CUBE SUGAR

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世の中には沢山の人が生きてる。

だけど一生の内に出会うのは、その中のほんの一握りだけ。

この時の流れの中では、絶対に出会えない人も沢山いて、そういう人と出会わないのは何故なんだろうと思う。

でも逆に考えると、今、側にいる人達には何故出会えたんだろうって事になる。

きっとそこには意味があるんだろう。

他の誰かではなく、そういう人々と出会った事。

きっと意味があるはずなんだ。

それは、すごい確率。

出会えた事は、この時の流れの中で出会えたことは――――――

 

きっと、奇跡に近いことなんだよ。

 

 

 

例えばその道を選んでなかったら、

貴方には一生、出会えなかっただろう。

 

 

 

「お前は時々、途方も無い事を口にするんだな」

そう言い出したセフィロスに、クラウドは、え、と声を出して首を傾げる。何でもない日常の一コマである。

セフィロスは任務あけのままクラウドの前に姿を現した。もう既に兵舎を出られる時間ではなかったけれど、敢えてそこから抜け出したクラウドは、寒空の下、セフィロスと寄り添っている。

何でもない、どうって事も無い。

会話が特に弾むわけではなかったけれど、これといって不快感は無い。沈黙に焦ることも無い。そういう関係は、とても良いなと思う。

「俺、何か言ったっけ?」

すっかり何を言ったのか記憶になかったクラウドは、セフィロスに見ながらそんなふうに聞く。

「もう忘れたのか、さっきのことなのに?」

「いや、だってさ…」

仕方無い奴だな、そんなふうに呟いてセフィロスはクラウドの頭をポン、と叩く。

「またまたー、子供扱いしてるだろ」

「どうせまだ子供だろ」

「失礼しちゃうな」

口を尖らせながらもクラウドは少し笑いを含んでそう抗議をした。確かに隣にいる人に比べれば自分はまだまだ子供だった。けれどそれを負い目に感じることは無いし、その人に頼ろうとかは思っていなかった。きっとセフィロスもそう思っていることだろう。

どちらかといえば、対等な関係。

随分、歳も離れてるというのに。

「で、俺、さっき何言ったの?」

話を元に戻してそう聞くクラウドに、セフィロスは思い出すふうに上の方に視線をさ迷わせる。そして。

「“出会いは奇跡”なんだとか何とか」

「ああ、そっか」

まさか口に出していたとは思わなかった。すっかり心の中で言葉にしていたものだと思っていたのに、どうやらいつの間にかセフィロスとの会話が成り立っていたらしい。

でも、それならそれで良い。

確かに出会うのは奇跡的な出来事なのだから。

「でもそうだろ?俺がセフィロスのことを知らなかったら、俺、神羅には入らなかった。セフィロスだって同じだ。英雄なんて呼ばれてなかったら、俺はセフィロスのことも知らなかっただろうしさ」

「まあな」

それは偶然が重なった、とても奇跡に近い出来事。今まで出会った一つ一つ、それがどれか一つでも噛み合わなかったらきっと、こんなことにはならなかった。

今側にセフィロスがいることもきっと、無かったんだろう。

今とても幸せだと思うから、だからこれはとても感謝しなければいけないと思う。勿論、相手は神様だとかそんな曖昧な対象なんかじゃない。

勿論、それは自分自身に。

その一つ一つを選んできた、自分に。

「お前は全てが奇跡だと思ってるのか?」

ふとそう聞かれて、クラウドは少し黙り込んだ。しかし少しして、

「全部じゃないかもしれないけど、きっと殆どはそうだと思う」

そんな答えを口にする。何だかいまいち微妙な答えである。けれどその答えにセフィロスは何故かしっかり納得をした。

それから少し笑ってクラウドを見る。

「では俺とお前が離れるとしても、それは奇跡って事だな」

「えっ」

「何驚いてるんだ。だってそういう事だろう?」

「…意地悪いよな、セフィロスって」

何でそういう方向に行くんだろうな、とクラウドはブツクサと文句を垂れる。奇跡という言葉自体、どちらかというと良い意味である。

なのにすぐそうやって終わる話をする。

これは別に本気という訳ではなくて、単に本当に意地が悪いだけである。こうしてたまにクラウドを困らせてみてはセフィロスは楽しんでいた。悪趣味といえば悪趣味かもしれないけれど、これはある意味気持ちの確認ができる。少々、荒業ではあるけれど。

