マッサージにようこそ!
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 ある日のこと。
 ミッドガルにあると噂のマッサージにやってきたセフィロスとクラウドは、それぞれ日頃の疲れを癒そうとマッサージ師に己の体を預けていた。
 "アナタの心と体を解きほぐす★快適マッサージ・まさお"
 いかにも怪しいキャッチフレーズ、そして星記号。語尾の"まさお"に至ってはお前一体何者なんだと突っ込まずにはいられない。っていうか魚屋っぽいんですけど。うお!…まあ良い。
 んが、こんな怪しいマッサージでも雑誌に載るほどの腕前なのだ、これは一度ご相伴に預かりたいというものである。
「え〜どうもどうも、では早速マッサージをしようと思うんですけど…」
 店にやってくると、すぐにマッサージ師が現れて二人を前に両手をコネコネした。
 クラウドはそれを見て、何だか胡散臭いなあと思っていたが、セフィロスの方はちっともそんなことは思ってないようで、憮然として「ああ頼む」などと言っている。
「では、まずお一人づつ別の部屋でマッサージをさせて頂きますので、そちらの少年はこちらに、それからそちらの殿方はこちらへどうぞ」
「ああ」
「俺は殿方じゃないんだ…」
 どうでも良いところにショックを受けたクラウドは、それでもとにかくマッサージ師に言われるままに店の奥のほうにある部屋へと進んでいった。
 セフィロスと同じ部屋で受けられないことは悲しいけれど、この際そんなことは言っていられない。それにセフィロスはそんな事をちっとも気にしてないようだし、クラウドが此処で我侭を言ってもとても聞き入れてもらえそうにない。
 取り敢えずマッサージ師に連れられてある部屋に到着したクラウドは、その部屋の中心に置かれているマッサージ台に腰を下ろした。よく病人を運ぶのに使う担架みたいな感じの台で、何だか妙に心もとない作りをしている。
 本当にこんなところでマッサージするのかな?
 クラウドはやっぱり何だか不安になったが、それでも一緒にやってきたマッサージ師が妙にニコニコしているものだからそんな素振りなど見せられなかった。
「では、マッサージしますから服を脱いで下さいね〜」
「は、はい」
 そう言われ、クラウドは上着を取り払って上半身裸になる。
 そうしてマッサージ台に横になろうとしたのだ…が。
「何やってるんですか!!!」
「ええっ!?」
 言われた通りにしただけなのに突如そんなふうに叫ばれたものだからクラウドはビックリしてバランスを崩した。そのおかげで派手に背中を打ってしまいジンジンと鈍い痛みが走る。マッサージで疲れを癒そうと思ったのにこれでは本末転倒だ。
「お、俺、何か間違ってますか…??」
 ビクビクしつつそう聞くと、目前のマッサージ師はいかにも偉そうにこんな事を言った。
「脱いでくださいと言ったじゃあないですか。脱いでもらわないと困ります」
「え?え?だって…」
 クラウドは思わず自分の上半身を見やった。
 どこからどう見てもそこには肌があるわけで、いかにもこれは"脱いでいる"という状態だと思うのだが…一体何が違うのだろうか。
 はて、一体この人は何を言っているのだろうとクラウドが首を傾げると、マッサージ師はクラウドの下半身を指差して、それですよそれ、と素っ気無く言った。
「ウチのマッサージは全裸でやるんですよ。それが"まさお流"なんです」
「ええ〜!?全裸ああああ!!?」
 そんな、絶対にありえない!
 クラウドは大いに焦ると、そんなの無理ですよ、とか、俺はまだ未成年だから、とか、お母さんに怒られるから、とか、もうとにかく何でも良いから下半身を晒さずにすむように言葉を乱打した。
 がしかし、マッサージ師はあくまで素っ気無い。
「そんな我侭言ってもらっちゃあ困ります。ウチ30分交代なんですから早くしてもらわないと。もし少しでも出たら延…」
「す、"少しでも出たら"なんて!そ、そそそそんな恥ずかしいトコ見せられませんっ」
「はあ?時間ですよ時間!」
「…あ。」
 ――――――どうやら少々ヒートしすぎているらしい…。
 ともかくマッサージ師曰く1分でも出たら延長30分の値段が加算されるということらしい。一応今回のマッサージ代はセフィロス持ちなので、そんなところで迷惑はかけられない。
 見せたくない、見せたくはないけれど…でも。
「じゃ、じゃあ…あの。…脱ぎます」
「はいはい、じゃあお願いします」
 クラウドは恥ずかしいながらもマッサージ師の前でズボンを下ろし、下着までを下ろした。その間マッサージ師がじっとそこにいたものだから顔なんかはもう噴火しそうに赤くなる。何しろ今まで全裸なんかは両親とセフィロスにしか見せたことがないのだ。それだというのに、いくらマッサージとはいえ赤の他人に全部を見せてしまうなんて…何だかスゴク恥ずかしい。
「え、えと…じゃあ…お願いします…」
 クラウドはマッサージ台の上に横になると、恥ずかしさのあまりに両手で顔を隠しながらそんなふうにマッサージ師に告げた。
 それを受けてマッサージ師、じゃあ、とマッサージを開始する。
 ―――――――が、しかし。
 …何だかおかしい。何かがおかしい。明らかにおかしい。
 だって何だかモゾモゾするし、そもそもマッサージってこんな感覚なのだろうか。今までこんなふうにマッサージを受けたことがないから良く分からないけれど、それはどうにもこうにもおかしな感覚だった。
 そして、それはとうとうクラウドを叫ばせるに至る。
「ぎゃああああああ!!!!!!!」
 
