Wonder thunder

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天気は最悪。

だってそうだ、今日は―――――――雷が鳴っている。

「雷か…」

窓を打ち付ける雨と光る空を見つめて、ルーファウスは思わずそう溜息を漏らした。

今日は折角不意打ちで誘ってみようと思っていたのに、どうやらこの天気ではその企みも中止せねばならないらしい。

「…最悪だな」

誘おうと思っていた相手は、セフィロス。

ちょっと前からルーファウスにとって大切な相手となったこの男は、プライベートは意外と出不精だった。以前ルーファウスが不意打ちで誘ってみたところ、セフィロスは何でも無しにこう言ったものだ。

「雨だから嫌だ」

―――――――――雨だから?

はっきり言ってルーファウスはその言葉に少々お怒り気味だった。折角こうして誘ったのに拒否されたその理由が雨だから、だなんて話のネタにもならない。あんまりに空しくて返って笑えてくるというものである。だからといって笑う気分にもならなくて結局その時は大人しく、しかしいじけて帰ったルーファウスである。

という過去があるから、ルーファウスはとても落ち込んだ。

雨ごときで嫌だなんて言う男なんだから、雷なんて鳴ろうものなら家のドアさえ開けないかもしれない。

副社長室の窓の外、打ち付ける雨と周囲を照らす雷を見ながら―――――ルーファウスはただただ溜息をついていた。

 

 

 

仕方無いから今日は大人しく家に帰ろう、そんなふうにルーファウスが思っていた時分、唐突にその部屋はノックされた。

一体何だ、そう思ってその相手を部屋に引き入れると。

「大変です!雷が…!!」

入ってきた相手は男で、特に見覚えは無い。その男は副社長室に入るなり、挨拶も無しに血相を変えてそう叫んだ。

何がどう大変なのか分からなかったルーファウスとしては、その男が挨拶の一つも無しに突然本題に入ったことがどうにも腹が立って仕方ない。おいおい、まずはお疲れ様ですとか失礼しますだとかあるだろう、そんなふうに思いつつも、怒るのも疲れるしと思いなおしルーファウスはそこを省いて内容の詳細を促した。

「雷が?どうかしたのか?」

そう聞くと、男は、

「落ちたんです、神羅に!!」

そんなふうに言った。

「はあ?」

「いや、本当なんです!本社じゃないのはまだ救いでしたが、中庭の方にドーン、と来たらしくて…!」

「中庭?」

中庭だったらまだマトモか、なんて思っていたルーファウスだったが、よくよく考えてそれがどれほど痛いことかが理解できた。そう、中庭とは普通花壇なんかが綺麗に並べられているようなイメージだが、神羅の場合はちょっと違ったのである。まあ花は花で確かにあることはあるが、それも普通のものとは趣が違う。 趣旨が違う。観賞用というより栽培といった感じだから。

それはともかくとして、ルーファウスが痛いと思ったのは花ではない。花ではなくて、もっと個人的なことだった。

そう…その中庭には、ルーファウスの趣味で作った建物があったのだ。

「ま…さか、それって…」

やっとその事に思い当たりルーファウスがそう漏らすと、男はとてつもなく落胆した顔でこう一言言ったのだった。

「正にその通りなんです…」

 

その情報を聞いたルーファウスは、男が部屋を去る前に自分がその部屋を後にした。こうしてはいられないといった感じで颯爽と中庭までを走る。神羅内を走るなんていうことはほぼ無いルーファウスだから、その姿を見た社員は相当ビックリしていたに違いない。

その中庭に着いてルーファウスが目にしたものは、プシューと煙を出して燃えた後の無残な建物だった。

はっきり言って、愕然……である。

趣味で作ったというからにはその建物には思い入れがあるのだ。それだというのに、まさか雷が落ちるだなんて低い確率にドカンとヒットしてしまったとは…あまりにも悲しい。悲しすぎて言葉も出ない。

