俺はこめかみの辺りを抑えながらも微妙に絆創膏も押さえると、いつも苦労をかける、とクラウドに礼を言った。何せクラウドは親衛隊長だ。こうしてファンレターの数々を運ぶ中にも苦悩は限りないはず…しかしクラウドよ、お前は嘆くことなどないのだ。全国何兆人というファンの中でもお前は一線を画し、唯一俺の神聖なる
(※放送禁止用語の為表示できません)をその身に受けることができるのだからな。クク…。
「どれ…では早速」
 俺は早々にもそのファンレターを開封した。
 ピンクの封書とは、正に熱いメッセージであることを示しているではないか。
 俺は罪深き己の身を恨めしく思いながらもそのファンレターを眺める。
文面にはまず、セフィロス様、とあった。ふむ、まずまずの出だしだ。
 

【セフィロス様

 日頃は当社の携帯式電話システムをご利用いただき、誠にありがとうございます。
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神羅電動電気株式会社】

 
「………」
「どうしたの、セフィロス?」
「…いや、感極まってな…」
「そっか…そんなに情熱の篭ったファンレターだったんだ…」
 俺は涙が溢れんばかりの勢いだった。
 幾ら俺が全国数兆人のファンを持つ美貌の英雄だからといって、こんな陳腐な文面で嫉妬を表現するとは実に涙ぐましいこと極まりないではないか。コイツ調子こいてるから意地悪しちゃおうぜ〜的な稚拙さをそこに見出した俺は、大人であることを強調せねばと思いその文面に憤りを見せるなどという事はせず正しい対処としてゴミ箱に捨てる判断をした。嗚呼、俺よ!こんな時ほど人間の真価とは問われるものなのだ。否、俺は神と交信すべき人間なのだから歳暮…じゃなくて聖母マリアの精神で笑みさえ浮かべねばならんのだ。
「良いなあ、俺、ちょっと妬けちゃうな」
「何!妬ける!?」
「うん、だってセフィロスを感動させちゃうなんてスゴイもん。俺もセフィロスに感動してもらいたいなあ」
 見よ、この献身的な態度!
 嗚呼、クラウドよ。お前は嘆くことなど何一つ無いのだ。何しろクラウドは親衛隊長なのだし、俺の神聖なる精子をその身に受けられる唯一の人間なのだからな。
 俺はそんな素晴らしい態度のクラウドに褒美を取らせようと思い、俺を堪能させるべく最新作の美形ポーズを1分ほど決めた。しかし1分と5秒後にあの憎き絆創膏のことを思い出し微妙にポーズを変えると、クラウドの為を考えそこから2分ほどそのポーズを続けてやった。クラウドはそれを感動の眼で見つめながら祈りを捧げるふうに手を組んでいたが、俺がポーズを崩すと共に「格好良い」と言いながら溜息を漏らす。…ふっ、何と素直な奴よ。愛い奴め。
 俺はクラウドの実に素直な態度に大層感心し、ある事を決意した。
 本来これから俺は仕事に行かねばならないのだが、この際それは後回しにすべきなのだ。何故ならば全国数兆人のファンの頭角ともいえるこのクラウドがこんなにも俺を求めているではないか。そこをうっかり「俺は仕事だ。じゃあな」などと言おうものならクラウドはさめざめと頬を涙で濡らし最悪の場合縄で首を吊らんとも限らんではないか。まさかそんな事が俺にできるはずがなかろう!?何しろ俺は神に選ばれし人間であり、且つファンの声に応えねばならぬ存在なのだ。ファンを悲しませるなどというのは三文芸人のやることであって神聖なる俺が仮にそんな事をしようものならこの星は悲しみの為に崩壊しかねない。それは由々しき問題だ。環境問題や社会問題にも発展しかねない勢いだ。それはいかん。俺の態度一つで様変わりしてしまうこの世界に対し、俺は慎重且つ冷静に対処せねばならないのだ。おお、何と罪深き人間!
「クラウド、あまり時間は無いが上がっていけ。お前に夢を見せてやろう」
「え、本当に?」
 クラウドは実に素直に眼を輝かせた。
 その輝きたるや18禁…失礼、18金ダイヤモンドに勝るとも劣らぬ勢いだ。その輝きを導き出す事ができる唯一の存在がこの俺である事実を考えると、俺は自分の存在を懺悔せねばならないのではないかと思う時があるほどだ。
 そういえば懺悔で思い出したが、教会には嫌な思い出がある。いつの事だったか、部下の一人が小癪にも結婚をするだとか何だとか言い出し、遂にその結婚式当日になったにも関わらず俺に報告の一つも無かったもんだから教会に乗り込んだことがあるのだ。確かに分かる、ああ、分かるのだ。この俺に結婚の報告をするなどというのは確かに恐れ多く気が引けることだろう。「セフィロス様を裏切るような気がして胸が苦しくて報告できなかったのです!」というその心は汲んでやろう、俺は鬼でもなければ小姑でもないのだからな。無論デ○ノートも持っていない。しかし幾ら恥ずかしいといえ、俺にも祝ってやりたいという心があるのだ。まあ俺が列席しようものなら注目が俺に集まってしまうことは申し訳ないと思うのだが、しかし結婚という晴れ舞台に俺の洗礼を受けられることは決して悪いことではない。否、むしろそうであって初めて幸せな結婚生活は保障されるといって過言ではないのだ。
 まあ良い、前置きはそこまでとして、ともかく俺は教会に乗り込み彼らを祝してやったのだ。無論この俺の善行ともいうべき行為に列席者が涙を流し祈りを捧げたのは言うまでもない。その辺については神に謝らねばならないだろう。何せ神に祈りを捧げるところをこの俺が全ての祈りを捧げられてしまったのだからな。おお、父よ、許したまえ!