 
 
 その頃、その隣室ではセフィロスが眉間に皴を寄せていた。
 セフィロスは壁にぴっとり張り付いて、勝手に開けた壁の穴から隣室の様子をじっと伺っている。おいおいマッサージはどうした!?という感じだが、肝心のマッサージ師はマッサージ台でぐったりと伸びてしまっていた。
「やはりな…普通のマッサージではないと思っていたが、こういう事だったか」
 セフィロスは両目をギンギンに光らせながら穴の中から隣室を覗き見ると、時折うっかり垂れそうになる涎を啜りながらもそう呟く。
 この部屋に通され全裸になれと言われたとき、何かがおかしいと思ったのだ。
 まあそれでもセフィロスとしては何も問題が無かったため躊躇なく全裸になったわけだが、そのあと始まったマッサージとやらがまたあんまりにも陳腐だったため、セフィロスは痺れを切らせてマッサージ師に一撃を食らわせたのである。その結果、マッサージ師がマッサージ台に寝転がっているという事態になったわけだが、まあそれも仕方ない。何しろセフィロスのお眼鏡に叶わなかったのだから。
「それにしてもクラウドの奴…あんなに喜ぶとは何たる事だ」
 穴の向こうのクラウドは、ひぃひぃ言いながらも一応はマッサージを続けている。しかしそのマッサージ風景たるや普通ではない、何せクラウドはのたうちまわっているのだから。
 セフィロスには陳腐だと思えたあのマッサージも、どうやらクラウドには効果覿面であるらしい。
 …にしても、許せないのはクラウドが全裸を了承したことである。
 まあマッサージ師に言われて仕方なくそうなったのだろうが、それでも何だかセフィロスとしては許せない。
 その上更に許せないのは、マッサージ師がクラウドのナニにまでねちねちと触っていることである。嗚呼、許せない。全くもって許せない。
「あの変態マッサージ師め。あれは俺だけが触れて良いものだというのに…!」
 けしからん、そうセフィロスは憤っていたが、それでも隣室のマッサージを止めるには至らなかった。それは別に、クラウドにマッサージを受けさせてあげようとか、そういう親切心では別にない。そうではなく、それは単にセフィロスの趣味だった。
 そう…確かにマッサージ師が自分に断りもなくクラウドのナニをくにくにしているのはけしからん。
 けしからんのだが、それでもそれはある意味景観でもあった。
 だってクラウドときたら、どうも何か勘違いしたような表情をしているのだ。
 "あ、あっ、ちょ…む、無理です!ほんとに、もぅ…あ、ああ…ぁ!"
 "これしきのことで音を上げないで下さいよ。まだ序の口なんですからあ"
 "で、でも!あ!ぎゃああ!…あ、あ…っ、や、やだ…ぁ"
「…いかん、鼻がむずむずしてきたな…」
 ついでに下半身までむずむずしてきたが、それを口に出すのは空しいのでやめておく。
 とにかく隣室のクラウドときたら、マッサージだというのに何だかやばい声を出しているし、表情なんかは微妙にうっとりとなっている。まあマッサージだからこそその表情ということも言えそうだが、此処のマッサージが普通のマッサージと違って下半身までいじるとなるとどうもそれとは異なるような気がしてならない。
 "あ〜もう…ほんと、勘弁…してっ!もう、ほんと、無理っ"
 "いやいや、まだ足りないですから。それにほら、遠慮しなくて良いですよ"
 "む、むりですっ!だ、だって、おれ…あっ"
 "恥ずかしがらなくて良いんですよ。もっと声を出した方が良いです"
「…いかん、いかんな。これはもう辛抱できないな」
 セフィロスは食い入るように見ていた穴からガッと顔を剥がすと、すくっと立ち上がり、とうとう隣室へと向かった。
 しかしそれは当然、クラウドを助けるためというわけではなかったが…。
 