それでも数分後にようやく出た言葉といえばコレだった。

「ああ…最悪だっ!」

雨の降る中、傘もささず、思うことといえばそれのみ。

趣味で作った=かなり金がかかっている、という部分でもこれは最悪な事態だったが、それでももっと最悪だったのはその中身だった。つまりそう、その建物の中にあった物体のことである。

ルーファウスがその建物を作ったのには理由があった。

まず第一に、大切なものを仕舞う場所が欲しかったということ。

そんな大切なものなんて自分で持っていれば良いじゃないかと思うかもしれないが、それがそう言うわけにもいかなかった。何せその大切なものはアクセサリだとかそういう小さいものばかりではない。つまりドデ カいものまであったのである。

それは数をあげればキリがない――――――…。

その神羅の中庭に出現した建物の中には、「大切なもの」(注:小さいものから大きなものまで総てが仕舞いこまれていたわけだが、それは例を挙げるなら、ベットだとかソファだとか壷だとか妖しげな巨大像だとか…とにかくキリが無かったのである。

はて、何故にベットやソファが大切なものなのか、と疑問を感じざるを得ないが、それには大きな理由があった。普通そんなものは大切は大切といっても家具の部類なワケであって、家にでもデンと構えさせれば良い。しかしルーファウスの家、つまりプレジデント神羅宅では、既にそういったものは存在していたわけで、セカンドとしてルーファウスの元にやってきたその家具…いや、大切なものは、自宅には場所がなかった。

その上、その大切なセカンドの家具達は――――プレゼントの類だったのだ。

家具をプレゼント?

――――――――意味不明である。

最初はルーファウスも「?」と思ったものだが、何故か彼の恋人であるセフィロスという男は、ルーファウスに対してそのようなドデカイ物体をホイホイとプレゼントしていた。

というか実際、それはプレゼントではないのかもしれない。

ただ単に、気づいたら発送されてきていたといった具合で、しかもそれは神羅内のルーファウス宛に送られてきていた。何だ何だと思って発送主を見たとき、そこにセフィロスの名があったというのが始まり…セフィロスにそのことを聞いても別段何も言わず。

そんな具合で、この妙なプレゼントの数々は蓄積されていき、そうして最後には神羅内に趣味で建物を構えなければ収納できないぐらいになってしまったのであった。

ルーファウスがそれらを大事だと言うのは、つまりそれがセフィロスからの贈り物だからである。しかしそれらの贈り物は使用されていない。

「折角のプレゼントだったのにな…」

大量の(しかもドデカイ)プレゼント群は――――――雷の一撃でパアに。

「はあ…」

セフィロスが知ったら何と言うだろうか。

折角俺が送ったのに何だかんだと言うのだろうか、それともやはり別段何も言わないのか。とにもかくにもルーファウスにとってそれはかなりのショックだった。過失が自分にあるわけではないと思うが…だって天災には誰も勝てないのだから。

――――――――――そんなわけで。

セフィロスを誘うこともできず、大切なものはプシューと燃え、その日はその天気のせいで二重苦を味わうこととなってしまったルーファウスであった。

 

 

 

しかし、世の中悪いことばかりとも限らない。

そんな訳で落ち込み度満点のルーファウスに好転の兆し。

それは一本の電話からであった。

「――――――――は?」

鳴り出した電話を手にし、その向こうから聞こえた言葉に思わずルーファウスはそう一文字だけ漏らした。

電話の相手は、ビックリした事にセフィロスである。

これは本来なら喜ぶべき事態であったが、今日は何だかショック続きだったため、ルーファウスは喜ぶことすら忘れていた。

で、その相手はこんなことを言う。

『は?、じゃないだろう。これから会うと言っているんだ』

「何で?」

『何で?、って…』

ルーファウスはすっかり混乱をきたしていた。あのセフィロスが自ら会おうなんて言ってきたというのに、しかも約束もしていなかったのに突然会おうなんて言ってきたというのに。