 しかしこの結婚式に於いて俺が実に不愉快に感じたのは新婦だ。あの新婦め、あろう事かブーケを俺に投げなかったのだ!何という愚行!何という傲慢!どこぞの馬の骨とも知れぬ女に投げおってからに、その報いは必ず神の怒りとなって襲いくるであろう。
 俺は今でも思い出すものだ、あのブーケが馬の骨に渡った瞬間の、青ざめた皆の衆の顔を。その蒼白さたるや世界の終わりを見たとでも言わんばかりだったものだ。彼らは分かっているのだ、この俺に対する愚行がどれほどの脅威を呼ぶかを…しかし安心して良い、俺は寛大なる心でそれを許すことに決めたのだからな。何、歴史には残らぬように手配はしっかりとしてあるのだ。俺は用意周到だ。
「セフィロス〜!ねえってば!大丈夫??」
「むむっ!」
 いかん!何と言うことか俺とした事が意識を宇宙に飛ばしてしまったらしい。俺は慌ててクラウドを見やると、この俺の実に多忙なことを伝えた。無論それは俺の運命ともいうべきところでの多忙についてだ。
「すまん。今、宇宙からの交信があってな。妨害電波が出ていたから立て込んでいたんだ」
「あ、そうなんだ!神との交信は終わったの?」
「かっ…そうだ。無論だ。神との交信は滞りなく終わったのだ」
「へ〜大変だなあ、セフィロスって!尊敬しちゃうな、俺」
 俺はクラウドの素直な様子にこめかみが厚…ではない、熱くなった。目頭も熱くなった。下半身も熱くなった。さあ、いざ!
「ではクラウド、暫しの夢を…」
 神をも羨む美貌でもって俺はクラウドのハートを射抜き、そしてその手を取る。このしなやかな指先、流れ出るフェロモン。ふふ、これを真似できるものはいまい。
 これほどまでに俺を敬う親衛隊長のクラウドに、俺は下半身を制御しつつ、ベットルームに誘う。
 ――――と。
 …ん?どうしたのだ?クラウドの顔色が芳しくない。これはもしや過度の緊張による現象なのか。否、そうでしかあるまい。ああ、クラウドよ。それほど緊張などしなくても良いのだ、これはお前だからこそ受けられる尊い恩恵なのだからな。お前は素直に心と体を曝け出し、俺の神聖なる愛を受ければ良いのだ。
「セフィロス、ごめん。俺、今はセフィロスに付き合えないんだ。ちょっと用事があってさ…本当にごめんね!」
「何」
 これはいかなることか!?クラウドが俺を拒否!?―――――ああ、そうか。分かったぞ。そういう事だったのか。
 つまりこれは、親衛隊長たるクラウドなりの謙虚というものだ。俺が本来至極多忙であることを熟知しているクラウドは、まさか自分につき合わせる訳にはいくまいと、わざとそんなふうに言うのだろう。何と謙虚な事か、俺はまたしても眉間が熱くなった。ついでに絆創膏がぺろりと剥がれそうになっていたからマッハの勢いで修正しておいた。これで良し。
「クラウド、お前は気にしなくて良いのだ。俺は大丈夫だ」
「あ、ごめんね。セフィロスは大丈夫でも俺は大丈夫じゃないんだよね」
「……」
 それほどまでに謙虚に振舞わずとも良いのだ、クラウドよ!!
 俺は大丈夫だと言っているのだ、気にするな!!
 俺は心の中でそう叫んだが、クラウドがそこまでして俺を気遣うものだから、此処は一つクラウドの心を汲んでやることにした。なあに、その位はお茶の子サイサイだ。アクビちゃんだ。何せ俺はハクション大魔王より寛大だ。
「分かった。では熱い夜はまた後日にな」
 俺が美形ポーズを斜め45度に決めると、クラウドは嬉しそうに笑って頷いた。そして、俺に恭しく礼などをして去っていったわけだが、俺はその背中を見ながらいつまでも感心していたものだ。あれは大物になる、きっとそうに違いない。何しろ星の命運すらも眉間の皴の動き一つで決定付けられてしまうような俺の、親衛隊長なのだ。
「うむ…」
 俺は感心しながら顎を摩ると、額から憎き絆創膏をベリッと剥がした。
 さて、俺はこれからこのタンコブをどうにかしつつ仕事に出ねばならない。何故ならば全国数兆人のファンが俺の勇姿を待っているからだ。おお、我が人生の道のりは長し。
「では…」
 俺はタンコブをさすりながら鏡の前に立ったが、それよりも先にやらねばならぬ事があるのに気づいた。それは…そう、股間のモッコリだ。こいつをシティハンターだか征夷大将軍だかから一般ピーポーに戻してやらねばならん。何せこんな風体で外に出ようものなら、俺のファンが黙ってはいないだろう。「いや〜ん!セフィロス様の股間がモッコリしてるわ!誰あんなふうにさせたのは!?」だとか言って全国規模の大捜査が始まってしまうのはいかにも心苦しいことだ。その上その犯人が親衛隊長クラウドだなどと報じられてみろ、そのショックから星は途端に崩壊することうけあいだ。そしてクラウドは永久犯となって牢に…嗚呼!それだけは避けねばならん!
「ふっ、英雄とは辛きものよ」
 俺はその運命の重さを感じながら、今日も颯爽と美貌と雄姿とフェロモンとを振りまきながら、全国数兆人のファンの為に奔走するのである。
 ―――――――嗚呼、英雄!
 只今ファンクラブ会員受付中だ。詳細はクラウドまで。以上。
 
 
 
 END
 
 

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