Daydream Map

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ねえ、どこか遠い場所に行こうよ。

誰もいない、二人だけの場所。

 

 

俺達は計画を練った。

大きな紙に、子供みたいに落書なみの地図を書いた。

そこはあの世界の地図なんかじゃなくて、見たこともない二人だけの世界の地図。

その中央に、大きな赤い屋根の家を書く。

「じゃあこれ、俺の家な」

そう言って俺は家の周りに自分の名前を書き込んだ。

「何だ。私は住ませてくれないのか」

そう不満そうに文句を言ってヴィンセントは俺の名前の隣に自分の名前を書き込んだ。

赤い屋根の家は、二人の家になった。

「近くには海なんかあれば良いな」

俺は家の下に海と浜辺を書き込む。

「じゃあ海の向こう側には山なんかが見えたら良いな」

山を書き込むとそこは、大自然に囲まれた場所に変身した。

きっと空気はうまいだろうな。

でもまだ家の上は何も無い。

「食料はどうやって調達するんだ?」

そう言うヴィンセントに、俺は自給自足だよと言ってみる。

だけどそれはすぐに却下されて、地図にはマーケットが追加された。

それは家より大きくて、俺は思わず膨れる。

「そんなに大きかったら沢山人がいて嫌だ」

そう言う俺に向かって、ヴィンセントは仕方無さそうに笑う。

「じゃあマーケットの半分は貯蔵庫にしよう」

大きなマーケットの真ん中に縦線を引っ張って、貯蔵庫が出来上がった。

だけどまだまだこの世界は淋しい。

「道が必要だ。あと、木と水と…」

ヴィンセントの指摘で、俺は沢山の道を作った。

それはいっぱい枝分かれしてて、世界は一気に広がる。

後は森と湖を作った。

それは二人の家からは少し遠いトコロ。

まだまだ足りないけど、ちょっとは環境ってやつができてきたみたいだ。

後は何が欲しい?

俺は他愛もない景色をいっぱい書いた。

二人の世界がいっぱいの色に包まれるように、淋しくないように。

その隣でヴィンセントは建物ばかりを書いて俺に文句を言わせては笑っていた。

それは二人だけの世界でとても晴れた空が広がっていて、とてもとても幸せだった。

誰にも邪魔されない、幸せな空間。

「たまには遊びに行こうな」

俺は沢山ある道を、一つづつ指でなぞった。

どこの道を歩こうか。

どこの道が一番楽しいかな。

「クラウド」

ふと、ヴィンセントが俺の指を止めて、楽しい計画は中止になる。

「何だよ?」

また膨れてそう言う俺。

だけど、地図を良く見てみるとその理由が分かった。

俺の指がなぞった道は、途中でプツリと途切れていたんだ。

丁度、二人の世界の端まで来てしまったみたいだ。

大きな大きな紙の上の、小さな小さな二人だけの世界地図。

その端まで来て、その先には何があるんだろう。

紙が途切れた向こう側には、何があるんだろう。

この二人の世界はこんなに晴れているけれど、その先の世界は何色の空をしてるんだろう。

「道は続いてないな」

俺は仕方なく、道を辿って赤い屋根の家に戻った。

「…そうだな」

ヴィンセントも、仕方無さそうに笑った。

じゃあ二人で、この家にずっといよう。

遠出はできないけれど、それでも良いよな?

 

 

色とりどりの二人の地図。

きっとその端の向こう側は、グレイの空をしてるんだ。

俺達を引き離す、グレイの空。

小さく笑いあってみる。

だけど、本当は知ってる。

 

 

きっとそこには、俺達はいないって事を。

そして、そこが“本当”だって事を。

 

 

 

 

 

END

 

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