Shin-Ra Syndrome  [ 1st section ]

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- IN THE ROOM(2) - 正否の場所

 

 

 

柔らかなベットの上で、長い長いキスをする。

絡む舌は段々と激しくなり、この男のどこにそのような情熱が隠されているのだろうかというくらいの勢いを見せた。

しかしそれは乱雑というわけではなく、あくまで優しさを土台とした上での激しさである。

囚われて、息をつく間も奪われて、僅かに顔を歪ませるとそっと唇は離れていく。

それが何だか寂しい気がして離れた唇を捜してそれを手繰り寄せると、そこからまた長く激しいキスが始まる。

それの繰り返し。

奥深くまで弄る舌が、何だか愛しいとさえ思える。

けれどきっとこれは愛情ではないのだろう。きっと同情だ。

そう分かっているのに、この瞬間はそんな判断さえどうでも良かった。

高まる欲求に素直になるだけ―――――それだけが此処に残る意識。

「ふ…うっ」

長いキスに終止符が打たれると、ヴィンセントは薄く目を開いた。その隙間から見えるのは優しげな瞳と長く綺麗な銀髪。

揺れて頬に落ちる髪が少しくすぐったい。それでもそれを避けることなく、その横をすり抜けて頬に指をやると、薄い肌をそっとなぞる。

「綺麗な男だと…ずっと、思ってた」

そう小さくヴィンセントが言うと、セフィロスもまた小さく返す。

「それは俺の台詞だろう」

その言葉を聞いて思わず笑みを漏らしてしまったものの、それでもやはりこれは愛情ではないのだろう。何しろそれが目的で今まで会ってきたわけではないのだから。

セフィロスはヴィンセントの腕を取り、己の頬からそっと指を取り去った。そうしてから、ゆっくりと首筋に顔を埋める。その所為で重なった上半身が、顕著に熱を伝えてくる。人肌の持つ温かさは特有で。

首筋の辺りに繰り返しされるキスは、時折強く、時折弱く、時折は舐めるように柔らかだった。ぐっと吸い込まれたかと思うと、愛撫のように優しく舌先で撫でられる。

やがてその舌先が鎖骨の辺りに移った時には、どこかで火がついたような気がした。

胸部に這わされた手が、肌をさらっていく。親指の先で撫でられる乳首から、妙な快感が沸き上がる。それほど大きくも無い、緩やかな快感。それが全身とまではいかないものの、欲求を膨らませた。

そこを弄られることにヴィンセントは特に喘ぎを漏らさなかったが、それでもセフィロスはその愛撫を続ける。服を纏っていないことで寒さを感じたのか、そこは既に小さく勃ちあがっており、それが指の動きに合わせて流動していく。回すように愛撫をされたかと思えば、摘むように愛撫をされたりする。首筋を這っていた舌先がそこに到達するにはそう時間はかからず、やがて湿った感覚が襲った。妙に生温いものがその快感をますます妙なものに仕立てていく。緩やかに、しかし確実に。

「ん、ん……」

ちゅっ、と音を漏らす様に口全体に吸われて愛撫される。その次には舌の先で触れるか触れないかくらいの軽くくすぐったい愛撫が続く。それを断片的に繰り返されると、妙な快感が蓄積されていくせいか、微妙に下半身がピクリ、と反応した。

「物足りないだろう…」

そう囁かれたがヴィンセントは特に反応しなかった。そう問われて答えを返しても返さなくても一緒だ。このまま進むことに変わりは無い。どうせなら溺れるくらいのものが欲しいと思う。それは激しさでも良いし、優しさでもいい。要はこの雰囲気が存続し自分の意識が溺れ続ければそれで良い。

快楽というのは本能的な欲求だ。逆らえるはずが無い。

乳首への優しい愛撫が続く中、ヴィンセントに新たな感触が与えられた。それはもっと大きな快感。

「お前のはもう我慢できないようだな」

先ほど反応していた性器を迷うことなく手に包み込んだセフィロスは、それを一通りさすると、それから一気に上下していった。深く上下される感覚が、今までとは全く別の快感を呼び起こす。

「う、ううっ!」

呻きに似た喘ぎを漏らしたヴィンセントは、僅かに首を反らすと、その感覚に陶酔するために意識を集中させた。乳首からくる快感と、性器から来る快感が合わさり、なんともいえない感覚に陥る。こうなるとマスターベーションにプラスアルファをしたようなもので、意識さえ集中していればそのまま達することすら可能だ。

けれどこれは自慰とは違う。

肌に触れる暖かさを思えば、その集中した意識すら、無意識ではどこか手抜きをしている気がする。多分この快感の中で望んでいるのだろう、更なる快楽を。

「もっと…お前を見たい。良いか…?」

今度はそう囁かれ、上下されていた性器から手が離される。良い具合で高まった欲求が止まってしまうのは少々寂しい気がするが、その後に控えた感触を思うとそちらへの期待の方が大きかった。

つい、と、セフィロスの手が後退していく。

固く閉じられたそこを、セフィロスの指はぐっとこじ開けていく。最初は妙な感覚だった。

「此処は、初めてか」

そう問われてヴィンセントは正直に回答に戸惑った。

此処を―――――――使った事が無いといえば嘘になる。

あの最悪のセックス。

それでもまだ慣れてしまっているというほどでもない。緩みきってしまったわけでもない。だからきっと「無い」といえばそれでセフィロスは納得をするのだろうが、しかしそう嘘をつくのも何だか嫌な気がした。

