Shin-Ra Syndrome [ 1st section ]
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- PURELESS - 瞳を奪うもの…
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レクスト―――プレジデントが各地の紛争への助長をさせるべく武器を売りさばくようになった背景には、病床に伏せる愛する人の存在があった。神羅製作所のかつての主、そして資本者でもあるラウス・フェンダーがその人である。 しかし、その武器の生産にも様々な準備が必要だった。 勤勉な秘書は、会社を大きくすることを夢見ており、かねてから武器開発を薦めていた人だったので、プレジデントの決断には大いに喜んだ。やっとその気になってくれましたか、と。 金銭の融通は、ラウスから社長職を受け継いだ時点でプレジデントの手中だった。その莫大な資産を積んで、人材を集めると、その生産はすぐに始まった。 スカーレットという女性が名乗りを挙げ、兵器開発の責任者としてその地位につく。彼女は聡明だった。少々性格に難はあったが、頭の切れは良い。物理研究者の兄を持つらしく、そこからの知識だとか聞いたが、プレジデントには良く理解できなかった。とにかく兵器開発ならばスカーレットに、事務全般は秘書・その他の社員に全てまかせる状況だった。プレジデントのやるべき事は、交渉だった。各地の各勢力棟梁との掛け合い。 人柄だけなら誰にも負けはしない。それが武器だったプレジデントは、すぐに多くの顧客をつけていった。 こうして神羅製作所は、順調に幅をきかせていったのである。
今やすっかり慣れてしまった勤勉秘書の言葉を聞きながら、プレジデントは欠伸などをしていた。各地紛争が増えているから、その交渉もやたら多岐に渡る。眠る時間が極端に減っているせいか集中力も少し落ち込んできていた。 「プレジデント、聞いてますか?」 眉をしかめる秘書に、プレジデントは「おい」と注意の言葉を払う。 「プレジデント神羅、だろ」 「ああ、失礼を。プレジデント神羅」 その名前を強調するため、プレジデントはそうして呼ぶように義務付けていた。こうして呼ばれると、ラウスが側にいるような気がして何となくホッとする。元々はラウスの為にと思って始めたこの武器開発事業だが、その結果、紛争は拡大し被害は大きくなっており、それを耳にすると心が痛むことがあった。当時感じていた迷いが、また戻ってくるかのような感覚。それでもラウスを思い出せば、何とか立ち直ることができた。 もう数ヶ月も会っていない―――――――面会謝絶は解けることがない。 自分のしていることは正しい事だろうか、そんな疑念を払拭するにはラウスの存在が常に側に必要だった。 「兵器開発関連は整いましたので、後は諜報部員でしょう」 「ああ。手配はしてあるんだろう?」 「はい、何人かはもう面接も行いましたが。一人、射撃の腕も良い者がおりましたので、彼は有力かと」 「そうか」 情報収集の為の人材。本来なら機敏でとにかく人間的にできる奴が良いとプレジデントは希望していたが、その条件に戦闘能力を加えたのはこの秘書の企みだった。 その有力視されている男との面会を、プレジデントは承諾した。
こじんまりと応接セットなどが置かれているそこでプレジデントが目にしたのは、酷く綺麗な男だった。秘書が言っていた“有力”な男である。 彼は順調に伸びる神羅製作所の社長であるプレジデントを目にしても、緊張など欠片もないといった様子でただ、会釈などをしてきた。 情けないな―――――――そう心のどこかで思うのに、プレジデントは彼から目が離せないままである。 漆黒の髪と、漆黒の眼。切れ長であるのに優しげな目は、何とも魅力的である。これがもしプレジデントでなく誰か別の人間だったら、ただ単に容姿の整った奴だ、と思っただけだったろう。 けれど、彼は違っていた。 その諜報部員候補としてやってきた彼の目前に腰を下ろしながら、その姿を満遍なく見遣る。その、どこにも落ち度は無い。そういった見方は、一種嫌らしいなとは自分でも感じてはいたが、それでも止めることはできなかった。 プレジデントの周囲には、彼の欲を掻き立てるような男はそうそういやしなかった。今までの人生の中で唯一そうした感情を起こさせたのが、ラウスだったから。 