言霊
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『言霊って知ってる?』 いつか誰かにそんな事を聞かれた。 言葉には魂がある、そういう内容だった。 言葉にすればそれは真実になるんだって、その誰かは言ってたっけ? 別に言葉なんか無くったって良いのにって思ってたけど。 でも…。
今なら、少しそれも分かる気がする。
「お前、帰らなかったのか」 リフレッシュ休暇とやらで、ガランと静まってる訓練生の兵舎。 残ってるのは、俺と、あと数人。 見回りとか言って兵舎に来てたせセフィロスは、俺を見つけてそんなふうに言う。 「だってセフィロスと会えないし。大体、俺は帰る資格無いよ」 俺は本当に思ってることを口にしただけだったけど、セフィロスは何だか不機嫌そうな顔になった。 そんなにマズイ事、言ったかな? 「休暇中とはいえ、お前は残ってるんだから自覚を持て」 「自覚って?」 「残っているなら話は別だ。個人訓練に励むんだな」 「ゔ…」 相変わらず痛いトコ突いてくるんだよなあ。でも仕方無い。 だってセフィロスはソルジャーだし、会社で言えば普通に上司だし、言う事聞かないと。 でもセフィロスは嬉しくないのかなって疑問になる。 だって折角こんなふうに堂々と会えるのに。というか、普段から堂々とは会ってるけど、やっぱり二人きりとは違う。 休暇期間なら兵舎には殆ど人なんかいないし、俺は嬉しかったんだけどな。 俺はそんなふうに思いながらも、はい、なんて正直に返事をした。 「セフィロス、もう帰るんだ?」 用件は済んだといわんばかりに背中を向けるセフィロスに、俺は慌ててそんな事を言う。 本当にただの見回りなのか、セフィロスは「他に何かあったか」なんて答えてきた。 どうせ俺なんか眼中に無いんだろうな。 でも、引き止めてどうしようって訳でもなくて、俺は言葉を失う。 こういう時、何て言えば良いんだろう? もっと一緒にいようよ、なんて口が裂けても言えないし…。 だってどうせ…。 「今は“任務”中だ」 「…だよね」 やっぱそう来ると思った。 俺はちょっと悲しくなったけど、それを気付かれないように、じゃあ、と物分りの良い言葉をかけた。そして、やっぱりセフィロスはお決まり文句を言った。 「ああ。くれぐれも訓練は怠るな」
はい、分かってます。
トレーニングルームで一人、汗を流してるのも何だか変な感じだった。 それでも暇よりかは何倍か良かったから、俺は黙々とトレーニングしてやった。 日頃の訓練と同じ時間だけトレーニングするっていうのも、かなり体力を使う。 でも結局はそれをこなして、慣れた自分の部屋に向かった。 戻っても誰もいないし、何だかんだ言って休暇期間って退屈かもしれない。 だって俺は帰ろうとは思わないし。
俺は適当に飲料水だけ仕入れた。 それから部屋に向かうと…どういう訳か、そのドアの前にはセフィロスがいた。 どうしたんだろう? 「終わったのか」 立ち止まってる俺に気付いて、セフィロスはそう声をかけてきた。 「うん。ちゃんとトレーニングしてきたよ」 約束は守ったよ、セフィロス。 俺は心の中でそう付け加える。 「“任務”は終わったの?」 「ああ」 「お疲れ様です」 「……」 一応、いつも通りのやりとりの手順を踏んだっていうのに、セフィロスはどうもまた不機嫌そうな顔になった。 また変な事言ったかな、俺? 困惑してると、セフィロスはふいに「入らないのか」と視線でドアを指した。 「あ、うん。入る。…えっと、セフィロスは?」 何だか誘ってるみたいで嫌な台詞だったけど、本当にそうなんだから仕方無い。 いつも二人で会う時は、必ずセフィロスのトコだから、何だか変な感じかも。 「悪くない」 セフィロスは俺に問いにそんな曖昧な言葉を返した。 悪くない、って…本当はどう思ってんだろう? でも此処にいたって事は―――――なんて、期待するだけ馬鹿かもしれない。 「じゃあ」 俺はドアを開けて、セフィロスを招き入れた。
訓練生に与えられた部屋は、そう広くもない。というか、はっきり言って狭い、かな。 しかもこの日なんて最悪だった。 何がって、正に部屋の中は無法地帯状態だったから。 「お前、少しは片付けろ」 ちょっと呆れたふうに言われて、ごめん、と取り敢えずは返しておく。 男だったら結構「普通」で済みそうなもんだけど、相手が悪かった。 何せセフィロスは結構、身の回りは綺麗な方だしね。 っていうかそれって、もしかして専属で誰かが片付けてたりして…。 「狭苦しいな」 ごく普通に、隅のベットに腰掛けたセフィロスは、部屋の中を視線だけで見回してる。 こういう時、別に見られちゃヤバイものは無いのに、どういう訳か焦る。 「いつも此処で生活してるんだな」 「あ、うん。最初は寂しかったけど、今じゃもう慣れたよ」 「ふうん?」 初めて此処に来た時は、狭くて寒くて、それに独りきりだったから、思わずホームシックな気分にもなったりしたけど、今じゃある意味、快適って言えるかもしれない。 俺は買ってきた飲料水を取り合えず置いて、適当に腰を下ろす。 「普段、何をしてる?」 「へ?…何、って…。訓練の事、考えたりとか…」 「“とか”?」 うっ。 何でそういう所を突っ込むんだろう、この人は。 俺が普段考えてる事なんて、訓練の事か、あとは…。 この人の事、か…。 チラリとセフィロスを見てみると、珍しく笑ったりなんかしてる。 何か嫌な感じだなあ。どうせ分かってて聞いてるんだもんな。 「自分で処理したり?」 可笑しそうにそんな事まで聞いてくるんだから、本当に困る。 「そりゃ…あるけど」 とりあえず答えておいたけど、何だか次の質問が見えてきて俺は一人で焦った。 しかも正に的中って感じだ。 「何を考えながら?」 こういう時、セフィロスは本当に意地悪だと思う。 だって、本当に分かってて聞いてるんだから。 俺の答えを聞いて、だからどうって訳でも無いんだろうけど…ある意味イジメだよ、本当。 俺はちょっとイジけ気味にボソリと答えた。 「…セフィロスの事、とか…」 「―――ふうん?」 俺を見ながら、口の端はやっぱり上がってる。 やっぱ言わなきゃ良かった…そう後悔しながらも、その視線が随分と執拗で、俺は妙な気分になる。 何だろう…。 だけど良く考えたら、このシチュエーションって答えは一つじゃないのかな。 だって、特に用も無いのに夜中に二人きりで。 本当のところ、俺は休暇期間を楽しみにしてたけど、その理由はコレだった訳だし。 でも何でか、凄く照れる。 いつもはこれ程、緊張なんかしないのにな。 大体いつもと違いすぎるんだ。いつも俺が独りで考えてる場所に、今はセフィロスが…本人がいたりなんかして。 何か凄く、変な感じだ。 「クラウド。…どうしたい?」 いきなり髪を撫でられて、思わずビクッとしてしまう。 どうしたいか、セフィロスが俺に聞くのはいつもの事だ。 毎回思うけど、コレってやっぱり意地悪だよ。 そういう雰囲気に持っていくのはセフィロスなのに、いつも肝心な事は言わない。 結局最後に言うのは俺ばっかりなんだ。分が悪いよ。 でもやっぱり今日も、俺が決定打、なんだ。 「……しよう、よ」
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