Crazy Sink
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「お願いがあるんだ」

 戦闘が終わり、宿に帰ろうとしていた時だった。普段はそれ程、個人的な会話がある訳でも無かった二人だが、その時はクラウドから話題が提供された。

 しかもそれは、お願いだと言う。

「何だ、責任があるようなやつぁ、ご免だぜ」

 話題を振られたシドは、面倒だなと思いながらそう返す。

 当のクラウドは、その態度に困ったような顔をしながらも、話題を進めた。

「あのさ、何処か夜の街に連れてってくれないか?」

「はあ?」

 何だそりゃ、お前さんは何考えてやがるんだ、とそうすっ頓狂な声を出して、シドは腕組をした。それからジャケットの胸ポケットにある煙草を取り出すと、その中から大好きな煙草を1本抜き出し、口に咥える。

「大体、何で俺様なんだあ?お前、俺の事、遊び人だとか思ってんだろ?」

「そうじゃないけどさ」

 しかし仲間内で一番の年配といえばシドで、その風貌からすればどう見ても人生経験が豊富そうだった。

「お願いだから、頼むよ」

 それでもそう言ってくるクラウドに顔をしかめながら、シドは「全く…」とブツブツ文句をたれた。

 仕方無い、連れてってやるか。

 シドは結局、夜になってクラウドを連れ出す事にした。

 

 

 夜は静かだったが、そういう時間になって騒々しくなる場所も中にはある。

 仲間のいる宿を抜け出して、町の隅の方に申し訳なさそうに佇んでいる一軒の店に入った二人は、カウンターの席に腰を下ろした。

 何の変哲も無い、バーである。

「ネエちゃん、俺ぁウイスキー。ストレートダブルで宜しくな!」

 勢い良く叫ぶシドの隣で、クラウドは控えめに、

「じゃあ俺は、ビールで」

 という注文をする。それに文句を垂れたシドは、勝手に自分と同じものを注文し直した。

「俺、ウイスキーってあんまり好きじゃないんだよ」

 そう言うクラウドに、馬鹿言え、などと説教をする。

「男がその様たあ、納得できねえなあ。大体お前、何で今日は此処に来たんだ、ええ?そりゃ勿論、男の欲求を我慢できねえからだろうが。だったら酒ぐらいお前、飲みやがれ」

「……」

 少しムッ、とした顔つきになりながらも、クラウドは早速というように出てきたウイスキーを飲んだ。薬のような、苦い味が口に広がる。

 隣のシドは、さも巧そうにそれを飲んでいる。

 ダブルストレートは、クラウドの意識をふら付かせたが、それでも何とか頑張って平然を装った。

「…で、お前さんの望みは…女、で間違いないよな?」

 直球で言われて少し躊躇ったが、クラウドは「ああ」とだけ答えた。

 

 仲間内には自分がかねてから好きだったティファがいる。彼女の事は純粋に好きで、勿論抱いてみたいとは思っていたが、それはできるはずも無かった。しかも今はそういう状況では無い。

 しかしだからといって、隣り合った部屋で自慰をするのは辛い。何だか妙な感じだからだ。しかし結局、溜まりに溜まった日の夜にはそういう事もしばしばあったのは言うまでも無い。

 自慰でそこそこの欲求は開放できるものの、やはり何かが足りない。

 もっと温かい感じが欲しい。それは勝手な事だったかもしれないが、後腐れも無く、金を払うだけで欲求が満たされるならば、それに越した事は無かった。

 勿論、誰にも文句は言わせない。

 

「実はよ、このバーの地下に…良いのが揃ってんだ」

 ニヤついた顔でシドはそんな事を言った。

「それ、ちゃんと個室なんだろうな?」

「馬鹿、当たりめえだよ!乱交とは違うぜ」

「…シドも寄るだろ?」

「はん、此処まで来てやらねえなんて、男が廃るぜ」

 

 その会話の少し後に、シドはカウンターの中にいる女に小声で何かを囁いた。

 どうやら、知る人ぞ知るという具合のものらしい。

 シドの言葉に女は妖しい笑いを浮かべて、クラウドの方を見た。

「こっちに、いらっしゃい」

 そう言う声に誘われて、クラウドは立ち上がる。しかし、さっきまで頑張って飲んでいたウイスキーのせいか、どうも視界がクラクラした。

 折角来たけれど、巧くできるか心配である。もうすぐそこに、どこの誰とも知らない相手がいるというのに…。

 

