FIFTEEN

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15の誕生日、父親は何一つ与えてはくれなかった。

今までもそうだったので、そんな事には慣れている。

父親が与えてくれるのは――――――汚れきった現実だけ。

 

不思議と変わりなくそこに存在していたのは、1つの存在。

その人物は神羅の治安維持部隊「ソルジャー」の、クラス1stに位置にいた。

わずか10代の頃から――――。

「アレは特殊なんだ。強い。神羅の財産の一つだな」

その言葉を受けて育ったルーファウスにとって、その存在が自分よりも父親の中で大きい事は許し難い事だった。

まだ少年の頃の心の痛み。

その後そんな事を考えることが無くなったのは、その滅法強いという存在と、彼自身が近い仲になってしまったからかもしれない。

 

5つ歳の離れた、ソルジャー。

神羅の誇る、ソルジャー。

 

名前は「セフィロス」と聞いていた。

ルーファウスが神羅カンパニーに出入りし始めた10歳の時、セフィロスはソルジャークラス1stの地位についた。

勿論それは肩書きである。

その以前からセフィロスは、子供ながらに神羅でのソルジャークラスの仕事を担っていた。

その頃から誰よりも強い力を持っていたのだ。

鋭い目を持ってる奴だ――最初の印象はそれだった。

けれど、ふとその印象が薄れたのは、15の時。

父親が何も与えてくれなかったその年に、ルーファウスは初めてその人物と口をかわした。

彼は今や青年で、20歳を迎えたばかりだった。

時はまだ戦争中で、その中でも軍需産業を逆手に取って経済の発展を見せていた神羅は、ソルジャーを戦場に投入していた。

戦場で鋭く切り込まれるセフィロスの力―――。

誰しもが彼を賞賛した。

戦争は、セフィロスを「英雄」に仕立て上げたのだ。

 

 

 

その戦争半ば、戦局も終盤を迎えようとする中で、一旦神羅に戻るようにと言われ、理由も分からず帰還したセフィロスを待っていたのは神羅の社長―――ルーファウスの父親だった。

「良くぞ無事で帰った。…そんなのはいらぬ世話か?」

嫌な笑いと共にそう言うプレジデント――――そう呼ばれるようになった社長に、セフィロスは用件だけを聞きたいと冷静に言い放った。

神羅の中でも特待クラスの広間でその会話はさえており、まだ15だったルーファウスもまた、そこに忍び込んでいた。

 

『明日はセフィロスが帰還する』

 

そう言う父親の言葉に、ルーファウスはドギマギとした。

英雄セフィロスが――――――帰ってくる。

帰還した彼を一目見てみよう、そんな好奇心だった。

だがその広間で、ルーファウスはただモヤモヤとした落胆を受けただけだった。

自分の父親は、セフィロスに、鋭い切れ味と輝きを持った最高級の剣と、数個のマテリアを渡していた。

そして、「二十歳だそうだな。誕生日プレゼントでもやっておこう」

――――そう言った。

愕然とする。

自分より、セフィロスを選んだ父親。

特別、期待していたわけじゃない。

けれど―――。

15歳。それはルーファウスにとって特別だった。

幼い頃から、15になったら会社についての知識をやろうと言われていたルーファウスは、その会社というものの実態云々ということよりも、父親が自分の為に動いてくれる事が大きな期待としてあった。

いや、それ以上に―――その言葉が嬉しかったのかもしれない。

家庭など顧みずに仕事をする父親に、自分も何かできる―――そう思えた。

けれど。

「セフィロス…」

憎悪の対象だった。

長い銀髪、切れ長の目、スラリと伸びた体――全てが。

それらを渡されたセフィロスは特に何も言うことなく、その広間を後にした。

「ふん、無愛想な奴め」

そう呟きながらプレジデントは笑みをこぼしていた。

セフィロスの姿を追って、何となく広間を出たルーファウスは、セフィロスの背中を見ながら思い出した。

戦場に帰るんだ、あいつは。

そことなく血の匂いがするのは気のせいだったろうか。

何を気に留めることも無く、ただその姿を見てそう思っていたルーファウスは、視線の先の彼の動きが突如止まったのにビクリ、とする。

ゆっくりと振り返る―――そして。

神羅の手入れの行き届いた長い廊下で、2人は初めて言葉を交わした。

「――――ルーファウス、だったか?」

姿に気付きそう言ったセフィロスは、思っていたほど恐ろしい雰囲気ではなかった。

「そう、だ」

自分よりも5も年上で、強さといったら半端ではないその相手に、せめてもの威厳を持ってしてそう言う。

その言葉に、どういう訳かセフィロスは笑いなどを浮かべた。

嫌な笑いでは無かった。

「―――――やろう」

そう言って何かを投げつける。

それは、先ほどのマテリアだった。

「なっ…これはあんたが…。俺は、こんなもの…いらないっ!」

悔しさが襲い、思わずそれは叫びに変わる。

「そうか?それは回復マテリアだ。俺はもう持ってる。―――回復させてやったらどうだ?」

「回復…って。誰を!」

セフィロスは斜め下を向いて、呟くようにこう返した。

「―――お前自身を」

それだけ言うと、その姿は小さくなり、やがて消えていきそうになった。

悔しさと同時に、何だか訳の分からない気持ちがこみ上げた。

目の奥が熱くなるのを感じながら、ルーファウスは無意識に叫んでいた。

「―――あんた!」

もう遠くにあった姿が一瞬動きを止め、そして振り返った。

「…生きて…帰ってこいよ!」

続けられたルーファウスの言葉に、優しい微笑みが返る。

「―――――心配するな」

そうして今度こそセフィロスは返っていったのだ。

戦場へと―――。

 

 

 

その2年後、戦争は完全な終結を迎えた。

 

 

 

15の歳、約束通りルーファウスは神羅の知識を叩き込まれた。

しかしそれは既に期待していたものではなく、与えられたものでもなくなっていた。

本当に与えられたもの―――それは絶大な存在だった。

その存在は、あらゆる意味で強さの象徴へと変わっていく。

だが。

それが“救い” という名の仮面をかぶった“崩壊”の始まりだったことに、誰も気付くはずが無かった。

 

 

END

 

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2002/06/03 UP