 
 
「も、もう無理ですっ。おれ、おれ、も…うっ」
「ですからあ、もう大声張り上げちゃって良いですから。ね、素直になりましょう」
「でも、でもっ」
 そんな危険きわまりない会話が繰り広げられていたその時、突然ガッとドアが開き、マッサージ師はすっとそちらに注意を払った。勿論、クラウドもそれに倣って注意をドアの方に払う。
 するとそこには―――――――――。
「せ、セフィロス!?」
 そこには、セフィロスが立っていた。
 しかもそれはただのセフィロスではない、あくまで"全裸の"セフィロスである。
 その精悍なガタイを目の当たりにしたクラウドは、セフィロスがそこに来たということよりも、そんな格好で普通に眉間に皴を寄せて立っているということに目を丸くした。この際自分のことは棚に上げるしかない。
「セフィロス!何て格好してるんだよ!?」
 大慌てでそう叫んだクラウドの隣で、マッサージ師が困ったように声を出す。
「あ〜困りますって、お客さん。マッサージが終わった後はちゃんと服を着てもらわないと。風邪なんかひかれちゃ困りますからあ」
 …さすがはマッサージ師、観点が違う。
 しかしセフィロスはマッサージ師のことはサクッと無視すると、カツカツとクラウドの横になっているマッサージ台に近づき、今まで散々なマッサージを受けていたクラウドにこんな言葉を投げかけた。
「どうも辛抱できなくなってな。つい来てしまったのだ」
「え。いやその、辛抱って一体…っていうかセフィロス、マッサージは?」
 全裸というからには、マッサージを受けていたのだろう。
 それなのにそれを中断してまで此処にやってきたということなのだろうか。
 そう疑問を持つクラウドに対しセフィロスは、あまりに陳腐なマッサージだったからな、とクラウドにとっては信じられないようなことを口にした。クラウドにとってこのマッサージは死ぬほど恥ずかしい上にこんなに強烈だというのに、セフィロスにとっては陳腐でしかないというのだ、これは驚きもののきである。
「ちょっとお客さん!聞き捨てならないですね!」
「ん?…ああ、お前まだ居たのか」
「居ましたよ!ずっと居ますよ!無視しないで下さいよ!」
 セフィロスの言葉を耳にしたマッサージ師は、セフィロスの背後からすかさずそう講義したものだが、悲しいかなセフィロスに一撃を食らうとサクッとその場でダウンしてしまった。…ご愁傷様、である。
 にしても、マッサージに来たというのにマッサージ師をダウンさせてしまっては元も子もない。これではマッサージなんか出来るわけが無いし、てんで意味がなくなってしまう。
「ちょ、ちょっとセフィロス!どうするの!?」
 あの強烈なマッサージから逃れられたことにはちょっぴりホッとする部分もあったが、かといってこんな状況になってしまってはどうにもならない。そう思ったクラウドは慌ててセフィロスにそう訴えたが、セフィロスの方は至って涼しい顔をしていた。どうやら余裕らしい。…一体どういう余裕だか知らないが。
