その男は確かにセフィロスだった。全力で探しているはずの男。

その男は、ルーファウスから身を離すと、すっと目前にまでやってきてこう言い放つ。それはゆっくりとした口調で、そして少し笑いを含んでいた。それを聞きながら、ああ、こんなにも嫌な響きが近くにあると、ルーファウスはそう思う。

「さして驚かないんだな。つまらない」

かつてそうしたように、ルーファウスはセフィロスを睨んだ。

「何しに来たと…聞きたいか?」

余裕を携えた笑みをこぼしてそう言うセフィロスに、ルーファウスはそのままの表情を向け続ける。正にセフィロスの言葉通りだったが、厳密にいえばそれだけではない。

しかしそれは敢えて言わずに黙っていると、セフィロスはふっと笑ってルーファウスの頬に手を添えた。

「俺は元々ソルジャーだ。然るべき場所に帰ってきたというだけの話…そうだろう?」

「なっ…」

「それとも俺はもう敵そのものか?」

「……」

何も答えられなくなったが、心の中では反論と疑問が渦巻いている。それは口に出せばきりのない話である。何故というより前に、おかしいのだから。

セフィロスは自ら立ち去ったのだ。それを今更そんなふうに言うのは、どうにもオカシイ話である。

セフィロスの視線は容赦なくルーファウスに注がれ、やがてその顔がルーファウスの顔に近付いた。頬すれすれのところをすっと横に交わすと、セフィロスはルーファウスの耳元である言葉を囁く。

「―――――――――賭けを、覚えているか?」

ゾクッとするほどの声は、全身を逆撫でするかのように響き、その言葉の意味はルーファウスを過去に返らせた。

それは先ほどまで思い出していた、例の内容である。

“どちらが先に世界を滅ぼすか、賭けをしよう”

世界を滅ぼす――――――――賭け。

「覚えているようだな…感心する。ルーファウス、これは俺からの餞別だ」

ふっと笑う息が耳元を霞め、そうした後にルーファウスの口元に何か違和感が走った。体勢をそのままにしていたセフィロスの手が、ルーファウスの唇を捉え、そしてその中に何かを放ったからである。

「っつ…何だ…」

思わずゴクリ、と飲み込んでしまった後にそう声を絞り出すと、ルーファウスは焦ったような表情を向けた。

このままではセフィロスのペースにはまってしまう――――――それは危険だ。

何をしようとしているのか、それは良く分からない。分からないが例の賭けが関係することは確実で、それは世界の破滅が関係する事柄である。それは一見して大それた話ではあるが、セフィロスならやりかねない。というより、確実にこなすことだろう。

「身体が…熱い―――」

内面から滲み出るような熱さが、ルーファウスの身体全体を包んでいた。それは急激に大きくなる。まるで熱があるかのような感覚である。

視線で、あの薬は何だったのかを問うと、セフィロスはふっと笑って、

「増強剤…とでも言っておこうか」

そんな言葉を口にした。

「これはお前と俺の賭けだ。賭けの相手は強くなければ、な」

そう言うセフィロスを、ルーファウスは凝視する。

何故そんなことをするのか…その答えがそれだというなら、あまりにも身勝手な行動だろう。賭けをしようと振ったのはセフィロスだし、その賭けを実行するためにこんな小細工までしてくる。

でも、それはルーファウスの望むそのものだった。

セフィロスのような基本的な強さ、それが欲しいと思ったのは事実だ。となれば、その増強剤というのはルーファウス自身を強くしてくれるのだから、本望ともいえる。

疑問が残る部分は数多くあるが、セフィロスが敵であれ、その薬で強さを得ることができるなら……。

「俺は――――――強くなれるのか?」

身体の熱さに視界が霞み、バランスが崩れる。思わずセフィロスの腕を掴むと、頭を擡げながらルーファウスは呻くようにそう呟いた。

「ああ、そうだ。俺がそれを手助けしてやる」

そう言ったセフィロスの腕が、ルーファウスの手を払い、そして倒れこんだ身体を受け止める。ただでさえ熱い身体が、人間の体温を感じて更に熱さを増した。

熱い――――――――――。

呆然とする中で、ルーファウスは目を閉じる。

セフィロスの身体が僅かに動き始めたが、それすら思考の中ではどうでも良いことで。

ただ、熱くて。

ただ、強くなれるなら何でも良い――――――意識を失う最後の瞬間、思ったのはそれだけだった。

 

