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拝啓 メロン様
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メロン…それは果物の中でも高級と呼ばれる果実。
網なんかついていた日には思わず「うひょ!」と嬉しくなるのがこの果物である。
クラウドはこのメロンが大好きで、特に網のついたヤツなんかは憧れの的だった。
しかし網メロンは更に高級なので手など出せるはずがなく、クラウドはそれを見るとあまりの高級さに気を失うのが常であった。
そんなんだから勿論、口になどしたことがない。見た瞬間に気を失うのだからそれは仕方無いことだが、できることならこれを
一度食してみたいというのが情というもんだろう。
そんなクラウドにチャンスが巡ってきたのは、ある日のことであった。
神羅の英雄セフィロスと密かに恋人関係にあったクラウドは、時折ひっそりと恋人タイムを満喫していた。
しかし二人には普段からの業務内容に多大な格差があった為、そんな恋人タイムを作るのも一苦労だったのである。
だから、会いたいのに会えないというギャップが生まれるのは当然のことで、
大体のところこれは年上の英雄セフィロスが何とか時間を合わせるということで解消していたのだ。
そんなある日の恋人タイムのこと。
貴重な恋人同士の時間を手に入れた二人は、当然のことながらその時間をじっくりと楽しんでいた。
久し振りの時間はやはり豪華な食事で彩りた…いところだが、残念ながらこの二人にはそういった習慣がなかったので
そこはいつも通りの質素な食事で済ます。それからやっぱりいつも通りに神羅の放送するテレビなどを見ながら時折愚痴をこぼし、
その後は静かに珈琲タイムなどと洒落込んだ。
…そこまでは良い。
そこまではまだ可愛らしい恋人タイムだろう。
しかしこの恋人タイムというものにはちょっとした悪夢があり、クラウドとしてはそれがどうにもこうにも微妙な気持ちだった。
勿論セフィロスとの恋人タイムは好きだけど、その悪夢が好きになれない。が、セフィロスの方はこの悪夢が大好きらしく、
毎回のようにクラウドにこの悪夢を見せるわけである。
その日も、悪夢はセフィロスのにんまりした笑みから始まった。
「クラウド…今日はイチゴでどうだ?」
「い、イチゴ…??」
――――来たあああ!!
心中ではそう絶叫し仰け反りながらも、表面上はシラを切るふうにそんなことを言うクラウド。
しかしその意味は残念ながらもう十分にわかっていた。
イチゴ…それは初恋の味。のみならず、ファーストキスの味。
一体どこの誰がそんなことを言ったのだか分からんが、ともかく世間では良くそんなふうに言ったりする。
しかしどうだ、クラウドの初恋の味はどっちかというと魚の頭部の骨のとりにくい所みたいに苦かったし、ファーストキスなんかは
自慢じゃないが鉄の味だった。誰かさんの唇が運悪くかさかさでうっかりそれを剥いたせいで血が出たから…
ってそんなことはどうでも良いが、ともかくそんなふうに言われるのがあのイチゴとかいう奴である。
しかし此処でいうところのイチゴとはそれではない。
それではなく…。
「くく…もう準備は出来ている。さあ来い、クラウド」
「げっ…!」
何時の間にやらセフィロスの手に握られていたのは、女峰だった。巨峰ではない、女峰である。くどい。
山盛り1パック498ギルのお得かどうか分からないソレを手にしたセフィロスは可愛らしい数粒を手にすると、
あろうことかそれらを自分のズボンの中にポトッと落とした。
…最早そこはワンダーランドinブラックホール。
「さあ、クラウド。今日はいちご狩りだ。どんと来い」
「……」
どんと行きたくない。
「難だったらこっそり来ても良いぞ」
