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「オレァ最近、肩凝るんだよ。それがよ、この前イイ指圧の店見つけてよォ…」 そう言ってクラウドを蒼白にさせたのはバレットだった。その目はその人にあるまじき愛くるしさをもってウルウルしている。――――恐い。 でもそんなものに負けて、「へえ〜じゃあその指圧行って来いよ。因みにお土産な★」なーんてアホな事を言おうものなら、お宝までの道のりはまたしても果てしなくなる。 いかん、それではいかん―――――!! そう思ったクラウドは、その指圧を何とかして抑えてギルを死守した。けっ、ケチなリーダーだぜこのヤローとか何とか言われても気にしない。そう、表面上は皆で使う薬やらを買う為に貯めたんだという事になっているから、バレットもそうそう文句が言えなかったのである。 まあそんな具合に死守したものだったが、何せ皆欲しいものや用途はわんさかとある。 ――――――――つまり。 「ちょっとクラウド、あたしの髪のキューティクルが足りないのよ!何とかしたいんだけど!!」 「あはっ!アレ食べたいーっ!あ、コレも食べたいし、アレも。あー!アレおいしそーっ!!」 「やい、最近ストレス溜まって仕方ねーんだよ。1カートンで買いてーんだよな、ヤニをよォ。何?ポケットマネーで出せ??そんなことできるかよ、この前スっちまったんだよ(、ギャンブルで)!!」 ――――――――こういう事になるわけで。 シドのはあまりに個人的だったのでクラウドは禁煙令を出し、シドは泣く泣くソレに従っていた。途中プルプル手が震えていたのを見て見ぬ振りするとどうやら痺れを切らしたらしく、夜の平原でワイルドに敵をぶった斬り1カートン分のギルを手に入れたようで、めでたく(?)それは解決した。 ユフィのは問題外で却下。しかしクラウドが何日か食事を食べれないという大惨事が起こったのは言うまでもない。因みにティファの髪のキューティクルの件については「興味ないね」と冷たく言い放ちギルを懐で頑なに守ったところ、「髪は女の命なのよ」と怒鳴られクリティカル×10はするパンチを喰らった。 お金って何てツライのだろう―――――頬を腫らしたクラウドは身に染みる思いだった。 しかしそんなに頑なにギルを守るクラウドでも、ケット・シーが「オイルが切れて動きがああ〜!!」と停止寸前になった時にはさすがにオイルを買ってやった。 ケット・シーは今迄特に何が欲しいとも言ってこなかったから、武器のメガホンは別としても、クラウドは結構寛大であった。 しかし忘れてはならぬ人がもう一人いる―――――――。 そう……ヴィンセント。 ヴィンセントはケット・シーと同じく武器以外では特に何も要求してこない。ティファと同じ黒のロングヘアーにも関わらずキューティクルがどうのなどとは言わなかったし、ユフィと違って食も細い。指圧もさることながらエステに行きたいなどとも言わないし、ニコチン切れでプルプルいう事もない。…無論オイル切れの心配もない。 そんな訳だからクラウドは、もしヴィンセントが何か欲しいと言ってきた日には、それだけはこっそりギルを出そうと思っていた。これはこっそりでなければならない。何せオーディエンスがウルサイ事は目に見えている。 そんな事を思ってクラウドは、ギルが減らぬように自分の防御力を高める日々を送っていたが、ヴィンセントは特に「これ」という事を言ったりはしなかった。 そうしてクラウドお目当ての武器のお値段、65000ギルは、とうとうある日―――――貯まったのである。 嗚呼―――――――!! この日をどれだけ夢見たことか。何度も武器屋で下見をし、店内を意味なくウロついて店長に目を付けられて怪しい監視をされたこともあるし、ついつい長居をして最後には「お客さん、閉店ですよ」と終電で眠りこけてしまったお疲れサラリーマンのような事態に陥ったこともあった。 ――――――それがとうとう報われたのだ…!! 明日こそ買ってやる。もう文句を言うなら何とでも言え、防御力はMAXだぜ!――――なんて思っていたクラウドだが、そういう夢のような前夜に限って、夢のような事が起こったりするものだ。 そう――――――…。 何と、あのヴィンセントが、とうとうこんな事を告げてきたのである。 「クラウド―――――実は私も、欲しいものがある」 浮かれて、シャワー後に何も着けずにフラフラしていたクラウドは、そう言われて我に返り慌てて取りあえず下着を着けたものである。 あまりの驚きに、ついついクラウドは思わず聞き返す。 「あの。ヴィンセント…今、何て?」 「いや、だから。欲しいものがあるのだが…取りあえず相談をと思い」 「あ…ああ、そうか」 何と言うことだろうか。