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真っ直ぐ、綺麗に伸びる銀髪。 クラウドはセフィロスの髪をいじるのが大好きだった。 とてもスラリとして綺麗で、セフィロスを思わせる香りがする。 たまにポニーテール状に高く結んだりするとセフィロスは怒ったが、それもクラウドのお気に入りの一つだった。 とにかくどんなふうにしてもセフィロスは綺麗な人だったから、どんなことをしてもクラウドは満足だった。
しかし、とある日のこと。 大失態を犯したクラウドは絶叫した。 「あああああああ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!!!!!」 それは、神羅に響き渡った。
廊下の向こうの方から猛突進してきたクラウドを受け止めたのは、不幸にもザックスだった。いきなり猛烈なスピードで走ってきたクラウドのタックルをくらいながら、さすがのザックスも少しよろめいてしまう。 「おいおいおいっ!何だよ、一体…」 いきなりしがみ付いてきたクラウドに、ザックスは顔をしかめてそう言う。が、当のクラウドはザックスの顔を見上げるなりいきなりこう叫んだ。 「助けてっ!」 「はあ…??」 何が何だか…そう思っていると、何やら奥の方からまたもや何かが猛突進してきた。 しかも今度はやけにデカい物体である。 「あ、あれって…」 もしや、と思いザックスは蒼白になる。こういう時に限って予感的中してしまう悲しさをかみ締めたのは、その僅か数秒後だった。 そう、それは―――――――。 「うわああっ!!」 今度こそザックスはバタン、と廊下に腰をついた。しかもその上にはクラウドが乗っかっており、更にその上には、セフィロスという大物を載せて…。 それは正に廊下での大惨事だった。 「お、重い…どいてくれ〜」 へろへろになるザックスをよそに、セフィロスとクラウドは向かい合う。とはいっても二人の顔は随分と対照的であった。 クラウドは蒼白そうで、セフィロスはメチャクチャに激怒している。そんな二人を乗せたザックスは、その下からその光景を眺めながら勘弁してくれ、と思っていたが、その内おかしな事に気付いた。 「あれ…」 何かが、変である。 そう、何かが。 セフィロスの――――。 そこまで考えて、ザックスはやっとそれが何なのか分かった。セフィロスの感じがどうもいつもと違うと思っていたら、それは髪の長さだったのである。 今まで腰まではあった長い銀髪が、何故か背中の中央あたりまでしかない。何だかそれは見慣れなかったが、きっとセフィロスもイメチェンでもするつもりなのか、と勝手に解釈をし、ザックスは、 「髪、切ったんだ?」 と言った。 が、その瞬間にセフィロスの眉間がピクリ、と動く。それは明らかに不機嫌…というより、怒らせた証拠である。 しまった、とザックスが思った時には遅かった。セフィロスは激怒して、何故か背中にしょっていた愛刀の正宗をスラリ、と引き抜く。 「うわっ、やめろっ!危ないって!」 立ちはだかるセフィロスの影になりながら、クラウドとザックスは神様に祈りを捧げた。 ああ、死ぬならどうか一瞬でお願いします――――っ!! それは正に、廊下での大惨事。というか、ザックスにとっての大惨事だったかもしれないが。
事の始まりは、クラウドがウキウキしながらセフィロスの髪をいじっている時だった。 セフィロスはそうして自分の髪がいじられている間、特に動くこともできないので良く本を読んでいた。別にクラウドにそうされることに嫌悪感は無いし、むしろそうしてくっついてくれている方が嬉しいくらいである。 そう思って、クラウドがどんなふうにしようと、これといってあまり文句はつけなかった。ただ、ポニーテールだけは気味が悪いからやめてくれ、とは言ってあったがクラウドはそれが好きらしく、それに関してだけはいまいち決着がついていない。 それはともかくとして、やはりその時もクラウドが何をしようと、セフィロスは特に気にはとめていなかった。 「あ、枝毛」 ふとそんなことを呟いたクラウドは、その枝毛とやらを取ると言い出して、大振りのハサミを手にした。そしてそれを、じょきん、と切る。 「取れた取れた」 そう言って、他には無いかななどと探し始める。そうして不幸にも探し出され二本目に、クラウドはまたもやハサミをセットした。 ところがその時、不幸にもセフィロスが少し動き、髪がふわり、と浮いたのである。 「あっ」 そう声を出した時には既にハサミは、じょきん、という音を立てていた。 そして―――――床には、大量の銀髪がサラリ、と落ちたのだ。 その瞬間、クラウドが蒼白になったのは言うまでもなかった。一瞬にして、やばい、と思う。何とかセフィロスに気付かれないようにとは思ったが、そんなのは鏡を見てしまえば一発である。 クラウドはハサミを持ったままオロオロした。きっとセフィロスは怒るに決まってるのだ。髪を此処まで伸ばすくらいだから、きっとそれなりの手入れはしているだろうし、それなりに大事にしてるはずである。 何よりこの銀髪を見ただけでセフィロスと分かる。つまりそれは、その髪がセフィロスという人を印象付けるものの一つという事なのだ。 「どうした?」 すっかり感触がなくなったので気になったのか、セフィロスはそう言ってクラウドの方を振り返った。それはあくまでも何も知らないときであって、顔はかなり穏やかである。 しかし振り返った先のクラウドがあまりにも蒼白そうに口をぱくぱくさせているので、セフィロスは不審に思い眉をしかめた。 ――――――――が。 視界の下の方に写る銀髪に、はて、と思う。 何だか床に銀髪が見えるような気がする。おかしいな、そう思って視点を下の方にずらすと……。 「…何…!?」 ギョッとしてセフィロスは本をポトリと床に落とした。 何とそこにはすっかり切断された自分の銀髪があるではないか!しかも、クラウドの姿を良く良く見てみると、その手にはハサミなどが握られている。 「…クラウド」 急激に暗雲が立ち込めたのはその時であった。クラウドの背筋には寒いものがスッと通り、セフィロスの眼はみるみる内に据わっていく。 その瞬間、クラウドは咄嗟に逃げ出したのだった。 勿論、 「ごごごごめんなさいっっ〜!!!!」 そう謝りながら。