それなのに、喜ぶよりも疑問が先立ってしまう。何しろ…そう、外を見よ。この暗雲と雷が目に入らんか。

「だって今日は雷が鳴ってるぞ?しかも…あ。雨まで降ってる」

『いや、そんなの見れば分かる』

「雨が降ってて雷まで鳴ってるっていうのに会うっていうのか?」

『嫌なのか?』

「え。だって、お前の方が駄目なんじゃないのか?」

『何故?』

そんなものはコッチが聞きたい。

「……」

いきなり何故そんな態度が一変したのか良く分からないままルーファウスは黙り込む。別にそれは「会おうかな〜、どうしようかな〜」なんていう沈黙ではない。雨だから会うのは嫌だとか何だとか過去にいったあの言葉は幻聴だったか否かという、厳粛なる記憶の確認の為の沈黙であったことは確かである。

その沈黙に痺れを切らした…かどうかは分からないが、沈黙しているのを良い事にセフィロスはとっとと話を進める。

『とにかく今日は会うのだ。だから俺はこれからある店に向かう。だからお前もすぐさまその店に向かうのだ。因みに車は厳禁だ。良いな、分かったな』

「おいおいおい!ちょっと待て!勝手に話を…」

『というわけだから、これからその店の場所を説明する。まず…』

はっきり言ってセフィロスはルーファウスの言葉など聞いていなかった。すぐさま店の場所を説明すると「分かったか?そうか分かったか」などと、返事もしない内からそう言って、更には「仕方無い、分かった」というルーファウスの最後の言葉の途中でガチャリと電話を切った。

スピーディーというか、あまりにも早すぎてついていけないルーファウスが呆気に取られたまま立ち直れなかったのは言うまでもない。

雨だから嫌だ、――――――――そう言っていたのはどこの誰だ…!?

しかしそんなことを言ってもこの調子では意味などないらしい。

「まったく…何だそりゃ」

呟いていたルーファウスは、ブツブツと文句を言いながらも結局出かける支度をし始めた。

 

 

 

車は厳禁だと言われたので、その店までは電車を使用する。

電話がかかってきた時点で自宅に帰っていたルーファウスは、着替えをして、それから出かけなくてはならなかった。徒歩+電車という具合でその店に向かう途中、セフィロスの説明した店の場所についての詳細を思い起こす。

店の場所も店の名前も聞いたことがない。だからどういう店なのか分からない。

過去セフィロスと共に行ったことのある店はほぼ、暗くてボーッとした気だるい雰囲気の店だった。そういうのは大体セフィロスが見つけ出してくるので、ルーファウスは「ふうん」とか「へえ」だとかいう感じで付いていくだけだった。二人は高給取り同士ではあったが趣向が微妙に違う。だからこうして店なんかに行くと、その違いがはっきりする。

店に向かう途中ルーファウスは、今度はどんな場所なんだろうか、などと思っていた。

セフィロスのことだからまた気だるい場所なのだろうか。

しかしそれにも増して、いきなり会おうだのというのはどういった風の吹き回しなのだろうかということが頭を巡った。雷はまだ鳴っているし、雨は一層酷くなっている。

気の利く神羅の電車は、車内放送で「本日、大雨注意報が発令されました。一部雷による被害があった模様」などと天気を伝えていたものだが、それを聞きながらルーファウスは、雷の被害にあったのは俺だし、と突っ込みを入れずにはいられなかった。

それはそれとして、とにかくその電車はルーファウスを指定の店まで近づけてくれた。

そして指定の店の最寄駅で降り、更には徒歩何分というのをトボトボ歩く。

その間、傘などというものを差してはみたものの、風も酷くなっていたので、それはあってないようなものだった。

そんな数々の困難を潜りぬけてルーファウスがその店についたのは、電話がかかってきてから約一時間は経過した時であった。

 

 

 

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