「はい、ヴィンセント。これやるよ」
「ん?何だこれは?」
「これ?これはな、切れたら願いが叶うっていうお守りみたいなもんでさ、腕にはめたりするんだよ。紐買ってきて俺が作ったんだ〜」
「ほう…。しかしこのいかにも頑丈そうな紐が切れたりするものなのか?」
「うん、だっていつも付けてればさ、摩擦とかで弱くなるだろ。だからいつかは切れるようにできてるんだって」
「そうか…」
「じゃあ付けるな。…ええっと…こうしてこうして、こう……良し!完成!」
「…色合いが微妙だな…オレンジに水色にカーキ……」
「ん、何か言った?」
「いや、別に」
「じゃあヴィンセント。願いをかけてくれよな」
「願いか…何が良いだろうか…。ん、クラウド、お前も手にはめているのだな?お前も何か願掛けしたのか?」
「ああ、俺もした!俺は勿論ヴィンセントとの事だぜ」
「私との?願掛けするほどのことなどあるのか」
「え〜だってさあ、やっぱそういう時はお約束だろ?俺はヴィンセントと一生幸せでいられますように、って願ったんだ〜!」
「一生、って……切れた時に叶うかどうか分からんような内容だな、お前は」
「失礼な!これが切れた時、ヴィンセントからプロポーズが来るって事になってんだよ。だから一生なの!」
「プ、プロポーズ……??」
「そうそう。給料三ヶ月分の超豪華リングを手にヴィンセントが言うわけだよ。”私の一生の伴侶になってくれ”って……はあ、俺は何て罪な男なんだろう…ヴィンセントにそんなことを言わせるなんてっ!」
「え。誰もそんなこと言うつもりは…」
「(トリップ中)しかもその時にはヴィンセントに憧れる女の子もわんさかいて、でもヴィンセントは俺の為だけに彼女達に冷たい態度を…ああ、良いんだヴィンセント。俺は嫉妬なんてしない…彼女達にも優しくしてくれ……俺はそう強く訴えるけどヴィンセントは…」
「あ、そういえば今度ティファに食事に行こうと誘われていたな」
「何っ!?」
「しかも、たまには二人きりで話しでもしてみないかと言われ…」
「駄目駄目駄目駄目ーっ!!何考えてんだよ、駄目に決まってんだろ!無理です駄目です許せません!!」
「…おいお前、今さっき”俺は嫉妬なんてしない”って言ってなかったか?」
「そんな事言ってない!言ってないけど嫉妬もしてない!」
「………」
「とにかく駄目です、二人きりで食事なんて!押し倒されでもしたらどうするつもりだよ!」
「わ、私が押し倒されるのか…!?」
「とにかく駄目ーっ!!―――――…ヴィンセント、そろそろ願い事かけろよ」
「ああ、そうか。その話の最中だったな。…そうだな、願いか…願い願い……」
「(コソッ)…クラウドにプロポーズ…クラウドにプロポーズ……」
「うっ!…何だか囁く声が…」
「(コソッ)…クラウドにプロポーズ…クラウドにプロポーズ……」
「うっ………」
「(洗脳中)」
「(思考中)」
「(まだ洗脳中)」
「―――――…良し、決めた」
「お!決まった?なになに、何の願いをかけたわけ?」
「いや、それは秘密だ。願いことを口にしたら、大概叶わないからな」
「ええ?でも俺めちゃくちゃ口にしちゃったぜ?」
「ああ、だからその願いは叶わないかもな」
「ひでえええ!!!何だよ、酷いよヴィンセント!じゃあヴィンセントのも教えろよ、ずるいぞ!」
「駄目だ、私は秘密だ」
「酷い酷い酷い酷いーっ!!俺のプロポーズ作戦を台無しにしといて!」
「さてどうだかな…」
二日後、荷物運びの際にヴィンセントの腕の紐はプッツリ。
「ん、ヴィンセント。どうした?」
「ああ、例の紐が切れたんだが」
「え!凄いな、俺まだまだ頑丈だぜ。…で、願いは叶ったか?」
「さあ…どうだろうな」
「何だよ、みずくさい。結果くらい教えてくれよな。俺はまだまだプロポーズまで先が長いってのにさ〜」
「………」
「で、で?どうなんだよ?」
「うむ…どうやら叶わなかったみたいだな」
「え?どういうこと?」
「いや、別に」
ヴィンセントのささやかな願いは叶わなかったらしい。
…無念。
「…クラウドがもう少し落ち着いてくれればと思ったのだが…どうやらそれこそ無理そうだな」 |