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天晴れの元旦 ------------------------------------------
新しいものが始まる。 それは、クラウドにとって神羅で迎える初めての年明けであった。 帰省してないから年明けはいつもと同じように兵舎で過ごす。神羅はこの年明けという時に何かをしてくれるわけでもないから、これといって楽しいこともない。まあ大体思うことといえば「ああ、まだ始まるんだ」ということくらい。 兵舎残り組は実のところ結構いる。 けれど、残り組は残り組で「何日か旅に出ます。探さないで下さい。ってか緊急呼び出し却下」とか感とか言ってる奴までいるので、実際兵舎に残る人間はもう少し少なくなる。 で、クラウドといえば、その少ないうちの一人だった。いつも一緒にいるザックスやセフィロスはこの年始だというにも関わらず、仕事が来ただのと文句を言いながらもそれをやってのけていた。 というわけだからクラウドは正に一人だった。 はっきり言ってこの時期にこの寂しい兵舎で一人というのは、とてつもなく悲しい。 同じ兵士仲間は帰省組だから残ってもいない。問題外である。 そんな具合で一人寂しい年始を迎えていたクラウドだったが、そんな彼にも騒がしい年始が―――――やってきたのだった。 それはそう、一つのノックから始まる……。
コンコン… そう音が聞こえたとき、幻聴かと思った。誰も知り合いはこの兵舎に残ってないのだから基本的に訪ねてくる者などいないはずである。だからコレはおかしい。 「何かな…」 それでもしつこくトントントントントンとドアが叩かれるものだから、クラウドは仕方なくそのドアを開けた。 ガチャリ 「はい。……??」 恐る恐る、ドアを開ける。 そして更に恐る恐る訪問者の顔を覗く。 と、そこには。 「あけましておめでとう」 「――――――…」 そこには、金髪の男が立っていた。 男はクラウドより何歳か上のように見える。顔は何だかハッキリしていて、しかも態度が堂々としている。 誰だ?――――――クラウドの知人ではない。 知人ではないけれど、何故かどこかで見たことのある顔のような気がして、クラウドは必死に考えた。 この顔、どこかで……どこでだろう……何か知ってるような……誰だ…… 考え考え考え考えて、そうしているうちにクラウドの目にあるものがふっと入った。それは、男の胸辺りについている……。 「あ。」 そう、神羅の社章である。 思わず社章と顔とを見比べると…男は何故か自らこう言い出した。 「私は神羅の副社長、ルーファウスだ」 「えっ!」 自信満々にそう言う相手に、クラウドは大層驚いた。一体副社長が自分に何の用であろうか。まさか仕事―――――?……いやいや、それならわざわざ副社長が来なくとも良いはずだ。 クラウドはかなりの時間そうして固まっていたものだが、相手のルーファウスは気にしないといった様子で、突然話し始めてくる。 クラウド、パニック、である――――。 「このような時期に帰省もしない君のような兵士の為に、私はこうして歩き回っているのだ」 「は、はあ…」 一体、何故?と思ったがそれは聞けず。 「で、だ。そんな愛社精神溢れる君のような兵士には、勿論私も考えがある。それが―――これだ」 ジャーン。 ルーファウスは胸ポケットから何やら取り出すと、それをサッとクラウドに手渡した。 何だ?――――そう思っていると。 「えっ…」 それは何と!!――――――ポチ袋!! 驚いたことにルーファウスはクラウドに。お年玉などというものをくれたのである。それはルーファウスの言うところ「愛社精神に溢れ、こんなときにも神羅にいるから」らしい。が、実際クラウドが此処に残っているのは別に、神羅が好きなわけだからでは無かった。ぶっちゃけ、仕方ナシにいるようなものである。 しかし今此処でそれを言おうものならこのお年玉は取り上げられるだろう。折角頂いたのだからそれを逃す手はない。 ――――――というか、ハッキリ言って副社長自らお年玉をくれる会社ってどうなのよ!?という感じだったが、クラウドは敢えてそこは突っ込まないでおいた。 で。 この副社長、その為にわざわざやってきたのかと思ったら大間違いである。お年玉は言わばエサ―――――…そう、その裏にはしっかり目的があったのだ。 で、それが何かというと…。 「此処に残っているということは任務も無いな。しかも私が調べたことによると、そういうのは君を含め50人程度だ」 「し、調べたんですか…」 クラウドはビックリしつつもそう言う。そして副社長は満足そうにこう答えるわけで。 「当然だ。それによって経費がいろいろ…って、そんなことはどうでも良い。私が言いたいのは、そう―――」 「言いたいのは…何でしょう?」 何だ、一体何を言いたいのだ、そう思ってクラウドがドキドキしながらそう聞くと、ルーファウスはさも満足そうな笑みを浮かべ、そして、またもや胸ポケットからある物体を取り出した。 それは。 「なっなにっ…!!!」 ――――――――取り出したるは、正月特有の「アレ」である。それは良く子供たちが遊ぶのに使うもの。その名も…。 「そう、カルタだ」 ルーファウスは「ふっふっふっ」と笑いながらそのカルタ一式をクラウドに示すと、まるでそれが凄いものかのように称えた。しかも最後に「ただのカルタではない」だとか何とか言ってそのカルタについてをやたら詳しく説明すると、初対面にも関わらず巧みにクラウドを誘う。 そう、これは一見して妙な副社長の自慢話にも聞こえるが、その実核はといえば、クラウドをカルタに誘っているのである。だったら最初から素直に「カルタしないか?」とでも言えば良いモノを、どうもそれはできないらしく。 まあいきなりやってきて「カルタしよう」なんて副社長に言われたら、どうリアクションを取ったら良いか分からないけれど。しかも―――――何故にカルタ?? 一体いくつになったんだろう、この人…とクラウドが思ったのは言うまでもない。 しかしとにかく目前の副社長は、カルタに随分と熱い。 もしここで「あ、そーですか。でも俺、カルタ嫌いなんです」なんて言おうものなら減給どころでは済まないだろう。何せ残り組を調べてくるくらいなのだから。 というわけで、クラウドに選択の余地は無かった。 「は、はい…ええと。カルタ…するんですよね??」 謙虚にそう言ってみるとルーファウスは、 「何!このカルタをやりたいと!そーかそーか、なら仕方ないなあ」 などと、さも嬉しそうに言った。 仕方ないか、っていうか―――――…突っ込みたいけど突っ込めない。 「ならばカルタをしようか。この神羅特製カルタを、な」 ルーファウスの表情は、いつになく輝いていた。 クラウドは、初対面のルーファウスに対して、ただ呆然とするしかなかった…。
そのカルタは何故かクラウドの部屋で始まった。 始まったというか、勝手に始められたという方が正しいだろうか。 とにかくルーファウスはズカズカとクラウドの部屋に入り込んでくると、さっさと床にカルタを並べ始めた。一枚一枚並べてゆき、更には無言でクラウドにも手伝うようにとアクションする。だもんだから、クラウドもそのカルタを一枚一枚並べなくてはならなかった。 元々一人で過ごすしかなかったから丁度良いとはいえ、何かが違う気がする……そう思いながらもクラウドはその作業を続ける。 しかし不思議と、相手が副社長だというのにイマイチ緊張感が沸かなかった。これはどういうことだろう、普通は緊張の一つもするだろうに。 しかしまあ、カルタなんかをしようと言って迫ってくるような人なのだから緊張しないのも無理は無いかもしれない。そう思いつつ作業をする。 そしてその作業が終わった時、やっとカルタは二分されたという具合。 床に並べられたのが半分、そして手元に残ったのが半分。 「では―――――始めようか?」 手元の札をトントンと並べながらルーファウスはそう言う。 しかしそこでクラウドから「待った」の声。 「ちょっと待って下さい!あの…カルタは誰が読むんですか?」 そう―――――それは尤もな質問だった。 カルタというのは読み手が一人居て、あとの不特定多数が「ペシッ」と札を取るわけだが、此処にはクラウドとルーファウスの二人しかいない。もし此処でどちらかが札を読むように回ると、「ペシッ」の係は一人―――――それは不成立である。 その尤もな質問をクラウドが繰り出した後、ルーファウスは「うーん」などと唸った。 ―――――――もしやこの人……ルールを知らない……!? まさかな、まさかな、そうドキドキしつつ答えを待っていたクラウドは、後ほど聞こえた回答に、取り敢えずはホッとした。 「そうだった…忘れていた。これじゃ成り立たんなあ」 取り敢えずルールは知っているらしい…。此処で「何で?」なんて聞かれようものなら、クラウドはそれを一から説明しなくてはならなくなるが、どうやらそれは無かったようだ。 で、その解決法はというと。 「そうだな。仕方無い。―――――こういうことにしよう。半分づつ読む。そうすればフィフティフィフティだろう」 だから二人で続行だ、などと言うと、ルーファウスは早速のように、まずはどちらが先に読み手になるかジャンケンだ、などと言った。 まあルーファウスがそう言うならそれで良いけど…などと思いつつ、クラウドはジャンケン体制に入る。 で。 「じゃんけ〜ん…」 「じゃんけ〜ん…」 振りかぶって――――――――…… 「ポンっ!」 「ほいっ!」 勝負っ!!! ――――――――ジャンケンの良い所はその場ですぐ結果が分かるところである。 して、その結果は。 「あ――――――俺、負けだ…」 そう、クラウドの負けである。というわけだからまずクラウドが読み手、ルーファウスが「ペシッ」の係。そう決まってクラウドは、手元の札をルーファウスから譲り受ける。 そして、とうとう戦闘開始―――――――――!!! チャキーン ――――――――戦闘の火蓋は切って落とされたのだった。
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