Shin-Ra Syndrome  [ 1st section ]

-----------------------------------

- WANT YOU - 告たえない言葉

 

 

 

バタン、とドアを閉める。

そこはレクストの個室だった。

一日中会社に拘束される日々が続き、彼は酷く疲れていた。それでも、この会社のトップたる自分の意味を考えると、気を抜くわけにはいかない。

閉めたドアにそっと鍵をかけると、レクストは奥の方にあるソファに深く座り込み、考え事を始めた。

まだ二十代前半である自分が、この部屋にいる意味。

それを、目を閉じて考える。

自分は、愛する人の為に此処にいる―――――それが、彼の中の唯一の答えだった。

辛いことも、どんなトラブルも、問題になどなりはしない。

ただ、それでも耐えられないことはあった。

「ラウス…」

閉じた目の中で、その人は笑っている。

彼は、ラウスというその人物を愛していた。しかし、想いを告げることはできず、だから触れることすら叶わない。元来身体の弱いその人を思い、自分は色んな意味でその感情を抑えてきたのだ。

それでも、たまにとめどなくその想いが溢れることがあった。

一回で良い。

一回でも良いから、彼と愛し合いたい。触れてみたい。

それは意味合い的には性欲であったが、純粋な気持ちでもあった。そうして、一回でも良いから、彼の体の温もりを感じて、側にいるのだという絶対的な安心感を得てみたかった。

それでも―――――それは無理だった。

「……」

ふっと目を開けると、レクストは徐にズボンのジッパーを下ろした。そうしてその中から自分の性器をそっと取り出すと、ゆっくりとそれに動きを加えていく。

目を、閉じる。

暗いはずのそこに、愛するラウスがいた。

妄想の中でラウスを抱きしめると、自分が長らく隠し持っていたその欲求を満たすように、ラウスの服に手をかける。

「はっ、はっ…ラウス…っ」

手を激しく動かし、陶酔に浸る。

――――――欲しい。ラウス……お前が、欲しい。

 

 

 

妄想の中で、健康そのものの身体を晒して、ラウスは細い身体を逸らしていた。綺麗な髪がゆれ、大きな瞳が欲望に濡れる。小さく開かれた口からは絶えず喘ぎが漏れていて、手は必死に自分の肩を掴んでいた。

「はっ、あ…、んっ…っ、レクスト…ぉ…っ!」

ビクン、と身体を震わせながら、ラウスが己の名を呼ぶ。そうされる度にゾクリとして、彼の中をぐちゅぐちゅとかき混ぜる指が加速した。

「ラウス…好きだ」

もう既に視覚だけで激しい勃起をしている自分。それをまだ弄らずに、まずは彼に快感を与えてやりながら、荒い息遣いでそう囁く。

「あ、ああっ…レ、ク…んあっ…」

濡れた瞳に捉われる。

ずっと、こうしてみたかった。

ずっと、こうしてラウスを乱れさせてみたかった。

そうして名前を呼んで、そして受け入れて欲しい。この気持ち全部を。

「ラウス…もっと良くしてあげるからな」

優しくそう言い、指で奥をかき混ぜながらも、勃ち反ったそこを口にくわえ込む。そうして、耐え切れずに溜まった精液を拭ってやりながら全体を舌で舐め上げた。

「…っん、ああっ、い…いっ…」

「…っ…はっ…」

愛しい人のそこを、丁寧に丁寧に愛撫する。

そうして自分の愛撫に腰をくねらすラウスは、本当に自分を感じていてくれるようで、自分に大きな興奮を与えた。

やっと叶ったといわんばかりに奉仕を続けると、それに耐えきれなくなったようにラウスの手が伸ばされた。それは自分を探して宙を舞っている。

やっと口を離すと、その手に自分の手を重ね、そして握り合った。

「ラウス…もう…、お前の中に入りたい。…良い、か?」

見詰め合ってそう呟くと、目前のその人は切なげな表情を浮かべながら小さく頷く。

「…来て…レクスト…」

堪らず、その人の太股に手をかけると、その白い肌に口付けをしてからそれを大きく持ち上げた。それから自分の腰をそこに押し当てると、膨れ上がった性器をぐっと押し込む。

「は、っ…!」

ビクン、と身体が震える。

怯えているのかと思い、それに安心感を与えるように握り合った手にギュウ、と力を込めた。

「大丈夫だ、ラウス。最初だけ…我慢して、あとは力を抜いて…」

そう言って、先端だけ入ったそこに力を込め、ゆっくりと奥深くまでの挿入を果たす。

些細なことだった。

誰かが聞いたら馬鹿らしいと失笑するかもしれない。

それでも、愛する人と繋がれた事の喜びに、自分はこれ以上無いくらいの幸せを感じていた。

急がず、なるべくゆっくりと、動く。

その度に声が上がったが、それを聞きながらあくまで優しく行為を続けた。

「あ…ふっ、んっ…レクスト……っ!」

「好…きだよ、ラウス…っ」

繰り返される律動に、暫くしてラウスが果てる。

そして、自分もやがて果てていった。

それは、優しい、幸せな時。

けれど――――――。

 

