悩み多き青年

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プレジデント護衛として、定期チェックのお供をする事になった――――というよりそう指名されたセフィロスは、ザックスの提案を受け入れる事にした。

“誰か連れてけば?”

嫌がっているセフィロスにそう提案したザックス。

ザックスは候補としてクラウドの名前を出したが、セフィロスにしても他に心当たりは無かった。

―――結果、クラウドは特にコレという目的も無く付いていく事になった。

 

 

魔晄炉とミッドガル全域。

さらには神羅内までチェックするこの定例行事は、正に実態の無いものだった。

どうせ見てやしない。

誰しもそう思っていたが、全くもってその通りだった。

プレジデント―――社長は、四六時中“ウム”だとか言ってニヤニヤ笑っている。

どういう理由で笑ってるんだ、と同行した誰しもが突っ込みたかった。

「セフィロス」

小声でそう言うクラウドに、声だけでセフィロスは応答する。

「何だ」

「俺、本当に来て良かったのかな?」

「大丈夫だ。誰も気にしてなどいない」

セフィロスの言葉は尤もだった。

集中して視線を注がれているのは、プレジデントと―――セフィロス。

この二人だけだったのだから。

「この後、食事だそうだ。―――それまで辛抱しろ」

「はあ…」

全く何の役も無いのだから、納得も何も無い。

とにかくクラウドは、その時間になるまで待つ事にした。でなければ堂々と話す事も出来ない。

―――まあ、物見遊山って言ってたしな…。

取り合えずクラウドはそうして無理矢理、自分を納得させた。

 

 

食事とやらの時間になり、身分毎にテーブルが分かれる事になった。

個人専用テーブルに、やはり英雄氏を指名したプレジデントに、セフィロスは容赦無く断りを入れる。

ソルジャーは兵士なのだからという理由を付け、ポカリと開いていたクラウドの隣の席を陣取ると、

「早く済ませ」

と、聞こえるか聞こえないかくらいの声量でクラウドに用件を伝えた。

「何で?」

気になって返答するクラウドに、セフィロスは

「終わったら外に」

と無表情で言うだけだった。

良く分からないながらも二人きりになれる事が分かり、クラウドは少し嬉しくなる。

元々どうして自分が呼ばれたかも分からなかったクラウドは、その言葉によって、やっと今回の行動に意味を見た気がした。

嬉しくて、食事が返って遅くなってしまった事だけは、後々後悔する所だった。

 

 

 

時刻はもうミッドガル時午後7:00過ぎだった。

もうそろそろ暗さが世間を包み始めるだろうその時に、セフィロスとクラウドは群れを抜け出して二人きりになった。

どういう訳か食後の談話などを続けているプレジデントは、この後、残りのチェックを続行する意志など無いようだった。

今日はもうお開きだな、そう言うセフィロスに、クラウドは「うん」と頷いた。

「どう思う?あれが神羅の頭だぞ」

「あ…うーん…」

普通、社長という立場の人間に会おうものなら、緊張こそすれ、呆れるなどもっての他である筈だ。

だがクラウドにとっては緊張という対象すらも、セフィロスにあった。

例えば今、こうして二人でいること―――。

それは心地良い緊張感をもたらす。

「俺はセフィロスの方が凄いと思う…かな」

「ほう?」

興味深い言葉を受けて、セフィロスは幾分顔をほころばせた。

「あのさ、どうして俺なんか連れてきたんだ?」

やはり気になってそう聞くクラウドに、セフィロスは少し考えてから本当の所を話した。

「―――…余計な言葉を吐いた男がいたんでな」

クラウドは、えっ、と声を上げ、そして頭に浮かんだ顔をセフィロスに伝える。

「もしかして―――ザックス、だったり?」

「何で分かった?」

というより、それしか思いつかなかった。二人の関係に気付いているのは当面の所、ザックスだけだったのだから。

ははは、と力無く笑い、クラウドはザックスとの会話を思い返した。

確か数日前にザックスは聞いて来た。

セフィロスのどこがそんなに良いのか、と。

本当の所、理由は多々あり、それは口に出来るものと出来ないものがあった。それを正直に言うのは躊躇われ、結局、いつもの調子でザックスには冗談交じりの答えを返してしまったクラウド。

「俺、さ。どこが好きなんだって聞かれたんだ。ザックスに」

ふとそう声に出して言ってみる。再度その質問を本人に言われるのではないかとドキマギしたが、返ってきたのは意外な言葉だった。

「何、お前もか」

「へ!?」

俺も聞かれたぞ、というセフィロスに、クラウドは正直驚いた。そして心の中でザックスに突っ込みを入れる。

両者に聞くなよ、と。

そう言われると、今度はその答えが気になった。

嬉々としてクラウドはそこの所をサクリと聞いてのける。

「で。何て答えたわけ?」

「え?ああ…それは…。というか、お前は何と言ったんだ?」

「うっ!」

そうきたか、と思いつつチロリと、隣で煙を吐いているセフィロスを見やる。

そして、はあと溜息をついて落ち込んだ。

言えないだろう、あんな言葉。

「どうした?余程やましい事でも言ったか」

ズバリそう突っ込まれ、うっ、と呻く。

「じゃあ…セフィロスも教えてくれる?」

「まあ、かまわないが」

結局、何だかんだと二人は耳元でその言葉を教え合った後――――。

 

爆笑した。

 

なかなか気が合うな、と言うセフィロスに、「そうかも」などと答えたクラウドは、

「でさ、それ本気で言ってるとか…無いよね?」

と一応、聞いておく。

勿論、冗談に決まっていた。理由がそれでは、あんまりな関係である。

しかし、

「全てでは無いが、嘘でも無いかもしれん」

と笑いを含んで言うセフィロスに、クラウドはさすがに恥ずかしくなってしまった。

そんな会話に明け暮れる内、空は暗さを増していった。

ふと重ねた指先が、しっかりと絡まる。

「―――今日は?」

たった一言だけのクラウドの声に、セフィロスは薄くキレイな輪郭をした唇を近付けた。

「プレジデント殿が我に返るまで、な」

そう言って、二人の影は重なった。

 

後日、トレーニングルームでばったりザックスと出くわしたクラウドは、ザックスにこう言った。

「この前のさ、フォロー無しで」

ザックスはきょとんとしつつも、クラウドとの会話を思い返し、そして「うげ〜っ」と蒼白な顔になったのであった。

 

 

END

 

 

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