どっちだよ。
「ふふ、いつも通り手は使うな。あくまで口だけ、口だけだぞ」
「…は、はあ」
これは所謂変態行為に近いのではないか、いやむしろそのものズバリじゃないかと思っているクラウドだったが、
それは口が裂けても言えないことだった。
何しろ目の前には、捉まえてごらんなさいと言わんばかりに女峰が待ち構えているのである。
しかしどうだろう、セフィロスの性格からしても女峰はどう考えても股間に入り込んでいるわけで、それを口だけ使って
いちご狩りというのはエロ行為の前座としか言い様がない行為だ。だったら普通にベットに行けば良いじゃないかと思うのは
とっても健全な思考だったが、それはセフィロスには理解してもらえない類のことらしい。
股間に女峰…っていうか字的に巨峰の方が合ってるんじゃないかと思ってしまうのは何故だろうか。…多分気のせいだろうが。
「お、おじゃましまー…す…」
憂鬱だなあ、そう思いながらセフィロスのズボンをそろそろと下ろしたクラウドは、前かがみになってセフィロスの股間にお邪魔した。
そこは最早ワンダーランドで、視覚的に危険な匂いが漂っている。イチゴの匂いも漂っている。
その上そこはイチゴのせいでいかにも変な感じに膨らんでいた。
「あ、イ、イチゴだあ〜!」
頑張ってムードを盛り立てようとそう声を上げたクラウドは、セフィロスJr.の上にちょこんと乗っかっているイチゴをサクッ口でゲットする。
それどころか更にもう1個、更にもう1個とゲットしていったものだから、イチゴはあっという間にセフィロスJr.の前から姿を消していった。
あっという間に、イチゴ狩り終了、である。
「何だ、もう終わってしまったか…」
そこに、さもつまらなそうな英雄の顔。
「こんなの序の口だよ」
そこに、さも嬉しそうなクラウドの顔。しかして心中は「やっと逃れられた」という塩梅。
が、そんなふうにクラウドが安堵していられたのも束の間、セフィロスは何ということかこんなことを言い出した。
「今日はやけに早くてつまらなかったな…もっとこう、ゾクゾク感が欲しかったのだが…」
そのゾクゾク感とはどないなものなのかとツッコむ暇すらない。
「やはり第二弾が必要か…うむ、そうだな。そうだそうだ、第二弾だ。クラウド」
「だ、第二弾…!?」
まさか今度はキウイか何かを入れるのか!?、そう思って冷や冷やしたくラウドだったが、どうやらキウイではなかったらしい。
しかしだからといって安心できないのが英雄である、何しろ彼は何が何でも第二弾をしてゾクゾク感を味わいたいのである。
それより早くやろうよ、と進言してそれで済めばまだ良いがそうできないあたりがこの英雄の特徴だったのだ。
何かを思い付いたようにニヤリとするセフィロス……最早「何?」なんて聞きたくない。
それは…。
「……メロンだ」
「―――――――――!!!!」
その瞬間、クラウドの脳天にサンダガが走った。
今何と言いました?、そう聞き返したい。
よもや「メロン」などと言いやしませんでしたか?、そう追い討ちをかけたい。
しかしあまりの驚愕に口をあんぐり開けたままだったクラウドには、残念ながらそれらの言葉を発することはできなかった。
「実は昨日ある幹部からメロンを貰ってな。良いタイミングだ…クク」
「幹部からメロン…!!!」
やっとのことで口を開いたクラウドが発したのはそんな言葉である。
幹部からメロン…まるで棚からぼたもちみたいなそのテンポの良い響き…嗚呼、あまりに羨ましすぎて涙が出そうだ。
しかしそんなクラウドに更なる衝撃を与えるべく、セフィロスはその幹部から貰っただとかいうメロン様をどこからともかく
スイッと取り出した。そしてそのメロン様の容姿にクラウドは恐れおののく事となる。
だって…―――――――網がある…!!!!!!
