純情ロミオ

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綺麗な金髪が揺れてる。

本心見せないそのキツイ目も今じゃもう慣れ切ったもんだ。

アンタはいつだってつれない素振りさ。

そういうのも今じゃ慣れっこってもんだ。

「さっさと帰ったらどうだ?」

そんなお決まり文句で追い返そうってったって無駄だぜ。だって俺はもう見抜いてんだから、それが本音と裏腹な言葉だって事をさ。

「つれないな。せっかく俺が此処にいるってのに」

困ったふうに手を挙げてみせると、アンタはお決まりパターンのきつい視線と、軽蔑しきった表情を向けた。

あーあ、困ったもんだ。

そういうキツイアンタも好きだよ。

こんな俺の純情で傷つきやすいココロなんて微塵も知らずに、アンタは飄々と立ってやがる。まあそれも今じゃ慣れっこ、そういう方が“そそる”ようになっちまった。こんな俺はバカそのもの。でもこんな純情にアンタを好きで、つれないアンタにそそっちまう自分も結構嫌いじゃない。

相当イカれてる。な、そうだろ?

俺は仕事の合間を縫って、俺レベルじゃそうそう用事もないような本社なんかに来ては、このお偉いさんと密会。といってもこの人はアレだ、そんなの微塵も嬉しくない、それどころか迷惑くらいの勢い。そういう態度。折角ロミオになってる俺も、これじゃあんまりにもうかばれないって感じ。

でもま、それは百も承知だから俺は平気へっちゃら。

だからそうそう、俺はこの人と密会すんじゃなくって、夜這いならぬ昼這いに来たって方がしっくりくる表現だよな。

何せアンタには「アイノコトバ」も「ヤサシイホウヨウ」も無用。馬に念仏、糠に釘。つれないアンタに効く最強パンチは正にドロドロナマモノの一発勝負、俺の腕と下半身だけ。

アンタのお好みは「辛口セックス」ただ一つ。

そんなだから俺はいつの間にか純情ロミオから欲情ロミオに変身しちまった。酷いよな、これじゃ俺の性格歪んじまうよ。

「私が呼んだわけじゃない。お前が勝手に来た。…異論が?」

「べっつに。何にも無えよ」

「では帰ってもらおうか。帰り道くらいは覚えているだろう」

「はいはい」

―――――――って訳にいくかよって。

俺は帰る振りして背中を向けて、それをすぐさま元に戻した。で、速攻アンタの腕を取って、身体を持ち上げて、固い簡易ベットの上に押し倒す。

さっきまで悠々自適のオフィスが一転してピンクムード。でもって、アンタのデスクは愛のベット。ばら撒かれた書類は愛のシーツとでもしとこうか。

で…そう、アンタの答えはもう了解。

「…短絡的だな」

「そうか?一番似合うんでないの、俺達に」

キツイ視線は今じゃ性欲剤に大変身。もう遅いって、何をしても。

毎日のデスクワークと冷笑が板についてるアンタに一つ忠告しておきたいぜ。ソルジャーを甘く見んな、って。俺とアンタの間にはそりゃもう太い壁があって、それは大体あんたの肩に乗っかってるモンと俺の役職っていう、世にも嫌らしい壁。だけどそれだけじゃないって知ってるはずだよな。

そんなもん取っ払っちまえば、俺とアンタの力の差は歴然。

揺れてる金髪押さえ込むくらい、わけないぜ?

「……時計」

アンタがそう言ってデスク…いや、今やベットと化したソコの上にある時計を指したから、俺は素直にそれを取ってやった。

アンタは俺に押さえ込まれたまま、それでも余裕綽綽そのもので時計をいじくりだすと、色の違う針をきっちり一時間後にセットした。

世に言うタイマーってやつ。で、それが意味するもんは?