だから、迷った末にこう答える。

「経験が無いといえば…嘘になる、な…」

「そうか」

セフィロスは別段これといってどういうリクションも取らずにそう答えた。一体どういう意味でそんなことを聞いたのだろうか、そう不思議に思ったものの、それはそれ以上考えないことにした。何故かといえば、何となく  思い当たるふしはあったからだ。

ヴィンセントはこうしてセフィロスとベットに入った瞬間に、これが例え世間的に間違ったふうに捉えられたとしても良いと思った。そして行為に入ってからは、セフィロスはきっとそういった経験をしているのだろうという気がしていた。

だってセフィロスはあまりにも綺麗な男なのだ。それがどうという訳ではないが、その綺麗さは、男女を問わない魅力がある。だから――――何となくそう思っていた。

しかしセフィロスが言うところによれば自分もまたそういった男であるらしい。

ということは多分、セフィロスに思ったようなことを、セフィロスもまた自分に思っていてもおかしくはないということなのだ。

勿論、事実は分からなかったけれど。

でもそんなことは、どうでも良いことだ。

「少し…忍耐が必要だが…大丈夫か」

「ああ」

そんなことまで聞くセフィロスに、ヴィンセントは少しおかしくなった。けれどそれは嫌な気持ちではなくて、どこか優しい気分になれる。

そう言った後、正にその言葉の通りヴィンセントは忍耐しなくてはならない状況になった。

指先でこじあけるにも限界があり、一度生温い舌がそこを這う。

そうした後に、一気に指が押し込まれた。

「うっ…!」

そこからはねじ込まれるように、そこを割られていく。それは自然の流れに逆らって突き入れられるのだから、正に逆行だ。どうやら先ほどの湿りは大した潤滑役も担うことができなかったらしく、きつく締め上げるのを無理矢理引き裂かれるのはどうにも痛みが伴う。

「はあ…うっ」

まだ奥にいかない内にも、セフィロスの指先はヴィンセントの中をかき回し始めた。その動きには少しくらい意味があったようで、止まってしまっていた点からその指は徐々に内部に入り込む。

やがて―――――その指が奥を弄り始めて。

「これではまだキツイな…」

そう呟く声が聞こえて、次には更なる痛みが走った。

ぎゅむっ、そうもう一つの指を加えられて。

「あ、あ…っ」

これしきのことで声を上げている場合ではないだろうに、そう思うがどうにも堪えようという意識が働かなかった。もし相手がセフィロスではなく…例えば、そう。あの望まぬ男だったとしたら、もっともっと、舌を噛む勢い で声を殺していただろうに。

きっと今なら素直に感じても良いのだろうと、そう思った。痛みも、快楽も。

ちゅくちゅくと奥の方で妙な感覚が動き回っている。

「…フィ、ロス…っ」

痛みだけだったものが段々と快楽に変わってくると、ヴィンセントは臆面もなくそう名を呼び、それからセフィロスの身に手を添えた。

セフィロスの肌は暖かい。

力強い腕は、彼の過去を思わせる。

そういう感覚を覚えながらもヴィンセントは、セフィロスの繰り出す愛撫に落ちていく。ただただ…落ちていく。

やがてその場所に激しい違和感を覚えても、ヴィンセントは声を抑えるなどということはしなかった。素直にそれに反応し、更なる快楽を求める。

「あ、ああっ!セフィ…ロスっ…!!」

「…っつ…」

律動、それが二人の体を熱くする。

違和感、そして快楽。

ぐちゃぐちゃに混ざりあうものが、ヴィンセントの脳さえも麻痺させている。そして耳に入るのはベットの軋む音だった。その音が聞こえるのと身体に快楽の糸が張り詰めるのとは同時で、その波のように引いては押し寄せる感覚が、ヴィンセントを更なる高みへと誘う。

「ずっと―――――…思っていたんだ…」

続く律動の中でさえ息を切らさないセフィロスが、ふとそんなふうに漏らした。

「…っあ…!!」

しかしヴィンセントの中にあるのは、それさえ凌ぐ快楽である。

それでも尚続くセフィロスの言葉に、ヴィンセントは無意識に耳を傾けていた。その耳に届いた言葉は――――――…優しい。

それは先ほどの外見的なものを誉める意味の言葉ではなかったが、しかしヴィンセントにとっては至上の物であった。

「ずっと…触れたいと思っていたんだ。お前の……心に」

―――――――――――ああ。

口から漏れるのがセックスの為の喘ぎだとしても、その時のヴィンセントの心に響いたのは別のものである。

ずっと触れたいと、そう思っていた―――――そう言ったセフィロスに、一体何をかえせば良いのだろうか。騙している分際で、一体何を。

そう思うけれど、それでも一番素直に感じられるものはただ一つだった。

それは本来ならとても皮肉な感情。

覚えてはいけない、感情。

だけど―――――――――本当は、一番認めたい…そんな感情だった。

それは、

“嬉しい”

という――――――そんな感情。

そう思いながらもヴィンセントは最後の力を振り絞るように、その言葉への答えに関しては口を閉ざした。

今は快楽の途上。

どんなに嬉しいと思ってもそれを口に出せない身であるならば、いっそこの喘ぎ声を返答としよう。今正直に感じているこの声を、この心の声としよう。

ヴィンセントに出来ることは、たったそれだけのことだった。

 

 

 

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