 ギイ、と嫌な音を立ててマッサージ台に手をついたセフィロスは、マッサージ台の上にいるクラウドに影をつくるように覆いかぶさると、空いたほうの手でクラウドの下半身に手を伸ばした。
 そうして、先ほどまで散々マッサージを受けていた体の、特に股間を弄る。
「ちょっ…!何してんの、セフィロス!!」
 当然なことながら、明らかにマッサージとは違う手つきでソコを触られ、クラウドはビックリしてそう声を上げた。そもそもセフィロスが此処にきたことも怪しいし、それにお互い全裸だというのは、マッサージをしていたからという理由があるにせよあまりにもタイムリーすぎる。
 ヤバイ、いかにもこれはヤバイ。
 そう感じて思わず身を後ろにひいたクラウドだったが、時は既に遅かった。…多分。
「許せんな、クラウド。あんな陳腐なマッサージに感じてたのか?」
「へっ!?か、感じて…って!!」
「すっかり勃ってるじゃないか。それに我慢できなかった証拠が出ているじゃないか」
「うっ…」
 先端にうっすら浮かんだ液に、言い逃れは出来ない。…が、言い訳はしたい。だってあれはマッサージとはいえ全身をくまなく触るようなものだったのだ、仕方が無いといえば仕方が無い。その間にうっかり勃起してしまったのだって、そりゃあ勿論不可抗力である。
 ―――――――と、そう言いたかったけれど…。
「それに、お前のマッサージ風景を見ていたら無性に…我慢できなくなってな」
「え…み、見てた?」
「そうだ。あまり暇だったので壁に穴を開けて覗いていたんだ。なかなか興奮させてくれるじゃないか、クラウド」
 いやそれ別に狙ってないから!
 っていうか暇って自分が悪いんじゃん!
 クラウドは心の中ですかさずそうツッコんだが、どんなにツッコみをいれたとしてもセフィロスの心に灯った興奮を沈静化させることは出来ないような気がした。
「幸い全裸だしな、クラウド」
 マッサージのお蔭様で。
「邪魔する者は誰もいない」
 セフィロスの一撃のお蔭様で。
「さあクラウド…俺がマッサージの続きをしてやろう。最高のな」
「やっぱりそうなるのおおおお〜!!?」
 ―――――――結局。
 クラウドは、セフィロスの熱い熱いマッサージを受けるに至ったのだった…。
 
 
 
 ミッドガルにあると噂のマッサージは、相変わらず盛況であるらしい。
 全裸で受けねばならないところが難なのだが、全身のツボを刺激する一方で全身をくすぐって笑わせるという笑い療法まで用いているのはかなりの評判なのだとか。
 しかしクラウドは思うのだった。
 "アナタの心と体を解きほぐす★快適マッサージ・まさお"
 そう銘打つこのマッサージ屋は、どう考えても
 "アナタの心と体を解きほぐす★快適マッサージ・まっさお"
 の間違いだと…。
 
 
 
 END
 

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