 地下に降りていくと、そこは見事なホテル状の作りをしていた。完全な個室になっている。だが、所々から声が漏れていて、何だか妙に生々しかった。

「どうよ、良いだろう?そそるよなあ」

 もう耐え切れないというふうに、下半身を押さえながらシドは舌なめずりをしている。しかしクラウドの方は、段々目の前が霞んできてそれ所では無かった。

 だが、シドはそれに気付いていないようだ。

 少し廊下を進んだ所で、先頭を歩いていた女が振り返った。

「ねえ、此処なんてどうかしら。まだ可愛い子なの。でも感度は最高級よ。そこの坊やにも持ってこいじゃない?」

「ああ、そりゃ良い。あ〜畜生!本当だったら俺様が喰いてえなあ!」

「駄目よ。シドさんにはもっと上手な女が似合うんだから」

 そんな会話が交わされる中で、クラウドはとにかく何処でも良いから休みたいとだけ思った。その内マトモになるだろう。そうしたら、その彼女も抱けるかもしれない。

 

 女の勧めた部屋に入ると、シドと女は「頑張れよ」などという言葉を投げてドアを閉めた。

 部屋の中には、まだ少女じゃないかと思われる女が、全裸でベットに座っている。それを見ても、どうも酒のせいか勃起すら起こらなかった。

「どうしたの、飲みすぎ?」

 気を利かせてそう声をかけてくる彼女に、クラウドは「悪いな」と謝る。

「良いのよ、謝らなくたって。ゆっくり休んで良いから」

 優しくそう言って、その女は軽いバスローブのような服を着て、部屋を出て行った。相手にならないと思ったのか、呆れたのか、本心は分からない。

 結局、金を払ったのに目的も果たせないまま、クラウドは独りきりでベットに横たわった。

 とにかく目が回っている。帰るに帰れないかもしれない。

 身体が妙に熱くなって、クラウドは無意識に服を脱ぎ捨てた。どうせ此処はそういう場所なんだから不思議は無いだろうと思い、ズボンも脱ぎ捨てて、ベットに寝そべる。

 もしかしたらこのまま眠ってしまうんでは無いかとクラウドは思っていた。

 

 暫くしてドアが開き、その音でクラウドはやっと起き上がった。まだクラクラしていて、とても欲求は果たせそうに無い。

「おい、お前。大丈夫か?」

 目を凝らしてみると、それはシドだった。てっきりさっきの少女めいた女だと思っていい訳を幾つか考えていたクラウドは、その姿に気がぬけてしまう。

「何だあ、情け無えなあ!出したかったんじゃねえのかよ」

 呆れたようにシドはそう言って、クラウドのいるベットまで足を運ぶと、その脇に腰をかけた。

「ごめん、シド。酒がやばかった」

「はん、ウイスキーでつぶれたってえのか?」

「そうみたいだ」

 正直にそう認めるクラウドに、シドは大げさに溜息を吐いた。

「全くよお!俺様はヤル気満々だったってえのに、お前がそんなだって言うからやれねえじゃねえか!」

「ごめんって」

「馬鹿野郎。ごめんで済ませんな」

 そう言われても、クラウドには謝るしかできない。確かにお願いしたのは自分の方だったのだから、目的を果たさないのは間違っているのかもしれない。

 

 そう思いながら空ろになっていた時、シドがガサゴソと何かを動かし始めた。

「シド?」

 気になって声をかけてみると、シドは自分のズボンのベルトをはずしている所だった。

「おい、クラウド。お前にぶち込むからな」

「え?」

 驚いてクラウドは跳ね起きた。その衝撃でまた一段と頭がクラリとする。まさかシドの言ってる事は冗談だろうと思ったが、着々と準備をしているシドは、本気そのものだ。

「ちょっと待ってくれよ!俺にって、俺は男なんだぞ!」

「馬鹿か、てめえは。分かってらあ。だがな、男だって入れられないってえ事はねえ。お前だってやりてえんだろ。俺様も出してえんだから、丁度良いじゃねえか」

 そういう問題かよ、と怒鳴りたかったが、それより先にシドがクラウドを押さえつけた。それは強い力で、いつもだったら簡単に避けれたかもしれないが今のクラウドには難しい。

 もう既に全裸に近い状態で、なおかつ酒に酔っていたクラウドを犯すのは、シドにとっては容易い事だった。

 

 

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