LOVE LOVE |
| 真夜中のことである。 ふと目が覚めたクラウドは、仲間達を起こさないようにそっと起きだした。 今の時間なら、きっとあそこにいるはず。 妙な確信をこめて辺りを見回せば、やっぱり一人足りない。 宿にたどり着けなかった道程で、野宿を余儀なくされた一行は、森の中の空き地で休んでいる最中だった。 それぞれが寝袋や布に包まって眠る中、一人マントで暖を取る男の姿見えない。 クラウドはそっと笑うと、気配を伺う。 昼間なら様々な日常に煩いこの辺りも、今では全てが寝静まって静かに時を過ごしている。 耳を澄ませば、静寂の中にかすかな衣擦れが混じるのが判った。 クラウドは被っていた布を地面に落とすと、足音を殺して歩き始める。 かすかな衣擦れの正体に向かって――。 眠れない・・・。 こういう夜は良くあった。 体が疲れる程に精神は冴え渡っていく。 きっと、昔の警戒心がそうさせているのだろう。 腰の銃に手を伸ばす。 この辺りは安全とは言っても、一歩道を外れれば他と変わりがない。警戒するに越したことはないだろう。 玉の数を確認する。 大丈夫。まだ十分にある。 そろそろ玉がなくなる。近くの町についたら、アイテム類と一緒に買っておこう。 そう思いながら、ホルスターに銃を戻そうとした時だった。 かさり・・・。 草を踏みしめる音が響く。 ――敵か? 警戒を強めたヴィンセントの視線が、辺りを鋭く監視する。 敵ならば、一発でしとめないと仲間にも危険が及ぶ。彼等が休んでいる場所まで、そう遠くはないのだ。 戻そうとした銃を下に向けて握り締める。何処から来てもこの位置からなら構えまで時間がかからない。 足音に混じる草木の音。 風が凪いだ――その時。 「止まれ」 ヴィンセントは音の方向を見定め、銃を構えた。 「ヴィンセント?」 ひょっこりと現れる金の髪。 ヴィンセントは目を眇めた。 「・・・クラウドか・・・」 「悪い。驚かした?」 夜目にも鮮やかな白金の髪。下に青い瞳をきらめかせたクラウドが両手をあげて立っていた。 「もしかして、敵だと思った?」 悪戯そうに笑うクラウドに、重苦しい沈黙の中でヴィンセントは頷く。 「まぁ・・・こんな時間に起きてる人間なんていないしね」 クラウドは苦笑する。 その起きてる人間がいない時間に、自分とヴィンセントが起きている、という半ば捻ったジョークだったのだが、ヴィンセントは真摯に頷いた。 「体を休める時間だ。寝ているのが普通だろう?」 「だって、ヴィンセントは起きてるし」 「眠れない・・・精神が高ぶり、寝ようと思っても眠れない・・・」 「うん。その気持ちは判る」 これから先、危険はうなぎのぼりになる。それは、終わりが近付いているという証拠でもある。 「俺達は絶対に勝つ。勝ってホーリーを・・・。 大切な仲間が命をかけて見出してくれた、希望。 「そう、気負う必要もない。みんないる。心配しないことだ」 「心配はしてないけど・・・」 不安も、殆どない。 根拠はどこにもなかったが、絶対に大丈夫だという自信があった。 それがどこから来るのかは別として。 「ヴィンセントは、夜、殆ど寝てないようだけど、大丈夫なのか?」 「何がだ?」 「体力。昼間戦ってる時は全力だし、怒ると変身するくらいなんだから、相当体力使ってるだろう?」 「いや・・・変身後は体力は回復しているから心配はない」 「そうなのか? 便利な能力だな・・・」 クラウドはヴィンセントの隣に腰かける。さらに、ついでとばかりにヴィンセントの膝の上に寝倒れた。丁度、膝枕をしてもらう形になる。 男の足だ。筋肉は硬くて、あまり心地良いとは思えなかったが、さすがにその位置から見上げると、普段は髪に隠れて見えないヴィンセントの顔が、良く見えた。 そっと手を伸ばし、青白い頬に触れる。 「冷たいな・・・」 「元々体温は低い」 「それでも、秘めた想いは熱いよな」 ルクレツィアを想う気持ち。復讐を成し遂げた意志。 そして、最後の一人に向けて。 「頑張ろうな、ヴィンセント・・・」 「ああ、勿論だ・・・」 逆にクラウドの白い頬に触れて、ヴィンセントは覆いかぶさる。 クラウドの頭部がヴィンセントの髪にすっぽりと隠されたまま・・・二人は――。 |
| 終わり |
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