「あ、あああああああ網が、網が、網が…っ」
ひいっ、そう悲鳴を上げたと同時に目の玉が飛び出るほどの形相でスタタと後ずさったクラウドは、まるで恐いものを見るかのように
小刻みに震えた。
嗚呼、あの素敵なボディ。
そして網。
もう何度食べたいと願ったかわからない、もう何度頬張りたいと願ったか分からない、むしろその網を逐一むしってパクッとやりたい
くらいの憧れの的……クラウドの心境といったらそれはもう凄まじいことになっていたが、セフィロスの方はそんなことはさっぱり
わかっていない様子で首を傾げている。
「どうした、クラウド?そんなに、メロンが嫌か?」
「い、いいいや、いや、そうじゃ、そうじゃな、ななない…」
「…おい、どもってるぞ」
「ひいっ!!」
一体全体どういうリアクションなのだろうとセフィロスは再度首を傾げたが、まさかクラウドがメロン(特に網)に対して多大な
憧れを持っているとは知らなかったので、此処で素敵な勘違いをした。
それというのは…。
「…分かった。お前の気持ちはよーく分かったぞ。そんなにこのメロンが嫌いなんだな。…クク、それも面白いな」
何を勘違いしたのだかそんなふうに言ったセフィロスは、さも嬉しそうに顔を歪めるとそのメロンを手にウキウキとした調子で
滅多に使わないキッチンへと向かっていく。
セフィロスの頭にあったのは、嫌いで仕方無いメロンを嫌々ながら舌先で咥えるクラウドの姿だった。嫌いなのだから
勿論そこで涙を浮かべるのは当然で、セフィロスとしてはそんなクラウドの想像に良く分からないエロティシズムを
見出していた。…らしい。
そんな具合にセフィロスはゾクゾク感を味わいたいが為に幹部から貰った網メロンをサクッズバッと切ったわけだが、
それが終わってクラウドの元に戻った時には思わずそのメロンの欠片をポトリと落としてしまったものである。
何でってそれは、クラウドが気絶していたからだ。
「!?おい、クラウド!どうしたんだ!」
床に倒れて白眼すらむいているクラウドは、念仏かはたまた呪文のように「網…メロン…幹部…網幹部…メロス…」と呻いている。
どうやら相当混乱しているらしい。髪が網の幹部はいるが網幹部はいない。メロスは走り去った後だ。
しかしそんな混乱すら耳に入っていなかったセフィロスは、これは一大事だと思ってついには救急車を呼んだ。
その際セフィロスも混乱していたらしく、彼は、
「メロスが倒れたんだ!」
と言った。
いつの時代だよ!?、そうツッコミを入れる者はいない…。
翌日、神羅経営による超絶高級病院に運ばれたクラウドは、あんまりにも高級すぎてピカピカしているその病室で
原因不明の吐き気に襲われながらも取りあえずのところ笑顔だった。
見舞いにきていたセフィロスは、さも心配そうな顔をしている割には、
「俺が悪かった。大丈夫だ、次はさすがに林檎にしよう」
などと相当訳のわからん事を言う。
それに対してフジ林檎ね、と言ったクラウドは多分相当気分が悪かったに違いない。
そんな具合に調子が良いんだか悪いんだかという状態で語らっていた二人だが、それも暫くするとふっと途切れざるを得なくなった。
何故ってそれは、見舞い人が来たからである。
それは…そう、ザックスだった。
「おーっす!クラウド、元気になったかー!」
明るい調子でそう入ってきたザックスは、見舞いの為なのだろう、手にフルーツバスケットを持っている。
それはもしや高●のフルーツでは!?、そう思うくらい高級そうなそれは、ちょこんとバスケットの中に居座っていたものだが、
それにしてもザックスがそのような高価そうなものをもってくるだなんて意外だった。
「なあ。これ、見舞いにもってきた!」
「ほんと?ありがとう、ザックス」
そう礼を言ってみたものの、クラウドの表情は芳しくない。
だって、それはあんまりにも高級そうだったのだ。庶民には目の玉が飛び出るくらい高級そうだったのだ。
…というわけで、此処で一つ悲しい出来事が起こる。
何しろそこには…―――――。
「…網いいいいいいいいい!!!!!!?????」
…そこには、つんと澄ました網付きメロン様がいらっしゃった。
病室には、気を失ったクラウドと、ムンクのセフィロスと、ぽかんとしたザックスの影が薄ーく延びていた。
その後クラウドが、あれほど憧れた網付きメロン様が苦手になったのは悲しい出来事であった…終幕。
END
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