喧嘩にご用心!
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その日、実に険悪なムードの中にザックスは一人ぽつんと取り残されていた。 いつもは仲が良い…というか目も当てられない位のいちゃつき振りさえ見せている二人が、どういう訳か違う方向を見ながら別々の方向へ去って行ったのだ。 何だ何だ、喧嘩かよ、とザックスは重い溜息を吐く。 こういう状況になって一番困るのは、実の所ザックスだったりする。 セフィロスからは超が付くほどの不機嫌振りで滅茶苦茶な命令はされるし、クラウドは存在感が無くなるほどの重いオーラを漂わせて泣きついてくるし、もうとにかくそれはザックスにとって最大の危機だった。 というわけで、やはりザックスは仲介もとい、仲裁役を自らしてしまう事になる。 はあ、これで何度目だろう…そう思いながら、ザックスはしくしく痛む胃を抑えた。
「ザックス〜!」 その午後、予想通り泣きついてきたのはクラウドだった。ああ、やっぱり…と思いながらザックスは「よしよし」と肩をポンポン叩く。 どうせこうなる事は分かっていたのだから、ザックスはかなり余裕だった。ただ一つ、やっぱり気張らなければならない点があるとしたら、それはセフィロスの方である。 「で、今回は何よ。何が原因か言ってみな」 「原因って言われても…」 「何だよ、原因が無いって事は無いだろ?」 「そうだけどさ…」 そう言いながらクラウドはまた、暗黒オーラをモワンモワンと膨らませていく。それに気付いたザックスは、慌てて適当な言葉をかけた。 「わ〜ちょっと待て!…落ち着け、落ち着けってクラウド。いや、セフィロスだって何か理由があってあんな態度を取るわけでだな…」 ちっともフォローになってない。 「…ザックス、セフィロスの味方なんだね…」 「わ〜!違う違うっ!断じてそんなことは無いっ!」 また妖しいオーラが増していくのを感じながら、ザックスは取り合えず否定だけしておいた。 全く困ったもんだと思う。 この二人の喧嘩はいつもこうだ。大概終わってみると、はて何でそんな事で怒ってるんだ?、とかそういう内容なのだ。しかもその後はすぐに甘々モードになるので、ザックスは努力をしたにも関らずやはり取り残されるのである。 もう度々そういう事があったので、ザックスはいい加減にそれから脱却しようという計画を前々から練っていた。 そして、その計画はとうとう今日、実行される事になったのである。 ザックスはクラウドの肩をガッツリと掴みながらこう言う。 「…良いか、まずは原因が分からないとだな、俺だってアドバイスのしようも無いって訳よ。だがどうだ。お前らときたら、それすら言おうともしない。…という訳で、だ。俺様はとってもナイスな物を作ったわけよ。そもそも俺の貴重な時間をさいてお前らの為にどうして…って、まあそれはどうでも良い。とにかくっ!俺はスペシャル仲裁セットを作り出した!」 長々とそう語るザックスを、クラウドは訳が分からないというように見つめている。 どうもクラウドには、ザックスが毎回どれ程疲れ果てているのかが分かっていないらしい。というか、セフィロスに限ってはそれ以上に分かっていなかったが。 とにもかくにも、ザックスは自画自賛の「スペシャル仲裁セット」をポケットからサッと取出した。 …それは紙とペンだった。 「…は?」 クラウドはきょとんとして、スペシャル仲裁セットとザックスの顔を交互に見る。 ふっふっふっ、と笑いを浮かべているザックスは何ともご満悦のご様子。 「良いか、これからセフィロスの所にいくぞ」 「え…でも…」 今は喧嘩中なのだから、また会ったら嫌な雰囲気になるに違いない。その思いがクラウドの顔を渋くさせている。 だがザックスは意に介さない様子でクラウドの手をやはりガッツリと掴んだのだった。 「問答無用!」 いざゆかん、スペシャル仲裁セット!!!