答えは一つ、それはアンタからの指令。

一時間で済ませってさ。

俺は「はいはい」と笑って、それを脇に置いてやった。置いたらすぐに行動開始、でなきゃ一時間は短すぎるからな。

大体一時間の愛って何だろうな。っていうかコレは愛とは言わないのか、ただのパフォーマンスか何かか。確かに愛なんて言葉は、アンタにとっちゃ反吐並みの言葉だろ。

だから俺が、純情消されて欲情ロミオになるしかないこの俺が、アンタに愛を教えてやるよ。アンタの嫌いな「アイノコトバ」と「ヤサシイホウヨウ」もタイマーと一緒にセットして、アンタの大好きな「辛口セックス」の中でドロドロに溶かしてやるから。

いつでもつれない、本音は見せない、仮面のアンタにさ。

 

事が始まっちまえばアンタの態度は嘘みたいにグルグル180度回転する。かといってそりゃ溺れてるってのとは話が違って、アンタの場合は感じてんのか感じてないのかもさっぱり分からない。アンタが男で良かったよ、女だったら完璧分かんねえ。出すもん出しちまえば最終的には感じてるって分かるからな。

アンタは態度に出さないくせにズルイよな、毎回そう思う。何でって、良いとも良くないとも言わないくせに、しかもヤる前は散々俺をバカにするくせに、いざそうなっちまったら拒否は一切しない。そんなに言うなら拒否すれば良いのにな、アンタって奴は分からない。でもそういうアンタに惚れた俺はもっと訳が分からない。

唇を奪う。舌を雁字搦め。絡んで絡んでそれでも足らないってくらい、息もつかせぬ高等テクを最大駆使してアンタにあげる。でもって俺の手は早速服をゴソゴソやって、アンタの白い肌を散策中。

「…ふっ、う…」

そうそう、その勢い。漏れる程度の息が大事。そういうの、そそる。

でもアンタって人は大体にしてサービス精神に欠けてんだ。そんなんじゃ会社がぶっ潰れちまうぜって余計な心配しながら俺は更なる高級テクに脳を悩ませてる。ちょっとくらい俺を興奮させてくれる薬くらいくれても良いのに、折角漏れた息もすぐに消えてエンドマーク。その頃俺の手は肌を探り当てて、更なる研究をしてた。目標地点は既に定まってる、まずは人類共通性感帯に向けて。

やっとそこに辿り着いて、ちょっと突き出たソコをくちゅっと撫でてやる。微妙に立ってきたら、も一度優しく、だけど今度はちょっとしつこく。指の腹の辺りで丸め込むように回したり、時には指先で側面をなぞってみたり。

「……」

「こんなん楽勝って感じ?」

「……」

「はいはい」

な、これだから困っちまう。アンタは一向に声も出しゃしない。俺ときたら、アンタを押し倒した時点で興奮ゲージUP、そんでもってキスの一つも終わって愛撫でもすりゃこんなに素直に勃っちまうってのに。期待しすぎだっての、この下半身め。

服なんか取っ払って、視界全面に肌がガツンと飛び込んでくると、俺は隅々愛撫を始めた。撫でたり舐めたり。首から腹まで上半身ツアーってな感じでさ。でも俺の手はいつでも流行先行型、だから既に大事なトコまで探り入れちゃって。

俺がそんな奉仕じみた愛撫を愛もってやってる頃、アンタときたら時計なんて見たりしてる。チラ、とかな。そんなに時間なんて気にしなくても良いのに。何せその憎たらしい時計ときたらさ、時間がくりゃ煩いくらいに鳴き始めるんだから。

欲情ロミオな俺の片腕は、アンタの下半身に探りを入れて、それから小さな発見なんかして俺を喜ばせた。どんなに顔で隠しても、此処はいつでも素直なもんさ。女でも男でも一緒だ。

「勃ってんな」

そう報告。でもアンタは余裕綽々。いかにも、つれない。それどころか挑発。

「相手がお前じゃなくても勃つときは勃つだろ」

「あーそう。可愛くないよな、ほんと」

「可愛いなんて言われたくないけどな」

「よく動く口だ」

俺にとっちゃ愛の語らい。だけど世間からすりゃ喧嘩に近い皮肉の言い合い。まったくホントに良く動くこの口、どうにかして黙らせなきゃな。

そう思って、俺は思いきって発情期ロミオに変身。ベットに背中つけて仰向けになってるアンタの上に、座るようにして乗っかる。やべーな、この机…じゃなくてベット、壊れねえかな。そんなこと心配しつつ俺は実行。絵にもならんえげつない構図だけど愛ありゃOKだろ。そう思わないか?

