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日常事件簿 -------------------------------------------------------
「セフィロスなんか大ッ嫌いだ!!」 ある日の事、英雄セフィロスは恋人のクラウドに唐突にそんなことを言われた。 そのショックたるやこの世の言葉では最早言い表せない。 それでも強いて言えば▲×☆*という具合だろうか。いや、これは宇宙の言葉であるからさっぱり意味不明だが。 ともかくそんなことを言われた英雄セフィロス氏としては、何故いきなりそんなことを言われたのかがさっぱり分からなかったので、ショックであってもその原因究明をしなくてはならなかった。 しかしどうだ、本人に聞けば一番早いと思ってそうした所、クラウドの部屋にはこんな張り紙が貼られているではないか。 ―――――――“セフィロス禁止!”。 「……」 そんなわけで本人に聞くという道を絶たれたセフィロスの原因究明の旅は、困難を極めていた。
事件解決には、まず現場を調べよ。これ必須。 というわけでセフィロスは、クラウドがそう叫んだその日のままにしてあった自分の部屋の中をくまなく捜索し始めた。 まず第一に、クラウドの飲んでいたコーヒーカップを調べてみる。 ミッドガル産コーヒーに、チョコボミルクを三杯、砂糖が一杯。コーヒーカップの外装は可愛いヒヨコ柄ときているが、ヒヨコの健康状態にも特に異常は見られない。毒が盛られた形跡も無い。 「ふむ…異常は無いな」 では第二に、クラウドの座っていたクッションにズームインしてみる。 ミッドガル産高級綿を使用したクッション、およそ30万ギルで三ヶ月ローン…というのはどうでも良いがともかくこれは異常が無い。因みに検針済でつい最近ほくほくと購入したばかり。新居にはもってこいのゆったり設計でクッションは柔らかなスプリングの…というのは置いておくとして、だからともかく問題は無い。 「ふむ…これも異常なし」 では第三に、愛のベットはどうだろうか。 これはつい最近買い換えたばかりのベットで、かなり大きめである。今迄のセミダブルでは窮屈だと思い思い切ってダブルにしてみようと思ったが、それがあまりにも大きすぎて部屋に入りきらなかった為に泣く泣くセミダブルの大きめ設計のものを購入したという涙なくしては語れないエピソード付きのシロモノである。 そのベットであるが何と下には収納スペースまでついて納得お得、此処にクラウド滞在時用の物品を入れておくことまでできてしまうという溜息ものだった。 しかしどうだ、スプリングも効いているし、シーツに汚れもない。枕カバーはクラウドの希望でちゃんと青のストライプにしたし、その内容といったら今話題の低反発枕である。特に不満が出るような装備ではないはずだ。 「おかしい…此処も異常はなし、か」 そこまで捜索して何も問題が無いことを悟ったセフィロスは、ソファにどかりと座り込むと、あまりにスプリングが利きすぎて二回ほどトランポリンのようにボヨンと呼びはねたものだが、そこをマジメな顔つきでボヨンボヨンとやりながらも腕組をして唸った。 「おかしい…明らかにおかしい。一体何が不満だと言うのだ」 ヒヨコがそんなに不満か? それともボヨンと呼び跳ねるスプリングが? それともそれともベット下スペースの収納具合が? ―――――――――さっぱり分からない。 そんなわけで難航を極めていたものだからセフィロスは、一旦その場の捜索を打ち切りとして、もう一度あの日のことを思い返してみた。 そう、事件解決には被害者や加害者の立場に立つのも必要である。 「あの日…そうだ、確かクラウドはうちに泊まるはずだったのだ」 そう…その日、クラウドはセフィロス家に泊まる予定だった。 まずセフィロス宅にやってきたクラウドは、にこにこしながら世間話などをしてソファに座った。例によって例の如くそのソファでボヨンボヨンボヨンボヨンと四回飛び跳ねたクラウドは、やっぱりこのトランポリンは最高だね、とソファの事を誉めると、わざわざ自分からもう一度ボヨンとやって楽しんでいた。 