セフィロスの元まで約10分。 そこまで行きセフィロスと対峙すると、やはりムードは険悪になった。 どんより…、そんな様子のクラウドと、ピリピリ…、そんな様子のセフィロス。 正に性格が表れてるな、などと思いながら、キーパーソンなザックスは、コホンと一つ咳払いをした。 「良いか二人共。今日は俺のスペシャルな道具でちゃちゃっと仲直りしてもらいますっ!」 その言葉に、セフィロスはごく冷たい目線を送りながら毒舌を吐いた。 「その紙とペンでか?馬鹿を治す薬は無いらしいな」 「馬っ…!…って。ひ…酷い…」 「そんな事はどうでも良い。とにかく俺は今、クラウドとは一緒にいる気分じゃない。用が無いなら俺はもう行く」 「ちょっと待て!」 そう止めるザックスの隣では、クラウドが顔面蒼白になって泣きそうになっていた。 クラウドのセフィロス依存は過度のものだったので、それはもうキツイ一言に違いない。 ザックスは敢えてクラウドの方を見遣らなかったが、大方そういう顔になっているのは検討がついていた。 とにかくクラウドが泣きついてくる前に、この目前の鬼畜男をどうにかその気にさせなくてはならない。 そんな訳でザックスは早々に、手にしていたスペシャル仲裁セットを二人に渡した。 セフィロスはそれにまた文句を言おうとしていたようだが、そうはさせるかといわんばかりにザックスはマシンガントークで喋り始めた。 「問答無用、口出厳禁でコレをやってくれ!とにかく何が何でも良いからやってくれ。そもそも二人は話し合いが足りないっ!…というのは俺の予想だが大体合ってるんだろう?…え、何?ああ、やっぱり。ホラ見ろ、セフィロス!あんたが悪い!…っておい!ちょっと待て、どこ行くんだ!コラコラ〜!待たんかいっ!…はあはあ、あんた逃げ足早過ぎ…ってそうじゃなくだな。だからともかくこれをやって、普段言えないことをとっとと吐いちまえば言い訳だ。言えない事が溜まってると、こうやって喧嘩した時も仲直りするのに一苦労だ。っていうか普通、喧嘩したらぶちまけるもんだけどなあ。クラウドはそういう性格でもねえし…って、ああっ!また暗黒オーラ出すんじゃねえっ!…ふう、全く油断も隙もありゃしねえ。―――とにかくっ!それをやれっ!」 ビシッッ、と指を指した先にはスペシャル仲裁セットがあった。とはいえそれは紙とペンだけの代物である。 しかしザックスにおされて、二人は渋々それを目にする事にした。 「何だ、これは」 それには幾つかの質問事項が書いてある。質問ごとに欄が開いているということはやはり、添付されたペンで書き込めというのだろう。 「良いから!書いた書いた!」 かなりヤケ気味のザックスがそう言う。
訳が分からないながらも、結局二人はペンを取るのであった。 ―――だがやっぱり背中合わせの状態だったのは言うまでもない。
約30分後、それはザックスに提出された。 先に提出したのはクラウドだった。少しおどおどしている。 その後に、ムッツリしたようにセフィロスが提出した。実はもうかなり前から終わっていたのに出さなかったのは、クラウドの出方を待っていたからなのだろうか。 とにもかくにも、二人の回答はザックスの手の中にスッポリと納まった訳である。 「ふ〜む…」 それを交互に見ながら、ザックスは唸った。 スペシャル仲裁セットはあくまで仲裁の為のグッズであるから、その回答が云々という訳では無い。しかし回答した二人はそれどころでは無かったろう。 これは正にザックスの狙いだった。 「おい。唸ってばかりいないで、どういう事か説明しろ」 ぶっきらぼうな言い方でセフィロスがそう言った。かなりご立腹なご様子。が、今回はそれに怯むザックスではなかった。 フフフ、と笑いを心の中でだけ漏らしながら、さも真面目な顔つきでザックスはその回答の書かれた紙を二人に手渡した。 「ほれ、読んでみろよ」 手渡された紙を受け取った二人は、それをヒラリと表に返す。 と、そこには相手方の回答がしっかり書かれていた。
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