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“A” -------------------------------------
昨日、俺は訓練していた。 その後、午後20:00夕食。 午後21:00には部屋に戻って、読書してた。 午後23:00寝支度を整えて、それから日課になってる日記もどきを書いた。といってもこれは日記みたいに感情を綴ってるわけじゃない。どっちかっていうと、今日は何時何分にこれこれをして、何時何分にこれをしてっていう、いわば記録だ。そうして俺の一日は終わる。 そして眠る事、6時間。 6:00に起床。朝の体操に参加して、部屋に戻ってストレッチ運動。 それから朝食が朝7:30からで9:00までの間はプライベートタイム。 9:00から訓練が開始される。 大体俺の生活はこんなふうに単純。 毎日決まった時間、決まった規則、決まった事柄をただこなしていく。 それは俺が決めたのか誰が決めたのか良く分からないけど、俺はそれを守って生きてる。 たまにこのスケジュールが崩れる時は、午後19:00の夕食後の話で、大体相手はセフィロスかザックス。たまに同じ兵士友達。 セフィロスは優先される。だって彼は俺の恋人でもあるから。 そういう時、午後20:00に夕食を終え、21:00に待ち合わせ。 24:00には寝るから、大方30分の寝支度全般を考えて23:00には部屋に戻る。 セフィロスと会うのは2時間だけ。 その中で色々話したりする。 色々考えたり、笑ったり怒ったりして、部屋に戻る。喧嘩するときもあるけど、それでも俺はモヤモヤを心に抱えつつ生活ルールだけはきっちり守ってた。 そうして迎える午前6:00。 一日は、始まる。
「お前ってキッチリしてるよなあ」 感心してそう言ったザックスを見て、俺は首を傾げた。 キッチリしてるというのは、多分俺に放たれた言葉だけど、どういう意味かがわからない。 「それ、どういうこと?」 「いや、どういうって…その、時間とか厳守って感じじゃん」 「ああ、そういう事かあ」 なんだ、そう思って俺は笑った。もっと別の事かと思えばそんな当然のことか、と笑って。 時間を守るのは当然の事だ。 それは、キッチリしてるっていうか、俺の中では“予定が狂わないように”そうしてるだけって感じだけど、多分ザックスはそんな俺とは違う生活パターンを持ってる。 俺はただ、そういう生活が普通だってだけの話だ。 だからこうしてザックスと話をしている間も時計は必須アイテム。残念ながら訓練中の身の俺には身につけるような時計は邪魔で持てないけど、休憩室の壁掛け時計があるから大丈夫。 休憩時間は30分だから、あと10分したら俺は訓練に戻る。 そんなふうに時計を見て考えていた俺に、ザックスは笑いながらこう言った。 「今お前、残りの時間考えてるだろ?」 正にズバリって感じで俺は、 「当り!」 そう言って、ニッと笑ってみせた。だって遅れたら大変だ。 「そういうトコ、しっかりしてんなあ、お前。もしかして夜はキッチリ12:00にお休み君だったりして」 「え。そうだよ」 「は!?マジに!?」 「うん」 ザックスは相当驚いた顔をしてる。 あれ…そんなに驚くことかな?当然だと思うんだけど…。 俺はちょっと不安になって、それって変かな、と聞いてみる。するとザックスは、「いや」なんて言って手で否定し始めた。 そして最後に。 「単にすげえって思っただけ」 俺を見ながらそんなふうに言う。 俺は訳が分からなくて思わず首を傾げてしまった。すごい、ってそんな事じゃない気がして。 「そうかな…。でもザックスは?ザックスの方がよっぽど凄いよ。ソルジャーだし」 「ソルジャーって…たったそれだけかよ?」 「え。いや、だって…」 ま、良いけどな、なんて言いながらザックスはカラッと笑う。…ビックリした。気を悪くしたのかと思った。 俺にとってソルジャーというのこそ“すごい”対象だ。その他の物は別段普通なんだ。 例えば社長とかだって俺にとっては普通。何でかって言うと、俺にとって別に大切なものでもないし、なりたいとも思わないから。だから俺の中では重要じゃない。そういう意味からすると、最高級はやっぱりセフィロスってことになる。 「な。お前さ…」 「ん?」 ふと話を再開されて、俺はそう聞き返す。ザックスは少し聞きにくそうにしてたけど、やがて踏ん切りがついたように息を付くと、こう言った。 「セフィロスがいる時はさすがに違うんだよな?」 「違う?」 そう、なんていってザックスは「つまり…」と説明し始めた。つまりそれは。今みたいに時間を気にして、“きっちり”してるか否かって事だ。ザックスの質問からすると、それはセフィロスの前ではさすがに崩れるよな、というふうに思っているらしい。 でも――――――残念ながらそれは、違う。 俺はセフィロスの側にいても、時間は把握しとくほうだし、門限は11:30だ。それは譲れないし、崩しちゃいけない。 俺はザックスに、そんなこと無いよ、と言って笑った。 「俺はいつだって同じだよ。