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アリバイ -------------------------------------------
そろそろアイテムの買い出しが必要だな、と手持ちアイテムを見ながらクラウドは言った。 そういえば暫く店には入っていない。 宿屋くらいのもんだろう。 「じゃ、買いに行く?」 そう言うティファに、ああ、とだけ言ってクラウドはヴィンセントの方を見る。 「ヴィンセント、どう思う?」 「ああ、適当に」 「あ〜また出た!適当!」 その言葉はティファの笑いのツボに大ヒットするらしい。 腹を抱えて笑うティファに、ヴィンセントは「あのな」とムッツリする。 どうも最近、パーティー内ではヴィンセントネタが受けていた。 バレットがする物まねはちょっと微妙だったが、そもそもはクラウドが始まりだった。 宿屋で落ち着こうという時に、クラウドがヴィンセントの服をかっさらっては遊んでいたのが、どうも感染したらしい。 「クラウドも似合うよね、その服」 その服、というのはヴィンセントの服の事。 「今度は交換してみたら?」 「あ、良いかも。でもヴィンセントのソルジャー服って微妙?」 などという会話で盛り上がっている。 あんまり想像したくないもんではある。 「あのな、買出しはどうした、買出しは」 どうも弛んでるな、といいながら本来の方向に戻すようにそう言うと、クラウドは「ああ、そうだった」などと言ってアイテムの話に戻った。 そもそも無口から始まったこのネタは、ある意味ではヴィンセントとの距離を縮める役割もしていた。 今ではすっかり仲良し、である。 「今日の買出しはさ、ヴィンセントと行って良いかな?」 そう言い出したクラウドに、ティファやバレットは「は?」などと声を上げた。 「お前ら二人で行って、その間俺らにどうしろって言うんだよ」 不服なのかどうか良く分からない口調でそう言うバレットに、 「うん。これから先も長いし、今日は休んでくれても良いかなと思って」 とクラウドはさも優しいふうに言う。 ああ、なるほどなどと納得する方もする方だったが、結局その案に皆がのる事になった。 「じゃ、いってらっしゃい!」 元気にそう言うティファは、またヴィンセントの顔を見てはニヤけている。 それに溜息をつきながらも、ヴィンセントはクラウドと共に買出しへと出かける事になった。
わざわざ隣の町まで行く。 アイテム屋で一通りのものを買い込んで、さてどうしようかという時になってクラウドは言った。 「言っとくけど、まだ帰らないからな」 「またお前は…」 ヴィンセントには分かっていた。この買出しに自分が借り出されたそもそもの理由がコレだった。買出しなどは誰とでもできる。けれど、問題はその後。 「駄目だった?」 そう聞くクラウドに、いや、とだけ答える。 嫌な訳が無いだろう、そう思いながらも口には出さない。 「だってこうでもしないと完全に二人にはなれないだろう?」 それはそうだ。 「だからってお前、私をネタにするんじゃない」 「いや、あれは俺のせいじゃないって。皆の方が勝手にハマっただけ。でも結果的には良かっただろ?和んでれば出やすいし、さ」 「そういう問題か?」 そういう問題だよ、などとクラウドは笑っている。 そもそもヴィンセントで皆が盛り上がるのは、クラウドには好都合だった。 然程仲も良くない状態だった中で、クラウドがヴィンセントと行動するのはいかにも不審だったのである。そうしていく中で皆の中に疑問が生まれては困るのだ。 しかし上手い具合にああいった状況が生まれ、今では何の不思議も無い。 「俺、策士だろ?」 「はいはい」 呆れながら笑うヴィンセントに、クラウドは不意討ちのキスをする。 「こら、こんな公衆の面前で!」 「駄目?」 「…うっ」 どうもこれには弱い。クラウドは突飛な言動を良くする。そこで叱咤などしようものなら、その言葉が出てくるという何とも痛いシステムが出来上がっている。 「お前いつか皆の前でもそういう事しそうだな」 「まさか!」 さすがのクラウドも、それはできない、なんて言う。 「でもこういうのも良いと思うけど。何て言うの。忍ぶ愛?」 「馬鹿モン」 「酷いーっ」 笑いながらアイテムを抱えるクラウドは、話の方向を元に戻すべく、どうしようか、などと言う。 チラリ、と目をやったその先には―――。 「…行く?」 宿屋だった。勿論、泊まる気などさらさら無い。 バレット達には休んでくれて良いと言った訳で、彼らの方もきっと二人が寄り道でもしてくるもんだと思っているだろう。 けれど、どっちにしろ夕方までには帰らなければならない。 クラウドの期待を向けた目に、ヴィンセントは、 「はいはい。…お好きに」 などと言った。
何だかんだ言って、結局はこうなるのだ。 とてもリーダーらしからぬ表情をクラウドが見せるのは、こういう時だけである。 声を殺しながら抱き合った後、クラウドは横たわったままでヴィンセントの腕を取った。 「体力消耗した?」 いつもヴィンセントはあまり疲れた様子を見せない。 それはこうして抱き合った後も一緒だった。 「いや?」 何でそんな事聞くんだ、とヴィンセントは不思議そうにクラウドを見る。 「いや、ハイポーションかけてやろうかなあと思って」 「…あのな」 そういう時に使うもんじゃないだろう、と突っ込みを入れながら、ヴィンセントは髪をかき上げた。 それを見上げながらクラウドは、今なら沢山あるんだけど、と言おうとしたが止めておいた。 その代わり掴んだままのヴィンセントの腕に、クラウドはふいにキスをする。 「…いつまで一緒にいられるかな?」 それから、そんなふうに言う。 その言葉を受けて、ヴィンセントは「そうだな」と返した。 普段は何だかんだと笑いを絶やさずにいる。そして仲間たちは戦いの終焉を待っている。その為に皆は集まり、そしてセフィロスに向かっているのだ。 だけど、それが終わったら―――。 この手の温もりも無くなっちゃうのか、とクラウドは呟くように言った。 「ヴィンセントなんてきっと俺の事、忘れるんだろうな」 「私はそんな冷血じゃないぞ」 「じゃあ覚えていてくれよな」 「ああ」 やたらとくっ付いて来るクラウドが、そういう真面目な話の時だけは謙虚なのがヴィンセントは不思議だった。 普段だったらきっと、ずっと一緒にいよう、とでも言いそうなもんなのに。 でもそれは口に出せなかった。 出したら、ヴィンセントの方が引きずってしまいそうで、怖かった。 「そろそろ着替えたらどうだ」 考えるのをやめてそんなふうに言うと、クラウドはむっくりと起き上がる。 外はまだ明るい。三時頃かもしれない。 起き上がってから脇に置いてあったPHSに目をやると、クラウドは少し考えた後にその電源をOFFにした。 そして。 「やっぱり、もう少し」 そう言ってヴィンセントの背中に抱きついた。 「あのな、お前まだやるつもりか?」 「駄目?」 「うッ」 もういい加減このシステムをどうにかしたい、などと思いながらヴィンセントはやはり、その体を抱きしめ返してしまうのであった。 その様子に笑うクラウドは、 「大丈夫。ハイポーション、死ぬほどあるし」 と、99個もぎゅうぎゅう詰めにしたアイテムの袋を見た。
バレット達の元に戻る頃、そのアイテムの袋は少し軽くなっていたのだった。
END
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