そんなこんなで今日もまた嬉しそうなセフィロスに、クラウドは少し強気になってこう言った。

「でも俺、そういう時がきたらそれもちゃんと受け入れる」

珍しくマトモにそう答えたクラウドに、セフィロスはちょっと驚いた顔をする。勿論セフィロスの言葉は例え話だし、本気ではないから焦る必要もない。

けれど、受け入れるとはこれまた大層な決意である。

「そうか、強いな」

「違う。強いんじゃなくて、そういう事になってるんだったら仕方ないだろ」

「…お前な、それは奇跡じゃないぞ。そういうのは俗的に“運命”っていうんだ」

「運命は嫌だ!」

「い、嫌ってお前…」

何だか良く分からないが、奇跡と言う言葉は好きでも運命だとかいう言葉は、クラウドにとって好ましくない言葉でしかなかった。

偶然の重なりである奇跡と、必然の連なりである運命。

よくよく考えると、少し違うような気もするが、セフィロスにとってはどちらも同じような気がしていた。というか、そもそもそういう事にはあまり興味が無い。

「もしも、もしもさ、そんな事になったらさ。それは偶然で、仕方無いことだから、俺はまた奇跡にかけるんだ」

「何だそれは」

「だからさ、また出会えるよって奇跡。それに賭ける!」

「…勇ましいな」

時々勝てないな、お前には、そう零すセフィロスに、クラウドは少し笑った。

それから、予告もなしにキスをする。

時が経つにつれ段々とクラウドの行動が突飛になっていくのは、セフィロスも気付いていることだったが、こういう時はやっぱり少し驚いてしまう。

少し前までなら、キス一つさえ恥ずかしそうにしていたくせに、今となってはこうも違う。

だからセフィロスは、クラウドに対して、変な奴だ、と思っていた。

それは勿論、いい意味でだったけれど。

「今、驚いた?」

「…ああ」

クラウドは悪戯じみた笑いを見せる。

「こういうのも偶然だって思わない?」

「これがか?お前が企んでやったのに偶然なのか?」

「俺じゃないよ。セフィロスにとっては、今のキスは偶然だって事」

「ああ…。そういうものか?」

どこがどう偶然なんだか分からないが、此処でクラウドに反論しても仕方無い。そう思ってセフィロスは納得に似た言葉を返す。

クラウドがそう言うなら別に何でも良いかと思う。

結局、一つ一つの行動の全てに、神秘性でもあれば良いということなのだろう。確かにそれはそれで、ロマンはあるかもしれない。

勿論、実際はどうだか分からないのだが。

 

そんな他愛無い会話をしながら、寄り添う。

事実はそれだけだった。

それだけだったけれど、そこにほんの少しの角砂糖を溶かしてやること。

それが奇跡。

 

 

いつでも道を選ぶのは自分だから。

そこに辿り着くのは奇跡に近い事なんだ。

 

例えいつか、この場所に二人、いられなくなっても―――――

それでも、きっとこの場所にいたことを忘れたりはしない。

色あせたりなんかしない。

多分、今、そういうふうに思うことさえ、いつか選ぶ道の為の材料だから。

 

だからきっと、奇跡に近いことなんだよ。

 

 

例えばその道を選んでなかったら、

貴方には一生、出会えなかっただろう。

今までだって、これからだって―――――。

 

 

 

END

 

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