Long Time

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あれからどのくらい経ったかな?

懐かしい、思い出。

なあ、覚えてるかヴィンセント?

あの約束。

皆の中を抜け出して、二人でした約束。

 

 

 

 

 

ハイウィンドの中でくつろぐ面々をよそに、二人は陸地に降り立った。

こんな時になんだけど、と誘ったのはクラウドの方で、度重なるその誘いはヴィンセントを困らせていた。

皆が心配するぞ、という言葉も何とやらで、大体その二人の密会のような行動は長引く。

それも大体、クラウドの意思だったのは言うまでもない。

 

戦いの最中で、失っていきそうだった自分自身を支えてくれたのは、ヴィンセントだけでは勿論無かった。

仲間の誰しもがクラウドを支えてくれている。

それは十分承知していたが、こと寡黙なこの男は、どうしようもない程クラウドを安堵させた。

最初はとっつきにくいと思っていたが、それは時が経つにつれ、全てを受け入れてくれる静かな雰囲気がそう思わせるのだという事――――――それがクラウドにも理解できたのだ。

魅かれたのは―――自分だ、とクラウドは思う。

だからきっと、ヴィンセントに何かを望のは自分の勝手な我侭なのだ。

だが、急速に増していく想いを止める事など、最早クラウドには出来なかった。

我侭と分かっていても“返ってくるもの”、それが欲しい。

全てを受け入れてくれる事―――それすらがもう、大きなものだと分かっていたけれど。

 

何も無い荒涼とした土地は、実に見晴らしが良かった。

クラウドは区切りも何も無い大地の、少し突き出た地面に腰を下ろした。

「どうした。こんな所、何も無いぞ?」

不思議そうな顔をしながら、ヴィンセントも赤いマントをヒラリと避けながら腰を下ろす。

「そんな事ないさ。いるだろ、ヴィンセントが」

「…とんだロマンチストだな」

「夢が無い奴よりか、マシだろ?」

「そうかもな」

ふっ、と笑うヴィンセントは、クラウドの目にもう何度も何度も映った、見慣れた優しい表情をしていた。

それは他の人間から見れば冷静そのものに見えるものだったが、クラウドにとってみれば“特別”だったのだ。

「―――――で、何か用なのか?」

「あ…うん、そうだよな」

理由が必要だった、そう思い出してクラウドは思案する。

最早、会いたいというだけの理由では、目前の男は納得しないだろう。

それは常々ヴィンセントが言っていた事だった。

皆の側を離れるのならば、それなりの理由を持ってから呼び出すように―――と。

優しいとはいえ、厳しい一面も持っているこの男は、そういった所はキチンと区切りを付けねばならない事を知っていたのだ。

 

クラウドには特にこれといった理由も無かった。

あるのは、曖昧な――透明な部分を、不透明にしたい、それだけである。

好きと伝えるには、二人の関係は成り立ちすぎていた。

 

今更、そんな核心めいた言葉を吐くのもどうかと思う。

だから―――。

「なあ、ヴィンセントの望みは何だ?」

「望み?…何の事だ?」

途端、ヴィンセントは訝しげな表情になる。

折角の時間を悪い雰囲気にはしたくなくて、クラウドはもう少しフィルタをかけてこう言い直した。

「じゃあ、もし―――もしも、だ。願いが三つ叶うなら、何を願う?」

良くある話だ、と心の中で苦笑しながらも、それしか思い付かなかったクラウドは、取り敢えずその答えを聞いてみたいと思った。

問われたヴィンセントは、暫く沈黙していたが、やがて口を開きこんな事を言う。

「お前は?」

「は?」

「だから、お前はどうなのだ?」

反対にそう聞いてきたヴィンセントに、クラウドは動揺した。

ちょっと待て、と思う。確か聞いているのは自分じゃなかったろうか。

そう思ったが、相手の目には有無を言わさない光が宿っており、仕方なくクラウドはボソリと自分の“望み”を言い始めた。

 

「まず一つは――――過去への決着をつける、事」

それはもう目前に迫っている。

「右に同じだな」

 

「二つ目は――――皆が幸せになる、事」

「何だそれは。お前、本当にそう思っているのか?」

信じられないといった目を向けるヴィンセントに、クラウドは「当然だろ!」と反論する。

多少、偽善めいている言葉だったが、それは真実だった。

しかしその為には、まず一つ目の望みが叶うことが条件といえるだろう。

今まで払ってきた多くの犠牲の為にも―――。

「まあ、そうかもしれん。私も同じとしよう」

 

「では最後だな。三つ目は?」

そう促す言葉に、クラウドは躊躇いがちにヴィンセントを見た。

望みなどいくらでもある。その中でも大切だった事は、言って良い物かどうかの判断が非常に難しかった。

「三つ目は―――」

それでも最後の関門を突破するかのように開いた口は、三つ目の“望み”を告げる。

 

「三つ目は―――このままでいられる事。…願い、かな」

 

視線が交わり、それは沈黙を生んだ。

やはりその言葉は間違いだったのかもしれない。

そう思っていた時に、ヴィンセントの三つ目の願いは告げられた。

 

 

「私の三つ目の“望み”は、誰かさんの望みを叶える事だ」

 

 

それは“望み”から“約束”に姿を変えた。

 

 

 

 

 

あれからどのくらい経ったかな?

なあ、覚えてるかヴィンセント?

あの約束―――やっぱりあんたは叶えてくれたな。

好きだなんて言葉は必要じゃ無かった。

そんな事は今更言うもんじゃない。

そう思ってた。

なあ、今、何を考えてる?

隣で眠りながら、一体何の夢を見てんだ?

俺の夢…、なはず無いか。

夢の中くらい開放してやんないとな。

あれから随分と経って、あんたもさすがに疲れた顔が似合うようになったけど、

やっぱり綺麗な人のままだ。

俺は隣にいて良いのかって思うよ。

喧嘩は耐えないけど…。

って、昨日は何が原因だっけ?

一昨日は何が原因だったかな?

まあ、良いや。

俺はヴィンセントの隣にいるだけで嬉しい。

喧嘩したりしても、どんなに歳くっても、

それでもずっと一緒の時間を共有していけるなら。

 

ああ、まだ目は覚ますなよな。

もう少し、考えていたいんだ。

あの時の約束と…それを守ってくれたヴィンセントの事を。

 

俺、ずっと言ってみたかった言葉があるんだ。

…声に出したら、起きちゃうかな?

どんな顔するだろう。

「どうしたんだ?」って不思議そうな顔をするかな?

うん、それでも良いかもしれない。

 

好きだ、ヴィンセント。

それから…。

 

 

 

“ありがとう”

 

 

 

 

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2002/06/12 UP