二人だけの時間

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「絶対嫌だ!」

「何でそんな我侭を言うんだ!仕事なんだぞ、分かってるのか!」

「嫌なものは嫌なんだ!絶対嫌だ!」

「むうう…この分からず屋が!!」

響き渡る喧々囂々―――――――それは単にルーファウスとその父親の声であった。

二人が何をそんなに喧々囂々しているかといえばそれは、翌日に決まった会議のこと。

その会議は唐突に決まり、こうして副社長であるルーファウスにも出席を促すように伝えられたわけだが、ルーファウスときたらそれを絶対嫌だと拒否する始末であった。

それは勿論のこと、許されるわけがない。

社長たるプレジデント神羅としたらば、嫌も何も無い、というくらいの話である。

がしかし、ルーファウスにしてみれば、そんな急遽決まった会議など出席したくもなかった。例えそれが立場上必要であっても、急遽決まったことがそれなりの重要度を擁していることを分かっていても、それでも嫌だったのである。

プレジデント神羅は、何故そんなに嫌なのかと聞いたものだが、ルーファウスはそれには答えなかった。だものだから、プレジデント神羅の怒りは正に絶頂である。ここでもし何らかの頷ける理由が提示されるのであればそれなりに考慮もできようが、それすらもない。

そんなわけだから、正に火花。

「ああ、そうかそうか!分かった!お前の責任能力の無さにはほとほと呆れたな!」

「ふん、勝手に言ってろ」

壮絶な親子喧嘩の末に行き着いたのは、そこ。

しかしそれでもルーファウスは、絶対に折れるようなことはなかった。

 

 

 

翌日の会議に、ルーファウスは欠席となった。

プレジデント神羅には公言しなかったものの、ルーファウスがその会議を執拗なまでに嫌がったのには勿論理由というものが存在する。

それは、一つの約束があったから。

それはちゃんとした理由である。そもそも用事が入っているんだといえば立派な理由だろう。でもその用事がプレジデント神羅に公言して理解してもらえるような用事でないときたらやはり黙っているほうが懸命である。それに例え会議に出たとしても、発言をしてそれが通る可能性などプレジデント神羅を前にしたら無いも同然なのだから、出席しようがしまいがどちらでも一緒だろうと思う。

そんなわけで我を通してそれを欠席したルーファウスは、かねてからの一つの約束の為に準備を整えていた。

ある一つの約束。

それが何かといえば、ある人物との時間、である。

その人物はかの英雄で、実はちょっと前からこの英雄とはこうして時間を共有していた。しかしこれはなかなか困難を極めていて、やれ時間が合わない、やれ用事が入った、などと言って当日キャンセルということが少なくない。今回だってああして緊急に会議などが入ったりするとキャンセルになってしまい、そうするとまた当分は一緒に何かをするということができなくなってしまうわけで、ルーファウスはそれだけは絶対に避けようと我を通した次第だった。

英雄との時間は多分、他の誰かから見たら本当に大したことのないものなんだろうと思う。特にどこかに行くというわけでもないし、せいぜい食事をするかその程度のものでしかない。しかしそれでもそんなちょっとした時間が大切で、ルーファウスはその度に何かしらのプレゼントを用意していた。

「今回はきっと喜んでくれるだろうな」

ルーファウスは、あと一時間やそこらに迫った英雄との時間を前にして、何やら想像を蠢かして笑った。デスクに両肘をついて天井の方を見遣ると、あれやこれやと色々浮かんでくる。セフィロスの喜ぶ顔などを想像してみると、否が応にも顔が緩んでしまう。

セフィロスと会うのは、大体二週間に一度くらいのペース。

それがたまにキャンセルが入ると一ヶ月に一度のペース。

そんなペースの中、会える時に必ずルーファウスが用意しているプレゼントというのは、どこかの並の兵士からすれば眼が飛び出るくらいの高価なものだった。おおよそ何百万ギルくらいする高価な品を、その都度その都度プレゼントしている。普通に考えたらまるで貢ぎものとしか言い様のない品々であるが、それでもルーファウスにとってそれは必要なことで、それを上げることで喜んで貰えるのが何だか嬉しい。

だから、次から次へとプレゼントの山は積みあがる。

そんなルーファウスが今回用意したのは実に実用的なもので、多分セフィロスにしても喜んでもらえる品だった。

きっと喜んでくれるな、そう思うと笑みが止まらない。

「ええと…時間は?」

ふと時計を見遣ったルーファウスは、見遣った先にある時計が予定の時刻の三十分前を指していることに気付いて、すっと身を上げた。

用意は先程から完璧だから、もうそれほど時間のかかることはない。後はちょっと身だしなみを整える程度。

それをサッとこなしたルーファウスは、顔をパンパンと小さく叩くと、引き出しに閉まってあったプレゼントを手にして颯爽とその部屋を後にした。

 

 

 