それが今―――――ラウスを前にするのと良く似た感情が沸き起こっている。 「…私、が…神羅製作所の…」 思わずどもってしまった言葉に、彼は明瞭な声で、 「お噂は聞いてます」 と答える。立場が逆だろうとさえ思えるそのテンポの悪い会話は、しかし修正できないままに続いた。 「何でも君はその…狩猟が、得意だって…?」 そう言いながらも真っ直ぐに目を見つめる。それが普通と違うかどうかプレジデント自身には分からなかったが、目前の彼が時折眉を顰めたりするのはやはり、それが常軌を逸した目線だったせいだろうか。 それから彼の得意とする狩猟の腕前などを話題に、話は進んだ。謙遜の言葉を忘れてはいなかったが、聞く分にはなかなかに腕が良いらしい。人間性としても、できるタイプのように見える。多分、結構に信頼はできる人間だろう。 ともすれば別の感情に100%流れていきそうなのを必死に抑えながら、プレジデントは唯一自信のある“人柄”というものから培ってきた目で、それを判断した。人を見る目には、自信が無いわけではない。 それだけでも、雇用の価値は十分あると判断できたが、やはり特別な感情が微塵も入っていないといえば、それは嘘だった。 話の途中で時々笑ったりするその顔は、とても綺麗である。ラウスとは全く違うが、魅力的であるという部分からすれば二人はとても似通っていた。 想い続けている愛しい人は―――――最早、手が届きそうにも無い。というよりか、そうしてはならない人だった。 だからこれは、プレジデントにとって酷く危険な対峙だったのだ。
数日してから、その有力視された彼は神羅製作所に入社した。 神羅製作所総務部調査課。何とも仰々しい。そんな大層なものでもないというのに、プレジデントの秘書が堅苦しく、組織はしっかりと組むべきだと断言するので、じゃあそれで良いと大方を任せた次第である。 プレジデントにとって、そんな組織などはどうでも良いことだった。必要なのは、神羅製作所という名前を知らしめるという事だけである。とはいえ、その彼、ヴィンセント・ヴァレンタインが入社したことで、それは少々変わってきてしまった部分があった。 何となく考えてしまう、彼に近付く方法はないだろうかと。 しかしプレジデントはといえば、何もできないながらもこの企業のボスである。権力行使で彼に近付くということもできないではないが、それではあまりにも人間味が無い。 もっと自然に、彼に近づける方法。 堅苦しいあの秘書などでなく、彼が秘書だったらどんなに良かったことかと思う。しかし現秘書であるあの男に、ヴィンセントと同じわざがなしえるはずもなく、やはり部署的にはそういう割り振りしかない。 自然と近付くにはやはり、仕事しかないのだろう。 しかし共にする仕事なんてあるだろうかと思った。多分、無いだろう。しかし幸いにもヴィンセントは腕が良い。この神羅製作所の中で一番だろう。とすれば、ある方法が浮かんでくる。 とても単純だが、それは護衛という仕事である。 本来なら調査課であるわけで、任せようと思っていた仕事は、交渉に当っての事前調査や何かだった。しかし実際にその調査の元、交渉をするのはプレジデントだったので、全く関わりが無いかといえばそういうわけでもないかと思う。 「護衛か…」 今現在、交渉に当ろうと思っている部位は、ヴィンセントが調査を始めているがまだ終わっていない。だから、暫し休息という感じだったが、しかしそれでも護衛という名目が生まれなかった。 何か良いスケジュールは無かったか。そう頭の中で反芻して、それからやっとプレジデントはある一つのアポを思い出した。 それは確か数日前のことで、ヴィンセントが入社したその前後の話だったと思うが、神羅製作所のあるミッドガルの、その市長を務めるドミノという男が話したいことがあると言ってきたのだ。最近はミッドガルといえば神羅製作所というふうにまで思われているようだから、それが気に食わないのかもしれない。何はともあれ、ヘッド同士の話し合いというわけである。 たしかその予定は、もう間近ではなかったろうか。それにヴィンセントを護衛という名目で連れて行き、それとなく色んな話をしてみたらどうだろうか。そこまで考えてプレジデントは、一人笑顔になった。 「そうだ、それで行くか」
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