そこでセフィロスは自分の腕前を見せようと思い、クリティカルなほどの手さばきでインスタントコーヒーを入れた。スプーン1杯のコーヒーをお湯で溶かすという偉業を成し遂げてそれを差し出すと、クラウドは嬉しそうに笑って言ったものだ。 セフィロスの淹れるコーヒーはいつもおいしいね、と。 そこまではまず問題が無い。あまりに順調すぎて涙まで出ようというものだ。 そうしてその先、テレビをつけてそれを一緒に見ていた。そのテレビの内容といったら神羅の株価がどうのというおよそツマラナイもので、取りあえずそれを35秒くらいは見てみたものだが直ぐにチャンネルを変えた。しかしチャンネルを変えても神羅の株価のニュースしかやっていなかったのでどうでも良くなってとうとう二人はいちゃつき出したという具合。 「クラウド…お前は本当に可愛いな」 「何言ってるんだよ、セフィロス!そんな…照れるよ…」 頬をぽっと赤く染めてそう言うクラウドに、セフィロスはニヤ…いや、にっこりと笑うと、 「よせ、そんなふうに下を向くのは。お前の顔が見えないだろう?」 そんなふうに言う。そこで思わずクラウドはこう答えた。 「うん…」 が、しかし。それはセフィロスの罠だった。 ハッと我に返ったクラウドは、唐突に「もう〜!!」と叫び出すと、セフィロスの胸あたりをポカポカと叩く。 「酷いよ!うん、とか言わせるのナシ!ずるいよ、だからいっつも俺が負けちゃうんだ」 「ふっ、それはお前、物事は良く考えて言わなくてはな」 最近二人の中で流行っていたのは“会話しりとり”だった。これはいつ始まるとも分からないドキドキなゲームで、ふっとした瞬間には始まっていたりする。いかにそのしりとりで「ん」を使わずにホットな恋人の会話ができるかというこの危険且つダイナミックなゲームは、大体の場合クラウドが負けだった。何しろ「うん」と言ったらアウトである。 そのゲームで負けたことにちょっと膨れたクラウドだったが、ソファで一回ボヨンとやると機嫌が直ったらしかった。 で、その後。 ホットな気分で会話を繰り広げていたところ、どういう経緯だかキスなどをして気分は夜に直行した。だもんだからセフィロスは、サクッと寝室へと移動するようにエスコートした次第。このエスコート具合にしてもお姫様抱っこという大演出をしたのだから不満は無いはずである。タイミングも抱き心地もバッチリだった。 そうして寝室に移ってから、まずセフィロスはシャワーを浴びる為にとその部屋を出る。その間クラウドはベットで待っているという事になったのだが――――――。 「そうだ、あの時にクラウドが叫んだのだ」 そう、セフィロスを撃沈させたあの言葉を。 セフィロスなんか大ッ嫌いだ!!、というアレである。 一体何だと思って、もう既に下半身まで脱いでいたにも関わらずその部屋に駆けつけたセフィロスだったが、その時にはもうクラウドはうわーんなどと喚いていて、どうしたと聞いてみても答えは返さなかった。 そして、隣にいた裸体のセフィロスに体当たりを食らわせてクラウドはその部屋を去っていった――――――――因みにその時下半身に打撃を受け、思わず「ウッ」とセフィロスが呻いたのは悲しいエピソードである。多分、後世にまで語り継がれるだろう。 「おかしい…一体あの時何があったのだ?」 あの時あの部屋を見てみてもそこには何も無かった。ベットのシーツは綺麗だったし、枕だって高反発になったわけではない。ピローケースだって青のストライプでボーダーになったような事実はない。問題は無いはずである。 「おかしい…おかしいぞ。おかしすぎる」 セフィロスは唸りを上げると、暫しクラウドの気持ちになって考えてみた。 あのベットの上で相手を待つという行為…それは今迄にも何度かあったわけだが、そこに何か過失でもあったろうか。 「もしや…いつもより1秒ほど遅かったか?」 そう考えてみたがそんなこともない。だって何しろまだシャワーすら浴びてないのだから。となると…。 「一人にしないで!