Trash

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この世に、俺を本気にさせるものがあるとすれば、

それは――――――――…

 

 

 

毎日ゴミ出しをさせられている少年を、セフィロスは見つめていた。

良く目に入る。

金髪の、小さな少年。

多分まだ15歳にもなっていないだろうというくらいの、それは少年だった。

最近の神羅はここまで幼い子供まで兵士に取るようになったのか。そんな感想を抱く。しかし振り返れば、己などはごくごく幼い頃から此処にいるのだということに気付き、ふいに苦笑などを漏らす。

セフィロスは日がなその少年を眺めていたが、ある日ふいに、その少年に話しかけてみようという気になった。特別な理由はない。ただ、何となく、その日そう思い立ったのである。

「おい、お前」

場所は、ゴミ集積場だった。

お世辞にも良いシチュエーションとは言えない。

少年はセフィロスの呼びかけに振り返り、そして少し驚いた様に目を見開くと、少しした後にやけに冷静な声で返答をした。こんにちは、そんな返答を。

やけに真っ当なその返答は、セフィロスにとって面白いものではなかった。しかし面白さを追求するために話しかけたわけでもないし、特に問題は無い。強いて言うならば、ごく普通の少年だな、というくらいだ。

「お前はいつもゴミを出しているな。お前が担当しているのか」

「別に担当というわけではありません。ただ、いつも俺がゴミを出すハメになるんです」

「ハメになる?」

「罰ゲームなんです」

「罰ゲーム…」

苛められてでもいるのだろうか、そう思いセフィロスは眉を顰める。

そういうのは好きじゃない。

我関せずの精神を自負してはいるものの、そういう話は胸糞が悪い。反吐が出る。そう思いながらセフィロスは黙って少年を見つめていたが、ややすると少年はこう言い放った。

「変な苛めとかじゃないです。真っ当なことです。俺は訓練成績が一番悪いから、仕方がないんです。成績が悪い奴がゴミを出すことになってますから」

「…そうなのか」

なるほど、そういう事情か。

セフィロスはそう納得したものの、どこか釈然としない気持ちも抱えていた。これほどハッキリと物を言う少年が、訓練成績のワーストなど取るものだろうか。恐ろしく体力が無いだとか運動神経が無いだとか、そんな事情が無い限りは考えられないことである。

少年は、やけにハッキリとした目つきをしていた。

物言いもハッキリしているし、これといって悪いところなど思いつかないふうである。それでも訓練成績はワーストだというのだから、人は見た目ではないというのは本当なのだろう。

「ワーストから這い上がれば良い。そうすればお前がゴミを出さずに済む」

セフィロスがそんなことを言うと、少年は少しだけ笑った。

しかしそれは、この場には相応しくない、どこか挑戦的な笑みである。

「別に、俺はゴミを出したくないわけじゃないです。汚名返上も、特には考えていません」

「?何故だ?」

「だって、頑張っても仕方ないから」

少年はそう言うと、すっかりゴミを捨て終え、パンパン、と手をはたいた。それからセフィロスを見遣ると、馬鹿丁寧にお辞儀をし、

「自己紹介が遅れました。俺、クラウド・ストライフです」

そう言った。

 

 

 

クラウド・ストライフ。

その名前がやけに頭の中に残っていた。

妙な少年だった。そう思う。

やけにはっきりとモノを言うわりには成績が悪く、そのくせ挑戦的。だけれど頑張ろうという情熱が見当たらない、いわば厭世的な少年である。はっきり言って支離滅裂だろう、まるで一貫性が無い。

あんなのを良く入社させたものだ、という気持ちと、どういう少年なのか、という好奇的な気持ちが、セフィロスの中には渦巻いている。

毎日任務をこなすばかりでこれといって楽しみを持つことがなかったセフィロスは、日常の中にふいと入り込んできたその少年について、いつの間にかあれこれと考えるようになっていた。最初はただ、良く目に入るというそれだけだった。しかし一度話してみるとその奇妙な雰囲気にますます好奇が湧き上がり、その少年がゴミを出しにくるときには必ずそこに向かうようになっていたものである。

なんてことはない、ただの興味。

しかしそれは、これといって何もない日常の中では、やけに大きな出来事のように思われた。

クラウド・ストライフ少年と二度目の話をする機会が出来たのは、最初に話した日からそう遠くない日のことで、セフィロスにとって大きな任務もなく特別なこともない実に長閑な日のことだったものである。

春を過ぎた、少し憂鬱な季節。

空は晴れていたが、もう既に夕暮れ時であったせいか、周囲は暗かった。

いつものようにゴミ出しに来たクラウドに気付いたセフィロスは、何気なくその姿に近づき、何気なくその姿に声をかける。

「今日もゴミ出しか」

「あ…この前の」

クラウドは、突如話しかけられたことにそう驚きもせずに返答した。肝が据わっているのだか何なのかは分からないが、こういうところも不思議だと思う。

せっせとゴミを出し終えたクラウドは、やはりパンパン、と手を叩き、全身でセフィロスに向き直った。そして、生意気そうな笑みを見せる。

「お疲れ様です。良く会いますね、いつも此処に居るんですか」

「いや…たまたまだ」

「そうですか。じゃあ、偶然ですね」

会話は一旦そこで途切れたが、クラウドはそのままその場を動こうとしなかった。ただじっとセフィロスを見遣っている。

少し話しでも出来ればと思っていたセフィロスにとってそれは好都合だったが、しかし上手い具合にそこに留まったクラウドがやはり何だか奇妙に思えた。普通であれば、用件が終わればすぐ帰るだろうに。

「この前の事で…少し聞きたいことがある。お前は本当にワーストトップなのか」

セフィロスが切り出したその言葉に、クラウドは特に表情を変えずに切り返す。

「そうです。それがどうかしましたか?」

「いや。俺にはどうもそう見えなかったもんでな。こう言うのもおかしいが、お前はどこか普通と違う気がした」

「…普通と違う?」

今までの生意気そうな態度を一変させたクラウドは、少しくぐもった調子でその言葉を反芻した。余程意外だったのか、それとも心外だったのか、少し眉根が潜まっている。

ただでさえ奇妙な少年の、更に奇妙な態度を見て、セフィロスは好奇心は少なからず深化した。

「この前お前は、頑張っても仕方が無いと言っていたな。それには理由があるのか」

「…何でそんなことを聞くんですか」

「少し気になったからだ」

クラウドは少し機嫌を損ねたとでもいうような真面目な顔をして、別に、とだけ答える。しかしその口調はどうも嘘を言っているような適当さを含んでいて、逆にセフィロスの中に取っ掛かりを生んだ。

きっと何か理由があるのだろう。そう、ピン、と思った。

だからそれを聞き出そうと口を開くと、寸での差でクラウドが言葉を放った。しかしその言葉は、答えではなく質問である。

 

 

 

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