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二度目の告白 --------------------------------------------------
ある時の出来事。 珍しくクラウドが読書を始めたりしたので、ヴィンセントは少しばかり驚いていた。ヴィンセントが読書をすることはそこそこにあったが、クラウドがそうする事はあまり無かったので、ヴィンセントとしてはいきなりインテリになったクラウドに疑問を持っていた。 どういったものを読んでいるのか全く検討がつかない。 どうも気になって、直接、何を読んでいるのか聞いてみたこともあったが、クラウドは何故か教えてはくれなかった。 そんな訳で、ヴィンセントとしてはクラウドが熱心に何らかの本を読んでいる間、特に話し相手もいないので同じように読書をしていたりしたわけである。 かなりのどかな空間であるが、それが返ってヴィンセントの集中力を欠けさせていた。 一体何をそんなに真剣に読んでいるんだろうか…? それがどうしても気になって仕方なかったのだ。 とはいえ、拒否されても何なのでやはりそれについてはクラウドに声をかけられないヴィンセントであった。
しかし、そんなヴィンセントにもチャンスはやってきた。 そう、それは――――――クラウドがその本を置き去りにしたまま出かけた日のことであった。
ふと目をやったそこに、いつもクラウドが読んでいる、しかも自分には絶対に教えてくれないその本が置いてある。 おかしいな、そう思いながらヴィンセントは首を傾げた。 最近のクラウドは何故か出かけるときでさえその本を持ち歩いているし、良く分からないがその執着心といったら凄まじいものがあった。だから敢えて何も言わなかったわけだが、そんなクラウドがその本を忘れていくなんて。 「…まあ罪にはならんだろ」 フォローめいた言葉を吐き出すと、ヴィンセントはそっとその本を持ち上げた。 丁寧にカバーなどがかけられているその本を見遣り、その後にそっとそれを開いてみる。 一ページ開いたそこには、こうあった。 「…“愛を伝える言葉”…?」 何だそれは? そう思って首を傾げる。何を突然乙女になっているんだろうかと思いながらもパラパラとページをめくると、そこには詩のようなものが連なっていた。何やらいっぱい文字が書かれている。 「なになに…?」 本にはこう書かれていた。 “初めてのキスは、二人の始まり。始めての夜は、二人の繋がり” 「なるほど」 それを手にヴィンセントは唸った。確かにそうだなあと思いつつ、そういえば初めてキスをしたのはどんな時だったろうかと思い、唇などをなぞる。 初めて抱き合ったのはいつだったろうか。もうとうに昔だが、それはとても大切な時間だったと思う。 パラリ、とめくったまた別のページにはこう書かれていた。 “少しでも寂しいと思うから、君にもう一度言おう。傍にいるんだよって、伝えよう” 「寂しいか…」 またしてもヴィンセントは唸り、まさかクラウドは少しでも寂しいなどと思っているんだろうかと疑問に思った。あまり問題はないように思うが、参考程度に気にとめておこうなどと思う。 またページをめくると、今度はこうあった。 “君に届けよう。大切な言葉を。もう一度” 「……」 それはどう考えても詩集であったが、何分恋愛に関する詩集なので、どうも自分達と重ねてしまって考え込んでしまう。 何でクラウドはいきなりこんな本を読んだりしたのだろうか。 その後も何度かページをぱらぱらやってみたが、それを読むたびに何だか引っかかってしまうので、最後には疲れてきてしまった。 何せ相手の心というのは分かりはしないものだし、それを読んでいるからといっても特別意味があるとは限らない。とはいえクラウドにこの本について聞いてみるなんていうことは、それこそ出来なかった。 何せクラウドときたらこの本のことを隠しているのだから。 「まあ、良いか…」 元々あったその場所にそれを置くと、ヴィンセントは、ふう、と息をついたのだった。
クラウドが帰宅したのは、夕方だった。 何か小さな紙袋を携えて帰ってきたクラウドは、すぐさま自分の部屋にこもると、ヴィンセントの話しかける言葉にも曖昧な返事を返すだけで、熱心に何かをしだした。 どうやらそれも極秘なことらしく、ヴィンセントが覗き込もうとすると烈火の如く怒る。 結局、悪かったなどと言いながらヴィンセントはぽつんと取り残されてしまったわけだが、チラリと見えてしまったそれで、ヴィンセントは何となくピン、ときていた。 クラウドが何をしようとしているか、が。 それはそれで可愛いなあと思い、ヴィンセントは少し笑みを漏らす。 何でそういう事になったかは良く分からないけれど、それに対して自分も何か返してやらないと、とは思った。 ちらりと見えたそれは、小さく綺麗な便箋だった。