…というようなオチか?」 いや、それもあるまい。何しろ今迄ずっとこうして直前シャワーは当然のようにやってきたことだったのだから。 「いや、待て。本当は俺が先に浴びたかったのに!というようなオチはどうだ?」 いや、それも無いはずだ。だっていつでもセフィロスが先である。何故ならセフィロスが先に浴びて、その後クラウドが浴びているその間にセフィロスは、今日のメニューを考えるからである。本日のアペタイザー的にはこういう責め方、で、メインディッシュはこういう責め方…というふうに。それが実のところちょっとした至福の時であることはセフィロスの秘密であるが、今回はそこにも到達しない内に破局してしまったわけである。 どうやら、落ち度も過失もどこにもないらしい。 「おかしい…一体何が気に食わないのだ?」 セフィロスにはさっぱり分からなかった。 考えても考えても考えても、その内お月様とお日様が交代しても、それでも訳が分からなかった。
そんなふうに考え込んだ結果、いつの間にか目の下にクマができ、ただでさえ威圧感があるセフィロスの顔にホラーがプラスされたその日、とうとう事件は解決をした。 それは一人の訪問者によって。 「よーっす!…って、うわっ!セフィロス…すっごい恐い顔してるぜ」 「元々恐い顔なんだから仕方あるまい」 「あ、そっか」 そう言った瞬間にその訪問者の頭にでっかいタンコブができたのは言うまでもない。 しかしともかくその訪問者ザックスは、でっかいタンコブをさすりながらも勝手にリビングまでを上がりこむと、ソファに腰を下ろした。三回ボヨンと跳ねた。 「そういやさ、見た?クラウドの部屋!セフィロス禁止だってさ」 「ああ…」 それが問題なのだ。 「しかもセフィロス禁止の張り紙が三枚も貼ってあったぜ」 「何!三枚も!?」 何時の間にそんなに増えたのだろうか。よほどご立腹であるらしい。 そんな報告をしたザックスはカラカラ笑うと、クラウドが残していった数日前のコーヒーを口に運んでそれをゴクリと飲み込み、数秒後に渋い顔になりながらもこんなことを言ってきた。 「でさー、あの本のことなんだけど」 「あの本?」 「ほら、この前貸しただろ?今密かにソルジャーん中で話題のエロ本」 「エロ本!?」 何だそれは。そんなものはさっぱり記憶にない。というか、まずそんなものに興味がなかったセフィロスは、そんなものを見たいとも思っていなかった。 というわけだから忘れていたのだ、それを借りたことなど。 がしかし、ザックスにこう言われた瞬間にセフィロスは思い出してしまったのである。 「セフィロス、言ってたじゃん。クラウドとの会話のネタにしようとかって」 「……!!!」 そういえばそんな事を言っていたような気がする。ということはやはり借りたのである。 しかし今の今迄忘れていたということはその本は何処に行ったのだろうか? それこそさっぱり思い出せない。 「いかん…その本をどこにやったかさっぱり思い出せない」 「マジかよ!…でもエロ本だぜ、普通そういうのを隠す場所は相場が決まってるって」 「何、それはどこだ?」 「ベットの下」 ―――――――――――ベットの下…!!!!!!? その瞬間、セフィロスの脳天には雷が落ちた。 ついでにザックスの脳天にもタンコブが落ちた。…とっても不当なタンコブが。
ベット下の収納スペースにはクラウド宿泊時の用品が詰っている。 あの日その収納スペースに手を伸ばしたクラウドは、そこでそれを発見してしまったのだ。 それは会話のネタにと思って借りたものだったのに、どうやらすっかりクラウドは勘違いをしてしまったらしい。 そんなわけでセフィロスは急遽、事実を証明にいったものだったが、悲しいかなその本には名前が書かれていなかったため、それがセフィロスのものではないということを証明することはできなかった。 そんな訳で暫くの間は、クラウドの部屋のドアから“セフィロス禁止”の張り紙が消えることはなかった。
END
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