BAD ITEM  

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「風邪?」

嫌ねえ、こんな時に、などとティファが溜息をついた相手は、ヴィンセントだった。

ここ二、三日の間ずっと気分が優れなかったヴィンセントは、それを話そうかどうかを迷った挙句に倒れこんだ。

とはいっても限界はもう超えたといっても良い。

風邪薬なんかないわよ、と言いながらティファはアイテムを探った。

「万能薬とか、どうだ?」

近くで心配するクラウドがそんなふうに言うと、ティファは「えっ」と声を上げてクラウドの耳元でこう囁いた。

「勿体無いじゃない!ただでさえギル足りないのよ、ここんところ!」

「こういう時に節約するなよ、ティファ!」

ひそひそ話のつもりが、横たわるヴィンセントの耳にはしっかりと聞こえている。

「…聞こえてるぞ」

ドキッとして振り返るティファが、薄い笑いを浮かべる。

「おほほ…やっぱ自然治癒に限るわよね」

そう誤魔化すと、クラウドの肩をポン、と叩き、

「後は頼んだわ、リーダー!」

と言った。

「おい、ちょっ!こういう時ばっかり…」

慌てて反論しようとしたが、もう既にティファは姿を消していた。何とも早業である。

結局、その場にはクラウドとヴィンセントだけが取り残された。

ティファが言うのも最もで、最近はどうもギルが足りなかった。それといいうのも、最近では皆の腕が上がり、敵からの報酬もそれなりしか手に入らないからだ。

早く移動しよう、そう言ったは良いが、まずは装備を固めようという事になり、やっぱりギルが必要だった。

その為、こうして二人が宿屋にいる間、仲間達はひたすらギル稼ぎに出かけている。

「すまないな」

ただそう言うヴィンセントに、クラウドは「気にするなよ」と声をかける。

仲間なんだから当然だ、そう思う。

「まだ調子、悪いか?」

「まあ、少しな。だがもう、戦おうと思えばできるだろう」

「はいはい、駄目駄目!もう少し寝ててくれよ」

ドクターストップならぬリーダーストップをうけて、ヴィンセントはふっと笑う。

「何がおかしいんだよ」

それに気付いたクラウドがそんなふうに聞くと、ヴィンセントは「別に」などと言ってクラウドの手を取る。

「ただ、思わぬ所で二人きりだなと思っただけだ」

「あ、そういえば…」

いつもなら四苦八苦してその状況を作っているというのに、これは正に自然にできた状況といえた。

「はあ。ヴィンセントが元気だったらなあ」

「だったら何だ?」

「何だ、って…。そりゃ…。もう良いよ、意地悪だな」

「というか元気だったら、こういう状況にはならなかったがな」

「まあ、そうだけどさ」

そんなやりとりをしながら、クラウドはアイテムをガサガサと探り出す。

ティファはああ言っていたが、やはりあるものは使うべきだと思う。こんなふうにゆっくり気兼ねなくいられるのは嬉しいが、でも相手が病人ではやはり喜んでばかりもいられない。

「あるじゃないか、万能薬」

そう呟きながらそれを取り出すと、袋を紐解いて粉末状のそれを広げた。

「飲んでくれよ、ヴィンセント」

そう言いながらそれを手渡してくるクラウドに、ヴィンセントは「でも…」と手を出せないでいる。

「怒るぞ、ティファが…」

「良いよ、後で何とか言っておくから」

ヴィンセントは「そうか?」などと言い、それでも躊躇いながらそれを受け取った。

 

 

 

これで良くなるかな、とヴィンセントの様子を伺っていたクラウドが仰天したのは、その後間もなくの事だった。

体に浸透した筈の薬が、どういう訳かヴィンセントの様子をさらにおかしくされていた。

いつもの隠れがちながらも優しい目が、どういう訳が凛と釣り上がっている。

「ヴィンセント…?」

恐る恐るそう聞いてみたが、ヴィンセントは何も答えない。ただ正面を鋭い目つきで見ているだけだ。

「…万能薬じゃ、駄目だったのか…?」

最早そういう問題では無かったが、そう言わなければ納得がいかなかった。

どう考えてもおかしい。

目つきもおかしかったが、雰囲気自体もおかしかった。

まるで怒ってるみたいだ、とクラウドは思い、無意識の内に後ずさった。

ヴィンセントの無意識状態は戦闘中、何度も見てきている。が、それとはちょっと違った。というか、こんな状況でカオスに化けられても困ってしまうが。

「なあ、ヴィン―――」

そう言いかけて、クラウドはその口を塞がれた。

「ん〜っ!」

何だよ、いきなり!、と非難したいところだったが、声が出ない。

それはいつもとは比べ物にならないくらいの濃厚なキス。ヴィンセントがこんなキスをしてくるとは思ってもみなかったクラウドは、反論する気もそこそこに、いつの間にか必死にそれに応えていた。

思わず自然に腕を回す。

いつものように長い髪を指に絡ませ、その中に潜り込ませると、ヴィンセントの首筋を探した。

それを支えに、クラウドはヴィンセントの体を引き寄せる。それは正にいつもの手順だった。

が。

「え…、ヴィンセント?」

やっと離れた唇に、ようやくまともに息を吸えたかと思うと、次にはもう焦りの声が出ていた。

ヴィンセントの手はクラウドの体の動きを完全に制御するように押さえ込んでくる。

こんなのは、いつもの雰囲気じゃない。

ヴィンセントはあくまでクラウドの希望を呑む形で抱く人だった。ゆっくりと、優しい愛撫で徐々に感覚を昂らせてくれるのが、そのやり方。

動きなど制御せずとも、抵抗などしないと分かっているから。

「何だよ、変だ、やっぱり!」

そう言ってみるものの、ヴィンセントの顔は変化しない。目が、追い込むようにクラウドを射抜くだけだった。

「ちょ…ヴィンセント!」

嫌いじゃない、相手はヴィンセントに変わりはない。だけど、何だか違った。そんなヴィンセントと触れ合いたい訳じゃない。

いつもとは全く違う感じで、少々荒い刺激を各所に与えてくるヴィンセントの舌先に、クラウドは思ってもみなかった抵抗などをする。

しかし、がっちりと押さえ込まれた体が言うことをきかない。

まさかこんなに力の差があるなんて思わなかった。

だって今までは、する必要など無かったのだ。

首筋から胸の先、そして急激に股間までを辿るヴィンセントに、クラウドはただただ抵抗の言葉を浴びせるしか出来なかった。

嫌だ、とそう言う口とは裏腹に、体は正直な反応を返す。いつもとは違うけれど、知らない体じゃないのだ。

相手は―――ヴィンセントは、確かのおかしいのに、だけどクラウドの敏感な部分だけはしっかりと押さえた動きをしている。

その度にビクリとする自分が、クラウドは情けないと思う。こんなのは違う、そう思うけれど感じてしまう自分が、悔しかった。

「は、ら…たつっ…もう…っ」

無言のヴィンセント、その首にまわしたままの手に、クラウドは知らず力が入った。

 

 

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