Shin-Ra Syndrome  [ 1st section ]

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- SLAVE(2) -

 

 

 

初めて一部始終を目にしてしまったその日、それでも事後処理はツォンの役目だった。

やはりガラクタのように別室に放られた身体は、ぐったりとしていて動きもしない。

目は、空ろだった。

当然だろう、ツォンはその身を起こしながらそう思って手に力を込めた。あれだけの男に、しかも何度も何度も犯されたのだ。そうした後にルーファウスの眼に映るものなど、何もありはしないだろう。はっきり言えば、週末以外の日々、ルーファウスがそれでも正気を保っている方が不思議だった。

何故、こんなふうになったのだろう。

更にその疑念は膨らんだ。

ツォンは丁寧にその身を上着で包むと、やはりいつものようにその疲れ切った身体を抱きしめた。

空ろな目が、そうした瞬間にふとツォンに向けられる。それはごく珍しいことで、ツォンはその動作に少しばかり驚く。

「……汚い、だろ…う?」

途切れがちに呟かれた言葉に、ツォンは耐え切れなくなってより強くその身体を抱きしめる。

「私は…許せない…!」

あの男たち。そしてプレジデント神羅。絶対に、許すわけにはいかなかった。

けれどツォンの心とは反対に、ルーファウスは笑みなどを漏らす。

「違う…俺、俺が…汚い……」

「な…にを、言ってるんですか…!」

貴方が汚いわけがないでしょう、そう続けてツォンは唇をかみ締めた。その身体は確かに誰も彼もを受け入れてしまったものだけれど、その行為はルーファウスの望んだものでなんかない。強制的に行われているものなのだ。

それが汚いというのは、また違う。

汚いのは、それを強制している者達なのだ。

「じゃ、あ…お前はこの身体を…抱けるか…?」

ふと、それはツォンに投げかけられた。ツォンはそれに言葉を詰まらせると、ただルーファウスの顔を見つめる。

抱けるはずがなかった。

そうした無言の答えを知り、ルーファウスは自嘲するように笑う。それはどこか諦めたふうな乾いた笑いだった。

「ほら、できない……だろ?」

その言葉は、所詮は汚いと思っているのだというルーファウスの心をそのままに表していた。

プレジデント神羅は、ツォンがその場にいることをルーファウスに耳打ちした。そうした瞬間に、それだけは嫌だという激しい感情がルーファウスの中には沸き起こっていたのだ。例え事後処理でその乱れきった身体を曝け出していたとはいえ、その経緯を見られるのはやはり嫌だった。そして巻き込むだろうと思うと拒絶せずにはいられなかった。

どういうふうに犯されているのか、どういうふうに見世物にされているのか。

そんな羞恥は晒したくなかった。そういう目で見られたくなかった。

いつも優しく抱きしめる腕を知っていたから――――。

「私は、貴方を汚いなんて思っていません」

ツォンは思い悩んだ挙句にそう言い放つと、ルーファウスの唇にそっと己の唇を重ねた。

それは重ねるだけのものだったが、少し長く熱を帯びる。

そうして少しした後にそれをゆっくりと離すと、ツォンはルーファウスの眼を見て言った。

「私には…貴方は、抱けない」

その言葉を、またルーファウスが違った意味で捉える危惧は十分あった。けれどツォンは、躊躇わずにはっきりとそれを告げた。

そうして苦しめることなど、到底、出来ない。

「…お前は…優しい、な……?」

目前の顔は、弱々しく笑顔を向けてくる。しかしそれはすぐに崩れ去ると、弱さだけを残して歪んだ。

「ツォン…」

瞑られた瞼から一筋の涙を零すと、ルーファウスは突然のようにツォンにしがみ付き、その胸の中で嗚咽を漏らした。子供のような激しい泣き顔に、ツォンはそのままその人を見詰めるしかない。

今迄の辛さや理不尽さが、急速に溢れ出たように泣きじゃくる。

どれだけそれを我慢してきただろうか、そんなふうに思うとツォンの中にあるあの男達への憎しみも自然と倍増した。

「辛、いっ…もう、嫌だ…っ!」

そう訴えるように言葉が吐き出される。

「ルーファウス様…」

乱れた髪を梳いて肩にその頭を寄せてやると、次第にシャツは涙に濡れていった。

この状況から脱することができるなら――――。

その方法。

ツォンも自然と目を瞑り、それを考える。それは、やはりルーファウスの口から出る言葉でなくてはならないという結論に至るのは、毎回同じことだった。

そうしてそれを助長させるべくツォンが口を開いたとき。

「ツォン…っ…」

その声は、耳に入った。

とても小さな呟き。だがそれは―――大きな意味を持って。

それは、巻き込みたくは無いと思っていたルーファウスの、限界でもあった。

「ツォ、ン……助けて…」

その瞬間。ツォンの眼は強い力を放つ。

そう――――その言葉が、ずっと聞きたかった。

それだけで、全ては始まるのだから。

ツォンはドアの方向を見つめると、酷く冷静な顔つきでこう言い放った。

それは丁寧な言葉遣いの内にも、揺ぎ無い決意を含んで。

「貴方を救ってみせます―――――――私は苦しめたりなどしない、絶対に」

その言葉は、夜の闇に凛と響いた。

 

絶対に救ってみせる。

 

絶対に苦しめたりしない。

 

 

私だけはずっと、

貴方を、守る。

 

 

 

 

 

 

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