ザックスといても、セフィロスといても、一緒だよ」 「…マジに?」 うん、俺は頷く。 ザックスは特に笑いもせずに「ふうん」などと言うと、長らく口をつけていなかったジュースに手を伸ばし、それを啜った。そして多めの一口を飲み終えると、仕方無さそうな、困った笑いを浮かべた。 「あの人でも、崩せないもんってあんだ」 ――――――――そして、そう呟く。 それはホント、俺に対するってより呟きだった。だけど勿論俺の耳にも届くくらいの声量で、俺の耳はそれをキャッチしてた。 “セフィロスでも崩せないもの” それは何だか妙な物良いだった。そう俺は感じた。だってそれはセフィロスが崩して良いものでもないし、そもそも関係ないことだ。単にそれが俺の生活パターンで規則で、それはセフィロスとは別次元にあるものなんだ。 そう思ったけど俺はそれをザックスに直接伝えることなんて出来なくて、掠めるように笑う。 ザックスと俺とは、やっぱり考え方が違うからこういう事もあるよな、なんて――――そんなふうに思いながら。
30分の休憩を終えて俺は訓練に戻っていた。 少ししたらお昼で、1時間の休憩に入る。 食堂に行って日替わりメニューを頼んで、それを食べる。普通これは生活についてくるものだからお金とかは払わない。賄い付きみたいなものだ。 たまにソルジャーの人が別メニューを頼んだりすることがあるけど、俺はいつも日替わりで済ませてる。 それが“いつも通り”。 たまたま俺の隣に来た友達の兵士が、やっぱり同じ日替わりを頼んで、その料理を口に方張りながら文句を言っていた。 「このメニューにも飽きたな」 彼の好きな料理は、お子様メニューで有名なハンバーグだ。でも此処の日替わりにはあまり出てこない。サラダ・スープ・パン、それからおかずが何品か。その何品かのおかずは大体は魚と肉で、大体スタミナが付くように出来てる。胃が弱いからなんて言って嘆いてる奴もいるけど、此処じゃこれが普通だ。 好きでも嫌いでも、とにかく食べる。 「昔はさあ、喰いたいモン喰えてよかったな。今じゃ外食もできないし」 そうブツブツ呟いてる彼に、俺は一言だけ言った。 「あと20分で終わりだ。食べなくちゃ」 そう言って笑った俺を、彼はどういう訳かきょとんとした目で見ていた。何だかそれがどういうリアクションなのか俺には分からなかったけど、取り合えずはあと20分の為に目前の食事を平らげることにした。
外食の後、後半戦が始まる。訓練の後半戦だ。 食後で眠くなるのがオチなこの時間帯は、大体ストレットから始まる。多分、眠りを覚ます為なんだろうって俺は思ってるけど、本当のところは定かじゃない。 その後、大体ちょっとした講義みたいのが入る。 これはじっと話を聞くことになるんだけど、決まって心構えだとか実戦の話だとか固いもので、脱線なんてありえなかった。でもタメになるし俺はそれで良いと思うけど。 その日、いつものように講義をするはずの教官を待っていると。珍しく時間が過ぎても姿を現さなかった。10分もオーバーし始めると段々周囲がざわめき始める。 どうしたんだ、だの、休みかな、だの。 確かに次の内容に進むまで何も指示が無いってのは辛い話だ。 そうしてざわめく周囲の中俺が待っていると、更に数分してからスッと1つの影が現れた。 ああ、やっと来たんだ。 これで予定通り行くかな。 俺が心のどこかでソワソワしていたのはきっと、時間通りに事が進んでいなかったからなんだろう。 でも、その人の姿を見た瞬間、ソワソワは収まるどころか増長していった。 心がざわめく。 その人がそこにいる事にざわめいているのではなく、その人がそこにいるという事が今迄の生活パターンの中で有り得なくて、その時間的にもそぐわない気がして、乱れを感じたからだ。 勿論、俺の心と同様に周囲もざわめきを増していた。 飄々として歩き、そして、教壇に立った人。 その人は至極嫌そうな顔をしてたけど、周囲は反対に、緊張感と共に嬉しそうな顔をしてた。 教壇にバンと手を付いて、じっと俺達を見遣ったその人は、少しの沈黙の後に静かにこう言った。 「何故だか今日は俺がこの時間此処に来ることになった。だか俺はそういう事専門ではないし、何を講釈して良いか分からん。――――――早々に言っておく。去りたい奴は去れ」 その威圧感ある、威厳ある言葉に誰も何も言えなかった。勿論出て行く人もいなかった。当然だ。 相手は―――――――セフィロスだったから。 プライベート以外を共にしたことのない俺は、普段のセフィロスの顔を発見して何だか言いようの無い気分になってた。 すべてが、乱れてく。 俺も周囲も、この時間も。 セフィロスは、誰もこの場を去らないことを確認してから、ついていた手を離し、腕を組んだ。そしてそこから、講義がわりの話を始める。 こんな場で一体、セフィロスはどんな話をするんだろうか? 俺にはとても想像なんてつかなくて、ただセフィロスの口が描く動きを見詰めていた。
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