アンタの口に、俺の大事なモン、預けて。

「こんくらい、アンタにゃ簡単だろ?」

「…最悪だな、お前」

「どこが?」

ほら、好きだろ?そう言って俺はアンタに迫る。ああ、そんな仕方無さそうな顔すんなよな。でもさ、ほら、そんな顔しながらも結局アンタは俺の咥え込むんだよな。そうそう簡単な話さ、単に軽く舐めてくれればそれでOK。多くは望まないさ。

それともこのまま俺のイカせてくれる?

…ってのは高望みしすぎだよな、知ってる。でもアンタの口の中も結構好きだぜ。まあ下の方が刺激的だけどさ。でも一回くらいアンタの口の中に出しても許されそうだって俺は思う。だってコレは俺の愛そのもの、だけど残念ながらアンタにとってはウザいパフォーマンス。この違いは相当デカい。できることならその違いなんかぶっ壊して、アンタに飲み干して欲しいな、俺の愛情。

でもそういうわけにはいかない。さすがに俺は、発情期でもロミオだった。ってことは根底純粋、愛は本物。だからアンタが本気で呆れそうなことはできない可愛い臆病も持っちまってるのさ。

だから俺は程ほどのトコでそれをやめて、また元の体勢に戻って愛撫を続けた。でも今度の愛撫はちょっと違う。何ていってももう俺の大事なソコはさ、かなりマジになっちまったから。コイツの欲求叶えて やらなきゃ俺までしんどい。ストレス200%だ。

って訳で、俺の愛撫は超がつくほど本格的、っていうかアレだ。本番前準備体操みたいな感じか?今度は俺がアンタの大事なトコに愛を。但し今回は俺の片腕が担当だけど。

頑張って上下したってアンタはテコでも声なんか出さねえ。それは分かってっけど、どーなの一体?自分でマスかくときもアンタはノーリアクション?

俺はいっぱいいっぱい愛注いで、アンタの大事なトコも大事じゃないトコも全部優しく撫でてる。隈なく嘘なく。で、その内俺のアソコも我慢限界。さっきから晒されてる可哀想なソコに、やっとの勢いでご褒美。

欲情ロミオは純情の裏で下ゴコロ隠してる。だから俺っていえば用意周到で、アンタと俺が一緒に気持ちよくなる為にちゃんとジェルなんか忍ばせてる。嫌らしいって?

ああ、良いぜ。何とでも言えよ。愛には、たまに嘘も効果的なんだって教えてやるさ。

それどころかアンタの本性暴いてやろうか?

ホントはどのくらい感じてて、どう思ってるかって、暴いてやろうか。

普通の辛口セックスじゃ味わえない、ちょっと糖質交じりのセックスで。

「今日こそ本音聞かせろよな」

「…バカじゃないか」

あーそう。そうだよ、俺はアンタの中じゃバカもバカだろうな。でもな、他の奴には負けないぜ。欲求は人を変えるんだ、最大限引き出せるんだ。

例えばさ、俺が今アンタのアソコに塗り込んだ、やらしいジェルの効果だってソレさ。

――――――な?

「…うっ…」

暫くすると、アンタの口からは漏れるはずのない声なんかが漏れ始めた。そうそう、待ってた、この時を。大体セックスってのは快楽の為にあんだから。愛あるからヤるってのも一理、だけどじゃあ何で愛が無くても性欲ってあんだよってなると、そりゃ答えも簡単だ。そう、それは快楽が欲しいってそう思うからだ。でも安心してくれてOK、俺のセックスは愛のソースがたっぷりだから。

「バカ…お前、何を…」

「ん?何?俺が何したって?」

「む…かかつくっ!」

俺はにんまり、アンタはげんなり。俺は何も悪いことはしてない。ただ愛たっぷりのセックスをもっと楽しもうって思っただけの話で、べつにそりゃ悪いことじゃない。

強いていえば俺がもっと楽しみたいって思ったのは、アンタがあんまりにつれないからってトコロかな。

で、アンタといえば、俺の罠にハマって相当キツそうな顔をしてる。超がつくほど感じてるってのに、それでも声は出したくないってのがミエミエだ。でも、駄目。ソレは今日は無し。素直に感じてくれよ、俺の為にさ。