 

 

この一粒の薬で、お前と同じ場所にいけるのなら―――――――――――。

 

 

 

毎夜、薬を与えられた。

 

毎夜、薬を口に含む。

 

毎夜、失いかけの意識の中で服を脱ぎ捨てる。

 

毎夜、淫らに求め絡み合う。

 

 

 

これで強さを手に入れられるなら、小さな代償に過ぎない。

必要なのは強さ。

基本的な強さ。

お前と同じくらいの。

 

 

 

目前に翳される一粒の薬を見て、ルーファウスはひどく苦しげな顔をする。

「く…れ」

その薬が欲しい。その薬をこの体内に流し込んで、溶け込むまで。

血液の中を巡るまで。

手を差し出したルーファウスを押さえ込んだセフィロスは、その薬を己の口に含むと、ゆっくりとルーファウスに口付けた。そうして口伝いに一粒の薬がルーファウスの体内に流れ込む。次第に熱くなっていく体に、ルーファウスは自然と衣服を脱ぎ去った。

それはもう既に習慣になっていた。

あの日以降、毎日のようにやってくるセフィロスに、ルーファウスはいつの間にか疑問すら感じないようになっていた。まるでそれが当然かのように。

あの一粒の薬の為にセフィロスはやってくる。

だからそれは必要な行動だ。

そんな意識の中で、ルーファウスはセフィロスの持ってくる例の薬を口にしていた。その薬があれば、それを飲み続ければ、おのずと強くなれる。そう思うと、セフィロスにその薬をせがむことすらあった。

ただ、その薬を口に含んだ後に必ずセフィロスと身体を重ねるようになったのは、未だに説明できないことだった。

が、それすら習慣付いてしまっており、今更何かを反論する気もない。強いていえば、それは薬を貰う代償みたいなものだ。身体などどうでも良い。問題は強さなのだから。

社長室のドアに鍵をかけると、ルーファウスはソファに横たわった。

合図する必要もないほど自然に、身体の上にセフィロスがのしかかる。そうして熱い体は、のしかかるセフィロスの身体を更に引き寄せた。

グイ、と引いた瞬間に口付ける。

たったそれだけの動作なのに、それでも身体は妙な反応を返すようになっていた。唇が重なる瞬間に、何故か身体の内面から何かがほとばしるような感覚になるのだ。

「う…っ…」

その感覚の中で、舌を絡ませる。奇妙なほどに柔らかく絡まる舌は、お互いの身体を貪る前菜のようなものかもしれない。

ドクン、と脈打つのさえ全身で感じることができる――――――――それは強さの証明なのだろうか。

所々息を漏らしながらも、ルーファウスはセフィロスの胸部に指を這わせた。胸を覆う服を急いで取り払うと、背中に腕を回し、両の太股でその身体を捉える。

「これでまたお前は強くなる…」

耳元でそう囁いたセフィロスは、ルーファウスの絡まった腕と足をそのままに、曝け出された肌に舌を這わせる。

首筋に、腕に、胸部の突起に、それは巧みに動かされていく。

「あ…っ、っ」

ルーファウスの半開きの眼の中には、セフィロスの銀の髪が映し出されている。それは快感に伴って揺れていた。

この男の有する強さが―――――――欲しい。

そう思うと、途端にセフィロスという男を貪りたくなる。重なり、受け入れて、一つになり、そうして全てを手に入れたい。

その思考において、この行為は決して間違ってはいない。それが当然であり、正しい事だ。

「強さが欲しいか?」

「欲し…い」

セフィロスの問いに、ルーファウスは迷うことなくそう答える。するとセフィロスはふっと笑い、そうか、と呟いた。その後すぐに、ルーファウスの身体は快感を覚えて大きく波打った。