とうとう65000ギル貯まった今日という日に、こともあろうにヴィンセントがそんな事を言うなんて。 これがもし他の仲間(※ケット・シーを除く)だったら、無理、やだ、ありえない、おやすみ、と連発していたところだ。 しかし…しかし、だ。 ヴィンセントが相手となるとそうもいかない。 だってクラウドは、ヴィンセントがそう言ってきた時にはそれは絶対買おうと決めていたのだから。いつもそんなことを言わないヴィンセントだから、口を開いたとなればそれは相当のものであることは確か――――――…此処で断るなんてそれこそ、“無理、やだ、ありえない、おやすみ”レベルだ。 しかし念願の武器が手に入りそうなこの時であるからクラウドは相当焦った。 ヴィンセントの欲しいものは買わなくちゃ駄目だ……でも俺の愛しの武器はまた明後日の方向に羽をはためかせ飛んでいく。でもヴィンセントの言葉に拒絶など自分が許せないし……嗚呼でも欲しい!でも駄目だ!誓ったじゃないか、ヴィンセントだけはって…!!! ―――――――――そんな具合に葛藤しつつ、クラウドは震える口でこう聞いた。 「で…でで、ヴィンヴィンセントの欲しいもものって…ど、どどどのくらいするんだよよ?」 思わずどもる。 手に汗にぎる気分だ。 もうコンフュだ。メダパニだ。ってそれは違う世界だ。 「…とても、高価なものなんだ――――――」 「なっ……!!!!!!」 がび――――――――――ん!!!!!!!! こ、こうか!? それはもしや、皆の欲しいものが4の位までで収まるのに対し、万の位までいくシロモノでは!? そう思った瞬間クラウドは、その場に何も無いのに「ひっ!」と言って後ろにひっくり返った。そのせいでズリ下がった下着を急いでズリ上げると、口をガクガクさせて蒼白になる。…もはやホラーの世界だ。 そんなクラウドを見ながらヴィンセントは真面目にこう言う。 「実は私は…黙っていたが、以前からそれが欲しくてな。だが私には手の届かないものだと思いずっと心に秘めていた。しかしやはり――――…諦めきれなくて…な」 そう語るヴィンセントに、クラウドは思わず涙が流れそうになった。 分かる――――――痛いほど分かる、その気持ち…! そう…手に届かないとずっと思っていたものを諦めきれないというのは正にクラウドも同じなのだから。しかしだからこそ余計にツライ。 だって、その“ずっと欲しかったもの”が明日にはルンルンで手に入る予定だったのだ…!でもヴィンセントも同じ気持ちであるなら譲るしか無いのではないか!? ああ―――――――…!! もう既に涙目+小刻み震えになったクラウドは、唇をギュッと噛み締め、ついでに腕にまで力を込め、毛細血管がプツンといきそうなぐらいになりながらもこう言った。 「わ…分かったよ――――――ヴィンセント」 正直、その時のクラウドは、心の中で号泣していた。 しかしヴィンセントの真面目な顔を見ていると、ワンワン泣くなんて出来なかった。 良いんだ俺は…ヴィンセントが幸せなら―――――…。 もう神の領域だと思いながらクラウドは先後にこう聞く。…はっきり言って頭の中では夕日が見えていた。しかも嬉しいカモメ付きだ。 「買おう、それ。―――――それで…どのくらいの品物で、どんなものなんだ…?」 段々心穏やかになってきた(気がする)クラウドは、ヴィンセントの欲しいもの(の値段)を確認するべくそう聞く。 しかし。 「いいや、金額では示せない。どんなものかと聞かれても――――…難しいが…」 「え。…もしかしてかなりレアなもの…?」 「ああ、レアといえばレアだな。この世に二つと無いし…それにとても魅力的で――――」 「うっ!…それ…って、何(いくら)?…」 頭の中に計算機を思い浮かべたクラウドは、初期設定を65000ギルとして、既に「−」のボタンを押していた。 「それは……」 ヴィンセントは何故かそこで言葉を留めたりする。その時間がクラウドには時限爆弾の時計のように感じられた。 もしそれが65000ギルを超えるとなると残高は素敵に「−」、つまりマイナス……レアなものとなるとそれは否めない。しかしどうだ。また0からスタートするとなると大変なことになる。 嗚呼―――――ヴィンセント、頼む…。 クラウドは心の中で祈った。 ―――――――思い切って打ち明けてくれ…っっ!!!! もう既に「−」を念頭に置いていたクラウドは、ギュッと目を瞑ってヴィンセントの言葉を待った。 目を瞑っている間もクラウドの脳裏には羽の生えたギルがパタパタと飛んでいる。 ―――――そして。 とうとう…ヴィンセントの口が開いた時……。
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