てたドアの中に入っていったクラウドとヴィンセントは、正に夕飯の買い物の帰りという具合で格好もラフだった。ヴィンセントの手には大袋…因みに長ネギがニュッと延びている。コレ常識。

で、そんなヴィンセントの前を歩いてその菓子屋に入ったクラウドの方は何たることか手ぶらだった。ココに関係が垣間見えるのは言うまでもない。因みに財布まで持ってきていないという大胆不敵さ――――――――見習いたいものである。

まあソレはともかくとしてそんな日常の一コマに、その菓子屋に入った二人は、初めて訪れたソコに相当驚いた。

――――――――っていうか、コレ菓子屋かよ…!?

そう思うくらいその菓子屋は現代風且つスタイリッシュだったのである。しかも見よ、その菓子の並び具合を。

ぴっしりと整頓された一寸の狂いもない菓子達……お前、軍隊か?とツッこみたい。

しかもその品揃えといったら半端じゃない。所狭しと並べられた菓子のその種類、実に500種類。(推定)一体どっから集めてきたんだ、っていうか今でもそんなに作ってるんかい、と嵐の如く疑問が浮かんでしまうのは仕方無いことである。

しかしその疑問もどこへやら、クラウドはその種類豊富な菓子軍隊を見て目を輝かせた。

「すっげー!見てよヴィン。コレ、すごくない?だってコレ、俺がガキの頃のだぜ?」

「ほう?」

クラウドがある種類の菓子を指してそう言うので、ヴィンセントはそれを覗き込む。

そこには、ミッドガム、とある。

それはいわゆるフーセンガムというヤツであるが、その当時ミッドガルが栄え初めていたのにちなんで付けたという、かなり浅はかな商品名のガムだった。因みにこの製造主はこの他にもコスタ・デル・ソースとかゴールドソーダとかワケわからん商品も出していた。

…まあソレはソレとして、ヴィンセントはそんなものなど知らなかった。何故ってその頃ヴィンセントは棺の中で眠っていたからである。

「私としてはコチラの方が――――…」

ヴィンセントはミッドガムの隣に置かれていた菓子を指してそんなことを呟く。だから今度はクラウドが「どれどれ」と覗き込む。

「…何コレ??」

「私が子供の頃に流行った菓子だ。懐かしいな」

「え?え?ヴィンセントの子供の頃って??」

「確か60年ほど前の事だ」

「……」

――――――――生まれてないし!

クラウドはハハハと虚ろ笑いを浮かべつつ心の中でそう叫ぶ。60年前のことなんて知る由もない。ってか知ってたらスゴイ。

「何だかこの店は妙だな。クラウドの子供の頃の菓子でさえ今では珍しいのに、60年前のものまで…」

「そうだな」

その外見で60年前の菓子を知ってるヴィンセントの方がよっぽど珍しいと思うよ、とすかさず言いたくなったクラウドだったが、寸でのところでそれを止めると差し障りの無い返事などをしてみる。

しかし確かにヴィンセントの意見は頷けた。

何やらどうもこの店はおかしい。おかしいったって別にお菓子とかけているわけではない。本当に変なのだ。

品揃えが良いから評判というのは分かるが、皆は疑問に思わないのだろうか…。

この――――――――――気持ち悪いほどの菓子の山……。

と、その時である。

ガチャ、と音がした。

「?」

「?」

ヴィンセントとクラウドが同時にその音の方に顔を遣ると、そこには何と――――――…。

「モ、モアイ像…!!?」

「何と!!」

そこにはモアイ像があったのだ――――――――!!!

「バカもん!ちがわい!モアイじゃないだわさ!!」

…というのはどうやら間違いであったらしい。

それはどうやら、モアイ像に限りなく良く似た人間のようだった。それが証拠に足が動いているし、口も動いている。

モアイ像はグハッとデカイ口を開けて笑うと、

「ふっふ〜ん。良いだろ良いだろ、この品揃え」

と、途端に菓子自慢をし出した。…何のこっちゃ?

ヴィンセントとクラウドは顔を見合わせて首を傾げ合う。突然モアイが出てきたと思ったら、今度は自慢とはコレいかに。

しかしモアイはそんな二人のことなど目に入っていないらしく、菓子自慢をとうとうと始めた。

「コレは100年前の菓子だわさ。で、コレは50年前の。コレなんか一回出したのに売れなくなって即廃止になったヤツだわさ。で、コレは毒が混入してて発売禁止になった菓子で…」

…っていうか。そんな菓子、置いとくなよ!