局部を握りこまれ、それを恐ろしいほど柔らかく撫で回される。身体の内部が極端に熱いせいか、それは通常の感覚を大幅に上回っていた。激しく動かされるよりも、そうして優しく撫でられるほうが余程感じてしまう。触れられただけで反応してしまうのだから仕方ない。

「…はっ、あ…もっと…」

せがむ言葉すら当然のことのように宙に舞う。その言葉の後には必ずそれに応えるような行為が返される。乱れには、多いな反応が忠実に返るという具合。

緩やかに揺り動かされる局部に、ルーファウスは恥じらいもなく喘ぎの声を漏らした。それはセフィロスの手の動きと同様に長く続けられ、やがてそれよりも大きな快感に辿り着いた時には、呻きにも似た声に変わる。

「セ、セフィ…ロスっ…」

ルーファウスの両の足は、ぐっと上に掲げられ、そうして恥部を晒すような状態まで前方に倒された。太股の間からは、強く勃起したものが、隠す場所もないほどに露になっている。

その状況は分かっていたが、不思議とルーファウスの中に恥ずかしさなどは無かった。呻きの間に漏らした言葉の通り、望むのはもっともっと強い刺激。

もっともっと強く、深く。

何か冷たいジェル状の物体を狭いその場所にたっぷりと塗りこむと、セフィロスは指でそのぬめりをゆっくりと広げる。周囲と、そして窪みとを刺激した後に、そっとその指を押し込む。それはとても簡単な作業である。

容易に受け入れるルーファウスの身体に、セフィロスは笑いを漏らした。

潤滑なのは、塗りこんだそれだけの問題ではない。もう既に身体がそういう事に慣れきってしまったことも一つの理由である。

「慣れたものだな…なあ、ルーファウス?」

そのセフィロスの言葉は、ルーファウスの脳には残らない。通過してどこかに消えてしまったかのように、ルーファウスは別の言葉を口にして返答とした。

それは、欲求から表れる言葉。

「は…やく…っ、もっと…」

「ふうん?」

首を傾げるようにしながらも、セフィロスは笑う表情を続けている。それをルーファウスは見つめていたが、もうマトモに捉えることなどできていなかった。

セフィロスの下半身に手を伸ばすと、ルーファウスは欲する物体を握り込む。それからすぐにそれをこするようにして要求すると、その期待は意外と早く叶った。

ズッと身体に異物が入り込む感覚―――――――それを覚えて、ルーファウスは思い切り顔を歪ませる。それはもう慣れたとはいっても、やはり少し痛みを伴うものである。

「ああっ、ぁあ…!」

抑えることもなく声を上げると、その声に続いて異物感が奥深くまでやってきた。徐々に挿入されてくるのが、リアルに伝わる。

ひどく―――――――――感じてしまう。

繋がった周囲の肌が擦れあうのを感じて、最後まで挿入を果たしたことを知ると、セフィロスはそのまま律動を始めた。

塗りこんだものの冷たさと体内の暖かさが交じり合う。

動きは、あまりにも潤滑で…徐々にスピードを増して。

「んっ、ぁああっ!も、っと…っ!」

「まだ足りないのか?」

仕方無い奴だな、そんな言葉を口にしてセフィロスは、そのままのスピードで、更に奥深くを突くかのように強く局部をぶつけた。

弾けるような、淫猥な音。

それが何度も何度も部屋の中に響く。

その度にルーファウスは、激しく声を上げると共に、更なる刺激を求めるために自らも腰を振った。

お互いの動きがぶつかり合い、お互いの体内で快楽が走る。それは身体を巡り、先端部に集中する。

「ほ、し…いっ!…ぁあっ、もっと…!」

「その調子だ、ルーファウス…」

もう既に達する域まであるのに、最後までルーファウスの口は欲求を言葉にした。それは毎夜同じように繰り返される。

当然のように。

何故ならその行為は正しいことであり、そして―――――――。

 

強さの証明だったから。

 

 

 

欲しい――――――――

 

ただ、それだけ。

 

 

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