 

 

手にドロリとした感覚がして、レクストは目を開けた。

「…はあ…はあ…っ」

見下ろす先には、無残に射精された後があり、それは何だか空しさを感じさせる。そうして消え去った自分の妄想を振り返り、苦笑した。

「…馬鹿だな…」

あんなことなど、ありえないのに。

あんな事は、一生、ありえないのに―――――――。

妄想の中で乱れた愛しい人を思い返しながら、レクストは小さな自己嫌悪に陥った。確かにその人の事が好きで、抱きたいと思う。けれど、こうして勝手な妄想の中で、手が出せないほど神聖ともいえる人を、犯している。

その気持ちは純粋なはずなのに、結局は性欲が勝ってしまうのだろうか。

「馬鹿だ…俺は…」

思わず呟きながら、処理もせずに空いた左腕で顔を覆った。涙は出ないが、泣きたい気分だった。

あまりに苦しい。

 

 

 

ほぼ秘書役の男がその場にやってきたのは、レクストが自己嫌悪からやっと立ち直ったその日だった。

もうかれこれ一週間ほど経った頃である。

その男はいかにも勤勉そうな顔つきをした男で、人柄一本で渡り歩いていたレクストには何だか嫌な感じを与えた。

「で、用件は?」

あまり同じ空間にはいたくない。秘書的な役割なのだからそういっても仕方無いことだったが、つい早急に話を進めてしまう。

しかし相手はそんなことは一切気に留めていない様子であった。テキパキとスケジュール帳等を開くと、業務についてですが、などと言い出す。

「現在、我が社はまだ小さいです。今のままの売り上げですと…そうですね、私の計算上では二年後には倒産確実です。まあ他のメーカーも立ち上がってきてますし、まだまだ企業というものの存在感は薄いですからねえ?家具なんかはあれですよ。裏庭の木でも切り倒して、日曜大工でもすれば、すぐに出来上がってしまいます」

「…で、用件は何なんだ」

思わずイラ付いてそう催促する。

すると、男はやっと本題に入った。

「レクスト様は各地の紛争をご存知ですか?」

「…え?」

「ですから、紛争です」

そう言って、男はニヤリと笑った。

男の言う紛争とは、最近各地で起こっている小さな諍いのことである。それは国という規模ではなく、それよりかはもっと小さな、町の中の二派に分かれた勢力の喧嘩のようなものだった。確かにそういう噂は良く聞く。

けれど、それがこの会社とどう関係があるのかが分からなかった。

「此処最近、その紛争が非常に多い。まあ今は小さい規模ですが、しかしそれが小さい規模で済んでいるのは何故だと思います?…武器の威力が足りないからですよ」

「威力が?」

「そうです。もっと威力のある…たとえば化学爆薬だとかがあったとしましょう。そうしたらどうなります?食らった方は大打撃ですよ。そうとなれば対抗するでしょう。するとそれは、段々と規模が大きくなるわけです」

「ああ…まあ、そうかもしれないな」

あまり興味はないといった感じで、レクストはそう答えを返す。しかしそれに反して男は妙に熱弁をふるいだした。

何だか妙に興奮している。

「ですからそこです!我が社を救うのはそれなんです、レクスト様!…武器を開発して、そしてそれを秘密裏に両勢力に売りつけるのですよ!そうすれば紛争規模は大幅になり、それに従い誰しもがもっと強い武器をと望むのです!そうとなれば我が社がもっと莫大な武器を破格で売れば良い訳です!そうすれば倒産はおろか、大企業ですよ!!」

その熱の篭った言葉に、レクストはあからさまに嫌な顔をした。

何を言ってるのだろうか。大体、この会社は小規模だし、業務といったら家具の製造と販売なのだ。確かに裏には科学研究というものもあったが、それは今のところ成果があがっていない。

家具の製造といっても、まだまだ手作業が主で、兵器開発なんて天地の差である。

馬鹿らしい。

夢想にも程がある。

「…もういいから、少し休んだらどうだ?」

溜息をついてそう言うと、レクストはその男から顔を背けた。しかし男はまだ食い下がり、これはチャンスです、等と言う。

何がどうチャンスなのか、訳が分からない。

大体、物騒な提案すぎる。

「もう良い。独りにしてくれ!」

呆れ果てると、レクストはそう叫んだ。

結局、その話は夢のようなものに留まり、男はかなり不本意そうな顔をして出て行ったのだった。

 

 

 

…BACK…