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Magician ------------------------------------------
“年末は忙しくなるもんだ” そう言ってたのにセフィロスは俺を連れ出してくれる。 それがどんなに些細な時間だろうとも俺は構わなくて、例えば会えないと言い切られてしまうよりも随分と考えてくれてるんだって嬉しくなった。 大体年末ってのは忙しいのに心浮かれる。 だから俺がそう思うのももしかしたらその所為もあるのかな。 とにかく俺の心はすごくウキウキしてて、忙しくたってハードスケジュールをこなすのはへっちゃらだった。
ある日唐突に出掛けるぞって言われて、俺は超特急でセフィロスの下に向かった。 待ち合わせは人通りの少ない廊下の突き当たりで、俺が付いた瞬間にはもうそこにセフィロスの姿があった。 「ごめん、待った?」 俺がそう聞くと、 「いや大丈夫だ」 そう答えが返ってくる。 俺はその答えを聞きつつもドキドキしてた。 何でかっていうと、セフィロスの格好があまりにもカッコ良かったからだ。黒い服なんて見慣れてるけど、いつもとちょっと違う…なんていうのかな、レザーのコートをちゃんと着こなしちゃってるんだよな。 俺が知る限りそんな人はいない、これって欲目かな。 で、問題はといえばこれからどこに行くかってことだ。 俺はいきなり呼び出された訳だからそういう詳しいトコがいまいち分かってない。詳しい事聞かなくても良いってすぐに行動に移せるのは、会うって事自体が俺にとって重要だったからだ。 その重要なことが安心できる状態になってやっと俺はこう聞くんだ。 「で、どこ行くの?」 そして答えは返ってくる。 ちょっと明るい声で。 「街に」
俺たちが言うところの街というのは勿論ミッドガルの事だ。 ミッドガルは年末の忙しさで騒々しい。この時期の不思議な力で妙に馬鹿騒ぎしてる人も手伝っていつもより賑やかだった。 俺はセフィロスと並んで歩いていたけれど、いつ誰かがセフィロスに気付くか気が気じゃなかった。あれセフィロスですよね、なんて声をかけられたら俺はどうしていいか分からないし…。 でもどういうわけかその心配は無用だったみたいで街行く人はセフィロスに目もくれなかった。俺にとってはそれは何だか不思議な光景だったけど、セフィロスにとっては慣れた光景だったみたいだ。それが証拠にセフィロスは臆面もなく俺に話し掛けてくる。良いのかなあって思いつつも俺は返答なんかして。 セフィロスは街に行くなんて言ったけど、一体街のどこに向かってるのかが俺には分からなかった。それでもセフィロスの足取りがしっかりしてるってのは行く当てがあるってことなんだろう。 煌びやかな表通りを歩いてると、何だか色んな店が色んな飾りをつけたりしてる。それを見て俺は、そんな季節なんだなあって考えてた。 もうじきクリスマスなんだ。 クリスマスといえば恋人達の行事っぽいけど本当は年末祝いみたいなもんだったよな。 「クリスマスだね」 俺はふとセフィロスにそう言った。 「気付いたか。まあ街もそんな雰囲気だが」 「うん」 俺は頷きながらクリスマスという日について考える。 今まで過ごしてきたクリスマスは母親と一緒だったり友達と一緒だったりしたわけだけど、俺はあんまりその日を大切にしてた記憶は無かった。 勿論楽しみにしてたりはしたけどそれは、誕生日とか友達と遊ぶ日だとかそういうものと何ら変わらないくらいの期待でしかなくて、とにかく特別な日なんかじゃなかった。 ああ、また来年が来るんだな。 そんなふうにしか思えなくて。 多分それは俺の故郷のニブルヘイムがそれほど煌びやかな飾りたてをしない所だからかもしれない…だって今見てる景色とは180度違う。 ツリーに負けない給水塔があるくらいで。 「セフィロスはさ、何か思い出ある?クリスマスに」 セフィロスはどうなんだろう、そんなことを思ってそう口にしてみる。するとセフィロスは、「特にはないな」なんて言った。 本当かなって俺は思わず疑っちゃうよ。 