クラウドが何かを熱心にしているので、二人がまともな会話をしたのはもう夕食時の事だった。クラウドが熱心にあの本を読み、そして机などに向かっていた期間は約三日。 という訳で、三日ぶりという事になる。 どうやらその熱心な作業は終わったらしく、クラウドは幾分すっきりした顔つきだったが、それと同時に少しそわそわしていた。 それを見てみぬ振りをしながら、ヴィンセントは他愛もない会話などを進めていた。しかしクラウドの様子を見ているうちに何となく例の本のことを思い出し、それについての疑問が少し思い返される。 聞いてみようか。 そう思いながらも、少しフィルタをかけるつもりで咳払いなどをしてみる。 …はっきり言って、そっちの方が余程ワザとらしい気もする。 「そういえばクラウド。お前、最近…」 最近、という言葉にビクッとしたクラウドは、 「な、何!?」 と、いかにもな返事を返す。余程ばれたくないらしい。 「あ、いや。その…最近、何となく寂しいとかそんな事は…あったり?」 「…何でそんなこと聞くの?」 クラウドの顔は急に訝しげに変化した。きっとクラウドはそんなタイムリーなことを聞かれて、ヴィンセントがあの本を見たと疑ったに違いない。これはまずい、そう思ってヴィンセントは急いでそれに理由をつけた。 「いやいやいや、そのな、やはり時が経つとそんなこともあるかもしれないかなとか、そんなような、まあ…なあ」 そんな意味不明な言葉を連ねたヴィンセントに、クラウドは「別に無いよ」とだけ答える。 クラウドはそのまま黙っていたが、しかし少ししてヴィンセントをチラリと見遣った。それから、食事の手を止めて、ポケットから何かを取り出す。 そしてそれを、ヴィンセントにすっと差し出した。 「ヴィンセント…これっ!!」 「え…?」 ヴィンセントは表面上驚いて見せたものの、心の中では「来たな」と思っていた。 そう――――――それこそ、ヴィンセントが気付いてしまった事実なのである。 それは、あの一冊の本を見て、それだからピン、と来たことである。 ヴィンセントが最後に見たあのページに書かれていた言葉からすると、どういう手段であれ、そういうことになるだろうと思っていた。 何せクラウドはここ最近、その本を熱中して読んでいたのだから、感化されていないわけがない。 ヴィンセントはとりあえず差し出された小さな手紙を受け取り、それからクラウドを見遣った。目前のクラウドは少し恥ずかしそうに唇を結んでいる。 「今、読んで良いのか?」 優しく笑いながらそう言ったヴィンセントに、クラウドはふるふると首を横に振った。 「駄目!後で…読んでくれよ」 「そうか。じゃあ、今は食事だな」 そう言ってヴィンセントはその手紙を自分の脇にそっと置く。 その手紙の内容は――――――大方、分かっていた。
翌日のこと、クラウドはヴィンセントから一通の手紙を差し出された。それはどうやらヴィンセントからの返事らしく、クラウドはドキっとする。 クラウドが渡した手紙は、ある意味、告白の手紙だった。 というか、再度の告白とでもいおうか。 本がクラウドに教えたのは、こうして幸せな日々の中にも、改めて気持ちを伝える場所があった方がいいということで、それを読んだときにクラウドはすっかりそれに感化されてしまったのである。 そうだ――――――普通にキスして、抱き合っているけど…もっと新鮮さを! そう思った瞬間に、クラウドはあの手紙を書こうと思った。 改めて、そこに気持ちを書いて、それを伝えようと思ったのだ。 そしてその手紙に対して、こうして今、返事というものがきたのである。 ドキドキする手で、クラウドはそれを広げる。 何と書いてあるのだろう。 感謝の言葉か、はたまた愛の告白返しか。 そう思って期待を胸に文面に目をやったクラウドは、結果、目を点にさせただけだった。 そして。 「ヴィンセント〜っ!!!!!」 ―――――叫びがこだましたのであった。
そこには、クラウドの書いた文章がそのままあった。 ……誤字・脱字の添削付で。
END
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