待ち合わせは、ある公園。

普通だったら人目に付くだろうこんな公共のスペースで待ち合わせをするのは、何もそれを期待してのことではない。この公園が、いかにも穴場スポットだからである。

子供用の遊具がある公園はそこらにあったがこの公園はそれとは少し違っていて、非常に大人向けだった。面積自体とても小さいし、そこにあるものといったら二人がけのベンチが二つほど。公園は360度高木に囲まれており、陽の光があまり差さないので少々薄寒い感じがある。

そんな具合だから実用性に欠ける公園で、これといって利用するような人もそうそういなうふうだった。ペットの散歩に人が通るくらいはありそうだったが、それも大体時間が限られているのだろう、今迄ルーファウスは此処で誰一人として会ったことはない。

そこを敢えて待ち合わせ場所に選んだ二人は、神羅に係わり合いのある者には気付かれないようにこの逢瀬ともいえる時間を過ごすことに成功していた。だから、二人のことを知るものはいない。とはいえ二人は神羅の副社長と英雄である、年齢差こそあるもののビックネーム同士がそこにいることはそれほど不思議でもなかったかもしれないが。

待ち合わせの時間まであと3分。

そのくらいになって、そわそわとしてベンチに腰を下ろしていたルーファウスは、手にしていたプレゼントを何度も何度も確認しながらも、今日はあんな話をとかこんな話をとか、色々なことを考えていた。

そうして定刻までを過ごしていたものだが、どうやらその時刻が過ぎてもそこに英雄の姿は現れない。

もしかしたら時間が押しているのかもしれない。

そんなことを考えて辛抱強く待ってみるが、それは10分、20分と過ぎても変化はなかった。

そうしてとうとう定刻を30分も過ぎたときになって、ルーファウスはとうとう不安になってきたものである。

「今日…じゃなかったかな?」

まさかそんなことはないはずだ、そう思いながらもチラとそんな不安が走る。その後には、もしかしたら無断キャンセルだろうか、とそんなことが浮かんでくる。

そうして考えていくと次から次へと不安要素が過ぎり、何だか段々と意気消沈してきてしまう。ある事ない事色々と脳内に巡り来るのは何故だろうか。

しかしそうしてルーファウスがあれこれと考えて沈んでみたりしている内に、ふと公園を囲む高木が―――――…

ザワワ…

そうさざめいた。

それから、

シン…

そう鎮まる。

「?」

何だ今のは、風もないのに――――――?

ルーファウスはそんなふうに首を傾げると、次の瞬間にふっと背後に気配を感じて、バッとその方向を振り返った。さっきまでは誰一人としてこの公園にいなかったのだから、気配があるなんておかしい、そう思って。

しかし。

「あ…」

「遅れたな、すまなかった」

そこにいたのは、紛れも無く待ち人だった。

あんまりの急な登場の仕方に思わず固まってしまったルーファウスだったが、それがセフィロスであったことに急速にホッとする。

セフィロスは今さっきまでの任務を思わせるふうな感じでどこか外の匂いを纏っており、その手には正宗が握られていた。それはこの二人だけの時間には余程似つかわしくない物体であることは言うまでもない。

しかしセフィロスはそれを気にしないようにルーファウスの隣に腰を据えると、少してこずってな、などと遅れた理由を口にした。

「緊急任務だとか言って、通常の任務にコブがついた」

全く困ったもんだ、そう愚痴りながらも足などを組んだセフィロスは、もう一度謝りの言葉を口にすると、やっとルーファウスの顔を見遣る。専ら強さばかりが評価されるものの外観の造作もそれに劣らないその人は、少々ルーファウスをドキリとさせる。ただでさえ久々なのだから尚更だろうか。

だからなのか、つい遠まわしな会話をしてしまう。

「コブは…そんなにすぐに片付いたのか?」

そんなことはどうでも良いのについそんなことを聞いてしまうと、セフィロスは、ああ、などと言いながらもこんなふうに続けた。

「緊急だったからな。まあ適当に。…それよりお前も待っただろう」

「そんなことない。今さっき来たばっかりだ」

どう考えても30分プラスαは待っているくせにルーファウスがそんな回答をすると、セフィロスは少し笑う。どうやらそれが嘘であることを見抜いているらしい。

「嘘をつけ。今日は緊急で会議があったらしいじゃないか。しかもお前、それを断固として断ったんだって?」

「なっ…何で知ってるんだよ!?」

一体どこでその情報が流れたのだろう、そう思って焦ったものだが、どうやらそれはセフィロスも知っていて然るべき情報だったらしい。何せ、そもそもそのコブがそれに関連していたのだから。

「俺の任務のコブは、その会議で話があるから、という内容だったからな」

「セフィロスに話?一体あの親父、何を考えて…」

「そんなわけだから、俺は今、任務中だ」

「は?」

何だそれは。

任務中も何も、今此処にいるではないか。それともこれは生霊か何かか?

そう思ってルーファウスが妙な顔つきをしていると、セフィロスは任務について語りだした。それは、例の会議でされた話そのものでもある。

 

 

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