だってセフィロスみたいな人がクリスマスに相手いないなんてこと考えられないし、相手がいれば大体思い出の一つや二つは残るだろうって思う。 なのにセフィロスは確認するみたいに、無いなあ、なんてまた繰り返し呟いた。 「それはその…何でなんだろ」 「何で、って…無いものは無いんだから何でも何も無いだろう?」 「いや、そうじゃなくてさ。その日だって何かはしてたわけでしょ?ってことは、それでも印象には残ってないよって事なんじゃ」 「ふむ…なるほど。そうかもしれん」 そうかもしれんって…何だそりゃ?? この調子じゃセフィロスって行事とかあんまり気にしないタイプっぽいな。まあ俺は別にそれでも構わないけど、過去一緒にいた人はどうだったんだろう。 それでもさっきクリスマスだねって言った時はちゃんと分かってたみたいだけど…。 俺はそこまで考えてふっとある考えにいきついた。 そうだ、もうすぐクリスマスって時期に呼び出しなんて―――良く考えたらいかにもじゃないか。どうして今までそう結びつかなかったんだろう。 もしかしてもしかするとセフィロスは、クリスマスだから俺を呼び出したりした―――? 俺はそんな期待めいたことを思って、ついセフィロスの顔をまじまじ見てしまった。何だか言葉は出てこなかったから、それはホント変な空間だったんだろう。それが証拠にセフィロスは「?」という顔をしている。 どうやらセフィロスは俺の思ってることなんててんで分かってないらしい。 微妙に鈍感だなあなんて思いつつも俺は、そんなセフィロスに対して…失礼だけど、可愛いなあなんて…思ったりする。 だってホントに何も分かってないない感じなんだもん。 「で…どこに向かってるんだっけ?街にはもういるけど」 俺はちょっと面白くなって笑いながらそう言うと、セフィロスはようやく「?」を解消させて笑った。 そう、なにげにもうかなり歩いてる。 街の大通りの端はもう見えてるし、段々左右の店も静かになってきた。そこまで行ったら後は左右に道が続いてるわけだけど、そのどっちにいっても静かそうだ。ってことは用があったとしてもこの道のどっかだって考えた方が良いだろう。 俺はそう予測立ててセフィロスの答えを待った。 で、その後出てきた答えは…。 「此処だ」 「…え?」 そんな言葉が、答えだった。 此処って…一体どういうことだろう? だってまだ普通に歩いてるし、立ち止まる雰囲気もない。 「それ、どういう意味?」 「どういう意味って…意味も何もない。此処は此処だ」 セフィロスはへっちゃらな顔してそんな事を言う。俺が真剣に分からないっていうのにそれってちょっぴりムカつく。 それでもやっぱり俺たちは歩いてて端はもうすぐだったから、その疑問も答えも時効になりそうだった。 一体なんなんだろう。 突然呼び出しといて、それがクリスマスだからなのかと思えばそうでもないみたいだし、どこに向かってるかっていうと目的なんか別に無いように思える。何してるかっていえば歩いてるだけだし、ホントにただ歩きデートって感じだ。 「クラウド、つまらないか?」 そう言われて俺は、ちょっと複雑な気分になった。 だってセフィロスはそんなふうに聞くくせに顔はニヤニヤ笑ってるんだもん。何だか嫌らしい。 「別に俺は…」 取り敢えずつまらないなんて事はないから、それを口にしようとすると、いきなりセフィロスは俺の言葉を遮ってきた。 「俺は至極満足なんだが」 え?―――――満足? 俺は思わずきょとんとした。 「俺は今お前とこうしていて、至極満足だ」 「そ、そっか」 俺は一転して思わず照れてしまう。 だってセフィロスがそんなにハッキリそういう事を言うなんて滅多にないし、しかもそれを俺に向かって言うなんて、ぶっちゃけて天然記念物モノだ。 今日は一体どうしちゃったんだろう…そんな事を言うなんて。やっぱり季節のせいなのかな、良く分からないけど…。 俺が独りで勝手に照れている隣で、セフィロスは言葉を続けてた。それは丁度、俺がさっき聞いたことへの答えみたいなもので。 そう…クリスマスの思い出、ってヤツ。
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