ザックスにとってその話は、呆然とせざるを得ないものだった。 はっきり言って、悪いのはクラウドである。とはいえ、何だか相手がセフィロスなだけにクラウドが気の毒にも思えてしまう。 「ってかさ…髪くらい、どうでも良くない?」 ザックスがそう言うのにセフィロスは、ふん、と少しは収まったもののまだ怒った様子で顔を背ける。 「ボサボサ髪には分からんだろうが」 「ボっ…!って。酷いな、これでも俺はちゃんとだなあ!」 ザックスがそう反論すると、何故かクラウドが、 「そうだよ。ボサボサにはボサボサなりのポリシーがあるんだよ。ね?」 とザックスに向かって言った。…はっきり言ってフォローにも何にもなっていない。 それはともかくとして、問題はザックスを除く二人である。 セフィロスはまだ少しお怒りで、やはり髪を切られてしまったのは結構にショックなことが分かる。とはいっても無くなった髪を元に戻すことはできないし、かといって早く伸びろといってもそういう訳にはいかない。 つまり、とにかく今はその長さに我慢してもらうしかないのだ。 「セフィロスもさ、気持ちは分かるけどクラウドも謝ってるしさ…もう許してやったら?」 「許すとか許さないの問題じゃない。俺の中で、これでは駄目なんだ」 「はあ?」 セフィロスの言葉にザックスは首を傾げる。どうもその長さに怒っているらしい。クラウドとしては自分の失態について深く後悔をしていたので、その言葉が自分にとって救いなのか救いじゃないのかが非常に問題だった。 ザックスの後ろになってビクビクしているクラウドに、セフィロスはチラリ、と視線を向ける。 クラウドはビクッ、とした。 が。 「クラウド、これではあまりに中途半端だ」 そんな一言が放たれて、クラウドは、ええっ、と情け無い声を出した。確かにその言い分は分かるが、じゃあどうしたら良いのかが分からない。まさか育毛剤なんかは違う効果だし、それを何とかしろといわれても困ってしまう。とはいっても原因は自分なので、何も答えられなくなってしまう。 そんなクラウドを背中に背負いつつも、ザックスは腕を組んで「あ、そうだ」などと言い出した。 「やっぱあれよ。髪は自然に伸ばすが早し!ほら、良く言うだろ。エロい奴は髪が伸びるの早いってさ」 「それは俺がエロいとで言いたいのか」 え、違うの、などと言ったザックスは、その後にキラリと光る正宗を見て素直にゴメンナサイと謝った。 しかしやはり自然に髪を伸ばすしか方法は無さそうではあった。それが一番確実である。 「きっと毎晩クラウドに頑張ってもらえばきっと早く生えるだろ」 訳の分からない事をあっさりと言ったザックスに、クラウドは更に蒼褪めた。その毎晩というのは何だ、というか頑張ってって一体……そう思って口をパクパクさせる。 「そうか、じゃあ俺の髪の為に頑張ってくれ、クラウド」 「え!?」 セフィロスまで訳の分からないことを言い出す始末で、クラウドはすっかりアタフタした。 そうする隣でザックスが、はあ、と溜息をつく。その顔はとてつもなく悲壮そうだった。 「毎晩セフィロスの……嗚呼、めっちゃ痛そー…っ」 「失礼だな。俺は意外と紳士なのに」 「いえいえ、なんのなんの。息子さんの方は野獣でしょ」 ぐふふ、と笑うザックスの後ろでクラウドはほぼ泣きそうに声を出した。 「も〜やだあ〜!!」 それは、ソルジャー組が何だかとてつもなく鬼畜に見えた瞬間だった。 とはいえ、それは勿論単なる冗談である。セフィロスがその髪の長さに不満を持っていたのは確かだったけれど、だからといってその髪を元に戻す為の方法が実際にあるわけではなかったのである。 そんな訳で、結局は自然に伸びるまで待つしか方法はなかった。
ただ、それまでの間クラウドは、その中途半端な髪の長さは嫌だというセフィロスに、今度は三つ編をすることにした。セフィロスがいうところによると、今の髪の長さでは俯いた時にパサリと落ちるのだという。 だったら、と思いクラウドが仕掛けた三つ編は、外見上“英雄”のメンツ丸潰れ状態だったが、それでも機能的には重宝したらしい。 それを見て、ちょっと可愛いなあと思ったクラウドであった。
が。
ある日クラウドは、ガバリ、と押し倒された。 確かに恋人関係で、そういうのはあったけれど、大概それはニ週間に一度だとかペースは緩かった。 が、何やらペースが速くなってきているような気がするのだ。 「なななな何っ!?」 ドギマギするクラウドに、セフィロスは上から笑いかけてこう言う。 「何だ。髪が元に戻るまで、頑張ってくれるんだろう?」 「ええっ!?」 まさか、あれ冗談でしょ!?、と言うクラウドに、セフィロスは、はて、ととぼけたような顔をする。クラウドは蒼白になった。毎晩……キツすぎる……。 けれど、セフィロスの三つ編がパラリと落ちてきてそれがクラウドの頬を掠めると、何だか可愛らしさとのギャップで、可笑しくなってきてしまった。
勿論、セフィロスのそれは、冗談だった。
END
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