俺はドロドロになったあんたの中に、もうガマンできませんって汁垂らしてる俺の可愛いソコを突き入れた。

「ん、あっ!」

此処からは俺の得意分野?まあまあ体力は負けないって感じだし、アンタの中のもっと奥深いトコまで突き入れるのなんて意外と得意だぜ。

速攻ピストンでアンタの気持ちも速攻上昇。でもって俺はそれでも満足いかなくて、もっともっとって欲求丸出し。でも勘違いして欲しくないのは、これは俺の愛ってこと。

もしアンタがもっと素直に「アイノコトバ」や「ヤサシイホウヨウ」を受け入れてくれれば、俺はたったそれだけだって満足だったんだ。ところがアンタが唯一認めた俺ってのは「辛口セックス」だけだった。だから仕方無いさ、今更文句なんて言わないでくれよ。

俺だってさすがに傷つくぜ。

「あっ、ああっ!ん…っん」

今まで見たことも無い、感じまくりのアンタの顔。俺の増強剤。

可愛いなんて言ったら即パンチ浴びせられそうだけど、俺はそんなアンタを見て満足も満足だった。そう、もっと悶えてくれよ。もっと感じて。もっともっと。

もっと、俺ので感じて。

「どう?」

「ん!ん…っ!」

アンタの口は、もう答えも出せないくらいに喘ぎでいっぱいいっぱい。そんなところも本気で嬉しいよ。こんなアンタ見てると俺もつい力入るってもんだ。だからついつい、強引に突いて突いて苦しませたくなっちまう。極悪だな、でもコレって愛情の証。

ますます悶え顔のアンタ見て、俺は思わず切なくなっちまう。

だから、ポロリ本音出ちまうよ。

なあ…。

「俺を見ろよ。もっと俺のこと見てろよ」

苦しそうに片目で俺を見るアンタ。ああ…ホントバカだ。つれない素振りでクール全開のアンタもそそるけど、こんなアンタも好きだよ。こんなトコまで押しかけて、絶対全然好きなんて素振り見せないアンタでも、俺は追いかけちまうんだよ。仕事ザボってもアンタが欲しいんだよ。アンタ抱きたいんだよ。だから曝け出してくれよ、全部。

クールなアンタが、崩れても、泣いても、挫折しても、辛くて叫んでも、俺はアンタを軽蔑なんかしないんだから。アンタが甘えても、愚痴こぼしても、カッコ悪いトコ見せても、俺はへっちゃらんだから。俺はアンタをまるまる包む自信あんだから。

聞き飽きたお決まり台詞なんか捨てて、本気見せて。本音見せて。

アンタの本音がありゃ、俺なんてソレだけでイけるんだからさ。

なあ、俺を見ろよ。俺を。――――――――この顔に、穴でもあくくらいに。

「アンタのこと、全部教えてくれよ」

嫌いなんて言わせない。

だったらこんなセックスなんて意味ない。しないだろ。

それとも性欲だからってアンタは俺と寝るのか?

な――――――――――――、頼むから本当の心、俺の言えよ。

「…あ、ああっ!」

潤んだ目で俺を見てる。どれが答えか俺は腰振りながら探ってる。アンタの深く深く奥深くまで突き刺しながら、アンタの奥に眠ってる答え探してる。

「なあ―――――――」

頼むから。

 

そんな良い所で、バカみたいに時計が鳴り出した。

ジリリリリリリリ……

 

うるせえよ!

そう思ったけど、意外にもアンタはまだ俺の手中だった。いつもだったらアンタは冷静にエンドマーク突きつけて時計を止めて服でも着ちまうのに―――今日のアンタはちょっと違う。

まだ俺を見てる。

まだ俺を感じてる。

ジリリリ煩い時計を止めもせず、俺達は一つんなってる。なあ、コレって期待してもイイのかよ。それともこれもまた茶番かよ。訳分かんねえ、でも俺は興奮する。

だってコレが答えなら、まんざら俺は悲しまなくてイイんだ。

な、そうだよな?

「俺を見てろよ、もっともっと、ずっと」

俺がそう言って最後の力ふりしぼるとき、アンタの眼はじっと俺を見てた。俺だけ俺だけ、俺を通して俺のココロも全部。

ニッ、笑う。

 

 

 

ジリリリリリリ―――――――――……

アンタとの間のBGM、心地イイとさえ思える。

純情ロミオ、お前の気持ち、まんざらでもねえ。

純情ロミオ、今日は魔法が解けないみたいだ。

純情ロミオ、お前の本音込めて、ぶちかまそうぜ。

 

 

 

奥の奥まで、本音を飲み込んでもらえるように。

 

 

 

END

 

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