そう二人が心の中で咄嗟にツッコミを入れたのは言うまでもない。

勿論、アンタ何歳だよ!?というツッコミも忘れない。

「ココはあらゆる菓子の墓場だわさ。子供たちに愛され、それでも見捨てられてった菓子の墓場なのだわさ」

モアイは突然しんみりし出してそう繋ぐ。

まあソレは言えてるかもな、そう思いつつ、うんうんとクラウドは頷く。けれど隣のヴィンセントは相変わらずネギをひょろりと出した袋を手にしたまま無表情である。

「ワシは菓子の墓場の守人なんだわさ」

モアイがえっへん、とか言いながらそう宣言するので、クラウドは、

「え。じゃあこの菓子売ってくれないの?」

と別のところを気にして質問した。そう、クラウドとしてはこの種類豊富な菓子を買わずにはいられなかったわけで、自分が小さい頃の菓子などは絶対ゲットしたかったのだ。

そんなふうに焦るクラウドに、モアイは一言、こう言う。

「勿論、売ってしんぜようだわさ。ただし、条件がある」

「じょ…条件――――…」

それは一体いかなるものなのか…!?

クラウドは生唾をゴクリと飲み込んだ。ヴィンセントもつられて生唾をゴクリと飲み込んだ。袋から飛び出たネギも生唾を飲み込み…たかったが無理だった。

で、その条件とは。

「うむ。――――――金を払うが良い」

「普通じゃん!!!!」

クラウドはすかさずそうツッコむ。ヴィンセントも思わず呆然とする。袋から飛び出たネギも思わずしおれた。…ら困るが。

モアイはキャッキャッと笑うと、店内の菓子軍隊をビシィッと指差してこう言った。

「まあまあ。でも見るが良い。ココの菓子にはホレ、値段がついていないんだわさ。ということは例えば…」

そう言ってモアイはクラウドが懐かしいと言った菓子、ミッドガムを手に取ると…

「例えばコレ。お前さんはいくら出して買うかな〜買うかな〜?」

そんなふうに言った。

クラウドはそう問われて暫し面喰らっていたが、ちょっとしてヴィンセントの方を見遣ると、ヒソヒソ内緒話をし始める。

「ヒソヒソ…なあコレ…あの頃定価1ギルだったんだけどさ…」

「それは安いな。まあ定価がそれなら、それで良いのでは?」

「そ、そぅだよな…ヒソヒソ…」

数分後、内緒話を終えたクラウドは、クルリとモアイを振り返って、ビシィィィと指を一本突き立てた。

「1!1ギルだ!」

高らかにそう宣言したクラウド―――その視線の先にはモアイがいる。モアイはクラウドの提示したお値段について、なるほど…などと神妙な顔付きで呟くと、最後にこう言った。

「なるほど、1ギルか…。まあ当時の定価だわな」

確かにその菓子、クラウド8歳当時に1ギルで発売されていたブツである。だからそれは定価で特に悪いということもない。

モアイは特に文句もなく、本当のところぼったくりすらできるのではないかと腹黒くも思っていたのは敢えて口に出さず、じゃあ1ギル払えばコレを売ってやろうと言うので、クラウドは取り敢えずその菓子を何個かゲットした次第である。

数年も前、今では見かけることもないソレをゲットできたコトにクラウドは満足であったが、しかし隣のヴィンセントはそうではなかった。

別に嬉しくもなんともない――――――というのも、ヴィンセントは子供の時ですら別にその菓子類が好きだったわけではなかったし、今だってソレを見て「懐かしい」以外はなんとも思わない。ましてや食べたいなんてあり得ない。

それよりも―――――ちょっと気にかかるコトがあった。

「ヴィンセントは何か買わないのか?」

「私か。私は別にな…」

ヴィンセントが普通にそう答えたとき、モアイがピクッと反応を示した。どうやら「別に」という言葉が気に喰わなかったらしい。

モアイは唐突にくわっと目を見開くと、叫び出した。

「帰れええええええ!!!!!」

ビクゥッッッ

「なっ…なななな??」

「何だ、突然」

二人がビックリして、それでも遠慮して半径50センチほど飛びのくと、モアイは菓子軍隊の総統よろしく、

「ココは菓子が好きな奴しか入っちゃいかんのだわさ!あんた、立入禁止だわさ!!」

そう言い、何とヴィンセントに指を突きつけ立入禁止を宣言した。そりゃもう高らかにである。

だもんだから、ヴィンセントは思わずムッとした。別に立入禁止でも何でも構わないが、何だか納得できない。何せココは店なのだ、店はモノを売る為にあるんだろうと言いたい。それに、ヴィンセントは気にはかかることがあって、それに関して言えば「お前には言われたくない」という塩梅だった。

隣にいたクラウドは菓子好きだったが、ヴィンセントがそう言われたことにはさすがにショックを受けていた。クラウドとしてはこの店、イッツ・パラダイスなのであって、立入禁止になんてなったら泣くに泣けない。

――――――――立ち込める暗雲…。

元神羅カンパニー総務部調査課VS…モアイ。

どんよりとしてきた空気を断ち切るべく、まず言葉をかけたのはクラウドだった。

 

 

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